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チェンジ・ザ・ワールド☆
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チェンジ・ザ・ワールド☆

不完〜.17

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不完全燃焼、恋愛模様















 「汐屋~!」


 突然忍足が汐屋を呼ぶ。

 ひょっこり向こうのテーブルから顔を出した汐屋と、千歳は目が合ったような気がした。


「どうしたの~?」

「ちょっと交代せえへん?」

「何を?」

「小春とユウジ、こっちに寄越して~な」


 忍足の言葉をキャッチして、汐屋は自分の目の前で料理をがっつく異色な2人を見た。


「だって、2人とも」


 小春は嬉しそうに立ち上がった。


「やだっ! 謙也ったら、あたしがいないから寂しいのねっ! 今すぐ行くわ、マイダーリンっ!」

「小春っ! マイダーリンは俺だけやどっ!」


 慌ただしくこちらへ向かって来る小春と一氏を見ていると、千歳はいきなり席から落とされた。


 ドサッ!!


「!? いった~。なんばすっとね?」


 驚いて振り向くと、白石が楽しそうに手をヒラヒラと振る。


「行ってらっしゃい」

「は?」

「汐屋と2人で話してこい」

「え?」


 忍足はしっしと追い払うような手つきで千歳に言う。


「話すって……」

「色々あるやろ? 思ってることぶちまけたれ」

「ーーーはあ……」


 千歳は仕方なく立ち上がり、まだニヤニヤと笑う白石と忍足を尻目に汐屋がいる席へと向かった。

 すれ違いざま小春に抱きつかれそうになったのをヒラリと躱し、一歩ずつ汐屋に近づく。

 きまり悪そうに賑やかな店内をぐるりと見渡し、汐屋の隣りに立ってコホンとひとつ咳払いをする。

 汐屋は千歳を仰ぎ見て反対側の席を指差した。


「どうぞ」

「ああ……」


 気まずい空気が流れた。

 千歳は先ほどの醜態を思い出し、そっと汐屋の様子をうかがう。

 黙々と目の前のトンカツを食べる汐屋が、ふと顔を上げた。


「っ……なん?」


 驚く千歳の目の前に、トンカツを載せた皿を汐屋が差し出した。


「熱いうちに食べんと、美味しくなくなるばい」

「あ、ああ。そうやね」


 言われるままトンカツと小春達が置いて行ったステーキとスパゲティも食べはじめた。

 先ほど汐屋が取り分けていたため、色んなものが皿に乗っている。

 さながらミニサイズのトルコライスといった感じだ。


「あ、すみませーん」


 近くを歩いていた店員を呼び止め、汐屋はご飯のお代わりを催促した。

 その様子を見て千歳が尋ねる。


「汐屋、食べても太らんと?」

「え? いや、見ての通り、食べたら食べた分、お肉つくよ」

「太っとらんやん」

「ーーー千歳君、ほんなこつ優しかね」

「いや、嘘やないばい。女の子は気にしすぎったい。ガリガリの女の子なんか、可愛くも何ともなかよ」

「ふふ……ありがと」


 そしてまた沈黙。

 千歳はジュースを飲んで喉を潤した。

 顔を上げると、白石と忍足がこちらを見てさも愉快そうに口の端をあげている。


 あいつらーーー


「あのさ、汐屋……」


 ここまで来たら言うしか無い。

 千歳は腹を決めた。


「ん?」

「今日は、驚かせてしもたね」

「ーーーううん。別に……」

「俺ね、ちょっと落ち込んどったと」

「……何かあったと?」


 心配そうに千歳を見る汐屋に、千歳は表情を緩めた。


「うん。俺、好きな子のおるとばってん、その子に好きな人がおるって勘違いしたったい」

「……うん」

「それで勝手にもう振られたばいって思って、すっげー落ち込んどった時に、あの子に告白されたと……」


 そこで千歳は言葉を切った。

 先ほど汐屋がお代わりした米が運ばれて来たのだ。

 そして汐屋はそれを無言で食べ進めた。

 続きは勝手に話せという意味なのかと解釈し、千歳は続ける。


「それで、もうその子は俺の事好きになることは無かって思ったけん、告白してくれたあの子と友達になって、気持ちを紛らわせようち思ったと……ばってん、失敗やった」

「ーーーそうやったと……でも、振られたて思ったけんって好きでもない子の告白を受けたら、その子に失礼やなか?」

「分かっとる。やけん、付き合うのは出来んって最初に言うたよ。ばってん、あの子が友達になってくれって真剣に頼むけん……」


 思い出しながら千歳はどんどん落ち込んで行った。

 自分の事を好きだという相手に、例え友達としての付き合いでもOKしたという事は、その先にもしかしたら付き合えるかもしれないという希望をちらつかせる事になってしまうのだ。

 そんな事にも頭が回らないほど、自分はショックを受けていたのだ。


「俺は情けなか……好きやったら、例え好きな子に好きな人がおっても好きで居続けるんは悪いことでもなんでもないとにーーー早く諦めんといけんって、そればっかり考えて……」

「千歳君……その人の事、真剣に好きとやね」


 じっと噛みしめるように話す千歳に、汐屋が優しく微笑む。

 いつの間にか汐屋は手を止めていた。

 千歳はそんな汐屋の笑顔にあたたかな気持ちになる。


「ああ、真剣に好いとる……汐屋……俺は、お前ん事、好いとるよ」

「え?」


 汐屋は千歳を凝視した。


「多分2年生の時から好いとった。すごい好きやって気付いたんは最近やけど、本気で好きやけん……お前はいつも誰の間にも分かりにくい壁作って距離置くやろ? 汐屋の過去に何があったかは知らん。でも俺は、壁がない汐屋の本当の笑顔が見たか……こんな馬鹿な男やけど、好きって気持ちは本当やけんーーー本気で、すっげー好き」

「千歳君ーーー」


 ふと握っていた箸を置き、汐屋は俯いた。

 それに千歳は動揺する。

 もしかして、余計な事を言ってしまったのではないか。

 告白するには、まだ早すぎたのではないか。

 そんなことを考えていると、汐屋は困ったように言った。


「私、千歳君にそげん好きって言ってもらえるような女やないばい。千歳君や白石君が言うようにいつも壁作って、人と距離ば置いて……自分ば傷付けんようにってそればっかり……自分の事しか考えとらん、最低な女ばい」

「そげんことなか。汐屋は優しかけん、やけん壁ば作ってお互い傷付け合わんでいいように気を遣いよるとやろ? 俺じゃ汐屋の傷を癒してやれんかも知れん……ばってん、少しでも力になりたかと……駄目やろか?」

「駄目とか……そげんことなか。嬉しかよーーーでも……」

「でもはよかけん!」


 急に大きな声を出した千歳に、汐屋はビクリと動きを止めた。


「俺が、汐屋の力になりたかと……俺は、自分の事しか考えとらんけん」


 真摯な瞳で自分を見つめる千歳の優しい言葉に、汐屋は嬉しくなった。

 人との距離を作る事になった出来事など、本当に些細な事なのに。

 それなのに、こんなに自分の事を思ってくれる千歳を、好きだと思いそうになる自分が嫌だった。

 何の取り柄も無い自分なんかを、こんなに素敵な人が好きになってくれるなんて、幸せだと思った。


「ーーー私……前みたいに笑えるようになるやろか?」

「ーーー俺が笑わせてやる」

「思いっきり、楽しんでもいいやろか?」

「ーーー俺が、皆と一緒に楽しませてやるけん」

「……壁を、無くせるやろうか?」

「汐屋が望むなら、そげんこつ簡単たい」

「ーーーありがとう、千歳君……ありがとーーー」


 最後に汐屋は嬉しいような、悲しいような、困ったような顔で笑った。

 その笑顔は、千歳が今まで見た中で一番綺麗な笑顔だった。


 自分の気持ちが届くかどうかは分からない。

 でもきっと、いつか彼女が本当の笑顔で自分に笑いかけてくれた時、その時思いが通じ合う。そんな気がした。


 好きだと伝えた経緯はお世辞にも格好良いものではなかったが、好きな女のために頑張れるのはなんとも嬉しいものだ。

 白石が言ったあの言葉、


 惚れたら負けなんて嘘。


 確かにそうかもしれない。

 自分は情けない男で、好きな女の笑顔一つすぐに引き出せないちっぽけな存在だ。

 それでも、そんな自分でも出来る事があると、やっと気付く事が出来た。


 不完全燃焼だったこの恋は、新たな火種とともに再熱してくれる。


 自分が、諦めない限りーーー





                             END





☆あとがき☆(今回ちょっと長いですw)

お、お疲れ様でした……
すみません、本当に最後までお読みくださり、ありがとうございました。
お題は「不燃かもね」でした。
なんでしょう。全然お題にそってない(笑)
本当はもっともっと短い、普通のショートストーリーにするつもりだったんです。
それが……何故?

今、管理人、完全に大阪四天宝寺にメロメロです(笑)
そしてやっぱり千歳が一番好き。どうしても長身が好きかよっ!? と、自分で突っ込む。
千歳でかすぎますけどね、194? なにそれ、トーテムポール?

あ。大阪弁は相変わらずの偽…(以下略w)
それと、管理人今回楽しかった! だって、九州弁!!
管理人の地元は熊本にすげー近いんですけど(っつーか、ほぼ熊本?)、
千歳が熊本のどこの人か分からなかったんで方言かなり適当にしています。
しかしなんですかねー。テレビで聞く九州弁って、おかしいんですよね。
でもこの千歳役の声優さんはすごく上手でした! 初めてかも、あんなに自然な九州弁をアニメで聞いたの。
ですが、管理人地元で友達に「あんまり方言使わんよね」って言われてたんで、今回もちょっと自信ない(笑)

っていうか、九州弁で文章書くのって難しいですねえ。
微妙なニュアンスが文字だと伝わらないです。しかも字を見てるとものすごい訛りに見える(笑)
ちなみに、博多弁は今回書いている方言とまた違います。
「なにしてるの?」は博多弁だと「なんしよーと?」千歳達熊本方面では「なんばしよると?」もしくは「なんばしよっと?」
この場合、「しよる」の「よ」は小さい「ょ」にも置き換えられます。
この微妙な違いがあるんですねえ。九州地方ならどれを使っても通じるはずです。

ーーーーって、いやいやいやいや、九州弁講座じゃないよ。落ち着け、俺。

という事で、今回、千歳千里君のお話でしたが、お題どおり、読後に不燃な感じになっていただけたら幸いです(笑)
ヒロインとは、きっとうまくいくでしょう。

それではまた、お会い致しましょう!






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