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ゆびきり.1

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streetpoint

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“ゆびきり” の、げんまんとか針千本とかゆびきったって言葉は怖い











 「え? 明日ですか? 別にいいですよ。……はい、分かりました。それじゃあ、明日」






 朝、銀時が起きてきて一番最初に目にしたのは、いつもより綺麗に化粧をした操の姿だった。


「あ、おはよう銀時。ご飯出来てるわよ」

「ーーーお前、何で化粧なんてしてるんだ?」


 普段ほとんどしないのに。とぼそりと付け加える。

 ソファーに座り、何も答えず食事の支度を始める操の後ろ姿を眺めながら鼻をほじる。


「どっか出かけるのか?」


 目の前に並べられた朝食を一瞥し、いつもと変わらない調子で尋ねると、操は銀時の前に座って本を取り出し読み始めた。


「うん。お買い物」

「買い物? ったく、しょうがねーなあ。俺も付き合ってやるよ」

「ううん。今日は人と出かけるから大丈夫」

「ーーーまじ?」

「うん、まじ」


 笑顔で断る操。引きつった笑いで一瞬こめかみに青筋を立てる銀時。


「ーーー誰と行くのかな? 操ちゃん?」

「どうして銀時にそんな事言わないといけないの?」

「どうして……って、そりゃあお前、大事な娘が日曜日の朝っぱらから普段しない化粧して出かけようとしてるんだぞ? 父親が心配してなにが悪いの? お父さんは娘が大事なんだぞ! それが親父の仕事なんだぞ! 反抗期!? もしかしてこれが反抗期ってやつですかぁ!? おうい、母さん! 操がお父さんに反抗してるよ!」


 目玉焼きにぐさりと箸を突き立て捲し立てる。そしてそんな銀時を冷めた目で見ている操。


「誰だ? 男か? 男だな!?」

「なあに? やめてよ、そういう言い方。私もいい年なんだから、誰と出かけたっていいでしょう? 別に悪い事する訳じゃないんだし」

「いい年だから心配なんだろーがっ! 大体お前はいつからそんなふしだらな子になったんですか! お父さんは許しませんっ!!」

「も~~~~う!!! 朝からうるさいアル!」


 ガンッッ!!!!


 と勢い良く押し入れの襖が開き、中から寝ぼけ眼の神楽が出て来た。


「あ、おはよう、神楽ちゃん。ご飯食べる?」

「食べるアル。銀ちゃん何をそんなに騒いでるアルか? 朝からうるさいとお登勢さんに殴られるアル」

「いいタイミングで起きたなあ、神~楽ちゃん! お前からも説得しろ。操は俺達を置いて遊びに行くらしいぞっ!」

「え~っ! 本当アルか? 操!? あたし達を差し置いて美味しいもの一人で食べる気アルか? どこの肉? どこの焼肉? じゅじゅ苑アルかっ!?」

「だから、遊びに行くんじゃなくて、お買い物って言ってるでしょ? 焼肉食べたいなら今日の晩ご飯は焼肉にするから……あ、もうこんな時間だわ。食べ終わったら片付けておいてね。それじゃあ行ってきます」

「ちょっと待てコラー! まだ話しは終わってないぞお!! 操、戻りなさい! ステイっ!!」


 操を捕まえようと立ち上がった銀時だったが、素早い操はスルリと銀時の腕から逃れさっさと万事屋を出て行ってしまった。そして銀時は茶碗を持ったまま玄関まで走った所で地団駄を踏む。


「ーーーくそっ、操のヤツ。どこに行く気なんだ!? ていうか、誰と行くんだ! このやろー!!!」


 自分はいつもフラフラと勝手に遊び回っているくせに、操の事は全部把握していないと気がすまないのだ。

 わがままの極みと言えよう。


「銀ちゃん、いつまでもそんな所でお茶碗持って立っててもご飯は勝手に口の中に入ってくれないアル。お買い物って操も言ってるし今日の晩ご飯は焼肉ね。心配しなくても操なら安くて美味しいお肉をたらふく仕入れて来るアル」

「お前はアホですかーーっ!! 俺は肉の心配も焼肉の心配もしてないの! もし、操が俺の知らない男と買い物になんか行ってたらどーすんだ!」

「ハア……銀ちゃん、操ももういい年アル。彼氏の一人や二人や三人いたっておかしくないアル。だいたい銀ちゃんは自分は束縛されるのは嫌がるくせに、操の事を束縛し過ぎアルね。そんな男を今まで構ってくれてた操に感謝して、諦めて他の男と幸せになってもらった方がいいアルよ。可哀想に操、銀ちゃんのせいで今まで結婚も出来ずに、どんどん所帯臭くなって、今では完全に銀ちゃんのお母さんアル」


 冷静にそう言うと、神楽は残りのご飯もすっかりたいらげ満足そうに腹をさすった。


「てめぇ、こんな時だけ妙に大人ぶった事いいやがって。って言うか、お前も操に迷惑ばっか掛けてるじゃねえか! 男と付き合うなんてお天道さんが許しても、お父さんは絶対、絶~~~~~対! 許しませんからねーーーーー!!!! おい神楽! さっさと準備しろっ」

「何するアルか?」

「決まってるだろ! 操の後をつけるんだ」

「ーーーあたしそれを何と言うか知ってるよ。“ストーカー”って言うアル」

「バカか! ストーカーじゃねえ! これは尾行だ! 操を変な男から守るための尾行だ!!」

「人の恋路を邪魔すると、馬に蹴られて死んでしまうアル。行くなら一人で行くよろし」

「よーし、それじゃあこれは俺様からの仕事の依頼だ! 操を見つけ次第、生きたまま確保しろ! 成功報酬は酢昆布と定春のご飯一週間分だっ!!」


 銀時が何を言った所で説得力はないし、報酬もたいして魅力は無いが、ちょっと面白そうなので神楽は笑った。


「仕方ないアル。銀ちゃんがそこまで言うなら、定春! 操の匂いを追うアルよ!」

「わん!」

「ようしいいぞ! 神楽、新八のやつも途中で捕まえて捜索に加えろ!」

「アイアイさー!」


 斯くして万事屋一行は操を尾行すべく、行動を開始したのであった。





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