チェンジ・ザ・ワールド☆
archaic smile.4
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archaic smile 4
大石は翌日進路指導室にまた座っていた。
もちろん進路の事を話すためだ。
「で、決まったのか?」
目の前で山のような資料に次々と目を通す進路指導の先生に尋ねられ、大石が返事をする。
「はい。受験して教育学部のある大学に行こうと思います」
「そうか。教育学部……テニスはどうするんだ?」
「もちろんやります。大学で勉強しながらでもテニスは出来ると思いますから」
「まあ確かにな……だが教育学部に行くなら色々と忙しくなるぞ? テニスばっかりやる訳にもいかなくなる」
「分かってます」
「そうか……お前がそれで良いって言うんなら、俺は応援するぞ」
「はい、ありがとうございます」
「大学の資料は資料室にあるから、そこの先生に相談しながらいくつか選ぶと良い。大学は取りあえず今の自分の成績より少し高めのランクのとこを中心に4つくらい見積もっとけ。まあ、いざとなったら推薦の大学もあるしな」
「はい」
「よし、もういいぞ」
「失礼しました」
頭を下げて進路指導室を後にする。
汐屋の一言のおかげでなんとなくだが自分の未来のビジョンが見えて来たような気がする。
親に相談した時、学校の先生という職業はお前に合ってるかもしれないと言ってくれた。
ずっとふらふらしていた息子が突然教育学部のある大学を受験してみようと思うと言い出し、驚きつつも嬉しかったようだ。
お礼を言わないとな。
そう思った大石は、自然と図書室へ向かっていた。
別にいるかどうか分からなかったが、なんとなくだ。
放課後で部活も始まっているこの時間帯、廊下を歩く生徒は少ない。
すれ違う女子生徒の何人かに挨拶をされ、それに答えながら先を急ぐ。
どんどん人気がなくなって来る校舎の3階の、一番奥に図書室がある。
静かにドアを開けて中に入り、大石は汐屋を探した。
一つ、二つと書棚の間の通路を覗いて行く。
いたーーー
汐屋はまた奥の壁際の所で、棚に寄りかかって本を読んでいた。
「やあ」
「あ、大石君」
今度は何のためらいもなく近づくと、汐屋に声を掛けた。
汐屋は本を読む手を止め、大石と向き合った。
「どうかした?」
「いや、お礼が言いたくて、探してた」
「お礼?」
何の事かと考えるような汐屋に、大石が微笑む。
「進路の事だよ」
「ーーーえっ? まさか……本当に本気で先生になるの?」
「まあ、まだ分からないけど、教育学部のある大学を受験してみることにしたよ」
「……へえ……びっくりした」
本当に驚いているらしい汐屋に、大石は続けた。
「いや、でも盲点だったな。って思ってさ」
「盲点?」
「うん。俺結構世話好きだし、子ども好きだしさ。親にも相談したらお前には合ってるだろうって言われた」
「そうなんだ。親御さんが言うなら間違いないね」
「はは。だから、汐屋さんにお礼が言いたくて」
「別に私は何にも……」
照れ臭そうに俯いた汐屋を、大石は可愛いと思った。
こうやって話をしていると、汐屋雪緒という少女がまじめな子であることが分かる。
「そんなことないよ。汐屋さんのおかげだよ。ところで、汐屋さんは進路決まった?」
「うん、まあ大体……」
「進路指導の先生に今週中に提出とか言われなかった?」
「言われた」
「で、どこにするの?」
興味があった。
というか、是非とも知りたかった。
あわよくば汐屋と同じ大学に教育学部があればと思ったのだ。
汐屋はふと目を手元の本に落として答えた。
「うん、立海大に行こうと思って」
「立海大?」
「そう」
「芸術系の学部があるの?」
大石は先日見た進路希望調査票の第一志望の欄を思い出していた。
確かに汐屋は第一志望に立海大学と書いていた。
「あそこの文学部の教授が書いてる本が私好きなんだ……それで、教授のゼミに入りたくて」
「そうなんだ……でも芸術系の大学はいいの?」
「うん」
「そっか……」
汐屋が顔を上げた。
「私ね、確かに芸術系の大学に行って舞台美術の勉強したいなって思ってたんだけど、もっと視野を広げたいなって思って」
「視野を広げる?」
「うん。その教授の書く本の内容って色々なんだけど……あ、これがそうなんだけど」
そう言って持っていた本を大石に見せてくれた。
また難しそうな本だが、芸術系の本だった。
「で、この人の考え方とか見る世界を近くで学んでみたいって思ったの。小説も書いてるんだけど、どれも同一人物が書いてるとは思えないくらい表現が豊かで、多岐に渡ってて、科学的だったり文学的だったり、すごく面白いの」
「うん」
「舞台美術もやりたいよ。でもそれって大学卒業してからでも遅くないかなって思うんだ」
遠回りをしてでも視野を広げたいという好奇心が強いのだろう。
そう言い切った汐屋の目は輝いて見えた。
「すごいよ、汐屋さん」
「えっ?」
ぽろりと漏れた大石の言葉に、汐屋がこちらを見る。
「俺、汐屋さんの事応援するよ」
そう言った大石に、汐屋は目を丸くして次に吹き出した。
「っ……大石君、面白すぎ……」
「え? なんで?」
真面目に言ったのに笑われてしまい、大石は戸惑った。
「ーーーだって……でも、ありがとう。大石君にそんな風に言ってもらえて嬉しいよ」
ドキリとした。
汐屋の笑ったその顔が、本当に可愛らしかったから。
笑いを納めた汐屋が本を棚に戻した。
「私も大石君のこと、応援するよ。テニスの試合の時みたいに、こっそり隠れてじゃなくて、ちゃんと声に出して……」
「ーーーえっ?」
大石は汐屋の言葉に驚いた。
今、なんてーーー?
「実は……中学に入った時に大石君に一目惚れしてました」
なーーー
大石はあまりの衝撃で声が出なかった。
目の前であっさりすごい事を言う汐屋は、恥ずかしそうでもばつが悪そうでもなく、いつものように淡々としている。
「だから大石君に声掛けられた時すごい嬉しかったよ……あんまり顔に出すの得意じゃないから分かりづらかったと思うけど」
いや、全然分からなかったです……
まだ言葉が出ない大石に、汐屋は微笑んだ。
「私の友達にすっごい大石君のファンがいてね。自ら調べずとも情報が入って来るから、この5年半影でストーカーみたいになってた。ごめんね」
ふと汐屋はもたれていた棚から体を起こすと、大石の前を横切った。
大石はまだ何も話せず、汐屋の姿を見ていた。
「大石君が嫌じゃなかったら、またお話してくれる?」
「ーーーあ、うん。もちろん!」
やっと出た言葉は上手くコントロール出来ずに思ったより大きくて、大石と汐屋はびっくりした。
そしてすぐに汐屋は苦笑すると、手を振って大石の前から去って行った。
一人残された大石は、どんどん赤くなる顔を右手で覆い、その場にへたり込んだ。
「……………ヤバい……俺、汐屋さんの事ーーーーー好きみたいだ」
遅ればせながら気付いた自分の気持ち。
中学生の時に初めて顔を合わせたあの日、大石は恋に落ちていたのだ。
なんとなく気になっていたのも、好きだったからなのだ。
今、大石の脳細胞はフルで信号を伝え合っているはずだ。
ニューロン間の信号伝達物質は今マックスで放出されているのだろう。
大石は座り込んで棚に背中を預けると、近くにあった本を適当に取る。
『科学の限界 J・W・N・サリバン』
表紙を見て小さく呟く。
「……俺の脳みそが限界だよ」
立海大に、教育学部ってあったっけ?
END
あとがき
どうも、最後までお付き合いくださいましてありがとうございましたー!
大石……鈍すぎるにもほどがある!!
でも、大石って恋愛下手っぽいんで、このくらいでもいいかなあ?と思ってやってしまいました…
話の中で出て来る本は実際にある本なので、本屋か図書館に行った時は探してみてください(笑)
あと、自分の趣味に走りまくった内容てんこもりで申し訳ない。でも管理人はダリの商業として自分の絵を売り出した商才というか、バイタリティはすごいと思います。実力があったからこそ儲けることも出来たわけですしね。賛否両論、悲喜交々!
それでは、またお会いしましょう♪
大石……鈍すぎるにもほどがある!!
でも、大石って恋愛下手っぽいんで、このくらいでもいいかなあ?と思ってやってしまいました…
話の中で出て来る本は実際にある本なので、本屋か図書館に行った時は探してみてください(笑)
あと、自分の趣味に走りまくった内容てんこもりで申し訳ない。でも管理人はダリの商業として自分の絵を売り出した商才というか、バイタリティはすごいと思います。実力があったからこそ儲けることも出来たわけですしね。賛否両論、悲喜交々!
それでは、またお会いしましょう♪
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