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君依存症

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streetpoint

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君依存症













 逃げた。

 私は生徒会室の跡部景吾から脱兎の如く逃げ出し、走り抜ける廊下の途中で気が付いた。

「やだ、プリント全部終わってない!」

 なんてこったい! オーマイガー! でもでも、今あの男の所へ戻るのは自殺行為! どうしよう!
 と、頭を抱えていると、ポンと肩を叩かれた。

「どうしたんや?」
「あ、忍足」

 同じクラスでテニス部の忍足侑士が、怪訝そうな顔で私を見ている。

「いや、ちょっと、生徒会室に用事が残ってるんだけど……」
「ああ、お前、何や知らんけど跡部のやつに呼び出されとったな。文化祭の仕事頼まれとったんか?」
「うん」
「はあ、そらお疲れさん。で? 何でそれが頭抱えて廊下のど真ん中で一人劇場やってんねん」

 一人劇場? 私ったらそんな奇妙な動きしてたのかしら? ありえない。恥ずかし過ぎる。これも全部跡部の所為ね!

「あっ、ちょうど良かった。忍足、あなた暇? ちょっと生徒会室まで一緒に来てよ」

 そうよ、一人じゃないなら問題ないわ! さすがに跡部も忍足がいる前で襲っては来ないでしょ! 我ながら名案。

「はあ? なんで俺が一緒に行かなあかんねん。これから帰るっちゅーのに」
「もうすぐ仕事終わるのよ、でも、それには私一人の力では出来ないの!」
「お前ますます分からんわ。ーーーまあええか、そない必死な汐屋見た事あらへんし、手伝うちゃるわ」
「本当にー! ありがとう忍足! このお礼は必ずっ!」

 かくして私は忍足というお供を連れて、鬼退治……もとい、跡部のいる生徒会室へともどった。
 それによく考えたら鞄とか荷物一式忘れてるのよね。やっぱり跡部の所為だわ!






 生徒会室に戻ると、相変わらず真面目な顔で跡部は仕事をしていた。ノックの後に開いたドアから私と忍足が現れたのを見て、少し驚いた顔をしてた。

「よお、跡部。仕事はかどっとるか?」

 こういう時、忍足のひょうひょうとした口調は助かる。私は何事も無かったようにソファに座り、残ったプリントを片付けて行った。

「なんだ忍足。何でお前が汐屋と一緒にいるんだ?」
「何でって、まあ、さっきそこで偶然会うたんや。お、汐屋、これ封筒に入れたらええんか?」
「うん、ありがと」

 隣りで私がまとめたプリントを封筒に入れてくれる忍足を横目に、その向こうにいる跡部の様子を伺う。
 何かちょっと空気がピリピリしてる気がする……

「おい、忍足」
「なんや?」
「お前は帰れ」
「なんでやねん」
「その仕事は汐屋の仕事だ。お前が手伝う必要はない」
「固いこと言いなや。どうせもう終わるんや、なあ、汐屋?」

 その通り! 跡部と二人っきりなんて本当に本気で自殺行為!!
 私は激しく頭を上下に降った。
 やっぱり何か跡部の機嫌は悪いみたいで、残りのプリントをきっちりと封筒に入れ終わるまでずっと痛い視線を横っ面に感じてた。

「よし、終わりっ! それじゃあ、忍足ありがとう。帰ろっか!」

 勉めて明るく言って立ち上がると、忍足もゆっくり立ち上がった。そして跡部をゆっくり振り返り、

「ほな、汐屋送って行くし、お疲れさん」

 そう言って私の肩に手を回して生徒会室を出た。
 ああ、やっと終わったわ。荷物も無事取り返せたし。忍足様々!!

「本当に助かった、ありがとうね、忍足!」

 廊下から下駄箱まで来ると、私は満面の笑みで感謝を述べた。だって本当に助かったんだもの。

「別にええよ。しっかしまあ、あんたもえらい男に目ぇ付けられて大変やな」
「え?」
「ぷっ、まあ、何か困った事があったらいつでも言いや。相談乗るし」
「う、うん? ありがとう?」 

 忍足の言っている意味は良く分からないけど、跡部のいじめの相談に乗ってくれるってことかな?

「ほな、お姫さんを送るとしますか」
「いいよ、別にっ」
「まあ、そう遠慮せんと、ほら、行くで」
「あっ、待ってよ!」



~~~



 ちっ、忍足。ムカつくやつだ。俺様の邪魔をするとはな。
 俺は誰もいなくなった生徒会室で、二人が出て行ったドアを一瞥して椅子に座った。
 しかしいつからだろう。俺があいつ……汐屋和葉の事を気になり出したのは。俺様のファンは学園に山程いるが、あいつ一人だけ空気が違っていた。
 特別ファンだと公言していない連中でも、俺様を見かけると大なり小なり反応を示すが、あいつだけはあからさまに嫌悪感を俺様に向けていた。最初は面識も無いのに失礼だ、ムカつく女だと思っていたが、廊下で見かけた時はつい目で追っていた。
 何としてでも俺様の目の前で謝罪させようと思っていたはずなのにーーー
 窓の外に目をやると、楽しそうにあいつと忍足が並んで帰っている。

「ちっ……」

 取りあえず、覚悟しておいてもらおうか。俺様はお前依存症になってしまったんだからな。





                             END  2011.12.16














あとがき

最後までお読み頂き、ありがとうございましたー!
お題は「君依存症」でした。
随分前に書いていた話しの続きとして書いてみたんですけど、なんか続きそうな予感w
跡部嫌いな女の子の気持ちが変わって行ってくれるといいなあ…




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