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- 32 :ARMORED CORE VERDICT DAY:2023/08/24(木) 00:08:21.89 ID:uiUWsg2C0.net
- 特に誰も頼んでませんが、ARMORED CORE VERDICT
DAY投下します
「レジスタンス」が「シティ」および「企業」との壮絶な戦いを繰り広げてから、数世紀後の未来。
年月の経過が汚染を改善したのか、かつて赤く濁っていた空は青さを取り戻し、人類の生存可能範囲も地球全土に広がっていた。
しかし、それは人類同士の争いが世界規模に広がったことも意味していた。
かつてのミグラント達は合併・吸収を繰り返した末に肥大化し、「シリウス・エグゼクティブ」、「ヴェニデ」、「EGF(Ever Green Family)」の三大勢力に分かれて戦いを繰り広げていた。
そして、全世界に7つ点在する謎の巨大建造物「タワー」の所有権を巡って抗争は更に激化した。
タワーには世界が滅びる以前のロストテクノロジーが多数保存されており、それを手にした勢力が覇権を握ると考えられていたからだ。
各勢力の主戦力は相変わらず人型機動兵器「アーマード・コア(以下AC)」だったが、その運用方法にも若干の変化が生じていた。
「財団」と呼ばれる組織がタワーから入手した技術を基に、無人自律AC「UNAC」を開発したのだ。
中立を掲げる財団は全ての勢力にUNACを提供。搭乗者を必要とせず、容易な量産・大量投入が可能なそれは戦場の様子を瞬く間に変化させていった。
一方、かつてのミグラントと同じように各地を流浪し、ACなどの戦力を派遣する小規模な運び屋「ストーカー」は、今や時代遅れになりつつも生き残っていた。
そんなストーカーの一人、ファットマンがある不可解な依頼を受けたところから物語が始まる。
登場人物
・主人公:ファットマンに雇われた傭兵。例のごとく台詞は無く人物像も不明。
・ファットマン:主人公と契約しているベテラン男性ストーカー。いい加減な言動が目立つが、実際は経験と判断力を併せ持つ実力者。
・マグノリア・カーチス:通称マギー。ファットマンの下でオペレーターを務める隻腕の女性。かつてはEGFの優れた傭兵だったが引退した過去を持つ。ある人物の子孫でもある
・財団:財団の代表者と思われる男性。本名は不詳。抗争を煽り、軽い口調で自分の言いたい事だけをしゃべり続けるなど人を食ったような性格。
・K:死神部隊と呼ばれる謎の組織に所属する女性。主人公を監視しているような素振りを見せる。狙撃型ACに搭乗する。
・J:死神部隊のリーダー。普段は冷静沈着だが異常な価値観を持つ戦闘狂でもある。シリーズ経験者にとって聞き覚えのある声の持ち主だが……?
- 33 :ARMORED CORE VERDICT DAY:2023/08/24(木) 00:34:10.07 ID:uiUWsg2C0.net
- MISSION:01 "DIRTY WORKER"
ファットマンの愛好する曲「DIRTY WORKER」が鳴り響く中、物語は幕を開ける。
今回の依頼は「睨み合いを続けるヴェニデの境界警備部隊、シリウスの偵察部隊に戦端を開かせ、両者を殲滅する」というものだった。
依頼を達成したものの、目的どころか依頼者すら不明という状況に不満を漏らすファットマン。最近はこのような依頼が増えているらしい。
マギーは「今のやり方はそういうもの」「知らないなくていいものは知らなくていい」と諭すが、
ファットマンはマギーが言葉とは裏腹に現状への苛立ちを抱えている事を見抜いていた。
一方、任務の依頼者と思しき謎の男女が、戦闘の様子を遠距離から監視していた。
女性の方は主人公の実力を「今はそれほどのものは、しかし……」と評し、成長の可能性を示唆する。
男性の方もそれに応じ、「ええ、可能性のある者はすべて排除します。それが我々の計画ですから」と応えるのだった。
MISSION 02 "TRICKSTER"
今回の依頼はEGF基地に侵入した諜報部隊の逃走阻止、戦闘は最小限……という話で出撃したファットマン一同。
しかし、諜報部隊は基地の武装を奪取してタワー侵攻を目論んだらしく、現地では大規模な市街地戦が展開していた。
古巣の醜態に悪態を吐きながら、報酬の上乗せを要求するマギー。EGF司令官は激怒するが彼らを雇うほか選択肢は無かった。
依頼達成後、もししらばっくれたら容赦しないと脅すマギーに対し、司令官はろくでなし共と評しながらも報酬を支払うのだった。
MISSION 03 "RUSTING STEEL"
ヴェニデ部隊と共にEGFの輸送部隊を襲撃するミッションに参加したファットマン一同。
敵戦力は少ないにも関わらず、ヴェニデ部隊隊長は主人公のACに後方警戒を任せるなど慎重な態度を見せる。
奇襲を過剰に警戒する隊長を臆病者と評するも、「俺は不本意な死に方をしたくないだけだ」と軽くかわされてしまうマギー。
しかし、彼らの読みは甘かった。潜伏していたEGF部隊が出現し、ヴェニデ隊長のヘリを撃墜。更に5機ものUNACを投下したのだ。
絶体絶命の状況下、黒とワインレッドで彩られた謎のACが出現。UNACを狙撃ポイントに誘導するよう要求する。
(ファットマンたちは知らないが、このACの搭乗者はMISSION:01の女性こと「K」である)
強力なスナイパーキャノンによって瞬く間にUNACを葬り去っていく謎のAC。その姿を見たマギーは動揺する。
戦闘終了後、謎のACは何の言葉も残さずに去っていった。
マギーはあのACが「死神部隊」のものだと断言する。
所属も目的も正体も不明、その強さだけが知れ渡っている謎の部隊。
2年前にマギーを撃墜し、彼女の片腕を奪ったACもその死神部隊のものだったのだ。
MISSION 04 "PEEKABOO"
「指定する場所で戦闘しろ」というこれまで以上に情報不足な依頼に参加したファットマン一同。
現地には正体不明の二脚兵器「To-605(通称;ヘンなの)」が待ち構えていた。恐らくタワーから出土した未知の兵器であろう。
依頼主が「財団」と察したマギーは質問を投げかけるも財団側は完全に無視。一方的にヘンなのと戦うよう要求する。
(ファットマンたちは知らないが、MISSION:01の男性もこの財団の代表者である)
財団は味方としてUNAC部隊までつけたものの、ヘンなのは凄まじい火力と見た目から想像も出来ないほどの機動力で暴れまわる。
これまでの経験が全く活かせない相手との戦いに苦戦するも、何とか勝利する主人公。
主人公が勝ったことに驚きを隠せない財団。マギーは彼にそのヘンなので戦いを煽るつもりかと問うが、彼は答える気は無いようだ。
マギーが戦闘の様子を隠し撮りしていた事を指摘し、彼女の過去……傭兵ブルー・マグノリアだった頃の名声が泣くよと指摘する財団。
彼女は不貞腐れた声で会話を打ち切るほかなかった。
- 34 :ARMORED CORE VERDICT DAY:2023/08/24(木) 00:36:47.18 ID:uiUWsg2C0.net
- MISSION 05 "SECRET GAME"
ヴェニデ領内からの脱出を図るシリウス部隊救援に向かったファットマン一同。
シリウス部隊の隊長が搭乗したヘリが撃墜されたものの、搭乗者は生存しているようだ。
マギーはいっそ死んでいてくれれば楽なのにと評すが、放置するわけにもいかずヘリの護衛と敵部隊の排除にあたる主人公機。
やや遅れて現地にシリウスの増援が到着。UNAC部隊を投下する。
UNACに嫌悪感を持つファットマンは不満を漏らすも、戦力的には圧倒的優位になったので安堵するマギー。
しかし、状況は一変する。UNACがシリウス側の制御を受け付けなくなり、主人公機に対して牙を剥いたのだ。
辛くも敵部隊殲滅とヘリ護衛、そしてUNACの迎撃に成功するも、UNAC暴走の理由はシリウス側にもつかめないままだった。
ファットマンはこの事態がシリウス陣営だけに留まらないことを察し、とんでもない事になると予想するのだった……
MISSION:05-3
反ヴェニデを掲げる武装集団の殲滅を依頼され、出撃するファットマン達。
武装集団は旧世代のものと思しき巨大な、まるで大地を歩く空母のような兵器「スピリット級移動要塞」の残骸に布陣していた。
集団を率いる狙撃型ACパイロット・ロイは、背後で糸を引く何者かが執拗にAC同士の対決を演出している事に気付いたようだが、
主人公の襲撃を防ぎきる事は出来なかった。彼の運命はファットマン達の未来なのだろうか。
そして、どこかで見たような移動要塞が闊歩していた旧世代とは、どんな時代だったのだろうか。
MISSION:05-6
敵領域内で行動不能になったヘリの護衛を任されたファットマン一同。
やがて敵部隊が多数出現したが、ヘリは「トラブルが発生した」と言って離陸しようとしない。
絶体絶命の危機の筈だが、どういうわけかヘリ操縦士の発言には余裕すら感じられる。
その時、現地に黒とワインレッドのAC……死神部隊の3番機「R.I.P.3/N」が現れる。
「お前で28人目……恐れるな、死ぬ時間が来ただけだ」
まさかの事態に困惑しながらも迎撃する主人公。ヘリが発進しない以上、他に選択肢はなくR.I.P.3/Nを撃破する。
戦闘終結後、マギーはヘリ操縦士が発進を引き延ばしたのではないかと指摘するが、操縦士はあくまでトラブルだと主張。
「まさか死神を倒すとはな。その傭兵、確かにいい腕だ」
どう考えても死神部隊と内通していたとしか思えない言葉を残して、彼は去っていった。
MISSION 06 "BLUE MAGNOLIA"
案の定、三大勢力の所有するUNACが次々に暴走を始めていた。製造元である財団はどのような悪意を秘めているのか、ただ沈黙を保っている。
一方、ヴェニデ基地の防衛を任されたファットマンたちは、同様に雇われた傭兵エイリークのACと共に暴走UNAC部隊を迎撃する事になった。
圧倒的な数のUNAC部隊に対してたった二機のACという明らかに不足した戦力。
マギーは「何らかの決定打を用意しているのか、あるいは逃げる為の捨て駒にされているのか」と考察する。
エイリークは他人の思惑など関係無いとばかりに突っ込んでいくも、敵の猛攻に晒され機体は四肢をもぎ取られて大破・爆散する。
(余談だが、エイリークは異常な生存能力を持っているらしく、このような状況になっても無事生還した)
すると、その場に死神部隊のメンバー「D」のACと彼が率いるUNACが出現した。どうやら彼らは主人公とエイリーク、どちらが生き残るかを見届けたかったようだ。
Dは主人公の事を「選別の素養がある」と評しながら、次々とUNACを破壊していった。
暴走UNAC殲滅後、死神部隊に対し「選別」とは何かと問いかけるマギー。死神部隊のリーダーはそれに答えず「あの青いACには乗らんのか」と尋ねてくる。
困惑するマギーに対し、死神部隊リーダーは2年前マギーを撃墜したのは自分だと明かす。激怒するマギー。
結局、死神部隊リーダーは自らの意図を語らず、「お前(マギー)は選ばれなかった、そのACはどうだろうな」と言い残して去っていくのだった。
- 35 :ARMORED CORE VERDICT DAY:2023/08/24(木) 00:39:04.67 ID:uiUWsg2C0.net
- MISSION:06-6
ヴェニデ親衛隊エル・ヴェニデの殲滅を任されたファットマン一行。
指定地域に展開していたのは貧弱な戦力だったが、彼らに帯同するACペニーブラックが現れる。
それを撃破すると、今度はかつて共闘した経験のあるAC「キャスパリーグ」が登場。今度は敵として立ちはだかる。
「強い……あの頃とは比べ物にならんほど。化け物が!」
キャスパリーグのパイロット・カリウスは、数多くの修羅場を潜り抜けた主人公の実力に気づきつつも襲ってきた。
両者とも優れたパイロットだったが、主人公は連戦に勝利する。しかし、その凄まじい戦いぶりを見たマギーは表情を曇らせる。
「手ごわい相手だった、あなたはどこまで強くなるの?私なら勝てた?昔の私なら……」
死神部隊リーダーとの再会、そして彼の残した一言。それはマギーの心の中で燃え残っていた想いに火を点けつつあった……
MISSION 07 "GRAVITY"
UNACには財団によってコンピューターウイルスが仕込まれていた。
財団の目的は三大勢力が混乱に陥った隙に乗じてタワーを占拠し、「ヘンなの」を始めとする強力な兵器を持ち出すことだったようだ。
しかし、それらは三大勢力と戦争して勝てる程の戦力では無い。死神部隊が財団と連携しているという噂もあるが、未だ彼らの目的は謎だらけだった。
一方、財団の指揮下にある自律兵器の迎撃を担当する事になったファットマン一同。
戦いの最中、ファットマンはマギーが過去を捨てきれていないことを指摘する。
マギーは自分がずっと諦めていた振りをしていたこと、彼女の魂がずっと戦いに惹かれていた事を告白する。
すると通信に財団が割り込んできた。彼はマギーを歓迎すると言い、世界を滅茶苦茶にしようと提案する。
一方、財団は新たな大型無人兵器「GREY LOTUS」を投下してくる。
巨大なフレンチクルーラーとでも言うべきそれは高速回転しながら小型自律兵器をバラ撒くなど未知の戦術を多用、やはり今までの戦闘経験が全く役に立たない兵器だった。
しかし、マギーは主人公に「あなたならやれる」と評し、適切なアドバイスを与えたのだった。
戦闘終了後、マギーはファットマンに別れを告げて財団の下へ去っていく。彼女の思いを知っていたファットマンはあえて止めることはしなかった。
財団はマギーの狙いが死神部隊リーダーか、あるいは自分であるかと問いながらも、彼女の決断、そして戦いへの執念を嘲笑するのだった。
MISSION 08 "VENDETTA"
死神部隊は腕利きの傭兵を襲撃、殺害するという意図不明の行動を繰り返していた。
今だに財団および死神部隊の目的は不明のままだったが、UNAC暴走の理由が判明したこともあり事態は終息に向かいつつあった。
ファットマンたちは財団の自律兵器を撃破する為に出撃するが、そこに待ち構えていたのは死神部隊のKだった。
まるで決闘を挑むかの如く単機で襲撃を仕掛けてきたK。数発でACを粉々にするスナイパーキャノンの猛攻に晒されながらも主人公は返り討ちに成功する。
しかし、次はDと彼のUNACが出現。彼は手段を選ばないと称し、得意の集団戦法を仕掛けてくる。
消耗した状態での対多数戦を強いられる。四方からの銃撃とDの大火力・重装甲に苦戦しながらも撃破に成功する主人公。
これで終わりかに思われたが、更に未知のACが高速で接近しつつあった。
どうやら逃がしてくれそうもないと語るファットマンに、「その通りよ」と答えるACの搭乗者。
その声はノイズ交じりながらも聞き慣れたものだった。彼らの前に現れた死神部隊新3番機「R.I.P.3/M」の搭乗者はマギーだったのだ。
もはやACは操縦できない身体だったはずだが、自在に機体を操るマギー。しかし、彼女はまだ本調子ではないとして撤退を決断する。
ファットマンはマギーに「お前はそれでいいのか」と問いかけるも、彼女は「私はそいつ(主人公)を見逃すわけにはいかない」
「そういう風にしか私は生きられないから、私が敗れたあの日からそれは決まってた」と答える。
財団、そして死神部隊の真の目的は主人公のような力の持ち主を見つけ出し、殺す事なのだという。
死神部隊リーダーは「マギーもまたその可能性を持つ一人だった」と言葉を繋ぐ。
全てを焼き尽くす定めを持つ主人公、全てを捨ててでも戦いへの執念を捨てないマギー、彼はどちらかが「本物」なのかを知りたいという。
そして生き残った「本物」を「死神」である自分が殺すと。
常軌を逸しているとしか思えない彼の発言を聞いて「イカれてるよ、お前」と吐き捨てるファットマン。
死神部隊リーダーは「それの何が悪い」と応え、まさしく「イカれてる」としか思えない哄笑を残して去っていった。
- 36 :ARMORED CORE VERDICT DAY:2023/08/24(木) 00:45:03.97 ID:uiUWsg2C0.net
- MISSION 09 "FORGIVE AN
ANGEL"
財団は三大勢力に包囲され、残された戦力は僅かな無人兵器と死神部隊の生き残りを残すだけとなっていた。
彼らにトドメを刺すべく派遣された主人公は、マギーの駆るR.I.P.3/Mと対峙する。
ファットマンはマギーに何故そこまで戦いに固執するのかと問いかけるが、彼女は答えの代わりに「昔話」を始める。
「神様は人間を救いたいと思っていた。だから、手を差し伸べた」
「でもその度に、人間の中から邪魔者が現れた」
「神様の作る秩序を、壊してしまう者。神様は困惑した。人間は救われることを望んでいないのかって」
ファットマンは「あれこれ指図されたくない、それだけだろ」と答える。マギーはそれに同意しながらも言葉を続けた。
「でも、神様は人間を救ってあげたかった。だから先に邪魔者を見つけ出して、殺す事にした」
「そいつは「黒い鳥」って呼ばれたらしいわ。何もかもを黒く焼き尽くす、死を告げる鳥……」
マギーの脳裏には鮮烈な光景が浮かんでいた。かつて、「レジスタンス」と「企業」が死闘を繰り広げ、滅び去った「シティ」という街の光景が。
ヴェンジェンス、ハングドマン、ヴェンデッタ、それらを倒した名も無きパイロットの駆るACの雄姿が。
「これは本当の話よ。ずっと昔の、私の何代も前のお婆ちゃんが見た出来事」
「最初の黒い鳥、その人が生まれるところを見たのよ」
彼女はどこか懐かしげな声で語り続ける。まるで「フラン」と呼ばれた彼女の祖先、フランシス・バッティ・カーチスの遺志が乗り移ったかのように。
ファットマンは「お前はそれ(黒い鳥)になりたいっていうのか」と問いかけるが、マギーは「本当はそうなのかもね」と遠回しに否定する。
「でも私は、もう負けたくないだけ。何にも、誰にも……始めましょう。殺すわ、あなたを」
以前よりすさまじい機動力で襲い掛かってくるマギー。しかし、歴戦の主人公はそれらを掻い潜って反撃を続ける。
やがて大ダメージを受け、搭乗者と同じく左腕を吹き飛ばされるR.I.P.3/M。ファットマンは「もういいだろマギー、これで終わりだ」と宣告するも、マギーの心は折れない。
「まだよ、私は、私はまだ戦える!ここが、この戦場が!私の魂の場所よ!!」
彼女の言葉と共に、どう見ても大破した状態のR.I.P.3/Mは「再起動」を果たす。
その不屈の姿はどこかで聞いた「青い木蓮」の歌を思わせた。来る日も来る日も(Day after day)彼女の心は戦場に焦がれていたのだ。
マギーの決意も虚しく、度重なる被弾により膝が折れ、火花と爆炎に包まれていくR.I.P.3/M。
それを見ながらファットマンは告げる。
「俺は、最初から知ってたよ。お前の中にいる恐ろしいものを知ってたんだよ、マギー」
「俺はずっと戦いの中で生きてきた。お前みたいなやつが死んでいくのを見ながらさ。だから……」
「お前を救ってやりたかった。でもそれは俺の思い上がりだった。
「好きなように生きて好きなように死ぬ、それが俺らのやり方だったな……」
その告白に対し、マギーは憑き物が取れたような晴れやかな声で答える。
「あなたは優しいのね、ファットマン」
「私は選ばれなかった、でも……さよなら、これで良かったのよ……」
勝利を得る事は出来なかったものの、決して自分には負けなかったマギー。
彼女が最後の言葉を残すと同時に、R.I.P.3/Mは爆散した。
「まぁ、こんなもんかね。終わってみたら呆気ない」
「これまでの戦いで僕らが殺した候補者は51人、彼女が52人目か」
「もう目ぼしい奴は残ってないと思うよ、君以外は……そしてこれから君も死ぬ!」
戦いを監視していたのか、財団は二人の戦いを愚弄するかのような言葉と共に、旧世代の自律兵器SCAVENGERを差し向けてきた。
「神様は間違ってる!世界を破滅させるのは人間自身だ!」
しかし、主人公はマギーとの戦いで消耗したにも関わらず、難なく自律兵器をねじ伏せる。その光景に感嘆したのか、遂に財団は自身の目的を語り始めた。
「何故僕がUNACをバラ撒いたのか、人間の可能性を知り、情報を集める為だ」
「僕は君に挑戦する。そして抹殺する。人間に可能性など存在しない。それを証明して見せる」
まるで自身が人間ではないかのように語る財団に動揺し「お前は人間じゃないのか」と問いかけるファットマンだが、
財団は「人間だよ、昔はね」と、謎めいた答えを返したのだった。
なお、戦闘終結後、回収されたR.I.P.3/Mからマギーの遺体は回収されなかった。
まるで真っ黒に焼け焦げたその機体こそが彼女の「魂の場所」だったかのように。
- 37 :ゲーム好き名無しさん:2023/08/24(木) 00:50:31.05 ID:uiUWsg2C0.net
- MISSION 10 "MECHANIZED
MEMORIES"
「これは君という存在への挑戦だ。私は、私の正しさを証明して見せる」
財団から届いた最後の依頼は、まさしく挑戦状だった。
財団は死神部隊リーダーこと「J」に対し、旧世代の機動兵器を提供していた。
UNACの戦闘経験を統合したオペレーション、数々の戦場を渡り歩いたJの戦闘経験。
そして、ステルス戦闘機のようなその機体、それが負ける事はあり得ないと評する財団。
凄まじい推進力を持つそれは、主人公の待つ砂漠へとまっすぐ飛来し、巡航用の外装をパージする。
中から現れたのは、ACと似た……そしてどこか懐かしさを覚える形状を持つ、黒く巨大な人型機動兵器だった。
Jは「三大勢力の支配する秩序など、私の生きる世界では無い。戦いの中にしか、私の存在する場はない。好きに生き、理不尽に死ぬ」と評し、その為に「人間を辞め、肉体を捨てた」のだという。
「戦いはいい、私にはそれが必要なんだ」
その言葉と共に、最後の戦いが始まった。
Jの駆る機体、「N-WGIX/v」は空中を自在に飛行するだけに留まらず、謎の粒子によるバリア「プライマル・アーマー」を展開。
ACのあらゆる攻撃を無効化し、前後左右への高速移動「クイックブースト」を併用して一方的に攻撃を仕掛けてくる。
かつて「アーマード・コア・ネクスト」と呼ばれていたのかもしれないそれは、現代のACを遥かに上回る性能を誇っていた。
しかし、鉄壁の防御にも穴があった。謎の粒子を圧縮炸裂させて全方位に爆発的ダメージを与える武装「アサルト・アーマー」を使用した直後は、
バリアが一時的に使えなくなるという弱点を抱えていたのだ。それを看破しバリア解除の隙を突いて集中攻撃を加える主人公。
やがて、N-WGIX/vは爆炎を上げながら地上へ着陸した。
「バカな……こんな事が……!?」と驚愕する財団。しかし、彼はおどけた口調で「……とでも言うと思ったかい?この程度、想定の範囲内だよ!」と嘲笑する。
N-WGIX/vは「再起動」を果たし、機体各所から粒子を放射。装甲を赤熱させる。それは周囲の瓦礫を溶解させるほどの高熱を放っていた。
「ジェネレーター出力再上昇。オペレーション、パターン2」
「かつて、世界を破滅させた力。そのひとつが、この機体。黒い鳥、人間の中の可能性、そんなものはただの妄言に過ぎない。人は、人によって滅びる。それが必然だ」
持論を語り続ける財団だが、Jはそんなものに興味は無いとばかりに切り捨てる。
「もういい。言葉など既に意味を為さない。見せてみろ、貴様の力」
J……かつて「ジョシュア・オブライエン」と呼ばれていたのかもしれないその男は、かつて「ホワイト・グリント」と呼ばれたのかもしれない焼け焦げた機体を駆り、主人公に最後の戦いを挑む。
バリアを失ったN-WGIX/vは先ほどまでの積極的な攻撃を止め、中・長距離を保っての引き撃ちに徹し始めた。
しかし機体から放出され続ける粒子は戦闘エリア全域を汚染し、主人公のACの装甲をも蝕んでゆく。
Jはもはや勝つ為の手段を選んでいない。自機の圧倒的な装甲と機動力、そして毒性の粒子を活かし、持久戦で主人公を仕留めるつもりのようだ。
必死に機体を駆ってJに追いすがり、僅かな隙を狙って火器を撃ち込んでいく主人公。
撃ち合いの末、熾烈な消耗戦を征したのは主人公の方だった。N-WGIX/vはライフルを保持できなくなり、青白い爆炎を上げ始める。
「これで満足か?ブッ壊れてるのは貴様らだ」
世界がイカれていると称する財団に対し、ファットマンは宣告する。しかし、財団は負けを認めようとはしなかった。
「認めない、人の可能性など僕は認めない。僕の人生を、すべてを破壊したあの汚れた世界を忘れる事など無い」
「既にいくつもの兵器が動き出している。その力の源はタワーだ。たとえ僕がいなくても止まることなどない。タワーを巡る戦いはもう始まった。それは全ての破滅まで続く」
彼の言う通り、三大勢力はタワーを巡る一大抗争を始めつつあった。今までにない規模の大戦争。世界が再び破滅するまでそれは終わらないのかもしれない
「……だがもし、君が「例外」だというのなら生き延びるがいい。君にはその権利と義務がある」
財団は最後に、「イレギュラー」たる主人公に対してその一言を残した。
粒子をバラ撒きながら大爆発するN-WGIX/vを尻目に、物言わぬ主人公に代わってファットマンが答える。
「ああ、生き延びて見せるさ。俺達が戦い続ける限り」
こうして財団は消滅し、代わりに三大勢力による全世界を舞台とした大戦争「ヴァーティクト・ウォー」が幕を開けた。
それは今、この瞬間も続いている。
- 38 :ARMORED CORE VERDICT DAY:2023/08/24(木) 01:53:20.05 ID:uiUWsg2C0.net
- ACVDサイドストーリー "Forgotten Day"
ファットマンたちの暮らす時代から数世紀前、かつてレジスタンスと呼ばれた組織が「ゾディアック」を滅ぼした後。
レジスタンスはMoH幹部でありロザリィの姉の一人・ゴネリルと会談する。
欲しくなったものはどんな手でも使って手に入れるという彼女は、汚染地帯深部にある「タワー」と呼ばれる建造物探索を依頼してきた。
断れば何度でも大部隊を率いてレジスタンスを襲撃するという。
「黒い鳥」の力があるとはいえ寡兵に過ぎないフランたちは依頼を受けざるを得なかった。
レジスタンスは、かつてタワーを目撃したという男を連れて旅に出る。廃人同然のその男は自分の名をアイザックと告げた。
旅の途中、レジスタンスは汚染地帯への潜入を専門とするミグラント「ストークス」を救い、彼らの協力を得て汚染地帯へ侵入する。
汚染地帯内の施設から砲撃を受けたレジスタンスたち。
施設に踏み込んだ黒い鳥が見たものは、なんと「主任」と同じ機体、同じエンブレムをつけたACハングドマンだった。
そして通信からは「キャロル・ドーリー」の声が響いてくる。
「あなたたちは失敗作でした。あの塔に行く気なら止めておきなさい、きっと後悔しますから」
「自分が何をしようとしているのか、あなたたちは気づいていないのです。気づく術がないのだから、仕方ありませんが」
主任と黒い鳥の戦いの最中、それまで死人のようだったアイザックがキャロルの声に反応する。
「誰なんだ、お前たちは……僕は知る必要がある。お前たちが……僕たちが、誰なのか……」
結局、決着のつかないまま主任は去っていく。フランは久しぶりに再会した彼らの正体を薄々察しつつあった。
「あの二人は、おそらく人間ではない何か……ずっと私たちを見ている何か、です」
一方、比較的汚染の薄い街の跡に辿り着いたレジスタンスは、今度は人間の部隊と交戦する。
数は少ないが高い戦闘能力を持つ集団……彼らの機体には「ヴェニデ」のエンブレムが貼られていた。
やがてヴェニデの指導者であるという男、セサル・ヴェニデが姿を現す。海を越えてやってきたという彼らもまた、タワーを狙っていた。
力を信仰し、強者を愛するというセサルの姿に、かつてのシティ代表の姿を思い出すフラン。彼らとの対立は避けられなかった。
- 39 :ARMORED CORE VERDICT DAY:2023/08/24(木) 01:54:44.70 ID:uiUWsg2C0.net
-
ついにタワー目前に達したレジスタンスはヴェニデ部隊と対決する。
黒い鳥と互角の戦いを繰り広げるセサルのAC、しかしそこに無数のハングドマンが出現する。
彼らを「浅はかな人間」と評して排除しようとするキャロル。
一方、セサルは主任たちに対し、「お前が我々の”協力者”の正体か?」と問いかける。
セサルの父がヴェニデという組織を立ち上げた際、それに手を貸した存在がいたという。
それは、シティ代表が主任=企業の手を借りて独裁者と化していった構図と酷似していた。
「ヴェニデとは、貴方たちにもあり得るはずであった、もうひとつの未来。実験は続いているのです。それが我々の使命なのですから」
「知りたがり過ぎるんだよ、余計なことをさ。セサル・ヴェニデ、それからさ……今度こそ消えてもらおうか、黒い鳥。ギャハハハ!」
絶望的な状況下、黒い鳥とセサルは咄嗟に共闘し、無数のハングドマンを全滅させる。動揺するキャロル。
「何故、貴方たちのようなものが現れるのです?私たちは守るために生み出されたのです」
「私たちの使命を守り、この世界を守るために……人間を守るために」
しかし、アイザックはキャロルの言葉を否定する。
「人間にそんな価値など、ありはしない。見てみろ、この世界を。この破滅を人間が生み出したのなら、人間は欠陥だらけの生き物だ」
「その人間が生み出したお前も、お前の出した結論も、欠陥だらけに他ならない」
その言葉にキャロルもまた反応する。
「……あなたは何を望むのです? アイザック」
「人間の欠陥を証明し、そして完全な破滅を!僕を連れていってくれ!お前の誤りを証明してみせよう!」
アイザックの言葉を面白いと評し、「俺は人間の可能性が見てみたいのさ、それが破滅でもなんでもさ」と語る主任。
同時に、タワーのふもとから超巨大兵器が姿を現した。
「2人の鳥よ。貴方たちの力は、大きすぎる。」「秩序を破壊する力……やはり、プログラムには不要です」
黒い鳥とセサルは超巨大兵器を撃破するが、その残骸から大量の汚染物質がまき散らされタワーの付近には近づけなくなった。
彼らの探索の旅は終わり、そしてアイザックはいつの間にか姿を消していた。
戦いの後、セサル・ヴェニデは、あえて主任たちの計画に乗って人類の復興を果たすことを決意し、去っていった。
一方、フランとロザリィはヴェニデと主任たちに対抗すべく、独自勢力の確立を目指して活動することを決意する。
そしてフランは、姿を消したアイザックこそが、いつか真の脅威になることを察していた。
二人は別々の道を模索し、お互いを補う存在になることを目的に袂を分かつ。
ロザリィはMoHへ帰還してゴネリルを排除、その組織を後の「シリウス・エグゼクティブ」へと変革していく。
フランはストークスと共に新天地を目指し、そこで新たな組織「EGF」を立ち上げたのち、歴史の中に埋もれていった。
……そして、かつて彼女に雇用されていたという傭兵、黒い鳥のその後もまた一切の記録は残されていない。
(完)
- 40 :ARMORED CORE VERDICT DAY:2023/08/24(木) 02:31:06.26 ID:uiUWsg2C0.net
- ※補足
・MISSION 10の「かもしれない」って何だよ?
N-WGIX/vの外見は明らかにアーマード・コア フォーアンサーのネクストAC「ホワイト・グリント」であり、
パイロットのJも担当声優がアーマード・コア4のジョシュアと同じなのだが、4シリーズとVシリーズは公式に独立した世界観と発表されている。
なので、もしかしたら裏設定上では同一の機体、同一人物である可能性はあるが、断言も出来ないので、こうした表現になった。
人によっては「似てるだけで全くの無関係」と主張したり、逆に「絶対に同一世界観」と主張する者もいるが、断言はできないとしか言いようがない。
・結局、死神部隊って何なの?財団って何なの?
前作に登場した「ゾディアック」はデザインドと呼ばれる強化人間だったが、期待されていたほどの成果は上がらなかったらしい。
一方、カルティベイターと呼ばれる過去の英雄(優秀なパイロット)のクローン人間も作られたが、こちらもうまく行かなかった。
そのため両者の手法を組み合わせ、優秀なクローンの意識を電子化し、自我を完全にプログラム化した存在「ファンタズマビーイング」が作り出された。
おそらくこれが「死神部隊」の正体であり、R.I.P.3/Mからマギーの遺体が見つからなかった理由と思われる。
もしJの正体がジョシュアのクローンだったとしても、その自我は戦闘狂というほどまでに改造されており、もはや原形は留めていないと思われる。
財団代表者の正体は"Forgotten Day"のアイザックと思われる。
何らかの事情(ヴェニデ関係なのか、それとも汚染地帯に飲まれて滅んだ彼の故郷関連なのかは不明)で人類を憎んでいるらしい彼は、
人類の欠陥を証明して滅ぼすためファンタズマビーイング化し、主任たちと共に活動を続けているのだろう。
(なお主任もまだ現役で活動しており、時折強化型のEXUSIAで暴れまわっている模様)