チェンジ・ザ・ワールド☆
act.7(春日)
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就職難民 黙って俺についてこい!
なんとか見られる顔になった私は、春日さんと美容部の女性、背が高くて綺麗な人が和田さん、小柄で可愛らしい人が田村さんの4人で近くの商業施設へとやってきていた。
化粧品を取り扱う店舗の店長と、チーフスタッフの前で新製品の試作品を取り出し、和田さんが田村さんに化粧をして行く。
「今回の美成堂の新製品は、日本人の肌になじむコーラル系を一番の売りにしています。色んな肌質の方に合わせた全6種類で、見てお分かり頂けるかと思いますが、パールを配合し、より立体的で美しくふっくらとした唇に見せる3D効果を出しています」
どんどんと商品の説明をする春日さんの姿に、私は営業部のトップだという事を実感していた。
店長とスタッフが真剣な表情で春日さんの説明を聞き、より可愛らしくメイクをされていく田村さんの顔を見つめる。
すごいなあ、春日さん。私だったらきっとしどろもどろになっちゃう。それだけ新製品に自信と信頼を持っているから堂々と説明出来るんだろうけど、それだけじゃない。春日さんの言葉ひとつひとつが聞く人を惹き付ける魅力を持っているからなんだ。
「あの、ちょっと私も使ってみていいですか?」
チーフスタッフが尋ねると、春日さんは私には見せた事の無い笑顔で頷いた。
うわ、営業スマイルって分かってる。分かってるのにすごく可愛い! ―――って、何考えてるのよ、私っ!!
「どうぞ、せっかくですので、うちのスタッフにメイクをさせましょう」
「はい!」
そしてどんどんと美しくメイクアップされていく自分を見て、チーフスタッフは目を輝かせた。
「素敵です! このグロスはナチュラルだけどしっかり存在感も出ていて、魅力的な唇に見せてくれるんですね! 私も欲しい!」
「ありがとうございます。まだ試作段階ですので、出来上がりはもっとお客様にも満足して頂ける商品になります」
「今度の新作は是非、店舗入り口に美成堂さんのグロスを置かせていただきます」
店長もとても笑顔だ。こんなにも会社の商品を喜んでもらえるのが嬉しいなんて、思いもしなかった。
春日さんって、凄い……私も頑張らなくっちゃ。
その後、別の商業施設の店舗へ向かい、春日さんは見事な営業をやってのけた。
会社へ戻り、和田さんと田村さんと別れた後、私と春日さんは営業部へ戻って来た。
「どう? 少しは営業の仕事がどんなものか分かった?」
「はい、とても勉強になりました」
「まあ、あんたには僕みたいな営業トークは期待してないから、明日からはそのひどい顔さえしないで出社してきてくれればそれでいいよ」
何も言い返せない。もう寝不足でクマなんてことは気をつけるけど、期待してないなんて言われるとすごくくやしい。けど、春日さんみたいに上手に相手の心を掴む話術が出来るようになるとは思えない。
……だからこそ、私なりに努力して、私にしか出来ない営業を身につけるんだ!
「―――昨日の威勢はどこにいったのやら……」
「え?」
「何でもない。今日の営業で回った所について内容をまとめて、後で提出して」
「はいっ、分かりました」
私は急いで自分のデスクに戻ると、パソコンを立ち上げた。
どれくらいそうしていただろう。気付けば時刻はすっかり夕方。なんとか書類を作って春日さんに提出すると、帰って良いと言われた。
時計を見るともう終業時間だ。
「お疲れさまでした」
頭を下げた私に小さく頷いただけでそれ以上何も言わない春日さんに、私は無性に悲しくなってしまった。
ううっ、春日さんに信頼してもらえるようになるまで、我慢我慢!
そう。自分に言い聞かせ、営業部を出た所でふいに携帯がメールの着信を知らせた。
「誰だろ」
カレンかな、なんて思いながら携帯を操作すると、メールの送信者は白波瀬さんだった。
本当にメールしてきてくれたんだ! なんてちょっと頬が緩んでしまう。だってあんな出会い方なんだもの。なんだかんだ言ってもその場限りかな〜なんて、ちょっと思ってたりもした。
『お疲れ様です。先日はどうも有難うございました。今晩のご予定は何かありますか? 良かったら一緒に食事に行きませんか?』
胸の高鳴りを覚えながらメールを開くと、そこにはこんな文面が躍っていて、鼓動は今度こそ完璧に早くなった。
「ど、どうしよう」
行きたい気持ちは山々! でも今日の私のコンディションは最悪――ってこんな時こそカレンよ! って私は仕事中に何を考えてるのよ〜! ……でも白波瀬さんは私と同じく化粧品メーカーで奮闘していて、しかもうちの会社の人達みたいに完璧な出来る人間! っていう感じでもないのよね……。我ながら失礼な評価だとは思うけど、あの少し気弱そうな柔らかい雰囲気がなんともいえなく安心させてくれるっていうか……。会社は違うけど、一緒に頑張れたらいいな! ってそんな風に思える相手なんだもん。
嬉しい旨を伝えるメールを打つと、ちょうど終業時刻になった。鞄をひっつかんでカレンの元へと急ぐ。
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