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チェンジ・ザ・ワールド☆
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Confusion.4

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Confusion












 気付けば受験も終わっていた。

 オレはなんなく西浦高校に合格し、目出度く桂と揃って高校生となった。

 オレ達は高校に入ってやりたいことがあった。それは、新しい野球部で甲子園を目ざす事。

 もったいないと思ったが、桂はプレーヤーとしてではなくマネージャーを希望していた。女では甲子園に出場することは出来ないから、せめてマネージャーとして一緒に戦いたいというのが桂の希望だ。オレとしてはずっと一緒にいられるし、オレが決めた道を歩いてくれると言う桂の気持ちが素直に嬉しかったりした。

 受験も終わった春休み、オレと同じ中学だった栄口と桂の3人は西浦高校に顔を出して練習をしていた。

 ソフトボール部しかなかったこの西浦高校に、今年から野球部が新設された。一年生しかいないというのはやり易くはあったが、不便でもあった。

 おまけに指導者が女。百枝マリアという、そこらの男よりも野球に詳しい監督だ。

 桂はアメリカでの経験を買われ、練習の時も一緒になって泥まみれになっていた。打撃投手やボール拾い、ノックやキャッチボール。そしてキャッチャーであるオレのため、投手も努めてくれた。結構良い球投げるんだよな、これが。

 そうこうしているうちにあっという間に春休みも終わり、新学期が始まった。



 グラウンドに集まった面子を見渡しながら、監督が挨拶をする。

 一人一人ポジションを聞いていく中で、一人やたらと背の高い男が文句を言い出した。

 監督が女だというのが気に食わないらしい。ま、分からないでもないけどな。

 そこで監督がバットとボールを持ってオレに言った。



「キャッチ!」


 キーン!!


 高く高く垂直に飛んでいったボールを、オレはしっかりとキャッチした。


「ーーライっ」


 それを見た入部希望者達が驚く。

 ノックでキャッチャーフライを上げるのは技術がいる。ましてや垂直に上げるのは難しい。そして監督は次にダグアウトに置かれた大きな袋からオレンジを取り出し、両手で握りつぶしてジュースを作った。文句を言っていた男は震えながら手渡された絞り立てのオレンジジュースを飲む。

 マジでこれは初めて見た時ビビったもんな。桂の事もあるし、女だっていうのは大した障害にはならないって身をもって知った。

 どうにか監督の言葉を全員が聞く状態になり、ピッチャー出身と言う、妙に挙動不審な細っこい男の球をオレは受けてみる事にした。

 マウンドに立つ姿は相変わらず挙動不審だ。

 随分と球が遅くてヘボだと強調するそのピッチャーを説得し、マスクを被って座る。

 まずはストレート。


 1球


 2球


 ・・・・・・


 球を受けつづけるうちに、オレは身震いを感じた。


 こいつは!!


 何てことだ。こいつは、オレが構えた所にピシャリ、ずれる事無く球を投げて来る。おまけにストレートが癖球らしい。


「桂!」


 オレはヤロー共の興味津々な視線を受けていた桂を呼んだ。見るんじゃねえ。と怒鳴ってやりたい所だが今は我慢。


「なに?」

「バット持ってここに立ってみてくれ」

「うん」


 桂はヘルメットを被って打席に入った。

 オレはピッチャーの元へ近づき、小声で言った。


「オレが構えた所にまっすぐを投げてくれ」

「う、うん」


 セットポジションから投げられた緩いストレートは、パシンと音を立てて俺のミットに収まる。

 ピクリと桂の体が反応する。


「……もう一球」


 真剣な顔つきに変わった。久しぶりに見たな、打者としての桂の目。オレは返球し、もう一球桂の好きなインコース高めにミットを構えた。

 シュッと投げられたボールは、寸分の狂いも無くオレのミットに収まる。じっとボールが収まったオレのミットを見ていた桂が、ニッコリと笑った。


「すごい」


 オレはニヤリと笑い今度はさっき監督について文句を言っていた背の高い男を挑発した。この手のタイプは扱いやすいから楽だ。

 予想通りオレの挑発に乗って来た男にバットを渡し、桂がそいつと入れ替わる。

 このピッチャーからヒットを打てたら入部しなくていい。と言ってバッターボックスに立たせてやった。

 ピッチャーに変化球の確認をしに近づくと、カーブ、シュート、スライダーが投げれると言う。オレはサインを決めてマスクを被る。

 緩い球を見て簡単に打てると思っているらしいが、そう簡単にはいかない。オレの配給とこのピッチャーのコントロールがあれば、こんな単純なパワーヒッターなんか訳なく打ち取れる。


 オレの読みは当たり、簡単にアウトをとることが出来た。

 納得いかないと息巻いている男を他所に、オレは興奮していた。

 こいつは面白い野球部が出来そうだ。

 オレの期待は膨らんだ。

 このピッチャーをオレがコントロールすれば勝てる。榛名みたいな首を振るピッチャーはいらない。ピッチャーはただバカみたいにオレのサインに頷いていればいいんだ。

 嬉しさを抑えきれないオレは、様子を見守っていた桂に力いっぱい抱きついた。


「ちょっと、どうしたのっ!? 苦しいよっ!」

「桂、一緒に頑張ろうぜ!」
















 マネージャーは篠岡千代と桂の二人。どちらかと言えば桂は他校のデータ収集、篠岡が雑用全般を任されているようだ。

 篠岡も中学時代はソフトボール部に所属していたらしく、野球にはかなり詳しかった。ーーーとうか、高校野球オタクだった。

 桂はオレ達の予選で戦う対戦相手の学校に出向くなどして走り回っていた。おかげで毎日オレよりも帰りが遅い。待っていると言うのだが、早く帰って体を休めろと怒るので仕方なく先に帰っている。それでも心配で桂が帰って来るまで落ち着きはしないのだが。

 そんなある日のこと。



 「おい、桂。お前今日も遅いのか?」


 部室から出た所でしゃがみこんで必死にDVDプレーヤーを睨んでいた桂にオレが声をかけると、桂は無言で頷いた。


「……水谷で最後だから、あいつが出たら部室使えるぞ」

「うん、ありがと」


 今度の対戦相手の練習試合のビデオを見ているらしい桂は、家での作業はしない。寝てしまうから部室でやるんだそうだ。

 オレの言葉を理解したのかどうかは分からないが、取りあえずありがとうと言葉が帰ってきたので先に帰ることにした。


「あんま遅くなるなよ」

「うん、分かった」

「じゃあな」


 オレが荷物を持ち直して歩き出した所で水谷が部室から出てきた。


「おー、阿部。帰ろうぜ。あ、桂、またデータ集め?」

「あ、うん」

「ありがとな。あんま遅くならないようにしろよ」

「うん」

「お先!」

「おつかれー」


 水谷がこちらにやって来るの待ちながら、オレは桂が相変わらずビデオを見ながら部室に入って行くのを目の端で確認した。水谷もそうだが、部活の連中は三橋以外全員桂の事を「けい」と名前で呼ぶ。オレが呼んでいたから、同じ中学以外の連中は名字だと思ったらしく、自己紹介の前にすっかり桂で落ち着いてしまったのだ。なんとなくムカついたが、それくらいでキレてたら桂の幼なじみなんてやってられないからすぐに腹を立てるのをやめた。オレが一緒にいれば取りあえずは安心だと高をくくっていたのだ。

 そしてこの時、オレは桂と一緒に残らなかったことを激しく後悔することになる。
















 夜の11時半近くになって、桂は帰ってきた。


「お前遅すぎるぞっ!? 何時だと思ってんだよっ!」


 すっかり夕飯も風呂も終えたオレが玄関で仁王立ちで桂を睨みつける。


「ごめん、思ったより時間かかっちゃって……」

「お前は女なんだから、あんまり遅い時間に出歩いてたら危ないだろうがっ!」

「ーーー隆也、お父さんみたい」

「やかましい! 反省しろっ!」

「反省してるよっ。これから気をつけるから」

「はあ~。オレも一緒に残れば良かった」

「大丈夫だよ。今日は榛名君が一緒だったし」


 ーーーーーーーーは?


 オレは今幻聴が聞こえたらしい。

 桂の口から出たヤローの名前に、耳の穴を小指でほじくる。怒っていると思ったらしい桂が、もう一度靴を脱いで揃えながら言った。


「えっとね、部室で作業してる時に榛名君から電話があって、丁度帰ろうとしてた頃だったから途中で合流して。それで、送ってもらった」


 目の前で笑顔で言う桂に、オレは怒りをあらわにした。


「おっまえ、榛名と二人っきりになるなって言っただろ!?」

「でも普通にお話ししながら送ってもらっただけだよ? それに、隆也が西浦の事話すなって言うから、まだどこの高校か教えてないし。榛名君って、制服見てもわかんねーって言ってたからバレてないよ」

「そーゆー問題じゃねえ!」

「隆也最近怒ってばっかりだね」

「誰のせいだっ!」


 榛名の野郎。オレの知らない所でポイント稼いでやがるな!


「お前明日から学校にひとりで残るの禁止だ!」

「ええ~?」

「ええ~? じゃねえっ!」


 絶対絶対榛名のヤローなんかに渡してたまるか!






                END






もう、一体何年前に書いただろう……
というくらい、昔のものを引っぱり出しました。
一応花井編も書いてます。でも、花井は桂ちゃんの事が好きではありませんw
SSもちょっと書いているので、それも近いうちにアップしたいと思います。

それでは、ここまでおつきあいくださいましてありがとうございました!!



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