チェンジ・ザ・ワールド☆
雨の日に〜終章−3
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終章-3
警察署からの呼び出しに、先に津田、成川の2名がいなくなって程なく、岡部と加藤はガブリエルを出て歩き出した。
「ーーー降りそうだな」
アーケードを外れて道路を渡っている加藤がそう言うと、空を見上げた岡部の頬にポツリと冷たいものが当たった。
「ーーーそういや加藤、お前煙草は?」
急に思い出し尋ねる。岡部はここ最近、加藤が煙草を吸っている姿を見ていなかった。
「ああ……辞めた」
思いも寄らない答えに、岡部は驚く。
「どうしたんだよ、一体ーーだから雨が降りそうなのか」
「失礼なやつだな。何か、吸う気にならなくなったんだよ……」
妙に照れくさそうに答える加藤がおかしくて、岡部はクスリと笑った。
「そっかーーー」
「おっと、帰れコールだ」
ズボンのポケットから携帯を取り出し、メールを見ると加藤が呟いた。
「じゃあ、俺も署に戻るわ」
「ああーーー」
手を挙げて踵を返し歩き出した加藤をしばらく見つめていると、不意に岡部は声を掛けた。
「おい、加藤!」
ピタリと歩みを止めて、加藤が振り返る。
「ーーーありがとな……」
今にも崩れそうな岡部の姿に、加藤は一瞬口を開きかけてすぐに噤んだ。
一旦言葉を飲み込むと、にやりと笑い大きな声で言った。
「気持ち悪い事言うんじゃねえよ! 俺に迷惑掛けたんだ、今度一番屋の焼き肉奢れよ! じゃあ、またな!」
くるりと背を向けて、颯爽と歩いて行く親友の背中に、岡部は深々と頭を下げた。
加藤がいてくれて良かったと、心の底から思った。
ポツリと岡部の肩に雨つぶが落ちる。
曇り空を眩しそうに見上げ、岡部は呟いた。
「急ぐか……」
そして小走りに岡部は近くの川を目指した。
ヒューと冷たい風が吹き抜けて、岡部はぶるりと身震いをした。
寒空の土手に人影はなく、岡部ただ一人がその空間の住人だった。川の水は汚く濁り、魚がいる事が不思議な程の色をしている。
岡部はじっと地面を見つめた。
自分の所為で殺された、本村理恵の事を思い出しながら。
一体どんな事を思いながら大好きな親友に殺されたのだろう。苦しかっただろうか、それとも痛みを感じる事無く息を引き取ったのだろうか。
土手にはたくさんの花が手向けられ、中には手紙やぬいぐるみ、ジュースやお菓子、手編みらしいマフラーなどもあった。死んでしまった者にはそれに触れる事も、礼を言う事も出来ないというのに、それでも人は誰かが生きていた事を大切にする。
そう、人の命はそれほど尊いものなのだ。
苦しむ胸に顔をしかめると、何かが目の端に映った。
「んーーー?」
目に留まったのは一枚の絵はがきで、無意識のうちに手に取ると岡部は何気なくその絵を見た。
一面真っ赤な色をした砂漠の中に、真っ赤な太陽と雲が浮かんでいる。全てが気色悪い程の赤色の絵だった。
どこかで、見た事があるな。
ふとそう思いながら、岡部はその絵はがきを裏返し何気なく書いてある文を見た。
!?
そこには見慣れた几帳面なボールペン字で、こう書かれていた。
私の世界はいつも赤い
あなたはいつも黄金色
走っても走っても追いつけない
あなたは吐き気がする程まぶしいのに
私は吐き気がする程紅い血の色
走っても走っても赤い世界
どろどろと溶ける紅の世界
そばで笑ってくれる
ただそれだけなのに
あなたは永遠に
私のものにはならない
神様どうか
私を殺して下さい
「私を……殺して……下さい」
ぐっと絵はがきを握りしめ、岡部は天を仰いだ。
死は何も解決してはくれない。人は生きるために生まれてきたのだから。
生まれてきた事には、必ず意味があるのだから。
本格的に降り出した雨は岡部の体を容赦なく濡らし始めた。
まるで、岡部の瞳から流れる涙をごまかすかの様に。
了
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