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チェンジ・ザ・ワールド☆
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チェンジ・ザ・ワールド☆

No.1:4th Game

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レギュラー決定










ガチャリ……


「あ」


和葉が部室のドアを開けると、そこには乾の姿があった。

ノートにペンを走らせながら、なにやら独り言を呟いている。

邪魔をしてはいけないと、和葉は部室の奥へゆっくりと足を運び、置いていたファイルを手に取る。

と、そこで


パタン!


「よし、完璧だ」


乾のデータがまとまったらしい。


「おや、六条さん」

「乾君。リョーマ攻略は完璧?」


笑顔で乾を振り返る。

乾も口元を綻ばせ、それに頷く。


「はい。越前には申し訳ないですが、今日は勝たせてもらいます」

「ふふ、楽しみにしてるね」

「今日もまた上から観戦するんですか?」

「うん、そのつもりでもう準備して来たの」

「そうですか」


乾と一緒に部室を出る。

和葉は乾を見上げて、再び笑った。

乾2号と渾名を部員達に付けられた和葉。二人は見た目も趣味も似ていてなかなか気が合う。

女にしては背が高い方である和葉は、背の高い乾と並ぶと自分が普通の女の子に見えるような気がして何だか嬉しかった。

リョーマと一緒に歩いていても本当に保護者な気分だしーーー実際そのとおりなのだがーーーこうして普通に同世代の男の子と肩を並べて歩くという経験をほとんどしたことのない和葉にとって、新しい発見ばかりで毎日が楽しかった。

アメリカにいた頃はそれこそテニスと大学が忙しく恋愛などとは無縁の世界にいたし、一番身近な男の子がリョーマだったのだ。

すっかりお母さん癖の付いた和葉は、自分の事よりもまず周りの人の事を優先させてしまう。

そんな中、年の近い男の子や女の子と学園生活を送れるという経験は、とても貴重だった。

乾と別れていつもの教室へ向かう。

竜崎が言っていたように乾は和葉の手伝いをしてくれている。

データ収集が趣味である乾は、和葉の有能なブレーンなのだ。

今日のランキング戦では、この乾とリョーマが試合を行なう。和葉はそれがまた楽しみなのであった。











試合が始まると、予想以上に乾のデータがことごとくリョーマを苦しめた。

そんな様子も和葉は楽しくてたまらない。

リョーマは自分と同じで生まれた時からテニスに触れて育った。

テニスが好きだとか、プロになりたいとか、そう言った感情も特に持たないまま、とにかくテニステニスの毎日だったのだ。

南次郎と和葉に勝ちたいという思いだけで、今リョーマはテニスをやっている。

和葉はもちろんテニスが好きだ。だから、リョーマが成長してゆく姿を間近で見ているのがたまらなく楽しい。

視線を移すと別のコートでは手塚と大石の試合が行なわれていた。

こちらはギャラリーが多くて、和葉はその女の子の多さと声援の大きさに驚く。


「はあ。手塚君と大石君って、すごい人気なのね~」


今度は菊丸と桃城の試合もチェックする。

なかなか楽しい試合を展開している。

それぞれ見た範囲でデータを入力して行く。

またリョーマ達の試合に視線を戻すと、リョーマはまだ乾攻略が出来ずにいた。


私と乾君って、データ収集が好きだけど、大きく違うことがあるのよね……


和葉はデータを集め、それを生かして自分の苦手な部分を補強する事に重きを置く。

だが、乾は相手のデータを集め、それを生かして自分が勝利することに重きを置く。

そう、和葉のテニス理論は、


ボールが来たら打ち返す。


たったそれだけ、ひどくシンプルなものなのだ。

機械相手にテニスをするわけではない。確かに人間だから癖や苦手な事はある。

だけど感情もあるのだ。

動きに感情が加われば、そこから驚くほどの結果を生み出す。

データ通りに行かないのが人間なのだ。

奇をてらった技は一見派手で凄いが、それをじっくり観察してただひたすらに来た球を追いかけて打ち返す。

その中での相手との心の駆け引きがテニスをする上で非常に重要なのだ。

リョーマは小刻みにステップを踏み始めた。


「あれをやる気ね」


くすりと笑うと、和葉はリョーマの試合に集中した。

どうやら乾のコートに打ち返す場所を宣言しながらリターンしているようだ。

スプリットステップ。

それがリョーマが見せている動作。

この動作はテニスの基本で誰でもやっている。しかしリョーマの場合、着地を両足ではなく片足で行なっていた。これは非常に難しい。もし打球が来る方向が逆なら、二の足を踏まなければいけないのでポイントを取られることに繋がる。


片足のスプリットステップと並外れた動体視力を駆使するリョーマは、どんどん乾とのゲーム差を詰めて行った。

そして最後はツイストサーブで試合を決めた。

コートから出て来るリョーマを、和葉は窓に肘をついて眺めていた。

残すはあと一試合。

これに勝てば、レギュラーは確実だ。






そしてその後問題なく勝ったリョーマは、4戦全勝であっさりレギュラーの座を射止めた。

最後の戦いは乾と海堂の、いずれもリョーマに負けた者同士の試合となった。

乾有利かと思われた試合は、なんと海堂が勝利した。

和葉は立ち上がり、まとめたデータをしっかりと保存して教室を後にした。

本格的に動くのはこれからだ。

決定したレギュラーの顔と名前を思い浮かべながら廊下を歩く。

部長の手塚国光、副部長の大石秀一郎、不二周助、河村隆、菊丸英二、桃城武、海堂薫、そして、越前リョーマ……

面白くなりそうだ。


「あ、近くの学校の偵察にも行かないとな」

「和葉」

「あ、竜崎先生」


独り言を呟いた時、丁度職員室から出て来た竜崎と出会い、和葉は駆け寄る。


「どうだい、データは取れたかい?」

「ええ」

「どうだった、お前の所の負けず嫌いは」

「勝ちました」

「そうかい。これから和葉にはたくさん働いてもらわないといかんな」

「はい」


二人で顔を見合わせ、笑った。

忙しくなる。

和葉は期待に胸を膨らませた。









                           続く…









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