チェンジ・ザ・ワールド☆
華めきたり.2
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華めきたり
【話ノ一】
宮ノ杜博はご機嫌で車を降りた。
「たっだいま~!」
「お帰りなさいませ」
使用人に出迎えられ、学生鞄を渡す。それと反対の手には何やら小さな包みが握られている。
「そんなもので薫が喜ぶはずないじゃない。馬鹿じゃないの」
ご機嫌の博の少し後ろを歩く雅の悪態も軽く流し、笑顔の博は玄関へ入りどんどんと階段を昇って行く。
「あっ、ねえ! 薫は部屋?」
「はい、先ほど夕食まで部屋にいると伺いました」
「分かった、ありがと」
「ちょっと、人の話聞いてないよね? 馬鹿博!」
「雅の話しなんて聞こえないよ~」
とうとう小走りになると、博は広い廊下へと体を滑り込ませて行った。
長い廊下を進み、左側の扉を開けると真っ直ぐに姉である薫の部屋へと向かう。
「薫っ……」
名前を呼びながらノックをしようと手を伸ばした所で、博は一瞬動きを止めた。部屋の中から男女の楽しげな話し声が聞こえてきたのだ。
笑顔が消え、息を殺すように姉の部屋の扉へ耳を近づける。
「いやいや、冗談じゃないですって。オレがこの目でしかと見たんですから間違いありやせんぜ」
「本当に? 喜助さんって、口が上手いから本当か冗談か分からないわ」
聞こえてきた会話に、博はピクリと目を見開く。
声の主は、屋敷によく出入りをしている情報屋の喜助と薫に間違いない。だが、こんなにも二人が親しげに会話をしているなど、今まで一度も見た事がなかった。
驚きと同時に、得体の知れない不安に駆られる。
「何やってんの?」
「雅……」
「薫の部屋の前でこそこそと、いい趣味してるよね」
侮蔑をこめた冷ややかな視線を浴びせて来る雅に、いつもなら文句の一つでも言ってやる所なのだが、今はそれどころではない。しっかりと雅の腕を掴み、自分の部屋へと引きづり込んだ。
「ちょっと! 痛いじゃない! 放してよっ!」
無理やり部屋に連れ込まれ、解放された腕をさすりながら再び博を睨みつけると、博が真面目な顔をして言った。
「薫の部屋に、喜助がいる」
「ーーー何それ?」
「しかも何だかすっごく楽しそうに話してた」
「何、嫉妬? そう言うの、エゲレスで何て言うか知ってる? シスターコンプレクスって言うんだよ。良い歳して馬鹿みたい」
「お前は気にならないのか? 薫が今まで喜助と仲良く話しているのなんて、俺は見た事ないよ」
「……僕もないけど、仲良くなったんじゃないの」
「何で薫と喜助が仲良くなる必要があるのさ? 正や勇ならまだしも、薫だよ? 全然関係ないじゃん!」
目くじらを立てる博をもう一度冷めた視線で睨むと、雅はくるりと博に背を向けた。
「薫か喜助のどっちかに、何か理由があるんじゃないの。もう部屋に戻るから、押し掛けて来ないでよね」
バタン
と締められた自室の扉をじっと睨み、博は急いで着替えると再び薫の部屋へと向かった。
「薫、俺、博だけど」
緊張気味にノックをすると、カチャリと扉が開き、やはりというか喜助が顔を出した。
「やあ博坊ちゃんお帰りなさい。それじゃあオレは失礼しやすね」
「ええ、またお話聞かせてくださいね。お帰りなさい、博」
笑顔で部屋を出て行く喜助を見送ると、薫は同じ様な笑顔で博を迎え入れた。
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