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とある定食屋にて

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とある定食屋にて











 帝都から仕事に出かける前、ユウキは腹ごしらえの為下町の定食屋に入った。

 ちょうど昼食時の店内は大にぎわいで、2人分空いていたカウンター席を見つけてそこに体を滑り込ませる。


「いらっしゃい!」

「えっと、オムライスセット」

「あいよっ!」


 景気のいい店主の返事に、ユウキは自然笑顔になる。

 アレクセイの命令でこれから地方に行くのだが、正直気が重い。それに城に残してきたフレンの事も気になっていた。


「あいよ、お待ち……あっ!」


 出来立てのオムライスが目の前に置かれるのと同時に、店内に長い黒髪の青年が入ってきた。

 店主が声を上げ、他の客達も青年の登場に気づく。


「ユーリ、ちょうど良かった!」


 手招きをする店主の声に続き、座っている客達が次々に話し掛ける。


「おお、ユーリ。この間は助かったよ」

「後でパン届けるからな!」

「お前のおかげでかあちゃんにどやされずに済んだよ、ありがとな!」


 誰もが口々に感謝を述べている。随分と信頼されているようだ。

 客達の言葉に軽く返事をしながら、青年は一つだけ開いていたユウキの隣りに腰掛けた。


「おっちゃん、いつものやつ」

「おうよ! それでユーリ、ちょいと頼みがあるんだが……」

「あ~、後で聞くから取りあえず何か食わせてくれ。腹減って死にそうなんだよ」


 カウンターに肩肘を付いて項垂れる青年ユーリに、ユウキは笑いながらまだ手をつけていなかったオムライスを寄越した。


「どうぞ、ユーリ。今出されたばっかりだから、出来立てよ」


 ユウキの突然の申し出に、ユーリは驚いた顔をした。


「でもそれはあんたのメシ……って、あんた、どっかで会った事ないか?」


 不思議そうにまじまじと見つめて来るユーリに、ユウキは吹き出す。

 私服でいた為騎士だとは気づかれていない。


「ふふっ。その言葉はナンパしているみたいだから、気を付けた方がいいよ。初めまして、ユーリ。私はユウキ」


 そう言って手を差し出すと、ユーリはその手を握り返しながら顔を近づけてさらにじっとユウキを見つめる。


「初めまして……本当に? なーんか見た事あるような気がすんだよな」


 首を傾げるユーリに、主人が手早くチャーハンを炒めながら言った。


「あんたら2人、顔と髪型が似てるよ!」

「……あ!」


 そこでユーリは自分に似ているのだと気づいた。


「はははっ! オレに似てるのか! ユウキ? だっけ? 名前まで似てるんだな! オレはユーリ・ローウェル。そこの宿屋に間借りして住んでんだ。あんた、ここは初めてなのか?」

「そうね、この定食屋は初めて来るわ」

「帝都に住んでんの?」

「ええ。仕事であちこち行ったり来たりだけどね」

「そっか」

「はい、お待ち!」


 会話の途中で出されたチャーハンを見て、ユーリはオムライスをユウキの方へ戻すと豪快にチャーハンをかき込み始めた。

 その様子を見てユウキもオムライスを食べる。 


「いや、しっかし本当、良く似てるなあ」


 2人並んで食事をする姿に、店主も面白そうに他の注文を作りながら言う。


「ーーーあれ? そう言えば、なんであんたオレの名前知ってんだ?」


 ふと手を止めてユーリが尋ねる。


「あなたがお店に入ってきた時マスターが“ユーリ”って言っていたし、他のお客さんもそう呼んでいたから」

「ああ、なるほどな」


 ユーリの事はフレンから色々と聞いていたが、こうして実際に会うとフレンが大切に思うのも分かる。

 フレンと同じで、誰かを助ける為に自分の進むべき道を探しているのだ。

 似ているが、どこか違う。

 フレンとユーリは何かしら人を惹き付ける魅力を持っているようだ。


「ん? 何かついてるか?」


 じっとユーリを見つめていたユウキに気付き、こちらへ視線を寄越す。


「あ、ごめん。フレンが話していた通りの人だと思って」

「ーーーフレン? あんた、フレンを知ってるのか?」


 驚いて手を止めたユーリ。


「ええ」

「それじゃあ、あんたも……騎士、なのか?」


 心底驚いたように言うユーリに、ユウキは苦笑する。


「一応ね」

「ーーーそっか」


 そこでユーリはふと表情を緩めた。


「あいつ、元気にしてんの?」

「元気よ。すごく頑張ってる」

「そっか、頑張ってんのか……」


 フレンがユーリの事を話す時に良く似た顔で呟くユーリに、ユウキは食べ終わったスプーンを置いて微笑んだ。


「よくフレンに、ユーリに似てる。って言われるわ」

「ははっ、そうかもな」

「見た目の事じゃないけどね」

「……あんた、オレに性格も似てるのに騎士なんてよく続けられるな」


 目を丸くするユーリ。

 それを見てユウキが笑う。


「やらなきゃいけない事があるからね。大人は色々大変なのよ」

「ーーーそっか……」


 会話が途切れると、主人が割って入ってきた。


「やらなきゃいけない事ならお前にもあるぞ、ユーリ!」

「なんだよ」

「うちの娘にラブレターを寄越して来る不届き者がいやがるんだ! そいつが誰か、突き止めてくれ!」

「やだよ。いいじゃねーの、おやじに似ずに可愛い娘でさ」

「良くねえよっ!」


 ユーリと定食屋の主人のやりとりを聞きながら、ユウキは水を飲み干した。


「ごちそうさま」


 隣りで問答を続ける2人の隙間を縫って代金をカウンターに置くと、ユウキは立ち上がった。

 それに気づいたユーリが呼び止める。


「あ、待ってくれ」

「なに?」

「フレンのやつに会ったら伝えといてくれないか。ーーーえっと、“オレはまだ見つけてないけど、必ず見つける。お前はお前で頑張れよ”って」

「分かった、必ず伝えるわ。それじゃ」


 そしてユウキは店を出た。




 と、



「ユウキ!」


 ユーリが後を追ってやってきた。

 足を止めて笑顔で振り返る。


「どうしたの?」

「やっぱなし」

「なし?」

「さっきの伝言」

「ーーー分かった」


 バツが悪そうに笑うユーリに、ユウキは頷く。そしてはたと思い出して口を開いた。


「あ、そうだ。忘れる所だった。ナイレン・フェドロックの事、フレンから聞いたわ。色々とナイレンの為にしてくれたそうね、本当にありがとう……」

「え?」


 頭を下げるユウキに驚くユーリ。


「大事な仲間だったの。今度また会えたらゆっくり話しましょう。もう行かなくちゃ」

「あんた……一体何者なんだ?」

「私? 私はフレンの仲間よ」


 そう言い残し、ユウキは手を振って下町の路地の奥へと去って行った。





           END  2012.04.27


=あとがき=

お読み下さりありがとうございました!
フレンのお話を読んで頂かないと、「ユウキって誰?」状態なので、これだけ読んでくださった方の為に補足説明をさせていただきます。
ユウキはフレンとユーリが騎士になってすぐに配属された「シドンタリア」という町の騎士団長をしていた「ナイレン・フェドロック」の仲間の女性騎士です。フレンがシドンタリアから別の町に配属されたお話を書かせて頂いたんですけど、その町の隊長が「ユウキ」です。

ユウキが帝都に戻ってきて、アレクセイの命令で世界中を飛び回っている、という設定でこのユーリとの出会い編を書きました。
この後何度か2人は会いますが、多忙を極めているユウキなのでゆっくり話しは出来ません。でも、シドンタリアやフェドロックと一緒の部隊にいた頃の話しはした模様で、ユーリに気に入られます。
いつかゲームと絡めてまたお話を書けたらいいな~。と思っています。






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