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チェンジ・ザ・ワールド☆
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チェンジ・ザ・ワールド☆

手紙

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streetpoint

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手紙~嫌よ嫌よも好きのうちとか言ってるけど、実際本気で嫌な時の女子の目ってマジ怖いよね~












相変わらずくだらない授業を聴く振りをしながら、沖田総悟はふと隣りの席のクラスメートを見た。

特に意味などないが、なんとなくだ。

その隣りの席にいるのは海外からの転校生、神楽。

少し、いや。かなり変わった少女だった。

薄桃色の髪を頭の両サイドでおだんごにし、瞳が見えないほど度の厚い眼鏡をはめ、平気で早弁をする。

とにかくよく食べるようだが、今日は違った。

2時間目はいつも隠す事なく堂々と食事を摂るのに、どうやら真面目に授業を受けているらしい。

何故真面目に授業を受けているか分かるかというと、神楽が必死に鉛筆を走らせていたから。

担任である坂田銀時が今話している内容など、ノートに書く作業すらもったいないようなどうでもいい事なのに、そんなに真面目にやるなど馬鹿らしいと沖田は鼻で笑う。

視線を前に戻し、銀時がいかに糖分摂取にイチゴ牛乳が最適かを力説しているのを観察していると、


「違うアル……」


ぼそりと神楽の呟きが耳に入って来た。

違う。とは、一体どういう意味なのか。

糖分摂取にイチゴ牛乳が最適ではない、という意味だろうか。

それならここにいる全員が思っている事だ。わざわざ呟いてツッコミを入れてやるほどの事ではない。

もう一度神楽に視線を移す。

相変わらず必死に鉛筆を走らせる神楽が少し体を起こした。

すると、ノートを隠すように机に置いていた腕のその隙間から、ピンク色の可愛らしい便せんが見えた。


なんでぃ、授業受けてるんじゃなくて、手紙書いてたのかぃ。


逆に興味を持ってしまった沖田は、そっと辺りを伺った。

全員くだらない話しを真面目に聞く振りをしている。

ほんの少し首を伸ばし、神楽の手元を覗き込む。

隠れていて殆ど見えないが、少しだけ見えたその文字は、


『~~君へ』


だった。

肝心の名前が見えないのが非常に残念だったが、どうやらラブレターらしい。

神楽みたいに恋愛に奥手そうなタイプは、直接ではなくラブレターというベタな方法で告白する事を選択するのかと、妙に心が騒ぐ。

どうしても内容が知りたくてたまらなくなった沖田は、まだぶつぶつ呟きながら手紙を書き続ける神楽を見守った。

全部書き終えるのを待っているのだ。

授業が終わるまであと5分。

神楽の手紙も漸く埋まりそうだ。


早く書きやがれ。


もう授業の内容は全く聞こえていなかった。

いや、元から聞く振りをしていたのだから、神楽のラブレターに集中出来た。

何度も書いては消して、首をひねっては頷いて、難しい顔をしたり照れたような笑顔を見せたり、本当にそのラブレターに思いをこめているのが分かる。


「できた」


神楽がそう言ったのと終了のチャイムが鳴ったのはほぼ同時だった。


「起立! 礼!」

「あっ!?」


次の瞬間、沖田は神楽の手紙を奪っていた。

礼をする一同の中、沖田と神楽だけが教室の真ん中で浮いている。


「何するアルかっ!?」

「何書いてやがったんでぃ?」

「返すアルっ!!!」

「やなこったぃ」


担任はもうどうでもいいらしく、騒ぐ二人を一瞥すると、


「喧嘩してもいいけど、教室破壊するんじゃねーぞ。備品壊しても先生の所為じゃねーからな。一応注意したからな~」


とだけ言い残して教室から出て行った。

そんな担任などお構い無しで、沖田は机の上に昇って必死で手紙を奪い返そうとする神楽の顔を押さえつける。

両手をばたつかせる神楽に、一体何事かとクラスメート達も集まり出す。


「おい、一体何やってるんだ?」

「いいから、ちょっと聞いてくれよ」


沖田は楽しそうに神楽から奪った手紙を読み上げた。


「え~っと、なになに。志村新八君へ……」

「嫌だっ! やめるアルっ!」


一瞬ざわめきが起こり、すぐに全員の視線が志村へと注がれる。

志村はというと、一体どういう状況なのかまったく理解出来ずにおろおろと皆の顔を見ていた。


「いつもは駄目な眼鏡、ダメがね。とか、キャラが薄いとか、ツッコミとか言ってるけど」

「やめてよおっ!」

「本当はとても真面目で……」

「やめんかコラアーーーーーーー!!!!!!」

「うをっ!?」


間一髪、沖田は真っ赤な顔の神楽からの回し蹴りを躱し、数メートル先の机に飛び移った。


「なんでぃ、減るもんじゃないし。別にいいだろ? それに渡すつもりならここで読んだって同じじゃないか」

「同じことあるかあーーーーー!!!!」

「おわっ!?」


今度はすぐ近くにいたお妙の鉄拳が飛んで来た。

それをまた寸でで躱し、沖田は黒板の前まで逃げる。


「沖田君あなたねえ! 人の手紙を取り上げて読むなんて最低よっ! 小学生じゃあるまいし、神楽ちゃんに返しなさい!」

「「「そうよそうよ!」」」


クラス中の女子の視線が、まるで突き刺さるように鋭くなっている。

沖田は一瞬考えた。

ここで引き下がっていいのだろうか。

せっかく面白くなってきたのに、ここで女子共の氷のような目に負けたら、それこそ手紙を取り上げた意味がなくなってしまう。

否、それでは神楽を辱めようと決意した己の信念を曲げる事になる。

男児たるもの、一度決めた事を途中で放棄するなどあってはならない。

そう、例えそれがどんなに有能な部下だとしても、一国の主である自分は大勢の国民の命を預かる身。

罪をおかしたのならそれを償うべきであり、そのための律法を作ったのだ。

ここで部下一人の命を守るために律法をゆがめては、他の武将達に示しがつかない。

だから……


「だから……泣いて馬謖を斬るんじゃーーーーーい!!!」


すっかり頭の中で遥か昔、中国の歴史上の人物の気分になっていた沖田は意味の分からない言葉を叫び、半泣きで手紙を高々と持ち上げ教室を飛び出した。


「待つアルっ!!!」


もちろんそんなことを許さない神楽は急いで沖田を追いかけた。

廊下をものすごいスピードで走り抜ける沖田と神楽。

授業を終えて廊下に出て来た他のクラスの生徒達が、何事かと二人の奇声に振り返る。


「志村新八君へ~! いつもは駄目な眼鏡、ダメがねとか」

「ぎゃあ~!!!!」

「キャラが薄いとか、ツッコミとか言って」

「ぎいやああ! やめろコラあ~~~~~!!!!!」

「るけど、本当はとても真面目で優」

「わー! わー! わー! わああああ!!!」

「しいあなたの事が、」

「殺す! 沖田殺す!!!」

「好きです!」

「ひいっ!?」

「明日の放課後、学校側の河原の橋の下で待ってます。神楽!」


沖田が手紙を読み終えたそこはもう校舎の外で、人影すら見当たらない体育館裏。

猛スピードで走って来たおかげであっという間にこんな所までたどり着いてしまっていた。

沖田は足を止めた。

神楽の足音が途絶えたので、どんな顔をしているかと期待に胸を膨らませつつ振り返る。


!?


怒り狂って襲いかかって来ると思っていた神楽は、スカートを両手で握りしめて俯いている。

そんな今まで見た事の無い神楽の様子に、沖田は一瞬ドキリとした。

神楽は両肩を震わせ、


「ーーーー沖田の……バカ……」


ポトリと涙をこぼしそう言うと、くるりと元来た方へと駆け出してしまった。


「……なんでぃ。シャレの通じねえヤツ」


そう吐き捨てたものの、沖田の胸の辺りは何故か痛かった。














その後教室に戻った沖田はお妙を始めクラスの全女子から追われるはめになり、教室に戻って来ない神楽を探しに叩き出された。

お妙に殴られた左の頬が痛い。

廊下を歩きながら痛む頬に顔をしかめる。


「ちぇ、どいつもこいつも女共は、手加減ってもんを知らないから困るぜぃ」


取りあえず頬が痛いのをなんとかしようと保健室へ行くと、なんと偶然にも神楽を見つける事が出来た。


「あ」

「あ」


ドアを開けると同時に二人は顔を見合わせ、しばらくそのまま固まった。


「沖田君、どうしたのそのほっぺた」


保健医に尋ねられ、沖田は澄ました顔で答える。


「ちょっと壁にぶつかったんでさぁ」


そう言いながら漸く金縛りから解け、立ち上がって逃げようとする神楽の腕を掴む。


「こいつ、連れて帰りやす」

「え? 沖田君怪我したから来たんじゃないの?」

「いいえ、こいつを連れに来ただけですぜぃ。それじゃ」


驚く保健医に頭を下げ、沖田は神楽の腕を引っ張りながら保健室を出て行った。

必死で抵抗を試みる神楽だが、思いのほか沖田の力が強くて腕を振りほどくことが出来ない。

廊下を歩く姿はさながら檻から逃げ出したチンパンジーと、それを引っ張っる飼育員さんのようだ。


「放すアルっ!」

「俺に命令すんじゃねえ」

「一体何アルかっ!? 私がお前に何したアル! 人の手紙を人前で、しかも大声で読むなんて最低アルっ!!」


バッ!!


とうとう腕を振りほどくと、神楽はぐっと眼鏡の向こうから沖田を睨んだ。

沖田はぽりぽりと頬を指でかき、ポケットの中から酢昆布を取り出す。


「……何アルか?」


怪訝そうな神楽に、それでも無言で沖田は酢昆布を押し付ける。


「だから、これは何なのかって聞いてるアル」


仕方ないので酢昆布を受け取り、早速中身をかじる神楽。

沖田はもう一方のポケットから今度は手紙を取り出した。

先ほど神楽から奪った手紙だ。

一瞬神楽の眉間のシワが増える。


「ーーー悪かった」

「え?」


神楽は手を止め、沖田を見上げた。

聞き間違いでなければ、今、沖田は神楽に謝ったように聞こえた。

しかし、あの沖田が人に謝罪するなど信じられない。

何があっても人の責任にしてうまく逃げるのが沖田総悟という男なのだ。

この世の人間は全て自分の駒くらいにしか思っていない男が、自分の非を認めるなんて誰が想像出来るだろうか。

ありえないと心の中で何度もいい聞かせながら、もう一度沖田の顔を見る。

本心は読めないが、なんともバツの悪そうな顔をしている。

悪いと多少なりとも思っているのか、沖田はふいと顔を背けた。


「ちょっとした冗談のつもりだったんでぃ……まさか泣くなんて思わなくてさ」


少し不貞腐れたように小声で言った沖田は、突然手紙を神楽の手にねじ込んだ。

そして、


「今度からラブレターはてめえの部屋で書きな。じゃねーとまた俺が取り上げて読むぜぃ」


そう言っていつもの飄々とした顔に戻ると神楽に背を向け、さっさと歩き出した。

神楽は沖田の姿が見えなくなるまでその場でじっと立ち尽くし、ゆっくりと手の中にある手紙と酢昆布を見比べ、おもむろに手紙を破いた。


「気持ち悪いアル。謝るなんて、あいつらしくない……」


一度読まれてしまった内容の手紙を渡す訳にはいかない。

それにもう、もしかしたら相手には想いを知られているかもしれないのだ。

今度は自分の部屋で書こう。

とびきり乙女なラブレターを。





                                了







※あとがき※
どうも、最後までお読みくださりありがとうございました。
銀八先生シリーズで、沖田×神楽でしたー。
音文さんからリクエストを頂いたのに、この程度……
ああ、萌えが書けない(涙)
それなのに甘酸っぱかったと言ってくださった音文さんの優しさに涙が止まりません><
でも書いてて楽しかったです。
とても高校生とは思えない二人を温かい目で見守ってやってくだされば幸いです(笑)



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