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見返り恋心.1

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streetpoint

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 見返り恋心












「海堂君のお母さんって、とっても優しい人なんだね」


突然前の席からそう声をかけられ、海堂は驚いて顔を上げた。

目の前にはにっこり笑う、クラスメートの顔。海堂の机の上には立派なお弁当と箸には牛肉のしぐれ煮。


「いきなり何ワケのわかんねぇこと言ってんだ?」


ジロリと睨む。

海堂の顔は恐い。

ほとんどの人間が自ら近寄って来て話しかけるという事はしないくらい恐い。テニス部の連中と先生以外は。

そんな中、このクラスメート汐屋雪緒だけは何故か普通に話しかけて来た。

2年生になり、新しいクラスに馴染み始めた最近席替えがあった。その席替えで前の席になった汐屋。

同じクラスとはいえ、接点はたいしてなかった。担任の用を言いつかった時などに一言二言話すくらいだ。

今は昼食の時間。毎日立派なお重に弁当を作ってくれる母に感謝しながら箸を口に運んでいた時、汐屋が最初の言葉を言ったのだ。


「だって、毎日こんなにたくさんのおかずを作って詰めてくれるんだよ。料理が好きな人でもなかなか出来ないもん。だから、海堂君のお母さんは海堂君の事を大切にしてて、とっても優しい人なんだなあって」


「チッ……」


いきなり人の弁当を見てその母親を褒める人間を、誰が見た事があるだろう。

いや、今目の前にいるのだが。

海堂は汐屋がからかっているのかと一瞬思ったが、どうやら本気で褒めているらしい。

瞳を輝かせる……まではいかないが、この出し巻き卵は色が最高だとかなんとか言っている。

母親の事を褒められるのは正直嬉しかった。


「お前だって毎日弁当じゃねえか。頑張って作ってくれてんだ、お前の母親も優しいんじゃねえのか?」


照れ隠しに目を伏せ、次は昆布巻きに箸を伸ばす。


「ああ、うん……そうだね」


歯切れの悪い汐屋の言葉に、目を開く。


「へへ。ご飯の邪魔してごめんね」


寂しそうに言ってまたいつもの笑顔に戻ると、汐屋はくるりと前に向き直って自分の空になった弁当箱を閉じた。


「おい、海堂!」


教室の入り口から耳障りな声が聞こえ、海堂は眉間にしわを寄せる。


「何だ?」

「何だじゃねえよ、今日部活の前にレギュラーだけでミーティングするから、早めに部室に来いって大石先輩から伝言をあずかって来てやったんだ、ありがたく思え」

「んだと、偉そうに」

「あ~? 人が親切に教えに来てやってんのに、やんのか、コラ? まむし~」

「てめえは親切を押し売りに来てんだろうが! ふしゅー!」


海堂が真横にやって来た桃城と睨み合いを始める。


「いい加減にしなさいよ、桃」

「おっ、汐屋! 何だよお前、海堂と同じクラスってだけでも可哀想なのに、こいつの前の席なのか? うわ~、信じらんねえ!」

「桃と同じクラスより全然いいもん」

「嘘つけ! 俺様と離れて寂しいんだろ~?」

「あはは、うぬぼれ屋さ~ん。いじめるなら教科書忘れても貸してあげないからね」


つかみかかろうとしていた海堂と桃城は、汐屋によって戦意をそがれた。


こいつ、もしかして喧嘩させないようにするために桃城に声を掛けたのか?


海堂は桃城と楽しそうに話をする汐屋を見た。


「ちぇ~っ。あ、そうだ汐屋。前に言ってたCD貸してくれよ」

「うん、いいよ」

「んじゃあ今日部活終わったらお前の家寄るわ」

「分かった」

「じゃあな、海堂。遅れんなよ!」


桃城はそう言い残して汐屋に向かって手を振ると教室を出て行った。

途端に空気が軽くなる。

どうにも馬が合わない桃城を、海堂はひどく敵視していた。


それにしても……


「あいつと、知り合いなのか?」


自然と疑問が口をつく。


「あ、うん。小学校が一緒だったの」

「お前も大変だな」

「どうして?」

「あんなうるさい奴と友達だなんて」

「はは、海堂君って面白いね」


俺が、面白い?


初めて言われた形容詞に海堂は戸惑った。

恐い、何を考えているか分からない、ムカつく。などのあまり良くない言葉なら数えきれない程浴びて来た。それなのに、今目の前にいる少女は海堂を面白いと言ったのだ。

よほど不思議そうな顔をしていたのだろう。汐屋は首を傾げて微笑んだ。


「張り合う相手がいるって、いいよね」

「・・・・・・・」


確かに桃城とは一年の時からテニス部で何かにつけて張り合って来た。

お互いがお互いにだけは負けたくないという強い対抗心のおかげで、頑張れている部分は大きいかも知れない。


「あいつにだけは、絶対負けねえ」

「うん、頑張って」


汐屋に言われた言葉が、妙に耳に残った。






                                続く…














「見返り恋心」一話。お読み頂きありがとうございます。
これ随分前に書いてたんですけど…
何故かアップする勇気がなかったお話しです(笑)
海堂を上手く動かせてないのが気になって。
でも書き直す気力もなくて(コラコラ)

ま、まあ、ボチボチアップして行きますので、
どうぞ最後までお付き合いくださいませ。



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