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act.9(春日)

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streetpoint

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就職難民 黙って俺についてこい!










 「で、研修はどうですか? 楽しいですか?」

「はいっ! 分からないことばかりで大変ですけど、でもやっぱり楽しいです」

「そうですよねっ、僕もこの業界が大好きなので、葉月さんにそう言って貰えると何だかとっても嬉しいです」


 白波瀬さんが本当に嬉しそうに笑ってくれたので、私も思わず肩の力が抜けていく。


「白波瀬さんはどうですか? お仕事順調ですか?」

「そうですねぇ、ボチボチ――ですかね。葉月さんは具体的にはどんな事をなさってるんですか?」

「あ、私は今は新製品の営業部の方にいます」

「営業ですか。それはまた大変な部署ですね」

「そうですね。分からないことだらけで上司に怒られてばっかりですけど、やりがいがある仕事だと思ってますし、楽しいです!」

「いいですね。仕事が楽しいと感じられるのは本当に素敵な事ですから。新製品だとヒットした時の喜びもなおさら大きいですし」


 ヒットした喜び――うん、味わってみたいな。ていうか味わえなかったら私の就職戦線も終了なんだけど……。


「開発している段階から欲しくなってしまう商品で。完成が今から楽しみなんです」

「素敵な商品なんでしょうねぇ」

「はい! とっても魅力的なリップグロスなんです!」

「ふふっ、楽しそうで僕も関わりたくなっちゃいます」

「私も白波瀬さんみたいな方とお仕事出来たら、凄く嬉しいんですけど」


 私がそう言うと、白波瀬さんは一瞬目を伏せた――ように見えた。けど、気のせい、かな?


「うちに来ませんか?」

「え?」

「なーんて、僕が社長だったら言えるんですけどねぇ」


 そう言って苦笑する白波瀬さん。なんだか胸の奥でドクンと音が鳴った気がする。


「そう言えば白波瀬さんはどちらの会社なんですか?」

「いや〜、美成堂さんの前ではもう弱小も弱小なので。内緒にさせておいて下さい」

「そんな事……」

「でもっ! 心意気だけは負けてませんよ〜」

「あははっ」


 白波瀬さんと話しているとリラックスしている自分がいる。

 美味しい料理に舌鼓を打ちながら、私と白波瀬さんは楽しいひと時を過ごした。













 「はあ〜。楽しかった! 白波瀬さんって物腰が柔らかいせいかすごく話してて気持ちが穏やかになるなあ。春日さんの後に会ったから余計かな」


 家に帰ってベッドに横になった私は、先ほど白波瀬さんと一緒に過ごした時間を振り返っていた。緊張する仕事の後にリラックスして食事が出来たから、明日も頑張ろうって気持ちになる。

 ゴロリと反対に寝転がると、春日さんの怒った顔を思い出す。

 なんて、ダメダメ! 仮にも上司に対してそんな事考えちゃ! ……でも、本気で私の事嫌いっぽいもんなあ。


「―――やめよ、嫌われてるのは事実だし、まだ何も出来ないのも事実だもん。絶対、私に出来る営業を考えて身につけるんだから。そして春日さんに新製品がヒットしたら『頑張った』って言ってもらうんだから! それにはまず私に出来る事よね、私の得意な事、得意な事……元気? かな?」


 元気って得意とは違う気がする。取り柄? いや。取り柄でもいいや。何か取っ掛かりがないと進めないもんね。でも元気を営業に活かすってどうすればいいんだろ? もっと商品についての知識が必要だな。そして春日さんみたいに会社の商品を信頼して、相手の人が安心して売りたいと思ってくれるようなアプローチをしなきゃ。

 って、また色々考えてる! また寝不足で怒られちゃうよ、早く寝てコンディションを整えなきゃ。

 よーし、明日も頑張るぞ!







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