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「問題児たちが異世界から来たそうですよ!?」「Yesハトが呼びました」

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ssmrowa

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だれでも歓迎! 編集
源平合戦の時代に生まれ育ち、異世界で“国獲り”の戦争に参戦していた那須与一。
そんな壮大な出自を持つ武将と会話を交わしたことで、末原恭子が体得した心理はふたつあった。
恐怖と、安堵。

戦うことを人間の本質だと悟りきっている那須与一。
もし、こんな考え方の人が他にもいたらと想像することは恐怖でしかなかった。
同じような価値観を持つ人間の方がごろごろいて、そいつらが殺し合いに乗ったとしたら。
自分のような凡百は、赤子の手をひねるように殺されてしまうだろう。
しかし、自分の感性はまともなんだという安堵もわずかにあった。
那須与一が殺し合いの場においても平然としているのは、それを日常とする時代で生きてきたからなのだ。
こんなに現代人と平安後期の武将で意識の差があるとは思わなかった!
……しかし、『生きた時代が違う』という理由そのものは納得できる。
むしろ、バラバラの時代、バラバラの世界から人が呼ばれたとしたら、そういった『ファンタジー世界の住人』こそが殺して回る側になるのだろう。
少なくとも恭子が主催者なら、平気で殺せる側の人間が『マーダー』として働くことを期待する。
つまり、恭子はどうあがいても――襲われて正当防衛ではずみで、といった例外をのぞけば――殺す側の人間ではないということ。
現代人の、それも女子高生なら、殺人を忌避するのが当たり前。
与一と出会う前に感じていた『人なんて殺せるはずがない』という忌避の感情は正しい。

「ははぁ。ではその『麻雀』のいくさにも、妖術(あやかし)が使われているわけですか」
「常識を越えとることは確かですけど。でも私にそういうんはないですよ」

末原恭子は、逡巡をしていた。
与一に聞かれるまま現代の世の中のこと、麻雀のことを話してはや十数分。
喉元まで出かかっている問いかけを、言えないままでいた。

『与一さんはこの殺し合いで、どう動くつもりなんですか?』

こんな簡単なことが、聞きたくて聞けない。

「そうでしょうかねぇ。私にはあなたもひとかどの人物に見えますよ。
私の気配に感付かれたのだし」
「いや、あれはたまたまですって。買いかぶりです!」

今のところ、与一は友好的に接してくれている。
殺し合いに乗っていたら、普通はこんな雑談を交わすことなんて有り得ないはずだ。
けれど、『違う時代から来たらしい』という前情報が安心を阻害する。
源平合戦の頃から来たらしいのだ。
屋島の戦いの『扇の的』とかやってた時代だ。
断片的な知識しかないけれど、殺し合う敵味方同士が『この扇を射抜いてみろ』とか言って仲良く遊んだりした時代だ。
だったら、こんな風に仲良くしている与一が、殺しに走らない保証などないかもしれない。
『無抵抗のおなごを殺さない』というのは『とりあえずそうしてみた』だけであり、『さて、本気を出して生還狙ってみますか』となったら――

(――だからってこのまま流されていいわけあるかい! 凡人にできることは『考えること』や)

そうだ。確かに恭子には、殺し合いを渡っていける実力はない。
しかし、そこで諦めてしまってはそれこそ殺されるのを待つだけになってしまう。
いい牌をツモってこれる力がないからといって、賭けにでることをやめていいはずがない。
にこやかに質問を続ける与一の顔を見据えて、勇気をふるい立たせる。

「あのっ。ひとつ聞きた「聞きたいことがあるんですけどぉー」

しかし、その勇気は妨害された。
紫がかった銀髪を揺らし、小学生ぐらいの少女が木々の合間からひょっこりと現れる。
おずおずと問いかける風に恭子たちを見つめる目は、不安そうな様子がうかがえた。
特徴的だったのは、まんまるいペンギンのぬいぐるみを両手で抱きかかえていることだった。
それが、見覚えのあるペンギンだった。
おそらく清澄高校の副将、原村和のそれと同じペンギンである。
後輩の愛宕絹恵がうっかり蹴り飛ばしていたから、印象に残っていた。

……子ども?
『殺し合い』の場に『子ども』がいる。
そんな驚きで言葉をなくす恭子より先に与一が声をかける。

「おや可愛らしいお姫(ひい)さま。どうしました?」
「わたしのお友達に、会いませんでしたか? 
薫ちゃんと葵ちゃんって言うんですけど」

すがるようにペンギンを抱きしめたその姿は、寂しさを紛らわす為に抱いていることが明らかだった。
恭子の中で、『子どもがいる』という驚きが、『こんな子どもまで呼ばれてるなんて』に変わる。

「えっと……あんた、お名前は?」
「三宮、紫穂です」
「紫穂ちゃん……ごめんな。うちら、お互い以外のひとにはまだ会ってないんよ」

露骨に落ち込んだ顔をして、うつむく紫穂。
いくら凡人と言えども、幼い少女のそんな姿を、年上の女性として見捨てられるはずがない。
安心してええよ。私らは殺し合いとかしないから。一緒に探してあげる。
答えようとして、しかし躊躇いが走る。

『私らは』と答えれば、そこには与一も含んでしまうから。
結局、『与一さんはどうするつもりなんやろ』という疑問に戻ってしまう。
与一からすれば、恭子も紫穂もひとしく足手まといに違いない。
そんな少女を連れて行動する利点など、ひとつもあるはずなく――



「大丈夫だヨー。この美しいおにーさんが、その友だちを探してあげるからネ」



まるで緊張感のない、否、人を安心させる声を与一は発した。
漫画で言う『ディフォルメ顔』みたいな。『ギャグ顔』みたいな。
そんなやわらかい糸目だった。

改まった武士めかしい口調から、ガラリとくだけた感じになった。

「え、与一さん。それって……」
「はい。集団になった以上、まずは拠点の確保ですかね。
女子どもを戦場(いくさば)に出すわけにもいかないし、かといって放り出したままにもしておけないでしょう。
ま、信さんならおなごでも戦わせそうだけどネー」
「ま、守ってくれはるんですか…?」

小さく笑みを浮かべて、すっくと立ち上がった。

「あいにくと、卑怯なことや道を外れたことは好まぬもので」

どっと、安心感がこみ上げる。複雑な罪悪感も同時だった。
こんなことなら、もっとちゃんと信じるべきだった。
価値観が違っていることと、人間性を欠いていることとは、決してイコールではないと言うのに。

「あ、あはは、安心したら、何か力抜けた」
「お姉さん、大丈夫……?」

『座りこみ』から『へたりこみ』に移行した恭子へと、紫穂が駆け寄る。
ぎゅっと手を握って、心配げに尋ねて来た。

「だ、大丈夫。そや、自己紹介がまだやったね。私は末原恭子。こっちは那須与一さん」
「与一さん……なんだか昔の人みたいな名前」
「あー。そりゃ小学生は『平家物語』とか知らんよな――」





シュン





そんな動作音が、わずかに聞こえた。
どこかで見覚えのあるような、不思議な既視感があった。
例えるならば、『何度も繰り返しモニターで分析した対戦校の選手をまた改めて見た』ような懐かしさ。
その気配を発したのは、紫穂から。
そして――





パン



「は……?」



銃声。
与一の左胸に、穴があいた。
赤い液体が、そこから滲みはじめた。

あれ、なんでだろ、と恭子は思う。
これじゃ、まるで与一さんが撃たれたみたいやん。
与一さん、狙撃はめっちゃすごいんやろ? 化け物クラスなんやろ?
なんで撃たれた側みたいになってるん?
なんで、膝ががくんってなって、即死みたいに倒れようとしてるん?

倒れつつある与一に、タックルを食らわせるようにして紫穂が突っ込んだ。
その右手には小さな、ドラマとかで見る『デリンジャー』に似た黒いかたまりがある。
おかしい。紫穂の右手は、さっきまで恭子と手をつないでいたのに。
ひどく場慣れた動きで、与一の持つ突撃銃に組みつく。

ぞくり、という予感が背筋に走った。

なんで?
さっきは殺気を感じ取れたのに、なんで今は気付かなかったの?
なんで、直感はヤバいって分かるのに、体が動いてくれないの?

とても細長い、小さな体には不釣り合いな狙撃銃を、紫穂が肩に担ぐように構えていた。

ああ、そうか。
この子が人を殺すわけないって、油断してたからか。
麻雀経験のない人が『能力』を感じ取りづらいみたいに、緊張を解いてたからか。
『同じ時代を生きる女の子なら、人を殺すはずがない』って、安心してもうたんか、私は。

パン、ともう一つ大きな音がした。



なんで? 何も見え
私    ふし           た。
   か      ない

       善野監督。
ぬ?


【末原恭子@咲 -saki- 死亡】


那須与一は、末原恭子より少しだけ長く生きていた。
広いおでこをくだかれた彼女と違って、弾丸は心臓の近くを貫通していたからだ。
そのほんの数秒で、与一は惑う。
狙撃に必要な指を動かす力すらなく、わずかばかり残っただけの意識で考える。

あんな小型化された鉄砲まであるのは、予想外だったなぁ。
いくら技術が優れているからって、着物の下に隠せる大きさだったとは。
でも、どうしてだろう。
警戒は怠らなかったのに。
動きはどうみても、素人に毛が生えたぐらいだったのに。
得物を持った瞬間、まるで千年に一人の逸材に豹変したような――

――いや、末期なのだから、もう少し無念のないことを思い描こう。

死んだら――そうだ、にぎやかな冥土が待っているに違いない。
なにせ、与一の兄弟は十人ともが先に逝っている。
四百年前だか八百年前の死人だかは分からないが、転生でもしていなければ待っているだろう。



(地獄でも、また兄弟喧嘩がしたいなぁ……)


【那須与一@ドリフターズ 死亡】


三宮紫穂、9歳。
もうすぐ小学四年生――になる年齢だけれど、学校には通っていない。
それは彼女が『化物』として生まれ、周囲からも『化物』として扱われてきたからだ。

全てを、読むことができる。
物体に宿る情報も、人の心も。
手で触れたありとあらゆるものを、透視することができる。
世界一の『精神感応能力者(サイコメトラー)』という、シンプルかつどうしようもない理由で隔離されて育った。

だから、ひとたび道具を手に持ってしまえば、一瞬で彼女はその扱いに習熟することができる。
それこそ、デリンジャーという小型拳銃を、プロの狙撃手のごとき技量で使いこなせる。
その弾道は百発百中。弾道が読めるということは、眼をつぶっていてさえ思い通りの場所に当てられることを意味する。
しかし、それだけでは那須与一を『不意打ち』で『撃ち殺す』ことなどできない。
殺気を読むことに秀でた武士であり、護るべき子どもと言えども警戒は怠らないほどに『場慣れ』していて、『日本史上でも屈指の飛び道具の名手』である。
紫穂を百発百中の狙撃手だとすれば、那須与一は『百発万中』を自称する人間を越えた『漂流者(ドリフ)』なのだから。
単に、『拳銃の持つ性能を百パーセント引き出した扱いができる』だけでは、那須与一を上回る早撃ちなどできっこない。
そう、彼女の操る武器がデリンジャー『だけ』だったならば、那須与一に返り討ちにされていただろう。

しかし紫穂の腕の中には、エトペンがあった。

エトペンとは、単なる清涼剤にあらず。
否、ほとんどの人間にとっては単なる清涼剤。
しかし紫穂は能力によって、そこに宿る『思念』を読むことができる。
そのペンギンは片時も離れずに高校生雀士・原村和の膝の上にいた。
彼女が打ってきた数多くの試合に同席してきたペンギンなのである。

原村和はかつて、『ツモ切りの動作』というネット麻雀には存在しない要素によって集中力を阻害され、リアル麻雀での実績が振るわないという弱点があった。
その弱点を克服する為に、彼女は何千回、何万回という『ツモ切り動作の特訓』をしてきたのである。
それこそ指が痛くなっても堪え、血のにじむような練習を続けたことで、彼女は最適化されたツモ切りを実現した。
『ツモ切りの動作を無意識で行う』ことと、『リアルの情報を完全に遮断して打つ』という機械のような早打ちを身に付けたのだ。
紫穂は、拳銃を触ったことで『プロの狙撃手の技』を身に付けたように、エトペンから『原村和のツモ切り動作』をも修得(ラーニング)していたのである。

もし与一が紫穂の抜き撃ちから少しでも殺気を感じていれば、直感的に回避なり反撃なりしていた。
しかしエトペンを持ってツモ切りをする和は、ほぼ無意識なのである。
それはさながらネット麻雀でパソコンのマウスをクリックするだけのような、意識されない動き。
そんな精神の人間が、『殺気』や『攻めようとする気配』を気取らせるはずがない。

与一にとって不運だったのは、それだけではない。
麻雀の世界において、『ツモ切り』とは、単なる『牌をつかんで持ってくる』という動作以上の大きな意味を持つ。
和了牌を積もる時に腕に回転する動作を加え、神砂嵐のごとき威圧感を現出させる宮永照という打ち手がいる。
ツモを行う一瞬で牌の表面を削り取り、『轟盲牌』というイカサマを行う小泉ジュンイチローがいる。
これらは極端なケースとしても、一流雀士にとって『ツモ切りの動作』とは、見た目よりはるかに精密かつ正確なテクニックを注がれているものなのだ。
何万回となくツモ切りの練習をしていた原村和のツモ切りは、まさに体に染みつかされた最適の動きである。
紫穂はエトペンにたっぷりと染みついた記憶を介して、そのテクニックの加護を受けていた。
『ふところへと手を突っ込み、指の力で拳銃を引き抜く』というその動作に。

そもエトペンとは、原村和の集中力をサポートするために導入された補助具なのだ。
彼の記憶には当然、原村和の思念がある。それも、対局中の時の。
そこにあるのは、己の能力を極限まで引き出し、人間を越えて『のどっち』という天使に変身する為の、人知を超えた『集中力』。
『誰もその速さについてこられない』と評された、『判断』から『ツモ切り』につなげるまでのでの『躊躇いのなさ』。
エトペンには原村和の打ってきた何千局何万局という思念が、強く強く残留している。
エトペンをサイコメトリした紫穂が、『のどっち』という機械人間の境地に近づけないはずがない。

むろん、単にペンギンのぬいぐるみを持っただけで、与一を上回る素早い動きが実現したわけではない。
原村和の『早打ち』とは単に判断してから打つまでのスパンが速いだけで、それこそ『速すぎて見えない超高速サーブ』のような類の必殺技ではないからだ。
ぬいぐるみを持っただけで狙撃の腕前が向上するなんて、『そんなオカルトあり得ません』と言ったところだろう。

しかし、そもそも『サイコメトリによる瞬間的な狙撃能力』があったところに、前述の偶然が重なりあった。
それらの好条件を見越して、紫穂はエトペンを抱えたまま現れたのだ。
曰くつきのぬいぐるみであることは手に持った時点で透視できたし、デリンジャーの弾丸が二発しかない以上、万全を期そうとした。
そして、まずは『末原恭子』という少女の手を握ることで、頭の中をのぞく。
那須与一に対する印象などを大まかに把握してから、『イケる』と犯行を決意した。

その結果が、精神感応能力(サイコメトリ)以外はいたいけな少女でしかない紫穂による、日本史上屈指の弓兵の殺害である。


×××××


殺してしまった。
もう、後戻りはできない。

敢えて遺体を見据えながら支給品の回収を行うことで、その事実を焼きつける。
もっとも、『あらゆるものを読み取ってしまう』という力によって、幼いころから残酷なことを見てきたから、死体そのものには慣れていた。
しかし実際に殺す側になると、やはり怖い。震えが止まらない。

こんなことじゃダメだと、内心で叱咤する。
きっと薫ちゃんは、今ごろもっとつらいはずだから、と。

薫もこの場所にいるかどうかは分からない。
しかし葵の姿は見つかった。最初のリングサイドで、少し離れた場所に見えた。
だから薫もここにいるかもしれない。この催しに巻き込まれるまで、三人は一緒にいたのだから。

一緒に、逃亡生活を始めようとしていた。
任務中の事故に見せかけて死を偽装し、『B.A.B.E.L』から逃げ出す算段だった。
自分たちを『化物』とののしり、首輪で拘束して電撃を流すという虐待同然の『教育』を強いてきた須磨担当官の眼を欺いて。
大人はみんな誰もかれも信用できないから、子どもたちだけで生きていく為に。

三人で力を合わせれば、きっと逃げられる。
だからあの宇宙人のことだって、怖くなかった。
『首輪型リミッター』のような特殊な処置でもしなければ『超度7』の強さを持つエスパーの3人に敵はいない。



そもそも、殺し合えと言われて、『分かりました』と殺し合うなんてバカのすることだ。
あんなめちゃくちゃな脅迫で『友達を生還させるために殺し合いに乗ります』なんて人は、よっぽど生真面目な人か、ただの単純バカだろう。



だから、殺し合いに乗る必要なんてなかった。
三人で力を合わせて脱出する。
他の大人はどうでもいい。
でも不要な争いを起こすのは得策ではないし、役立ちそうな人間なら協力を頼んでもいい。
例えば、あの主催者に関する情報を持っているヤツとか。『能力の制限』とやらをどうにかできそうなアテとか。
紫穂は大人を信用していないけれど、それならそれで利用してやるぐらいのしたたかさはあった。



しかしこの方法には、致命的な欠陥がある。
前提として、『薫と葵も殺し合いに乗らない』ことが必要なのだ。



果たして大切な友だちは、殺し合いに乗るような人間か?
葵は乗らないだろう。クールを気どっているけど、三人の中で一番お人好しにできている。
逃亡を開始した時だって、一緒のヘリに乗って事故に遭った人たちの命を助けていた。
しかし薫はそうじゃない。
葵はきっと、いつも明るい薫が人を殺すなんて想像もできないだろう。
過去に何度もかんしゃくを起こして殺人未遂をやらかしたけれど、だからって本当の殺人はしない。そう思っているはずだ。
しかし紫穂は知っている。

薫は恐らく、手段を選ばない。
葵と紫穂から離れ離れにされたりすれば、きっとすごく取り乱す。
薫は、超能力者である自分のことが好きじゃない。
それは過去に家族を傷つけてしまったから。
超能力が原因で、家族をずっと不幸にしてきたと思いこんでいるから。
だからこそ、『2人を守る為ならば超能力を役立てられる』と思うことで、自己の存在をかろうじて肯定している。

『こんなあたしは、もう葵と紫穂の為にしか生きてちゃいけない』

心を読む力は、そんな悲壮な決意に触れてしまった。
紫穂と葵に見せないところで、薫は悲鳴をあげている。
2人の命が危ないとなれば、追い詰められて周りが全て敵に見えてもおかしくない。
しかも薫は、紫や葵のように自制をきかせることができない。
紫穂が殴られているのを見ればカッとなって念動力を暴走させ、殴った相手を廃人にするまで報復をやめないところがある。
薫がちょっと本気を出せば、人間の体なんてバラバラの粉々。
それなのに、本人はそれを制御しきれない。
紫穂と葵を守れないことだけは、あってはならないという脅迫観念。
だからこそ守るために周囲を威嚇し、過剰なまでに牙をむく。
かえって敵を増やしているのだけれど、まだ子どもであるが故にどうすることもできない。

結論から言おう。
今の薫が殺し合いに乗る可能性は、極めて高い。

でも、それでもいい。
紫穂と葵を守る為にしたことで、薫を責められるわけがない。
薫が『わるい子』になるならば、紫穂も率先して『わるい子』になる。
葵だって絶対に一緒に来てくれる。
私たちは、この世界でたった3人しかいない仲間。
何があっても、どんなことをしても、絶対に3人で一緒にいる。
私たちはいつだって、3人で1人だ。

薫と葵以外は、殺す。
いい人も悪い人も、殺す。
そして最後に鳩山をぶっ殺し、3人一緒に逃げる。
絶対に捕まらない場所に、どこまでもどこまでも一緒に逃げる。

「いい銃ね……それに、優秀な人に使われていたみたいだし」

声が震えるのを押さえつけ、紫穂は与一から奪った銃の扱いを確認した。
透視することだって忘れない。
サイコメトリを使えば、過去に使用した人間の情報だって読める。
那須与一は、既にレミントンM700を用いて『試し射ち』をしている。
その銃をサイコメトリした紫穂には、『那須与一の狙撃の技能』という武器が残るのだ。

ひとまずはそれをメインウエポンにしようと決めて、紫穂はディパック3つ分の荷物を持ち上げた。
どういう超能力を使ったのか、ディパックの中は四次元ポケットのようになっていたのだ。

次に向かう場所は、決めてある。
支給品をつめかえたり、返り血をぬぐったりして時間をロスしている間に、北の方角から『氷帝! 氷帝!』という大声が聞こえてきたからだ。
いったい、何の意図があってあんなことを叫んだのだろう。
でも皆殺しにすることは決まっているのだから、標的の居場所が分かるのはありがたい。
そんなことを考えていると、続けて知らない少女の叫び声が聞こえて来た。

『薫の、バカァァ―――――z_____ッ!!
兵部少佐のっ、ロリコ―――z____ンッ!!』


速くあの絶叫の主に会って、確かめなければいけない。
その『薫』が、明石薫という少女のことなのかどうか。

だとしたらなぜ、見ず知らずの少女が薫をバカ呼ばわりしたのか。
決まっている。薫に会ったからだ。もしかしたら薫に襲われたけど、運よく助かったとかかもしれない。
だったら、薫の情報を絶対に引き出しておかなければ。
もちろん、それが終わったら殺さなきゃいけないけど。
時間を少々ロスしてしまったけれど、ひとっ飛びで向かう手段はちゃんとあった。

「おいで」

紫穂はディパックを開け、その生き物を外界へと導きだす。
どうやってディパックに入っていたのかは知らないが、それが最後の支給品扱いだったのだ。
現れたのは、小型飛行機ほどの大きさはあろうかという巨大なドラゴンだった。
眼光は睨まれたら石になってしまいそうなほど鋭く、口の中は牙も舌も大きい。
ひどく凶暴な外見だが、背中には手綱がついていた。
つまり、サイコメトリすれば操り方が分かるということだ。

「いい子ね。じゃあ乗せてもらうわよ」

その背によじのぼり、紫穂は飛び立った。

(私は絶対に、薫ちゃんたちを守ってみせるっ……!!)



【G-4/森/一日目-朝】

【三宮紫穂@絶対可憐チルドレン】
[参戦時期]:原作14巻『そのエスパー、凶暴につき』編、脱走を試みた直後
[状態]:健康
[装備]:レミントンM700(4/6 予備弾50発)@現実、デリンジャー(残弾1)@現実、竜騎兵の竜@ドリフターズ
[道具]:基本支給品*3、エトペン@咲 –saki-、不明支給品(0~2)
[スタンス]:マーダー
[思考]
基本:薫ちゃんと葵ちゃん以外を皆殺しにして三人で脱出
1:拡声器の少女の元へと向かい、薫ちゃんの情報を聞き出す(手段は選ばない)
2:薫ちゃん、葵ちゃんを探す
※レミントンM700を持っている間のみ、那須与一と同等の実力で銃撃ができます
※エトペンを持っている間のみ、原村和と同等のツモ切り動作をすることができます


【デリンジャー@現実】
三宮紫穂に支給。
ドラマや漫画でも頻繁に登場する、二発しか撃てないことと、超小型なことが特徴の拳銃。
ちなみに引き金を引くのはけっこう力がいる仕様なのだが、紫穂は銃火器の扱いに慣れているのであまり問題なかった。

【エトペン@咲 –saki-】
三宮紫穂に支給。
「エトピリカになりたかったペンギン」という架空の絵本の主人公、のペンギン。
清澄高校の原村和が添い寝したり麻雀の場に持ち込んだりしている。

【竜騎兵の竜@ドリフターズ】
三宮紫穂に支給
黒王軍の竜騎兵が乗っていたドラゴン。ちゃんと手綱と鞍までついている。
『ゴバァ』と口から火炎のブレスを吐き出すことで、直線距離十数メートルを火の海にする。
弓矢や投げ槍では殺せないが、管野直隊長の戦闘機「紫電改」による爆撃で死ぬ。




Sinking girl 投下順 天使か、悪魔か
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