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見返り恋心.8

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streetpoint

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見返り恋心











あれから数日後、海堂は変わらず走っていた。


「おつかれっ」


いつもの曲がり角を曲がると、あの笑顔が海堂を迎えてくれた。


「おう」

「毎日頑張るね」


そう言って笑う汐屋に、海堂も微笑む。


「まあな」


そこで二人は長い長い階段に腰を下ろし、汐屋が持って来てくれたドリンクを飲む。

体の隅々まで行き届きそうなその感覚に、海堂はくっと目をつぶった。

ふと目を開けて隣りに座る汐屋を伺う。

汐屋は先日の大会で見事優勝を果たし、海堂達は全国大会の準決勝までコマを進めていた。

明後日は準決勝が行なわれる。

汐屋はじっと前を見据えたまま一言もしゃべろうとしない。

海堂はあの日から悩んでいた。

気付いてしまった自分の気持ちを、汐屋に伝えるべきかどうか。

あの日、教室で汐屋が自分の方を振り返った時から、実は好きだった事を。


「海堂君」


先に口を開いたのは汐屋だった。


「何だ?」

「明後日……アメリカに出発するの」

「ーーー明後日……そう、か」


予想はしていたが、まさかそれを今言われるとは思っていなかった。

明後日は全国大会の準決勝があるし、汐屋に見にきて欲しいと思っていたのだ。 


「……私ね、やっぱりテニスが好きなんだ」


ドキーーー


海堂をまっすぐに見つめる汐屋の声が、耳鳴りがしているみたいに遠く聞こえて海堂は顔をしかめた。


「そうか」


どんな顔をしていいか分からない。

笑顔で頑張れよ。と軽く言えたらどんなに楽だろう。

そんな事が言えないくらい、いつの間にか自分の中の汐屋は大きな存在になってしまっていたのだ。

増々眉間のしわを増やした海堂に、汐屋がため息を吐いた。


「あ~あ。無反応なんて悲しいな」

「あ……」


慌てる海堂に、今度は吹き出した。


「ぷっ! 冗談」


そして立ち上がってうんと背伸びをした。

トントンと軽やかに階段を数段降り、くるりと海堂を振り返った汐屋が笑った。


「私ね! 海堂君の事好きだよ!」


えーーー?


きょとんとする海堂に、汐屋は続けた。


「テニス部で桃と張り合ってるの見て、すごい努力してるの見て、毎日ここ走ってるの見て……」


そう言って後ろ向きにまた数段階段を降りた。


「席が前後になった時、すごい嬉しかった! お話出来て嬉しかった! お友達になれて、本当に……」


そこで汐屋は言葉を切った。

海堂は無意識のうちに立ち上がっていた。

二人の距離は今何メートルだろう。

海堂が一歩階段を降りると、汐屋も一段降りる。


「全国大会、頑張ってね! それと、私の事忘れないでよねっ!」

「おいっ!」


そう言い残し、汐屋はあっという間に階段を下りて走り去ってしまった。

その場に取り残された海堂は、空中に投げ出した自分の右手を睨んだ。


「俺は……何をやってるんだーーー?」


情けない。

口数が少ないのは十分理解している。だが、こんな時まで言葉を出せないほど自分が情けない男だったとは、海堂は酷く惨めな気持ちになった。

言おう。自分の素直な気持ちを、汐屋にぶつけよう。

明日、またここに来れば会える。

そう思い、海堂は階段を一気に駆け上がった。





しかし海堂は汐屋に会うことは無かった。

避けていたのか、出発の準備で忙しかったのか、汐屋は姿を現さなかったのだ。

後悔先に立たず。

海堂は自分の無力さを痛感させられた。















あれから半年、海堂は青学テニス部の部長になっていた。

ふと汐屋の顔を思い出し、知らずラケットを振る腕に力がこもる。


「海堂部長、今日も怖いよな」


堀尾がコート上で同じ二年生相手に鬼気迫るラリーを続ける海堂を見て呟いた。


「昨日なんか僕、腹筋が皆よりちょっと遅れただけでグランド10周させられたよ……」


カチローがぼやく。


「おい一年っ! 何だべってやがるっ!」

「「「ひいっ!?」」」


海堂の雷がコート上から飛んで来た。


「グランド20周してこいっ!」

「「「はいっ!」」」

「おい海堂。お前ちょっと最近厳しすぎるぞ?」

「うるっせえ! てめえもグランド走らされてぇのか!?」

「ちっ! なんだよったく、新キャプテンはこえ~こえ~」


海堂は汐屋がいなくなって初めて、汐屋の携帯番号もアドレスも知らなかった事に気付いた。

そして今更桃城にも聞けず、ただピリピリとした日々を送っていた。

分かってる。これは俺が駄目な男だってことに対する不甲斐なさを部員にぶつけてるだけ。

単なる八つ当たりだーーー

そんな事は分かっていた。

だが……

目をつぶると何度でもよみがえるあの日の記憶。

どうして俺はあの時汐屋を追いかけられなかったんだ。









部活も終わり、海堂は戸締まりをして学校を後にした。

季節はまだ冬だ。

汐屋は元気にやっているのだろうか?

無性に汐屋に会いたくなった。

ロードワークでもないのに、気付けばあの公園の階段へとやって来ている自分におかしくなる。


「俺は女々しい奴だな……」


そう呟いて階段を見上げる。


「なあお~」


 !?


猫の鳴き声に、海堂は急いで振り返る。


「あ……」


驚きで声が出ない。

そこには、今自分が会いたいと思っていた汐屋が立っていた。


「なあお~。誰が女々しいの?」

「ーーー汐屋……」


変わらないあの笑顔で、汐屋が目の前に立っている。

嬉しさと同時に疑問が湧いて来る。


「お前……なんでここに?」


海堂の驚く顔を堪能した汐屋が、一歩海堂に近づく。


「忘れ物があって」

「忘れ物?」


何だろうかと首を傾げる。

すると汐屋がすっと海堂に向かって右手を差し出した。


「あ?」


汐屋の右手を見て動きを止めた海堂に、汐屋は無言で右手をもう一度突き出す。


「何だよ……」


海堂は仕方ないと言った風に右手を出すと、汐屋がそれを取って握手をした。

小さな手。

こんなに小さな手から、あんなパワフルなテニスが生み出されるのだ。

ぎゅっと強く握る汐屋に、海堂はなんだかおかしくなった。


「全国大会優勝、おめでとう。それと、背中を押してくれて……ありがとうーーー」

「けっ……ばーか……」


ふと力を抜こうとした汐屋の手を離さないようにさらに力を込めると、海堂は汐屋の体をぐいと引き寄せた。


「え? ーーーわっ!?」


驚く汐屋を海堂はしっかりと抱きしめたまま言った。


「俺も、忘れ物だーーー」


そこですうっと息を吸い込み、呼吸を整える。


「ーーー汐屋……俺は……お前が、好きだ」


ビクリと汐屋の体が動いたのが分かった。

抱きしめる汐屋の心臓の音が、海堂の音と混ざり合って大きくなって行く。


「海堂君……」


あの時、汐屋が振り返ってくれなかったら、きっと海堂はこんなに満たされた気持ちになることは無かっただろう。

見返り恋心。

これからも、あなたを好きでいて、いいですか?






                                  END
















=あとがき= 

終わりました、海堂夢。。。
もっと短くするつもりが、結構長くなって困りました。
途中何度やめようと思った事か…ごめん、海堂。
でも海堂かなり好きです。ぶっきらぼうで言葉は乱暴だったり無表情だったりするけど、実は動物好きなところとか、協調性ないくせに意外と世話好きなところとか、家族のお母さん以外が全員同じ顔なところとか!
でもとりあえず書き終えられてよかった☆ ってか、また死ネタだよ。忍足の話しとも被ってるし…
もう自分のボキャブラリーの無さに涙がチョチョ切れる(涙)
こんな話にするつもりじゃなかったのに・・・後悔してる。後悔してるのよおっ!!!

それでは、ここまでお読み下さってありがとうございます! 
またお会いしましょう!!!!! アデュー♪




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