アットウィキロゴ
チェンジ・ザ・ワールド☆
掲示板 掲示板 ページ検索 ページ検索 メニュー メニュー

チェンジ・ザ・ワールド☆

そうですね

最終更新:

streetpoint

- view
管理者のみ編集可
そうですね











  「あっ!?」

 仕事を終え、いざ帰ろうと車のキーを片手に重たい荷物を肩に掛け、職員玄関で靴を履いた瞬間だった。

 私は教頭に頼まれていた仕事の書類を机の上に忘れて来た事を思い出し、思わず叫んだ。

 静かな玄関はかなり大きく私の声が響いて、慌てて口を抑える。

「どうかしましたか?」

 急に声をかけられ、私は叫び声を聞かれていたという恥ずかしさを誤摩化すように爽やかに振り返った。

 そこにいたのは、丁度部活が終わったらしい、幸村精市君だった。

 少し驚いたような顔をして、次に美しい顔で微笑むと私の側までやって来る。

「あ、幸村君。お疲れ様。部活は終わったの?」

「はい、これから職員室に鍵を返しに行く所です」

 これはチャンスと、私は書類の事を頼んでみた。

 だって靴を脱ぐのがちょっと面倒だったんだもん。

 そんな私の我が儘に対しても、幸村君は中学生とは思えない落ち着きぶりで頼みを聞いてくれた。

「ありがとう、帰りはお礼に車で送ってあげるから」

「それは得しました。じゃあ、駐車場で待っていてください」

「うん、ごめんね。よろしく」

 なんて出来た生徒なんだろう。

 爽やかな笑顔を残して去って行った。

 幸村君の担任の教師とは仲が良くて、彼の事は少し聞いたことがある。なんでも難しい病気を抱えているんだそうだ。

 テニスみたいな激しいスポーツをやっているのは心配なのだけど、近いうちに手術を受ける予定なのだという。

 手術を受けたから確実に治る保証はないらしいけど、幸村君は“神の子”なんて呼ばれちゃう位テニスが強いから、周囲のプレッシャーなんかで自分を追い込んでるんじゃないかな。


 駐車場へ向かい、車の鍵を開けて乗り込む。

 思春期の少年には、難病というのは果てしなく重たくて高い壁のように感じる事だろう。

 って、私ってばそんな病気を抱えている幸村君に荷物取りに行かせちゃった! 最悪!!


「お待たせしました」

 私が一人後悔で頭を抱えていると、幸村君がやって来た。

「うわわっ! 本当にありがとう! ごめんね、横着しちゃって。さ、乗って乗って! あ、ついでにお腹空いてたらコンビニでおごってあげるよ」

「いいえ、大丈夫です」

 うむ。笑顔が爽やかすぎる。




 車を走らせ、私は隣りで静かに前を見ている幸村君の横顔を伺う。

 本当に綺麗な顔をした子だな。

 勉強も出来るし、テニスは全国区。おまけに見た目も綺麗だから女子にももてるだろう。

 こんな息子がいたら、きっと自慢しちゃうなあ。

 って、さっきから私ったら一人で変な事ばっかり考えちゃってる! えっと、何か話さなきゃ。

 ええっと……

「あの、お母さ……あっ」

「ーーーーーへ?」

「あっ、いえっ、その……」

 突然聞こえた単語に、私は一瞬思考を停止した。

 そして次に、慌てる幸村君を見て爆笑した。

「……あははははっっ!! やだもう! 幸村君ったら! 私、そんなに老けて見える!?」

「いえ、違いますっ、その、ま、間違えて……」

 こんな幸村君を見たのは初めてだ!

 いつも冷静で、静かで憂えた表情をしてて、たまに意地悪っぽい顔になる事は知っている。だけど今の彼の顔は違う。少し赤くなって焦っているのだ。

 そうだよね、恥ずかしいよね。だって先生に向かって『お母さん』だなんて!

 こういう所はやっぱり普通の中学3年生の男の子なんだなあ。

「いいのいいの! 私も言った事あるから。昔担任の先生に『お父さん』って!」

 そう、私も経験したことがある。

 これは誰しも経験する可能性のある間違いなのだから、気にする事なんて少しもない。

「私が先生の事お父さんって言った時、先生はこう言ったの。『学校にいる間は先生は皆のお父さんなんだから、お父さんと呼んだって間違いじゃないぞ』って。だから、私もそう思うようにしてるんだ。でもまあ、私はまだ20代だからお姉さんのつもりだけどね」

 そう言って笑うと、幸村君も笑った。

「そう、ですね」

「そうですよ。だから、今度間違う時は『お姉ちゃん』でお願いします」

「はい」

 どうか、彼の手術が上手く行きますように。






                           END







※あとがき※

どうしましょう。ギャグにするつもりが、どうやら幸村君の呪いがかかったみたいです!(笑)
先生用に猫を被ったバージョンで、妙に爽やか可愛くなってしまいました。
ていうか、管理人、中学の時に先生に間違って「お父さん」と言いました(笑)
めっさ恥ずかしいですよねー!
でも、書いた通りの事を言われたんですよ。すごいな、先生って思いました。まあ、ちょっと変わった先生でしたがw
それでは、最後までお付き合いくださいましてありがとうございましたっ♪
絵はそのうち… 




ブラウザを閉じてお戻りくださいv
立海妄想バトントップへ戻る
最近更新されたスレッド
ウィキ募集バナー