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土屋4日目・No.4

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streetpoint

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私のやんごとなき王子様












 土屋君はひどく不機嫌そうな、納得いかないといった顔でベンチに座っていた。

 私達はそんな土屋君を囲むように立って、お互いの顔を見合わせため息を吐く。先ほどから先生が諭してるけど暖簾に腕押し。一言謝ればいいのに、どうしてこう変わり者というか偏屈? なのかな。


「いいか、お前がどう思おうと勝手だが、俺達はお前の事を心配して止めたんだぞ?」

「言われなくても分かっています。はあ……これでもう二度とあの美しさを体にも脳にも取り込むことは出来なくなってしまった。なんてもったいないんだ――」


 土屋君は本気でショックを受けているのか、すっかり項垂れてしまっている。


「はあ~~~。もういい! おい、小日向!」


 先生はとうとう説教を諦めたらしく、ガシガシと自分の頭を掻くと私を見た。


「え? あ、はい?」

「お前はこいつと同じ大道具の担当だ。だからこれから合宿終了まで、こいつがバカな事をしないかしっかり見張ってろ」

「ええっ?!」


 嘘でしょ!? 自分の仕事も山ほどあるのに、土屋君をずっと見張ってろって? こんな突拍子も無い事を平気でやったり言ったりする人なんだよ?


「先輩、僕からもお願いします。土屋先輩が心配です……」

「じ、潤君まで……」


 そんな顔されたら無理ですなんて言えないじゃない。

 ――――どうしよう……

 私が迷っているほんの数秒の間に、土屋君がベンチから立ち上がって言った。


「見張りだなんて必要ありませんよ、先生。僕は僕の感じるままやりますから。小日向君、君は僕が言った指示した通りに描いてくれれば良いのさ。なぁに、簡単な事だよ。それに僕は僕の芸術の為に生きている。君たちににはおよそ理解出来ないだろうけどね」


 その言葉に、私はまた腹が立った。だって、そんな……そりゃ私には崇高な芸術なんて分かりはしない。でも、それでも土屋君を心配しているこの気持ちに嘘はないのに。

 そう思ったら、また口が勝手に動いた。


「どうしてそう言う言い方するの!? 感じるままにやる? 自分の芸術のためなら命を落としてもいい? 私には本当に理解出来ないよ……。それでもっ! それでも私は少なくとも土屋君の役に立ちたいって思って大道具を選んだのに、そんな風に言われたら……」


 ぎゅっと両手に握りこぶしを作って、私は土屋君を正面から見据えた。

 と、我に返る。

 あ~あ、何を言ってるんだろ……喧嘩がしたい訳でも不愉快な思いをさせたい訳でもないのに、土屋君と一緒に居るとペースを乱されて何だかいつもの私じゃなくなっちゃう気がする。

 心の中に湧き上がってる悲しみの感情に飲み込まれそうになったその時――土屋君が小さく息を吐いた。


「ふう……もういいよ。好きにすればいいさ」


 え?

 ぼそりと呟いて私達の前から去って行く土屋君の横顔が、一瞬すごく辛そうに見えた。


「小日向、悪かった。腹が立ってお前に面倒を押し付けちまった」


 土屋君がいなくなって、先生が私に頭を下げた。


「あ、いいんです。私もカッとなってしまって……もう大丈夫です。土屋君の事、しっかり見張ってますから。でも、何かあった時は助けて下さいね」

「当たり前だろ? 俺は先生なんだからな」

「先輩……僕じゃお役に立てないかもしれないけど、何かあったらいつでも言って下さいね」

「ありがと、潤君」


 私は二人に向ってそっと微笑むと、土屋君の向かった船室の方へと足を運んだ。 











 船室からふと窓の外を見ると、遠くに島が見えた。

 トクンと胸が鳴る。

 もうすぐ到着するんだ。高校生活最後の合宿が、本当に始まるんだ――――













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