チェンジ・ザ・ワールド☆
風名4日目・No.2
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私のやんごとなき王子様
「おはよう、小日向! 佐和山!」
「風名君、おはよう」
「おはよう!」
駅の改札口を出た所に風名君が立っていて、相変わらず爽やかに笑って挨拶をくれた。
朝から風名君の笑顔を見ると、一日が爽やかに過ごせるな。隣りのさなぎも嬉しそうに笑ってる。
「荷物持つよ」
そう言うが早いか、風名君は私とさなぎの荷物を持ってくれた。
「えっ!? いいよ、重たいよ!」
「大丈夫、俺、男だし。それに自分の荷物はもう集合場所に置いて来てるから手ぶらだしさ」
「ありがとう……」
本当に優しいなあ。もしかして私達の事を迎えにきてくれたのかな。
さなぎと顔を見合わせ笑うと、三人で並んで集合場所の港へと向かった。
私達の目の前には大きなフェリーが青空をバックに悠然と佇んでいた。
毎年理事長がチャーターしてくれるこの大型フェリーに乗って、理事長所有の島へ向かうのだ。
港に勢揃いした我が星越学園の全校生徒。とは言っても生徒数が少ないうちの学校だから整列した様子に圧倒されるってことはないんだけど。
そしてさなぎとはここからはしばらく別行動。各担当毎に集まって乗船する。
「小日向が探してくれた本とDVD、すごい良かったよ」
私は演劇出演者の列の端の方ににそっと並んだ。
そこでぼんやりと各担当のリーダーが人数確認しているのを見ていると、一緒にいてくれた風名君が話しかけてきた。
「え? あ、昨日の?」
「うん。あの後小日向を一人で帰しちゃったから心配しててさ、何度も電話するか迷ったけど、仕事が終わって家に帰って来たのが遅かったから出来なくて。お礼も言えなくてごめんな」
あ、そうか。だからさっき改札口で待っててくれたんだ。
そして私は昨日の夜に風名君が出演していた音楽番組を思い出した。
「そんなの、風名君お仕事なんだから気にしなくていいのに……そうそう、昨日のテレビ見たよ! 風名君、歌も上手だよね。CD出たら絶対買うから!」
「見てくれたんだ? はは。CDくらいプレゼントするよ」
「えっ!? なんで?」
「昨日のお礼」
「ええ~? いいの? ありがとう、すごい嬉しい!」
「俺、歌って苦手なんだけどさ、小日向が上手って言ってくれるとなんか自信出る」
「本当に上手だよ。私なんて全然、音痴で……カラオケ言ってもさなぎに毎回上達しないってバカにされるもん」
格好いい衣装を着てダンスを踊りながら歌う風名君は本当にかっこ良かった。
あんな風に歌って踊れたら楽しいだろうなあ。
私の言葉に苦笑する風名君をちらりと見上げていると、すごく甘い香水が香って来た。
「玲君」
「あ、亜里沙様。おはようございます!」
「桜」
私達の前から人をかき分けやって来たのは、亜里沙様と取り巻きの人たちだった。
取り巻きの人たちは相変わらず凄い顔で私を睨んでる。
……なんなのよ、そんなに怖い顔しなくってもいいじゃない!
「御機嫌よう、小日向さん―――玲君、私、あなたに少しお話がありますの。演技のことで打ち合わせをしたいのですけど……」
そう言って亜里沙様は私の顔をじっと見た。
あれ? これってもしかして私が邪魔って事?
「フェリーに乗ってからでいいだろ? ほら、もうすぐ順番だし」
「ええ、構いませんわ。小日向さん、あなたもご一緒にどうです? 私の友人役なのですから、話を聞くだけでもきっと勉強になりますわよ」
「えっ? 私……?」
まさか声を掛けられるとは思っていなかった私は驚いた。邪魔だから見たんじゃなかったのかな。
亜里沙様の取り巻きがその言葉に驚いていて、口々に亜里沙様は優しすぎるとかこんなド素人では亜里沙様のお話について行けないとか、本人を目の前に失礼な事を言いたい放題言っている。
――まあ、確かにド素人ですけど。
「小日向も一緒に話そう。皆で話した方が流れも掴みやすいだろ?」
「でも、いいの?」
「何言ってんだよ、当たり前だろ? 同じ劇の出演者なんだからさ」
風名君がそう笑いかけるのと、乗船の順番が回って来たのは同時だった。
うん、こんな最初っから逃げ腰じゃ駄目だよね。自分から演劇担当を選んだんだから。精一杯頑張らないと!
そして私は亜里沙様の取り巻きの最後尾になんとか入れてもらい、フェリーに乗り込んだ。
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