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チェンジ・ザ・ワールド☆
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チェンジ・ザ・ワールド☆

不完〜.10

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不完全燃焼、恋愛模様















 「いて……」


 汐屋から完全に見えない場所に来ると、千歳は大きなため息を吐きながらその場にへたり込んだ。

 さっき頭を掻いた時に怪我の跡を引っ掻いてしまい、ヒリヒリする。


 なんか知らんけど、泣きそうーーー


「何しとんねん、千歳」

「ーーーはあ。よりによって一番会いたくなかヤツに、なんで会いたくなか時に見つかるかね」

「はあ? どういう意味や」

「そのまんまの意味たい」


 ジロリと睨むその先に、相変わらず綺麗な顔で白石が立っていた。


「さっき汐屋と話してたやないか。あれから何か聞けたんか?」

「……その役、お前に任せるたい。俺には無理やけん」

「何言うてんねん。お前が聞かんで俺が聞いてどないすんねん」


 苛立ちを覚えた千歳はゆっくりと壁にもたれたまま立ち上がる。


「俺じゃあ出来んったい」

「あ、おい、千歳」


 吐き捨てるように言って千歳は白石の横を通り抜けた。

 さっきから逃げてばかりだ。


「何や、あいつ……何かあったんか」


 あんな風に苛立つ千歳を見たのは初めてだ。

 千歳の寂しそうな後ろ姿を見つめると、白石は辺りを見渡しはじめた。

 そして千歳が消えたのと反対方向へ歩き出し、自身の教室の前の廊下で目的の人物の後ろ姿を見つけると肩を叩く。


「汐屋」

「え? あ、白石君」


 こちらを振り向いたのは汐屋だった。


「ちょっとええ?」

「あ、うん。私も白石君に用があったから、丁度良かった」

「ほんならあっちで話そか?」


 そう言って2人は歩き出した。













 千歳は意気消沈のままとあるクラスに向かっていた。

 そこは例のハンドタオルを貸してくれた女子のいるクラスだ。昨日買ったタオルを渡そうと思い、そこへ向かう途中で汐屋を見つけたのだ。

 カサリとラッピングされた可愛らしい袋を握りしめ、肩を落とす。

 別にプレゼントという訳ではないので店でも普通に自宅用として買って帰ったのだが、家で妹と母親にお揃いのタオルをあげた事から借りたタオルの話しになり、それなら綺麗にラッピングした方が喜ばれるからと、二人に勝手に可愛く飾られてしまった。

 少し恥ずかしいとは思ったが、妹と母親が楽しそうにしているのを見て強く言えなかったのだ。

 そんな優しさが千歳の良い所でもある。

 が、おかげで随分と夢とロマンの詰まったラッピングに仕上がってしまった。


「あ、千歳君!」


 教室の入り口から中をのぞいた瞬間、目当ての少女が駆け寄ってきた。


「ああ、丁度良かった。これ」

「えっ?」

「この前借りたタオル、血で駄目にしたけん代わりのヤツ」

「そんなん気にせんでええって言うたのに」

「そういう訳にはいかんやろ? ありがと、助かったばい」

「全然! あっ、怪我は大丈夫なん?」

「ああ、ちっと毛ば剃られたけんみっともなかけど、もう傷は塞がっとるよ」

「そうなん? 良かった~。皆心配しとったんよ」

「えらい派手にぶつかったけんね。それじゃ」

「あっ、ちょっと待って!」

「何?」


 用事が済んだので自分の教室へ戻ろうと体を反転させた所で、少女が千歳の腕を掴んだ。


「あ、あの……」


 恥ずかしそうに顔を赤くする少女。

 もしやとは思ったが何も言わず、黙って千歳が首を傾げていると、少女の後ろに立っていた友人が少女の背中をつつく。


「麻美頑張り。勇気出すんや」

「大丈夫やって」


 少女は友人達に急かされ、ぱっと千歳を見上げて言った。


「あ、あんな! 今日の放課後、部活が終わってからでええねんけど、ちょっと話ししたいねん!」

「うん」

「せやから、部活終わったら門の所で待っててくれる?」

「……別によかよ」

「ほんとにっ!?」


 目を丸くさせる少女。


「ああ。話しがあるっちゃろ?」

「うんっ!」

「じゃあ」

「うん、またな!」


 予想は的中した。

 女の子が顔を赤くして話しがあるという場合、十中八九告白だ。

 少女と別れて千歳は自分の教室へ戻る。

 その途中、廊下を歩きながら先ほど汐屋と一緒にいた裏庭に目を向ける。

 もうすぐ昼休みが終わる時間なので裏庭に人影はなかった。

 すでにいない汐屋の輪郭を思い浮かべながら、ため息を吐く。


 白石、か……


 手紙が引っかかっていた木の葉っぱが風で静かに揺れている。

 汐屋の好きな人物を知った瞬間、千歳は勝てないと思った。

 テニスの実力は五分かもしれないが、白石から自分へ汐屋の心を向けさせるほどの何かを、自分は持っていない。

 顔では完全に負けているし、優しいとよく言われる千歳に負けず、白石も優しい。

 女の子からの人気は自分もそこそこある方だとは思うが、積極的に女の子と交友を持とうとしない千歳の恋愛経験は無いに等しかった。それに女の子と遊ぶよりもテニスをしている方が楽しいし、別に彼女がいるヤツを羨ましいと思った事も無かった。

 第一部活が忙しくて彼女を作っている暇など無い。

 同じように部活をしている連中から聞かされる彼女の話しは、部活と私のどっちが大事なの。などという返答に困る質問をされてケンカになったというものばかり。

 そんな面倒くさいことに時間を取られるくらいなら、やはりテニスに打ち込んだ方が遥かに有益だと思っていた。

 だが、今回ばかりはさすがの千歳もヘコんでいる。

 自分の好きな子は、自分の友達を好きなのだ。

 しかも全く気付かなかった。



 考えれば考えるほどマイナス思考が広がって、午後の授業を受けた記憶もないまま、気付けば部活の時間になっていた。

 千歳は重たい体を引きずり、部室へと向かった。 







                         続く…




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