チェンジ・ザ・ワールド☆
土屋・後日談
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私のやんごとなき王子様
〜後日談〜
「よっ……とととっと……」
両手いっぱいに画材を抱きしめた私は、落さないように気をつけながらレジへと向かっている真っ最中。
「よいしょっと……これだけお願いします」
「はい、有難うございます」
何とかレジへと到着して、画材をドサドサと置いていく。
私が今いるのは、演劇祭の準備期間初日に土屋君と来たあの画材屋さん。
演劇祭以来すっかり私も絵を描く事にハマってしまって、今では毎日絵筆を握っている。
お店のおばちゃんが品物を一つ一つレジに通していくのを眺めながら、あそこはこの色を使おう、あっちはこの筆がいいかな? なんて考えている時間も楽しい。
「有難うございます、全部で――」
「支払いは土屋に回しておいてくれ」
後ろから突然かかったその声に、私は瞬間的に振り向いた。
「土屋君!」
「美羽、買い物に来るなら僕も行くといったろう?」
「だって……」
だって一緒に来ると全部土屋君が支払ってしまうんだもの。
画材なんて決して安い買い物では無いのだから、毎度毎度そんな事させるわけにはいかない。
「だってじゃない。支払いは土屋家に」
「かしこまりました」
「すみません」
こんな私達のやりとりを、このおばちゃんに見せるのはもう何度目だろう。本当にいつも申し訳ない。
「さ、行くよ」
そう言うと土屋君は、右手で画材の沢山入った紙袋を持って颯爽と店を出て行ってしまう。
「待って! 土屋君!」
私はおばちゃんに会釈を一つすると、慌てて土屋君の後を追った。
「土屋君! せめて荷物くらい持たせて」
何とか土屋君に追いついてそう言うと、彼は実に不機嫌そうな顔で私を見つめた。
「君にこんな重たい物を持たせるだなんて、何を考えているんだ? 君がこんな物を持つだなんて、あり得ない。君には似つかわしくない」
なんて事を言っている。
私を最初に荷物持ち扱いしたのはどこのどなたですか!? なぁんて突っ込みたい気もするけど、そんな事も全部懐かしい。
「君の手が触れるものは決まっている」
「何?」
私の問いに土屋君はとても綺麗な笑顔で言葉を紡ぐ。
「絵筆と僕の左手さ」
そうして空いている方の左手を私に向けて差し出した。
私は無言のまま、だけど込み上げる笑みを抑えられないで微笑みながら、その左手をそっと握りしめた。
――――演劇祭の時に土屋君が描いた白鳥達の湖は、その後‘新生 土屋奏’の芸術として注目され権威のある美術賞を受賞した。
土屋君へのマスコミの注目度はそれまでとは比べ物にならないほど高くなって、土屋君の新作が完成する度に大勢のマスコミが押しかけてくる。「さすがは土屋家のご子息!」なんて言いながら。
でも当の土屋君はそんな事、気にも留めてないみたい。
「僕は僕の描きたい物を描くだけだよ。そしてそのイマジネーションはいつも――美羽、君がくれるんだ」
そんな風に笑ってる。
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