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チェンジ・ザ・ワールド☆
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追憶.4

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追憶












 銀時は瀕死の状態にいた。

 エリザベスから行方不明になった桂を探して欲しいとの依頼と、鍛冶屋の少女から刀を探して欲しいという依頼が入り、新八と神楽はエリザベスとともに桂を探しに出、銀時は鍛冶屋の少女とともに出かけた。その途中で操らしい女性が浪人ともめ事を起こしてさらわれたという噂を耳にした。気にはなるが操は強い。そこらへんの浪人が束になってかかっても、かすり傷一つ負わないだろう。だからもしさらわれたとしても命の危険はそうそう無いだろうと考えた。その点での心配はしていないが、銀時は何か良くない事が起こっているような気がした。


 あちこち刀について聞き込みをしていた銀時は、少し前から話題になっていた辻斬りへと行き着いた。どうやらその辻斬りが持っている刀が、銀時が依頼を受けた刀らしかった。ーーー何人もの犠牲者を出している刀。

 そしてとうとう銀時も新八の目の前で犠牲者の一人となってしまった。

 妖刀紅桜ーーー

 それは意志を持った恐るべき刀。持つ者の心を吸い取り、血に飢えた化け物へと進化する刀。行方不明になった桂も、その刀に魅入られた似蔵に襲われたのだった。


「操……」


 包帯だらけの体で、意識も戻っていないというのに、銀時はうわ言で操の名を何度も呼んでいた。新八に後を頼まれたお妙は、そんな銀時の姿を見て悲しそうにため息を吐いた。
















 銀時が大怪我をした時間を少しさかのぼる。

 高杉が出て行ってから何時間経っただろうか。操は一人静かに本を読んでいた。一瞬眠りに落ちたがすぐに目覚め、暇だったのでその辺にある棚から本を引っ張り出してきたのだ。

 ふと高杉の顔を思い出す。

 何故、あんなにも自分の事を好きだと言うのか。それは恐らく操の義父である、吉田松陽のせいだろう。高杉の松陽に対する敬愛ぶりは、他の塾生のそれとはまるで違っていた。まさに崇拝と言ってもよいほどの傾倒ぶりで、その娘である操に対する気持ちもそこから来ていると思われた。操自身を女性として愛しているというよりは、吉田操という一つの存在として自分の物にしたいのだろう。それが、師である松陽を守れなかった己自身を少しでも苦しみから解放する術だと思っているのだ。

 本当の親の顔など知らない。もし、自分が吉田松陽に養女として拾われなかったら?

 操はゾッとした。

 もしかしたら高杉だけでなく、桂や銀時も操の側からいなくなってしまいそうに思えた。それほどまでに死んだ義父は偉大なのだ。悲しみと同時にさもしさがこみ上げてきた時だった、ガチャリと扉が開き、高杉が戻って来た。


「どうした?」

「え? どうしたって、何が?」

「いや、泣きそうな顔をしているから何かあったのかと思ってな」


 自分の顔に手を当て、操は驚く。


「え? 私、泣きそう?」

「ああ。銀時の事でも考えてたのか? 残念だが、あいつにはもう会えないぜ」


 そう言って高杉は操の隣りまでやってくると、手首を掴んで強引に立ち上がらせた。


「晋助っ」


 驚く間もなく抱きかかえられ、操はベッドの上に投げ出された。


「今からお前を抱く」

「っ!?」

「嫌なら本気で嫌がれ。お前が本気を出せばオレから逃げられるだろ? ただし、お前が部屋から出た瞬間、オレの手下が真選組屯所や銀時の家、お前が行っていた診療所を爆破する」

「そんな……脅して私を無理やり自分のものにして、晋助はそれでいいの?」

「構わねえな」


 本気の目をしている。

 操はじりじりと近づいて来る高杉に向かって言った。


「晋助は、私の事が好きなんじゃないよ……」

「あん? 何を言って……」


 高杉は操の目に浮かぶ涙にはっとした。


「父上に対して申し訳ないと思っている気持ちと、私に対する気持ちが混同しているだけだよ」

「バカな。それじゃあ、ガキの頃からお前の事を好きだと言って来たオレの気持ちもそうだってのか?」

「ーーーそれは、父上の事が好きだったから、その養女の私もひっくるめて好きだっただけ」

「操……お前は自分の価値が分かってないみてえだな」


 ギュッと自分の手首を握る手に力がこもる。操は強い視線で高杉を睨んだ。


 コンコン


「高杉さん、おくつろぎの所すみませんっ」

「ーーーったく。毎回毎回いい所で邪魔しやがって」


 パッと操から手を離し、高杉はじっと操を見つめ、仕方ないと言った風にベッドから降りた。

 ドアを開けるとその向こうで浪人が神妙な様子で何かを告げている。一瞬こちらに視線を向けると、高杉は無言で部屋を出て行った。


「ーーー助かった……」


 ベッドから降り、乱れた着物を正してそっと扉の向こうを伺う。

 逃げたい。

 しかし、逃げ出せばたくさんの人が傷ついてしまう。このまま高杉と居続けて、いつまで貞操を守る事が出来るか不安になった。考えても今はどうすることも出来ない。とにかく落ち着こう。仕方なく椅子に座り再び読書を再開すると、高杉がすぐに戻ってきた。


「逃げなかったのか?」

「逃げて良かったの?」

「いいや」

「……変な事しないでくれる? グーで殴りそうだから」


 隣りに座った高杉に笑顔で握りこぶしを見せると、高杉は笑った。


「はははっ! お前は相変わらずだな。まあ、今日の所は大人しくしてやるよ。ネズミも捕まえた事だしな」

「ネズミ?」

「ああ、とびきり活きのいいネズミさ。もう夜も遅い、お前は寝るんだ」

「ーーー」


 無言で睨むと、高杉は両手を挙げた。


「今日はもう何もしないって言ったろ? オレは仕事があるから出て行くさ。じゃあな、おやすみ」

「……おやすみ」


 そう言い残し、本当に高杉は部屋を出て行ってしまった。

 パタリと本を閉じ、部屋を見回す。

 時計も窓も無い綺麗な部屋。操は一旦逃げる事を諦め、体を休める事にした。










                               続く…




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