チェンジ・ザ・ワールド☆
act.16(明月院)
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streetpoint
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就職難民 黙って俺についてこい!
レコーディングも無事終わり、私は再び明月院さんが運転する車の助手席に座っていた。
さっきの明月院さんの演奏が耳から離れない。
TAKAさんが言っていたけど、レコーディングで一度も録り直さないアーティストはほとんどいないらしい……。ようするに、間違わないで一回だけで録音が終わってしまうってこと。一度も間違わないでだよ? 私にだってそれがすごいことくらい分かる。そんなすごい事を明月院さんはいつもやってのけているんだって。
チラリと運転する明月院さんを見る。
「何?」
「あの、今日は連れて来てくださって、ありがとうございました。すごくいい機会を与えてもらいました」
「さっき俺が弾いてた曲、覚えてる?」
「え? あ、はい、なんとなく……?」
「そう」
また無言になってしまった。一体何が言いたいのかさっぱり分からない。お礼を言ったのにそれについて何も言わないし、アーティストって変わった人が多いって聞くけど、明月院さんは典型的なパターンかも。
会話も止まり、私はまた窓の外の景色に集中した。
明月院さんのレコーディングが終わるとそのまま会社へ向かい、何故か私は今、ピアノの前に座らされている。
「あのお……」
座ったのはいいけど、一体どうしろと?
恐る恐る隣りに立っている明月院さんを見上げると、くいっと顎でピアノを指した。
「さっき俺が弾いてたように、ちょっと弾いてみて」
「はっ!?」
な、何を言っているのこの人!? 正気じゃないわ! そんな事出来る訳ないじゃないのっ!!!
「早く」
「で、でも。私ピアノは……」
「いいから早く」
有無を言わせないその言葉に、私はもうどうにでもなれ! 状態でさっき聞いた曲を思い出してみることにした。
えっと、確かこんな感じ……
「ポロロン……」
もちろん明月院さんみたいに両手で格好良くなんて無理だから、取りあえず右手だけで音をなぞる。
―――あ、そうそう、確かこんなだったわ。
弾き始めると音が鮮明に思い出されて来て、私は弾くのが少し楽しくなってきた。
けど……
「あっ……」
途中でやっぱり分からなくなってしまって、私の指は止まった。
「すみません、これ以上は―――」
申し訳ない。才能がないばかりか、音楽の知識すらないなんて、本当に足手まといよね。
「次はこう」
「え?」
突然明月院さんが私の手を握って、指を鍵盤の上に置いた。あまりに突然で、私は驚く間もなく明月院さんの手に導かれるまま鍵盤を押さえて行った。
そうだ、こうだ。この音だ。
明月院さんの手はすごく温かくて、私はそのぬくもりに胸が高鳴った。
「あんたのイメージを聴きたい」
曲が全部終わると、私の手を離した明月院さんがぼそりと言う。
イメージって何の?
私の疑問が伝わったのか、明月院さんはガラスの向こうの部屋を指差しながらまた言った。
「新しいグロスのイメージを弾いてみて」
「えっ!?」
「―――うるさい、早く弾いて」
は、早く弾いてって、この人何言ってるの!? さっきから訳が分からないけど、もう本当に訳がわからない!! もしかして私の事、いじめてる? 何も出来ないから追い出したくて、わざとこんな事させてるの? そんな……そんなの酷いよ。酷過ぎるよ!
「……私、明月院さんの邪魔にならないように、お手伝いが出来るように頑張りたいんです。それなのに、どうしてさっきから無茶な事ばっかりさせるんですか?」
もう駄目だ。私にはここで出来る事なんて初めからひとつも無かったんだ――――
「社長に頭を下げて、部署を代えさせてもらいます……お世話になりました!」
ガタン!
私は勢い良く立ち上がり、部屋を飛び出した。
走って走って、エレベーターなんかには乗らず、階段を一気に駆け下りた。どこをどう走ったなんて分からない。だけど、涙が止まらなかった。
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お帰りの際は、窓を閉じてくださいv
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