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波江・後日談

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私のやんごとなき王子様












〜後日談〜






 演劇祭と共に暑い夏が終わると、すぐに秋は訪れた。

 感傷にひたる暇も無く私達3年は受験シーズンを迎え、年が明ければ卒業まではあっという間だった。


 今や私は大学生となり、潤君は2年生だ。

 早くも後輩の間ではファンクラブなんかも発足されてしまったらしい。

 新緑の中、私は久しぶりに慣れ親しんだ元通学路を通って星越学園へと向かっていた。

 今日は中間考査の最終日で、学校が早く終わるから一緒に映画でも行きませんか?と潤君が誘ってくれたのだ。

 私も今日の午後は大学の講義が無い日だったので、喜んでその申し出を受けた。


 学園の前で潤君が来るのを待つ。

 校門に立つと、さなぎの元気な声が耳に蘇る。


『おっはよー、美羽!』


 さなぎとは今だって毎日のように電話してるし、週に1度は会っている。なのに妙な懐かしさが胸を支配した。


「おい! あの人、すっげー綺麗じゃね?」

「ばっか、お前知らないのかよ! 去年の演劇祭でオディールだった人だぞ!」

「マジで!?」


 ふいにそんな声が耳に入った。

 ――ってもしかして私の事?

 チラッとそちらの方を見ると、声の主とバッチリ目が合ってしまった。

 気まずい……し、恥ずかしい。だって私は綺麗なんかじゃないし、それに――


「美羽さーーーん!」


 遠くから届いた私を呼ぶ声が、悩みモードに入りかけた私の気分を一瞬にして跳ねあがらせた。

 視線を馳せると潤君が大きく手を振りながら、こちらに向って走ってきていた。


「潤くーーーーん!」


 私も大きく手を振り返す。

 潤君は爽やかに笑いながら私の前まで来ると、すぐに私の手をとり歩き始めた。


「すみません! お待たせして。さ、行きましょう!」

「うん! っていうか大丈夫? 息、あがってるけど」


 全速力で走って来た潤君は、少しだけ息が弾んでいた。


「平気です! ちょっと急いで来ただけですから。それに――」

「それに?」

「校門にいたやつら、すっごい美羽さんの事見てたから。あいつらに見せる分なんて微塵もないですから!」


 そう言って潤君はおどけたように微笑んだ。

 その表情を見て私も自然に顔がほころぶ。

 でもね、潤君――

 あなただって、周りの女の子にすっごい見られてたんだよ?

 去年までは潤君はどこか可愛さの残るあどけない顔立ちだった。けれど今はどこからどう見てもカッコイイ男の子に成長している。身長もまた伸びたんじゃないかな?


「僕、すっごい楽しみでしたよー!」


 歩幅を私に合わせてゆっくりと歩く潤君。

 私の事を‘先輩’と呼ぶのはやめてくれたけど、敬語はまだ直らないみたい。

 でもそんな潤君を私は心から愛しく思う。


「私も。潤君とならどこへ行くのも何をするもの楽しみ!」


 これからもずっとこうして歩いていこう。


 手を取り合って、二人で――――











 私のやんごとなき王子様 ――波江編――   了







読まなくてもいいやん王『あとがき』



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