チェンジ・ザ・ワールド☆
act.8(春日)
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就職難民 黙って俺についてこい!
「カレン〜〜!」
カレンのいる教育部に向かう途中でカレンにメールをしておいたら、カレンは廊下で既に私を待ってくれていた。
「お疲れ〜ってどうしたの? やっぱり今日は顔に疲れが出ちゃってるわよ」
「うっ。そこでお願いがあるの!」
私は白波瀬さんとの約束をかいつまんで話すとカレンは呆れ顔で私を見下ろした。
「はーっ、あんたねぇ、男と遊んでる場合?」
「遊ぶっていうか……」
確かに遊んでる様に見えるだろうし、危機感がないように思われるのも無理はない。
せっかくのチャンスなのに何してるの――って。でもそうじゃなくて、そう思われても仕方ないけど、そうじゃなくて。自分と同じような立場の人と、共有したいっていうか。そうしないと重圧に負けてしまいそうな気がするっていうか――そんな正直な気持ちをポツリ、ポツリと吐露していくと、カレンは一つ大きく息を吐いた後、私の頭をそっと撫でてくれた。
「分かった。しょーがないな、水那は」
カレンがそっと微笑んでくれている。いつものカレンだ。昔から私を助けてくれる優しいカレン。
「よし、じゃあちゃちゃっと直してあげるから、気を付けて行ってくるのよ。それと、そんなにイイ男なら今度ちゃんと紹介しなさいっ」
「はぁい」
カレンの手が動くたびに、私の顔がグッと華やかになっていく。くまもくすみも消えていって、夕方なのに朝みたいな肌質に変わる。
「よし、と。我ながらさすがな出来栄え! これならその彼も好印象間違いなし!」
「有難うカレン〜〜〜!」
鏡を確認してすっかり爽やかな顔色に変化した自分を見つけると、思わずカレンをギュッと抱きしめた。
「はいはい、って時間はいいの?」
「あー! もうこんな時間!? ごめんね、カレン! 私行ってくる〜! 本当にありがとね〜〜!」
待ち合わせの時間が迫っている事を知り、今度は駆け足。我ながら慌ただしくて申し訳ないことこの上ない。どうか間に合いますように!
待ち合わせの場所に着くと、既に白波瀬さんは立っていた。私の姿を見留めると、右手を軽く上げてくれる。
「ご、ごめんなさい! お待たせしましたっ!」
慌てて頭を下げると、白波瀬さんも恐縮したように背筋を伸ばす。
「い、いえそんなっ。僕の方こそ少し早く来てしまいました。気を遣わせてしまってすみません」
私と同じように頭を下げる白波瀬さん。二人でぺこぺこしあってしまい、思わず二人同時に笑いだす。
「あははっ、何かおかしいですね、僕達。えっと、それじゃこの近くに知ってるお店があるんで、そこでいいですか?」
「はいっ!」
白波瀬さんの案内してくれたお店は、社長と出会ったあのバーのすぐ近くのイタリアンレストランだった。
「こんなお店もあるんですねぇ」
「この辺は実は結構穴場なお店が多いんですよ。あそこのバーも雰囲気がいいんです」
「そ、そうなんですかぁ〜」
指し示されたバーはまさしくあのバーで、思わずあの日の失態を思い出してしまい、軽く口ごもってしまった。変な風に思われないといいけど。
「じゃ、入りましょう」
そんな私の内心は気にも留めていない様子で、白波瀬さんがレストランの扉を開けて中へと促してくれた。中はオシャレではあるけれど、オレンジ色の照明が優しい雰囲気で白波瀬さんのイメージにぴったりのお店だなぁ、なんて思わず感心してしまう。
席に通され、各々注文を済ませると話は自然に仕事の方へと向いていく。
「そういえば葉月さんは学生さん――ですか?」
「はい。大学4年です」
そう言えばまだちゃんとした自己紹介もしていなかった、なのに一緒に食事をする事が嫌じゃない。やっぱり白波瀬さんの持つ柔らかい雰囲気のおかげなのかな? そんな事を内心でぽつりと考える。
「じゃあ就職はもう?」
「いえ、それが……まだ」
「今は厳しいっていいますもんねぇ」
そう言う白波瀬さんの顔には心底私を心配してくれているという表情が張り付いていた。
「あ! でも今、研修はしてるんです!」
心配そうなその表情を少しでも和らげたくて、思わずそんな事を口走った。
私がそう言うと白波瀬さんはほっと小さく息を吐いた。
「それは良かった!」
「はい! しかも化粧品メーカーなんですよ〜。白波瀬さんと一緒ですね!」
「えぇ!? そうなんですか! うわぁ、すごい奇遇ですね〜!」
化粧品メーカーというと、白波瀬さんは本当に嬉しそうに微笑んだ。やっぱり同じ業種の人とこんな風に知りあえるのって嬉しいし、親近感もわいちゃうよね!
「ちなみにどちらの?」
「美成堂です!」
美成堂と言う時に思わず少し胸を張ってしまう。だってあの美成堂なんだもん! 白波瀬さんも美成堂という名前に驚きを隠せないようで、思わず目を丸くしている。
「美成堂とは凄いですねぇ! 葉月さんは優秀なんですね」
「いえっ、そういうわけじゃないんですっ。たまたま御縁があって……」
「いえいえ、葉月さんはとっても魅力的な方ですし、美成堂さんの採用担当の方の気持ちも分かります」
採用担当――私を採用してくれたのはあの鬼社長。あの鬼社長の気持ちをこの心優しい白波瀬さんが理解する日は一生ないと思う……なんて言いすぎかしら。更に言うと今日の私が多少なりとも魅力的に見えるのであれば、それは間違いなくカレンのおかげで……ああ、もう! 本気でカレンに感謝!
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