チェンジ・ザ・ワールド☆
act.15(御影山)
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就職難民 黙って俺についてこい!
開発センターに到着すると、入り口から慌てた様子の部長が出て来た。
「葉月君、こっちだ」
私はグロスの研究室奥にある真っ白な部屋に通され、部長に今日集計して来たアンケートを見てもらいながら必死にパソコンのキーボードを叩いていた。
「この業界、情報が漏れると言う事は当たり前だが、今回はかなり慎重にやってきた……それなのにどうして」
独り言のように部長が呟く。
壁に耳有り障子に目有り。一体どこから漏れたかなんて分かりようがないわよ。それより社長、まだ来ないでーーー!!!
「アンケートを見る限り、口紅とグロスの両方をつけるよりグロス一本で落ちにくくて艶が出るものを欲しがっている人が多いようだな」
「そうですね、やっぱり化粧する時間を短縮したいですし、化粧直しも回数が減る方が楽ですから」
「集計は済んだか?」
部長と話していると、突然ドアが開いて社長と川島さんが入って来た。
何とか間に合ったけど、来るのが早いよお〜。
私は半分涙目になりながら、隣りに座った社長にパソコンの画面を向けた。
何か相変わらずいい匂いさせててムカつく……
「なるほど、グロスとはいえ、やはりあまり派手な艶が出るものよりも綺麗に光るような艶がいいみたいだな。まあ、今回の新製品はそれに合わせてあるからもう少し改良を加えるしか無いか。葉月、お前の意見は?」
「えっ、私ですか?」
まさか意見を求められるなんて思ってなかったからびっくりした。でもそうね、意見があるとするなら……
「商品自体に改良を加えるというより、美容部員さんのいないお店でこの新製品を買うお客様の事を考えてはどうかな? と思います」
「どういう事だ?」
「はい、例えば、私なんかはそうなんですけど、美容部員さんがいるようなお店で商品を選ぼうとすると、ちょっと気後れしちゃうんです。欲しいもの以外にもあれこれ勧められて買わされそうっていうか……だから、たまに色に失敗する事があるんですよね。カレンに教えてもらった事や、本で読んだ事をふまえると、自分が気に入った色でも、その人の肌質や肌色なんかで全然変わって来ますし。かと言って試供品が商品の前に出ていてもゆっくり試せなかったり、人の目があったりするので……で、色んな肌色のサンプル写真を乗せて、自分の肌と比較しながらどの色のグロスが合うか、お勧めするような小さな冊子を店頭で無料配布するというのはどうでしょうか?」
「―――なるほど、小さくすれば邪魔にならないし、直接自分の肌色と写真を比較出来るから、一人でも自分に合った色を選べる……」
社長が腕組みをして何かを必死で考えている横で、川島さんは嬉しそうな顔で私に頷いた。
「部長はどう思う?」
「はい、いいアイデアだと思います。ただ、その冊子を作るコストを考えると、グロスの値段が……」
「冊子についてはこちらで検討しよう。グロスに関しては、新しい色合いをもう1、2種類追加してくれ」
「わ、分かりました」
「よし、葉月」
「はいっ」
立ち上がった社長に吊られるように立ち上がり、私は背筋をピンと伸ばした。
「お前の案で行く事にする。冊子の件はお前が言い出した事だからな、写真部の市来やカレンと話し合って、細かい事は決めろ。それから、印刷する会社はいつもうちがお世話になっているところがあるが、紙に関してはお前が安価で良いものを必ず探し出せ。その合間に新しく追加する色などについてここの部長達と連絡を取り、俺に報告しろ。いいな?」
「は、はい……」
ちょ、ちょっと待って。今一気に言われて頭がパニックだけど、私の案が通ったってことよね? そして、私がその案を自分で何が何でも形にしないといけないって事?
「ま、待って下さい社長!」
「何だ?」
「あの、私が出した案を採用していただくのは非常にありがたいし、恐縮で申し訳ないというか……ですけど、ズブの素人の私に、社長の期待に答えられるようないいものが作れるはずがありません!」
「ほう? 新製品を大ヒットさせると大見栄切ったくせに、ここに来て出来ないなどと言い出すのか」
「うっ、それは……」
「―――別に一人で何でもかんでも決めろと言っている訳じゃない。俺に連絡しろと言ったはずだ。駄目なら駄目と俺が言うし、分からない事があれば誰かに聞けばいい。それくらいの事は出来るだろう?」
そう言われると確かにそうなんだけど……
「ふん、いいだろう。そんなに心配だと言うなら、俺がお前と一緒に動いてやろう」
「ええっ!?」
「自分一人でやるか、ありがたく俺に手伝ってもらうか、お前が決めろ。川島、仕事が残っているな、行くぞ」
「はい」
そう言い残し、御影山社長は綺麗な姿勢で出て行ってしまった。
ど、どうしよう!!
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