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ゆびきり.4

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“ゆびきり” の、げんまんとか針千本とかゆびきったって言葉は怖い










 「うおいっ、どこに行くんだ!?」

「取りあえず逃げましょう」

「いや、逃げる必要があるのかってことが聞きたいんだよ!」

「え? せっかく鬼があんなにたくさん追いかけてくれているんですから、逃げなきゃ」

「鬼ごっこかよっ!」

「大人になって鬼ごっこなんて滅多に出来ませんから、貴重な体験ですね」


 そう言って楽しそうに笑う。


「あっちに行きましょう」


 操が向かったのはパチンコ店。人の出入りも多いし、追っ手をかく乱させるつもりなのだろう。

 店内をぐるりと一周し、裏口から外へ出る。裏道をずっと長屋沿いに走ると、川が見えてきた。

 その手前の駄菓子屋に走り込むと、操は酢昆布とお菓子を大量に素早く買う。

 川伝いの道に出てそれらを左右の道に投げ、いつの間に取ってきたのか、パチンコ玉を懐からじゃらじゃらと取り出し地面にバラまく。そして今度は別の路地に入り込んだ。


「おい、どこまで行く気なんだ!?」


 土方はゼイゼイと肩で息をしているが、操は全く息も切れないどころか笑顔のままだ。


「こっちです」


 近くにあったゴミ箱に飛び乗り、民家の屋根へと上がると、操はどこから取り出したのかお妙のブロマイドの束を川へとばらまいた。

 そして土方の手首を握り、隣りの屋根、また隣りの屋根へと飛び移って行く。まるで忍者だ。


「おいっ! お前、俺は仮にも警察だぞ!」


 こんなめちゃくちゃなことさせんじゃねー!!


 と怒鳴りたい所だが、如何せん慣れない動きについて行くのが精一杯で、それどころではない。


「パチンコ玉はさっきお店の中を走っている間に落ちてたのをちょっとお借りしただけです。後で集めて返しに行くので心配しないでください」

「あのなぁ」


 呆れる土方の後方から、叫び声が続々飛んで来た。


「うっきゃーーー!! 酢昆布! お菓子がいっぱい! 夢の国アルーーー!!!!」

「わん!」

「うわっ!? パチンコ玉が巻かれてるぞっ!? あぶねっ!?」

「銀ちゃん、ちょっと邪魔しないで欲しいアルよっ! うわわ! 滑るアルっ!!」

「チャイナ娘、邪魔をするなあっ! どけっ! お妙さんのお写真がっ、水に濡れてしまうーーー!!!! お妙さんを濡らすのは、この近藤勲の仕ごふっ!!!!」

「黙れゴリラアアアア!!!!! あたしにも写真にも触るんじゃねえっ!! このっ! このっ!!」

「待ってくれお妙ちゃん! その写真は僕がっ!」

「くそっ! てめえら何しに来やがったんだ!? 操を見失ったじゃねえかっ!」

「銀時っ! 操は屋根の上だっ!」


 後ろを振り向くと、操がお菓子とパチンコ玉をばらまいた辺りで神楽と定春が戦線離脱し、ブロマイドを拾いに行った近藤とそれを阻止しようとするお妙と九兵衛は川でリタイアしている。

 うまく逃げられるかと思ったが、屋根に逃げた二人を桂が目敏く発見し、銀時に報告している。

 次ぎに操が取り出したのは銀時の写真。

 ふいっとその写真を空に掲げると、黒い影が横切り写真を奪って行った。


「きゃあァァァァ!!! 銀さんっ! 銀さんの生写真だわっ! しかも半裸っ!!」


 さっちゃんが大喜びでそれに飛びつき、幸せそうに頬擦りしている。


「お前、いつの間にあんな写真撮ってんだ?」


 呆れる土方に、操はあっけらかんと答えた。


「お妙ちゃんのは九兵衛さんの所の北条さんに頼まれたんです。銀時のは、家賃を滞納しているのを少しでも稼いでもらおうと思って、さっちゃんに売るつもりで数日前に撮ったばかりです」

「お前、それ、犯罪だぞ……」

「お妙ちゃんはちゃんと頼んで撮らせてもらったし、銀時も一応頼んで? 撮らせてもらったし、脱ぐように強制してないんで盗撮じゃないですよ?」


 天パの場合は頼まれてというか、自ら喜んで脱いだんだろうな……。


「おいコラ! てめえっ! 何勝手に人の写真に頬擦りしてんだあっ!? 気色悪ぃことしてんじゃねえっ! 離せ、このっ!!!」


 自分の写真を舐めるさっちゃんに見事なドロップキックをかまし、屋根から蹴落とした銀時。その姿を見て、土方は何故か銀時が哀れに思われた。


「うーん。まだ銀時と小太郎とエリザベスが残ってますねえ」


 二人を追って屋根の上を走って来る連中をちらりと振り返る。


「って、こらあァアアアアア!!!!! 隠れ肥満野郎ーーー!!! 離せ! 今すぐその薄汚い手を操から離しやがれえェェェェェ!!!!」

「誰が隠れ肥満だコラァっ!」


 失礼な銀時に土方がツッこむ。

 厳密に言うと、操が土方の手を握っているので、土方から手を離す事は出来ない。そして銀時の罵声の横で、桂が楽しそうに高笑いをしていた。


「あっははははは! 楽しいな! 銀時! 子どもの頃を思い出すぞぉっっ!!」

「うるっせえぞ! てめえ何しに来たんだよっ!? 邪魔だから帰れ! このバカっっ!!!」

「バカじゃない、ヅラだ! ーーーあ、違った、桂だっ! 貴様この俺が操の居場所を教えてやった恩を忘れたのかっ!?」

「だから、鬼ごっこじゃねえ! っつってんだろーが!!!!」 


 相変わらずバカなやりとりをしている二人を差し置いて、操は


「子どもの頃、よく鬼ごっこしてたんですけど、私が鬼になると皆すっごく怖がっちゃって、いつも逃げる役ばっかりだったんです。それで、鬼になりたくてわざと捕まるようにしてたんですけど、どういう訳か避けられるんですよね……」


 悲しそうに呟いた。

 恐らく操が鬼になると、全員完膚なきまでに叩きのめされるので回避していたのだろう。と、土方は思う。


「でもこんなに真剣に追いかけてもらえるなんて、嬉しいです」

「おいおい……」

「てめえら、いつまでも逃げられると思ったら大間違いだぞぉ!!」


 銀時が叫ぶと、突然二人の目の前に壁が現れた。


「ごめんなさい、操さんっ! 土方さんっ!」


 半泣きの新八が家政婦ロボットのたまに乗り、大きな網をこちらへ向かって投げてきた。


「危ない、土方さんっ!」

「うおっ!?」


 操は素早くしゃがみ込み、土方を屋根の下へと突き落とした。


 ドスン!!


 丁度落ちた所に段ボールが摘んであったおかげで、土方はそのクッションを利用して地面に立ち上がった。

 直ぐさま上空を見上げると、操が何事も無かったかのように飛び降りてきた。


「ごめんなさい、手荒な事して」


 そう言ってまたすぐ土方の腕を掴んで走り出す。


「大丈夫なのか?」

「ええ、取りあえず網には小太郎とエリザベスを巻き付けて、銀時はたまに投げつけたので少しは時間が稼げると思います」

「ーーーそ、そりゃあ良かった……」


 一体どんな事をしたのか、想像するのがためらわれたので、土方は黙って操に従った。




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