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act.10(白波瀬)

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streetpoint

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就職難民 黙って俺についてこい!










 「完敗です」


 私の方を見ないまま、白波瀬さんは空に向かってそう呟いた。


「………どうしてこんな事をしたか、聞かないんですか?」


 次いでそう問われ、私は思わず返答に困った。聞きたいに決まっている。でも、聞いてはいけないような気がする。


「あなたは本当に優しい人ですね」


 そんな私を見かねたように微笑むと、白波瀬さんはぽつり、ぽつりと語り出した。


「僕と御影山は幼少期よりずっとライバルでね。最初に2人で行ったレストランがあったでしょう? あの日、葉月さんと御影山がバーから出てきたあの日も、実は僕はあのレストランに居たんです。それで二人の姿を見止めた。御影山があなたみたいなタイプの女性を連れているのが珍しくて、思わず興味を持ってしまったんです。あなたの情報を得る事は簡単でした。そして僕はあなたを‘使える’と判断した。本屋での出会い、あれは僕の計算です」

「…………」


 今度は私が黙って彼の話に耳を傾ける。


「あなたが御影山にとって何か特別な存在になるであろう事は予測できました。あいつとは長い付き合いですからね。だから最初は単純に、あなたを奪って御影山の悔しがる顔を見てやろうとでも思っていたのかも知れません。初めて一緒に食事をした時、うちに来ませんかって言いましたよね。あの時はきっと、そんな邪な思いがあったと思います。でもそれだけでは済まなくなってしまった」

「どういう事ですか?」

「僕も御影山ももう良い年でしょう。未だにに結婚もしなければ跡取りも作らない我が息子に、父の堪忍袋の緒が切れましてね。次の新作発表会で成果を残せなかったら、父の決めた相手と結婚し、そのうえ秀麗も辞めて別の……もっとグループとして利になる会社に移動する事を命じられたんです」


 白波瀬さんはそこまで語ると寂しそうに肩を竦めた。


「父の言葉は白波瀬グループにとって絶対ですから。逆らう事は出来ません。でも僕はこの業界が好きですし、それに御影山と競っているのも何だかんだいって楽しいんです。と言っても、あいつは完全に迷惑だと思ってるでしょうけどね」

「それじゃあ……白波瀬さんは……」

「ゲームオーバー。僕が秀麗に出来る事はもう何もありません。だから葉月さん、あなたの事も……」


 そこまで白波瀬さんが言った時、私は反射的に彼に抱きついていた。


「葉月、さん?」

「嫌です。私……」

「何が嫌なんですか?」


 戸惑いながらも私の肩に手を置きながら、白波瀬さんはそう尋ねてきた。何が? 何が嫌なの? 私は……。

 こんな行動に出て、自分でも何がしたいのか、全く分からない。でも―――


「嫌なんです。そんな風に白波瀬さんが悲しむのも」


 悲しむのも? それから? それから……!


「こんな風にお別れするのも」


 そうだ、私は白波瀬さんとの関係を断ち切りたくないんだ。どんな理由であれ、自分を利用していた事が分かっても。ううん、理由なんて何もなくても、きっと私の気持ちは変わらない。だって、私……!


「好きです」


 自然にそう口にしていた。


「え?」

「好きなんです。私、白波瀬さんの事が……」


 消え入りそうな声で、それでも何とかそう告げると、白波瀬さんは優しく私を抱きしめてくれた。


「あなたには……本当に……」



 驚かされます。



 そう言ったあと白波瀬さんの唇が、私の唇にそっと触れた。





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