チェンジ・ザ・ワールド☆
act.28(市来)
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streetpoint
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就職難民 黙って俺についてこい!
とうとうこの日がやって来た。
新作発表会。
大きなホテルの会場は人がいっぱいで、会場前方に作られたステージもミラーボールが回る室内も、どれもが今まで見た事もない世界で驚きっぱなしだ。
市来さんに選んでもらったオレンジ色のミニドレスを着て、会場の廊下でおろおろとしていると、聞きなれた声が私の背中にかかった。
「こんなトコにいたのか。お前はステージに上がるんだから、早く控室に行け」
声の主は市来さん。光沢のある濃紺のスーツが凄く良く似合っていて、いつもよりもさらにカッコ良く映る――ってそんな事思ってる場合じゃない!
「で、でも控室には各社のモデルさんがいて……」
「当たり前だろ。お前だってモデルだろうが」
「いや、でも……」
すっごい美人さんばっかなんですよーーーーー!! 当然の事だけど、予想してた事だけど、それでも私は浮きすぎて、とても居たたまれない。メイクもしたし、ドレスも着た。ステージにはいつでも立てる。……いや、立てるなんて偉そうには言えないけど、準備は整ってはいる。ただあの控室で待つのは、緊張と劣等感でどうにも心臓に悪かった。
「はー……。お前は本当に世話が焼けるな」
市来さんはそう言うと、ふいに私の肩に手を回した。
「お前は大丈夫だ。俺が選んだ完璧なモデルなんだからな」
息が吹きかかるような至近距離でそんな事を言われたものだから、私の心臓はいよいよ口から飛び出しそうになった。頬が凄い勢いで赤くなっていくのが自分でも分かる。なんなのよ、これー! 余計に緊張しちゃうじゃない! そんな事を思っていた時だった。ふいに背後に気配を感じたのは。
「葉月さんじゃないですか」
次いで耳に届いた聞き覚えのある優しい声。この声は……。
「白波瀬さん!」
振り向くとそこにはいつも通りの優しい笑みを浮かべた白波瀬さんが立っていた。思わず嬉しそうに声を上げた私の肩から、市来さんがそっと手を離す。
「やっぱり僕が見つけちゃいましたね」
なんて言われて今の市来さんとの急接近シーンを見られていたかと思うと、途端にまた恥ずかしさが込み上げてきた。どうしよう、なんて両頬を手で覆いそうになったその時―――
「どういうつもりですか? 白波瀬社長」
いつになく不機嫌そうな市来さんの声が廊下に響いた。ていうか、え? 社長? 白波瀬さんって社長さんだったの?
「いえ、邪魔をするつもりはなかったんですよ」
「そういう事を言っているんじゃない」
おどけた雰囲気の白波瀬さんに対し、市来さんは普段の彼からは想像も出来ないほどに重苦しい空気をまとっている。
「じゃあ、どういう事を言っているんでしょう?」
「……葉月、お前白波瀬社長とどこで出会った」
「え?」
「いいから答えろ」
静かだけれど内に秘めた怒りみたいな物が滲み出ている市来さんの声音に、思わず肩が震えそうになる。それでも聞かれた事に対して、ぽつりぽつりと答えていく。本屋さんで出会った事、一緒に仕事の話をした事、色んな相談に乗ってもらっていたこと……。
「なるほどな」
全てを聞き終わると市来さんは苦虫を噛み潰したような、忌々しそうな表情で白波瀬さんを睨みつけた。
「あんたと御影山社長の因縁なんてものは知らないし、興味もない。秀麗の仕事を受けてきた過去もある。俺はどちらかの肩を一方的に持とうなんてそんな気は無い」
「それは光栄ですね」
市来さんの剣幕にも白波瀬さんはうろたえない。
「だが――だがこれはあんまりじゃないのか。素人のまだ学生の女に甘い顔して近付いて、そこから情報を盗むなんて言うのは」
「盗む? 心外だな。別に僕は何もしていないですよ。可愛らしいお嬢さんと一緒に食事をしただけ。そしたら彼女は勝手にペラペラとしゃべってくれた。ただの幸運、偶然ですよ。そして偶然にも得られた価値ある情報を利用しない手はないだろう?」
「え? どういう、こと……ですか……?」
相変わらず笑みを崩さない白波瀬さん。だけどその顔はどこかそら恐ろしく見える。一体なんの事? 私がしゃべった?
「葉月、この男は秀麗の社長――白波瀬 陽だ」
混乱する私に言い聞かせるかのように、ゆっくりと市来さんがそう告げた。
「う、そ……だ、だって」
白波瀬さんは美成堂より弱小の会社だって……。全部嘘? 私から情報を引き出す為の? 優しくしてくれたり励ましてくれたりしたのも、全部嘘だったの?
どうしよう。もう、全然頭が追いつかないよ―――。
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