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チェンジ・ザ・ワールド☆
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act.15(明月院)

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streetpoint

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就職難民 黙って俺についてこい!










 予告通り、明月院さんは私の自宅まで迎えに来てくれた。

 隣りで真っ直ぐ前を見て運転する明月院さんの横顔をチラチラと伺っていると、ため息を吐かれてしまった。


「はあ……。さっきから俺の事見てるけど、何?」

「あっ、いえ、何でもありません……」

「じゃあそんなにじろじろ見ないでくれる? 気が散る」

「すみません」


 それから明月院さんの横顔を見ないよう、私は景色に集中した。

 だって明月院さん話し掛けても答えてくれなさそうだし、だからって明月院さんの方から気さくに話し掛けてくれるなんて事ありえないし。

 なんだかなあ……沈黙が嫌な訳じゃない。明月院さんが私に全然心を開いてくれないことが悲しいんだ。 















 しばらく走ると、打ちっぱなしのコンクリートで出来た建物の前に到着した。


「車止めて来るから待ってて」

「あ、はい」


 車を降ろされ、見知らぬ場所でぽつりと待つ私。


「レコーディングスタジオ“BREATH”」


 建物の入り口にある看板を読む。

 本当にレコーディングスタジオに来ちゃったんだ。


「行くよ」


 いつの間に現れたのか、気配もなく明月院さんが私の背後に立っていた。びっくりした〜。

 そしてすうっと入り口へ向かうのを、慌てて追いかける。


「あの、今日はどんなお仕事なんですか?」


 エレベーターで地下へ降りながら、やっと尋ねる事が出来た。だって会社のとは別の仕事って言ってたけど、それが何なのか聞いてないんだもん。


「なんとかってバンドのレコーディング」

「はあ」


 なんとかって、明月院さん、自分がお仕事するバンドの名前も覚えてないんだ。不思議な人だなあ。

 なーんて思って地下でエレベーターが止まると、私の目に飛び込んで来たのは、今話題の大人気バンドのボーカル、TAKA! この人、何度もテレビで見た事あるよ〜! っていうか、CD持ってるし!!

 私のテンションは急に上がった。――――けど、明月院さんに怒られるから声には出さない。だって「うるさい」ってまた怒られるもん。


「おはようございます。今日はよろしくお願いします」

「おはよう」


 有名人の挨拶にもそっけない明月院さんは、後ろに着いて来ている私を指差し、


「今日は見学がいるから」


 と言って、目の前のドアに入ってしまった。

 うう、まさかの放置プレイ……


「どうも。キミ、聖さんの彼女?」

「えっ!?」


 TAKAが話し掛けて来る。

 どーしよう、めちゃくちゃ緊張する! 本物だよぉ〜! 後でカレンに報告しなくちゃ! じゃなくって、


「いえ、ち、違います。あの、会社の部下で……」


 しどろもどろで取りあえずそれだけ言うと、TAKAはニッコリ笑った。


「そうなの? 聖さんが女の子連れて来るなんて初めてだから、彼女さんかと思った」

「そ、そうですか―――」

「俺達のバンドはキーボードがいないからさ、曲をレコーディングする時は聖さんに弾いてもらってんの」

「はあ、そうなんですか」

「バンドだけ先にレコーディングし終わってて、聖さんと俺だけ今日レコーディングなんだ。別録りしないと聖さん忙しいし、スケジュールが会わないんだよね。今日中に完パケしないともう、ギリギリでさ、……って、あれ? もしかしてキミ、こういう所くるの初めて?」

「は、はぃ」


 さっきからTAKAさんが言っている言葉の意味が全然分からないのよっ!

 もう、頭の中はハテナだらけで、きっと顔もとんでもない事になってるはず。


「へえ〜。そうなんだ。じゃあもしかして俺のことも知らない、とか?」

「いいえっ! 知ってます。CD持ってます……」

「ホント!? 嬉しいな、ありがとう。せっかくだから、聖さんが弾く所じっくり聞いて行きなよ」

「ありがとうございます」


 促されて中に入ると、会社の音楽部にあるのと良く似た大きな機械がドン! と設置されてて、ガラスを隔てた向こう側に明月院さんが座っているのが見えた。

 うちの会社と違うのは、人がいっぱいいる事と、機械がさらに大きい事。さらにはガラスの向こうにドラムとか色んな機械がたくさんある事―――。

 部屋の入り口横にソファがあって、私はそこに座らされた。コーヒーやお菓子なんかも出て来て、何だか申し訳ない気持ちになる。

 だって、全然何の関係もない素人が、こんな有名なバンドのレコーディングを間近で見られるんだよ? もっと本気で音楽をやりたい人ならすごく勉強になるんだろうけど、私の場合豚に真珠というか、馬の耳に念仏というか……。

 そんな事を考えていると、機械の前に座っている一人の男性がマイクに向かってしゃべり出した。


「それじゃあ明月院、頭から流すぞ」

『はい』


 ガラスの向こうでキーボードに向かって、ヘッドホンを付け座っている明月院さんの返事が、スピーカーから聞こえて来た。

 何が始まるのかしら。

 そう胸を躍らせていると、規則正しい「カッ、カッ、カッ、カッ」という電子音が聞こえて来て、明月院さんがキーボードを弾きはじめた。


「わぁ……」


 リズムに合わせて奏でられる綺麗なメロディー。まるで海の中を漂っているような透明な音。

 素人の私にでも分かる……明月院さんは、すごく上手だ。

 鍵盤だけのイントロからドラムやベース、ギターの音が入って来て、先ほどの静けさから今度は音に厚みが出来た。

 それに合わせて明月院さんはどんどん鍵盤を叩いて行く。


「どう? 聖さん、すごいでしょ?」


 隣りに座っていたTAKAが自慢げにそう言ったけど、私は返事も出来ずにただ何度も頷くだけだった。

 すごい、すごい! 明月院さんって本当にすごい!







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