アニマルチェンジ！ - 新々漫画バトルロワイアル @ ウィキ

「うおおおおおおおお！！」

響良牙は走っていた。
とにかく走っていた。
明確な目的地があるわけではない。
ただ、大切な人を探し出すために、無我夢中で走っていた。

「ふざけやがって…俺はともかく、あかねさんやあかりちゃんまで……！」

鳩山と名乗る男により宣言された殺し合い。
その場所で、良牙は見たのだ。
自分が愛する女性…天道あかねと雲竜あかりの姿を。

「待っててくださいあかねさん！あかりちゃん！俺が二人を守ってうおっ！！」

ずてーん。

転んだ。

「いててて、なんだいったい…」

思いっきり転んでしまった良牙。
転ぶときに、何かが足に引っかかってつまづいてしまったのだ。
起き上がった良牙は、そのつまづいたものの正体を確かめ…

「な……！」

良牙がつまづいたもの…それは倒れた人の身体だった。

「ま、まさか…もう殺し合いが始まってるっていうのかよ…！」

そう、ここは殺し合いの舞台なのだ。
その殺し合いの舞台で、道端に人が倒れているという事はつまりはそういうわけで。
うかうかしてると、あかねやあかりもあんな風に…

（な、何を考えているんだ俺は！そんなことあってたまるか）

ともかく、良牙はその倒れている人物に近づくことにした。
もしかしたら、まだ息があるかもしれない。
そう思い、うつぶせになって倒れていたその身体をごろんと転がし、仰向けにしてみると…

「う～ん、もう食べられないっぺ～～～」

「………」

死体がしゃべった。
いや、死体がしゃべるはずもない。
そう、つまりは…

「生きてんじゃねえかーーーーーーーー！！！」

「う～、うるさいっぺよ。もう朝だっぺか？」

良牙の突っ込みの声に、男―――Ｔボーンは目を覚ました。

「なんだよ…心配して損したじゃねえかよ」

一方彼に対峙する男―――響良牙は、ため息をついた。
まさかこんな状況の中堂々と道端で寝転がってる人物がいるとは思わず、死人だと思ってしまったが、とんだ勘違いだった。

「むにゃむにゃ…あんた誰だっぺか？オラはＴボーンっていうっぺ！」
「俺は響良牙だ」

ひとまずお互いに名乗りあうＴボーンと良牙。

「そっか、よろしくだっぺ！ところでここはどこだっぺか？」
「どこって…殺し合いの会場だろ」
「コロシアイ？なんだっぺかそれ？」
「おいおい、まだ寝ぼけてるのか？最初の場所で鳩山ユキヲとかいうやつがいってただろ？」
「知らないっぺ」

その後、Ｔボーンから話を聞いた良牙は、再びため息を吐くことになった。
なんでも、彼は故郷の村で昼寝をしていたらしい。
それなのに気がつけば全然知らないところにいて、村のみんなもおらず、いたのは良牙だけだったと。
この話が意味するところは、つまり……

「お前、最初の鳩山がいた場所でもずっと寝てたんだな…」
「そうなんだっぺか？」
「はあ…」

「まったく、とんだ道草を食った。俺は行くからな」
「待つっぺ」

Ｔボーンとの会話を打ち切った良牙は再びあかねとあかりを探すために出発しようとする。
しかしそんな彼をＴボーンが呼び止めた。

「なんだ？」
「腹が減ったっぺ。お前、食いもん持ってないか？」
「デイバック…その荷物の中に入ってるだろ？」
「荷物…これだっぺか……おー！ほんとだっぺ！」

デイバックから食料を取り出すと、ムシャムシャと食べ始めるＴボーン。
そんな様子を見た良牙は、荷物を確かめていないことに気が付いた。

「何か役に立つものが入ってるかもしれないしな、確かめてみるか」

そんなわけで、良牙はデイバックの中を調べ始めた。

食料、水、地図（彼には無用の長物だろうが）、その他参加者共通の支給品、そして…

「な、なんだこれは！？」

良牙が取り出したそれは、巨大な黄色い風船だった。
デイバックに入りきりそうもないそれがどういう原理からか出てきたのだ。

「これは…武器なのか？いや、とてもそんな風には見えないが…」

良牙が出てきた風船の用途について考えをめぐらせていると…

「うううううう……」
「ん？」

どこからか、うめき声が聞こえてきた。
声がした方向を向いてみると、先ほどまで食事をしていたＴボーンが立ち上がっていた。

「どうしたＴボーうおおおおおおおおおおおおおおお！！！

良牙の言葉をＴボーンの雄叫びが遮った。
彼の様子は、ただ事ではなさそうだった。
いったい、どうしたというのだろう。

「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお！！！！」
「Ｔボーン！おい、しっかりしろ！Ｔボーン！！」

良牙が呼びかけるものの、彼の様子は変わらない。
Ｔボーンの雄叫びは最高潮に達し、そして…

「くう～ん♪」
「…………………え？」

そこにいたのは、可愛らしい子犬の姿だった。

「くう～ん」
「どういうことだ？Ｔボーンの姿が突然…」
「あう～ん」
「俺と同じ呪泉郷出身者か？」

一瞬そう考えたものの、即座に否定した。
水をかぶって変身した様子はないし、なんとなくそういうのとは違う気がする。

「…待てよ？そういえばこの風船…」

ふと、手に持っていた黄色い風船に目を向ける。
まじまじとよく見てみればこの風船……『アレ』に似ている。
もしかしてＴボーンの正体は…

ここで良牙が取り出したランダム支給品である黄色い風船の説明に入るとしよう。
次の王様だーれだ大会でアンチョビの兄であるカラスミが死んだ後、コロッケは彼を生き返らせるためにたくさんの禁貨の反応があるピザの斜塔へと向かった。
しかし、そこに立ちふさがったのは不良バンカーのレモネード。
彼を倒すために、コロッケは父・バーグの師匠、オコゲに弟子入りを申し込んだ。
しかしオコゲはそんなコロッケの志願をつっぱね、デコピンで追い払った。

だがしかし、それこそがオコゲの修行だったのだ。

オコゲが飛ばしたのはＴボーンの実家である村だった。
そこの村人は、満月を見ると変身し、変身前の１０倍もの戦闘力を誇る動物へと姿を変えてしまうのだ。
コロッケは、そんな村人たちと戦ってはオコゲのもとへ向かいデコピンで吹き飛ばされ、また村人と戦う…という過酷な修行を何日も行った結果、見事大技ウードンを完成させたのだ。
そして、そんな修行の際にオコゲが使ったのが、『満月に偽装した風船』だったのだ。

「狼人間ってことか…いや、どうみても犬に見えるが」

足にすり寄ってくる犬の頭を撫でてやりながら、良牙はＴボーンの正体をそう結論付けた。
実際には犬以外にも変身能力を持っていたりするのだが、あながち良牙の結論は間違ってはいないだろう。

「くう～ん」
「悪いが遊んでやる暇はないんでな、ここでお別れだ」

そう言うと良牙は犬を引き離し、先に進もうとするのだが…

「あう～ん」
「う……！？」

つぶらな瞳で見つめてくる犬に、良牙はひるむ。

「そ、そんな顔したって駄目だ！俺は急いでいるんだ！」
「くう～ん、くう～ん」
「うぐぐう…お、俺をそんな目で見るなー！」

先ほども説明したが、Ｔボーンの村の住人は変身するとむちゃくちゃ強くなる。
しかしＴボーンが変身した犬は、強さだけでなく可愛さも抜群なのだ。
実際、大人の男性であるウスターが（その時点で犬に変身したＴボーンが強いことを知らなかったとはいえ）戦闘中に完全に骨抜きにされたり、あのアンチョビでさえそのつぶらな瞳で攻撃を戸惑ってしまうほどの破壊力を持っているのだ。
ましてや良牙自身犬を飼っており、犬への愛情もそれなりに高かった。

「分かった、分かったから！一緒にいてやるから！な！？」
「くう～ん♪」
「よしよし、いい子だ」

ゆえに、その魔性の魅力に耐え切ることなど…出来なかった。

「わんっ！わんっ！」
「はは、こいつぅ！元気がいいなあ」

良牙はＴボーン犬と、追いかけっこをしていた。
とても、とても幸せそうな顔で。

（こうしてると、シロクロを思い出すなあ。あいつどうしてるかな）

思えば家族全員方向音痴で家を空けていて、ろくに愛情を注いでやれなかった気がする。
そういえば、俺が旅に出てる間に子供を産んでたりもしてたなあ。
その産まれた子犬を見に、あかねさんが家に来たりもして…

「………はっ！」

そこで、彼は正気に戻った。
いっこくも早くあかねさんとあかりちゃんを見つけなければならないというのに。
自分は何をやっていたのか。

「そうだ…早く二人を探さないと！」

しかし彼は気づいていなかった。
Ｔボーン犬との追いかけっこに夢中で、足元がお留守になっていた。

ドバーン！

川に落ちた。

「ぶひーぶひぶひぶひ～！（誰か助けてくれー！）」

豚に変身した良牙は、流されていた。
人間時に持っていた、二人分のデイバックにしがみつきながら。

「くう～ん♪」

犬と共に。

【E-4とE-5の間/川/一日目-朝】

【Ｔボーン＠コロッケ！】
[参戦時期]：次の王様だーれだ大会編終了後～村でコロッケと再会する前
[状態]：健康、犬化
[装備]：なし
[道具]：なし
[スタンス]：未定
[思考]
基本：不明
１：くう～ん♪
【備考】
※犬化により戦闘力が１０倍になっています。お手をすると元に戻ります

【響良牙＠らんま1/2】
[参戦時期]：あかりと両想いになって以降
[状態]：健康、豚化
[装備]：なし
[道具]：基本支給品×２、不明支給品（良牙０～２、Ｔボーン１～３）、満月に偽装した風船
[スタンス]：脱出
[思考]
基本：あかねとあかりを探し出し、守る
１：ぷぎー！（助けてー！）
２：あかねとあかりを探し出す
【備考】

※二人はデイバックもろとも川に流されています

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