チェンジ・ザ・ワールド☆
archaic smile.2
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archaic smile 2
あれから何となく大石は汐屋の事が気になっていた。
別に廊下で見かけた時にちょっと様子を見る程度なのだが、なんだか気になるのだ。
一緒にいた乾がふと尋ねて来た。
「大石、お前最近何かいい事でもあったか?」
「え? どうして?」
「いや、何だかここ最近楽しそうだと思ってな」
「そうかな?」
「ああ」
隣りの乾を見て苦笑する。
特別何かがあった訳ではない。他人から見てそんなに楽しそうなのだろうかと、ふと最近の自分の様子を思い出す。
「まあいい。ところで進路は決めたのか?」
大石が困っているようだったので、乾は話を変えた。
「そうだな、まだ悩み中」
「そんな悠長なことでいいのか? 今週中には決めないといけないんだろ?」
「ああ、今日の放課後図書室で調べものして決めるよ」
「図書室で調べものして進路を決めるのか?」
不思議そうな乾に、大石が笑う。
「親は好きにしろって言うし、俺自身決められないからさ、図書室に面白い本があるから、それを読んで決めてみろって進路指導の先生がさっき言ってたから」
「どんな本なんだ?」
「若者が行き詰まった時に読む本」
「ーーー冗談だよな?」
「はは、冗談」
笑いながら2人は教室に入った。
実際は「日本の進路」とかいう本で読んだ事もあったのだが、せっかく先生が心配してアドバイスをくれたのだから、気分転換にもなるかと思って図書室に行く事にしたのだ。
乾は大学に進学する。IT関係の技術者になりたいらしいが、乾らしいと思った。
自分らしい。
それは一体なんなのか、大石にはまだ分からずにいた。
放課後、大石は図書室にいた。
うろうろと膨大な書物の入った棚の林を歩いて行くと、奥の壁際の棚に寄りかかって熱心に本を読む少女を見つけた。
汐屋さん?
そこにいたのは汐屋で、随分一生懸命本に目を走らせていた。
一体何をそんなに真剣に読んでいるのだろうかと気になり、大石はそっと近づいた。
『十二人の芸術家』
というタイトルの本を読んでいる。やはり芸術関係に興味があるようだ。
数歩先からじっと汐屋を見ていると、ふと汐屋が顔を上げた。
「あ、ごめん。邪魔するつもりじゃなかったんだ」
大石が取り繕って言うと、汐屋が微笑んだ。
初めて見た汐屋の笑顔に、大石は戸惑う。
「何か本探してた? ごめんね、こんなところで立ち読みして。机まで持って行くのが面倒で」
机は書棚を抜けたところにいくらでもあるのだから、面倒ということはないだろうに、きっと本を開いたら止められなくなったのだろう。大石にも同じような経験をした覚えがある。
しかしこうやって落ち着いて面と向かって話をするのは始めてだ。
何故か会話を続けなくては、という衝動に駆られた。
「その本、面白い?」
「え? これ?」
汐屋は持っていた本を一度見て、大石を見た。
「まあ、書いた人の画家に対する思いとか解釈が分かって面白いといえば面白いかな」
結構素っ気ない話し方だ。
大石はふうんと相づちを打って汐屋に近づいた。
「汐屋さんって演劇部だったよね?」
大石の言葉に汐屋は驚く。
「え、何で知ってるの?」
「何でって、別に理由はないけど……じゃあ何で汐屋さんは俺の名前知ってるの? 同じクラスになったこと一度もないよね?」
「それ言ったら大石君もなんで私の名前知ってるの? って話になると思うけど……」
「ああ、そうだね。で、どうして?」
そこで再び汐屋が笑った。
「ーーー大石君って噂より面白い人なんだね」
「噂?」
大石が眉を寄せると、汐屋がごめんと謝った。
「あの、友達からテニス部の人たちの話いつも聞いてて」
「ああ……」
それで俺の名前も知ってたんだ。
大石は納得した。
「それで、どうして大石君は私の名前と部活知ってるの?」
何も考えてなくて、大石はどう答えようか迷った。
確かに、何故知っているのかと聞かれても納得してもらえそうな答えが見つからない。
なんとなく中学の時に助けてもらったから知っていた。
では自分が言われても納得出来そうにない。
うーんと考え込んだ大石に、汐屋が変な顔をした。
「そんな答えるのに悩むような理由で知ってたの?」
「いや、そういう訳じゃないんだけど、どう言ったら納得してもらえるか分からなくてさ」
「ま、いいや。それじゃあね」
「え? ああ……」
汐屋はそう言って本を棚に入れるとその場を去った。
「ーーー読んでみるかな」
なんとなく汐屋が読んでいた本を手に取った。
続く…
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