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<"The pretender" 鳳凰の赤い棺> 前編

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<"The pretender" 鳳凰の赤い棺> 前編 ◆.b1wT4WgWk


I'm the voice inside your head 俺はお前の頭の中に響く声
You refuse to hear お前は聴こうとしないが
I'm the face that you have to face 俺のツラはお前が見てるそのツラと同じ
Mirrored in your stare 俺は鏡に映るお前自身だ
I'm what's left, I'm what's right 俺はとり残されたものだが、真実でもある
I'm the enemy 俺はお前の敵だ
I'm the hand that will take you down 俺はお前を引きずり降ろすもの
Bring you to your knees お前に膝を折らせるもの

So who are you? それでお前は一体誰なんだ?
Yeah, who are you? そう、お前は
Yeah, who are you? お前は一体誰なんだ?
Yeah, who are you? なあ、お前は誰なんだ?



 神塚山山腹、午後12時20分。風にあおられた冬枯れの木々の枝が、ガサガ
サと乾いた音をたてる。冷たく湿った黒土の上に降りつもり地に還るのを待つ落
葉を踏みしめて、ある男が木々の陰から陰へと身を潜めつつ何かを追っていた。

 その男の風体の異様は、葉のない木々の内にあって酷く浮いている。機械的な
運びで動くその足は、金の膝当ての下から足首までつややかな赤い脚絆に包まれ
ていた。赤地に金の手裏剣十字が輝くベルトを締めた腰から脚絆の下まで、黒の
スウェットスーツに覆われている。その光沢のある布地は上半身にもまたぴたり
と貼りついていて、男には肌の露出している部分がない。上半身を守るのは金の
縁取りのある赤の肩甲、同じく金の装飾のある赤い胸甲とその下に繋がり胴を守
る前当て、そして両腕の肘関節近くから手首までの手甲で、これもまた金に縁ど
られたつや出しの赤だ。頭部は黒い?のついた戦国の武将の兜を思わせる仮面に
覆われており、脇立てよろしく二本の赤い角がはり出して主張している。眉間の
大きな赤い手裏剣十字は兜の前立てのように見えるが、これがちょうど剣道の面
の物見と面金をもとにしたような白銀の面頬と兜とを繋いでいた。この仮面に守
られた男の顔は、外からまったくその造形がうかがい知れない。長い白のスカー
フで覆われた首もと、薄い柔らかな布と仮面の僅かな隙間から、これだけがプロ
グラムの参加者である印とばかりに、ちらりと銀の首輪がのぞいていた。

 男が身に纏うのは、悪と戦う正義のヒーロー――超剣戦隊ブレードブレイバー
の主役たるレッドブレイバー――のコスチュームだ。見事な精度で造形された逸
品ではあるものの、軽い発泡ポリエチレン材でできているそれらには無論、銃弾
や刃を防ぐ力などない。ならばなぜ彼がこんなものを身につけているのかと言え
ば、それはひとえに自らの正体を知られずにすむ、というメリットからだ……と、
少なくとも彼自身は思っている。

 そんな鳳が追っているのは、仲間とおぼしき三人だ。宝積寺れんげと、彼女と
合流したと思われる、まだ見ぬ二人。直前に彼が葬った男の残した得体の知れな
い機械は、正午ちょうどのプログラム参加者たちの位置情報を示す。その情報が
機械に追加されてすぐ、最も近くに表示された三つの光点の追跡を始めた彼だっ
たが、その時点ではまだ視界に追うべき者の姿をとらえていなかった。それでも
鳳が追跡に踏み切ったのは、女性である宝積寺の存在が彼らの移動速度に影響す
るだろうと判断したからだ。今すぐ追いかけはじめれば、身軽なこちらの方が有
利。それが鳳の考えだった。

 そして今まさに、彼は追跡対象の姿を目にしている。山腹の木々の根元で、三
人は少しばかり足を止めていたのだった。極力彼らの目に映らぬよう、木々の陰
に身を隠しながら鳳はそこへと近づいていく。

 相手方は男が二人、どうやら一人は宝積寺を抱いており、足を止めたのも走る
うちにずり落ちかけた彼女をもう一度抱えなおすためのようだ。が、その男たち
は明らかに桜蘭のものとは違う黒の詰め襟を身に着けているうえ、二人の制服も
同じ生地ではない。

(……どういうことだ? これは学校対抗のチーム戦のはず……なぜ他校生がつ
 るんで行動している? 彼女をわざわざああやって抱きかかえて逃げているの
 も解せない……命を奪うつもりならあんな真似をする必要はないはずだ、足手
 まといが増えるだけだというのに)

 他校の生徒が宝積寺をつれて逃げているという事実は、彼にとってまったく理
解しがたいことだった。このプログラムは言わばチーム戦であり、自分の仲間以
外を保護することにメリットなどありはしない。何らかの利用価値があるという
のであれば別だが、宝積寺は誰の目にも戦闘の役には立たないだろうとわかる女
性だ。この島の外であれば金銭目的の誘拐の理由に十分なりそうな彼女の出自も、
ここに閉じ込められたままでは何の価値も持たない。もし彼女が仲間でなければ、
どこかで出会ったときに自分は必ず彼女を葬るだろう、それが普通だと鳳は思う。

 実のところ、彼の思う「普通」は多分に利に走りすぎた判断であり、この島に
いる全ての人間に適用できるものではない。この世の多くの「普通」の人間が、
他者の生死すら完全なる損得勘定で割り切ることができるかと問えば、答えは否
だ。放り込まれたのが戦場であったとしても、生きるためもしくは誰かを生かす
ために他の誰かをあっさりと殺せる「普通」の人間は――言い方を変えるなら、
「庶民」は――そう多くはない。できることなら誰の命も(そしてできるなら、
自分自身の命も)奪いたくないと考える者も一定数存在して当然である。例えば、
すでにこの世を去った藤岡ハルヒのように。

 ……だが、それは今の鳳に理解できる考えではなかった。もし彼の傍に仲間が
いれば、また少しは違ったのかもしれないが。

 木陰から三人の様子をうかがう鳳が二人の男の行動に納得のいく理由を探しあ
ぐねていたそのとき、ふいに宝積寺れんげの悲鳴があたりに響く。

「ひ……、あ、や、ぃやあああああああああああああ!」

 男の内の一人に抱きかかえられたままの彼女の目は、その黒い制服の肩越しに
自分たちを追う赤い悪魔の姿をとらえたのだ。冬の冷たい空気を切り裂く悲鳴に
全員の動きは一瞬止まった。

「どうした、何が……!」

 宝積寺を抱えた男の緊迫した声が悲鳴に続き……そしてハッと何かに気づいた
ように後ろをふりむく。もう一人もそれに習うように同じ動きをした。真っ青な
顔をした宝積寺のほっそりとした指先は、目視可能な距離まで彼らに近づいてい
た鳳を――正確に言うなら、木の陰に隠れ切らなかった、レッドブレイバーの仮
面から生えた赤い角を――真直ぐに指していたのだ。その指先をたどって彼のほ
うにふりむいた詰め襟の二人は、すぐに異常事態に気づく。無機質な赤い円錐状
のもの。それはほんの一瞬で木の陰に引っ込んだが、はっきりと彼らの目に映っ
た。表情を硬くした男たちだったが、それからの行動は速かった。宝積寺を抱え
た男が大木の陰に身を隠すと、低く叫ぶ。

「杉村くん、ここに身を隠して銃を構えるんだ!」
「っ、高崎さん、でも!」
「いいから構えるんだっ! 急げ!」
「……っ、はい!」

 男たちが動いたそのとき、鳳は木陰に隠れたままイングラムを構えなおしてい
た。その動きは杉村と呼ばれた男よりも速かったものの、難しい距離なので弾を
撃つことができない。今いる場所から宝積寺以外の人間を撃って彼女を回収し、
自らは無傷でこの場を去る……それをこなすだけの自信はさすがの鳳にもなかっ
た。

(何という失策だ……)

 胸の内で彼は呟く。そのまま鳳と杉村は銃口をお互いに向けあって膠着状態に
陥ったが、杉村のほうは少しすると高崎と呼ばれたもう一人の男の指示により、
銃を構えた状態でわずかずつ後ろに進みはじめた。もともと、彼らのいるあたり
は木が密集している。三人がその陰から陰へと移動することは、杉村の銃による
牽制があれば難しくはない。逆に、鳳の隠れた場所は移動をためらわせる立地だ
った。彼が身を隠す広葉樹の隣には幹の折れた哀れな大木しかなく、三人を追う
ためには一旦その身を相手の銃口に晒す必要がある。杉村は明らかに緊張にこわ
ばった顔をしているが、構えたアサルトライフルを降ろそうとするそぶりはない。
様子からしていきなり撃ってくることはなかろうと判断できるものの、それを絶
対と信じられるほど鳳は能天気ではなかった。

(いっそ……全員殺してしまえば……)

 苛立ちのつのる鳳はそのとき、『宝積寺ごと撃ってしまえ』と囁く心の声を聞
いた。トリガーにかけた彼の指に力が入る。ここで宝積寺がいなくなったところ
で、鳳と環と銛之塚が生きていれば桜蘭の生徒は三人だ。ルール上は、他を全て
葬ればそれでも問題ない。確かに彼女は鳳家にとって大切な取引先のお嬢様だが、
事を成すにはいつだって犠牲はつきもののはずだ……そんな危うい考えが彼の胸
を黒く染めはじめる。

 ……けれども彼は、今にも引き金を引きかけながら踏みとどまった。これはチ
ーム戦だ。いくら彼女が足手まといにしかならなくとも、ここでは「生きている」
ということそれ自体に価値がある。自分の仲間を殺せば分が悪くなるのは自分自
身ではないか……胸の内に湧いた凶暴な何かを諌めるように、鳳はすう、と大き
く息を吸った。

(駄目だ、今撃つわけにはいかない)

 そうしてもう一度、鳳はトリガーにかけた指の力を加減した。その間にも少し
ずつ開いていく三人との距離を詰める方法など、もはやありはしない。鳳はつく
づくと自分の不明を恥じた。身につけている衣装が装飾過多であることを理解し
ていなかったわけではない。それでもあの瞬間の彼は、かぶった仮面から突き出
た角に意識をやる繊細さを失っていた。そのこと自体、いつもの鳳からすればあ
りえない話だ。自分自身の愚かしさに心の中で彼は唾を吐く。

 偵察中の自らの不注意を嫌悪する鳳だったが、実のところ彼の犯したミスはそ
れだけではない。身を隠すのに折れた古木の横の木を選んだことも明らかに失敗
であったし、そもそももっと前の時点で彼は根本的な間違いを犯している。本当
は、三人を追いかける前にコスチュームを脱いでさえいれば、「鳳鏡夜」に戻っ
てさえいれば……それですべては上手く回ったはずなのだ。仮面と衣装を着けて
人を襲った姿を宝積寺に見られたと知っていながら、それを脱がずに彼女を保護
しようとするなど、誰の目から見ても馬鹿げている。

 だがしかし、鳳はその決定的な判断ミスに気づいていない。それをミスだとす
ら感じていない。これは実におかしなことだった。賢明な彼ですら、この異常な
環境下では重要な判断を誤るということだろうか? ……その問いの答えは否、
だ。桜蘭高校ホスト部に君臨する「鳳鏡夜」は、そんなに迂闊ではない。彼はあ
くまでも冷静沈着で、いつも自分が何をすべきか正確に判断できる人物だ。その
彼がいま、これほどの誤りを犯している。それはつまり、「鳳鏡夜」がすでに正
常ではないことを示していた。

 木々の陰に隠れて遠ざかり、見えなくなっていく三人の姿から視線は外さぬま
まに、鳳はきつく唇を噛む。仮面の下で眼鏡の奥の瞳は苛立ちに灼け、秀麗な容
貌は言い知れぬ怒りと沸き立つ暴力的な衝動に歪みつつあった。が、その表情が
人目に晒されることはない。この仮面をつけたままでいれば、彼がどんなに彼ら
しからぬ表情をしたところで誰もそれを知らず……この偽物の鎧を纏ったままで
いれば、彼がどんなに彼らしからぬ行動をとっても、誰にもそれを知られること
はない。かつて鳳のその造作を愛してやまなかった宝積寺れんげが、彼の姿を見
て悲鳴をあげたように。

(……不愉快だ)

 鳳は苛つきを隠さない。彼の足もとの地面は、幾度も小刻みに叩きつけられた
彼の靴の踵で抉れている。身体にピタリと貼りついたその衣装。正体を隠すため
に自ら袖を通したそれは皮肉にも、彼自身すら知らずにいた危うさ――今まで、
彼が「鳳鏡夜」であることによって抑えられ、最奥で眠りについていたそれ――
を引き出しつつあった。ふつふつと湧き上がる黒い感情を抑えるための何かが、
今の鳳にはない。彼が彼自身として在るための支えであり、時に溢れ出そうとす
る危ういものを抑える枷になっていた「鳳鏡夜」という立場そのもの。それはこ
の隔絶した地において、彼が桜蘭の人間と対峙するとき以外に守る必要のないも
のであり……仮面と衣装を身につけ続けている以上は、桜蘭の人間を前にしてす
ら守る必要のないものである。

 彼がプログラムの始まったときに脱出ではなく優勝を望んだのは、この戦いが
チーム戦であったからだ。他を全て排斥すれば自分の仲間を連れて無事に帰りう
るという事実は、鳳にとって天啓だった。脱出という方法をとってしまえば、彼
の一族の社会的地位が危うくなる。それは仲間の命と天秤にかければ軽いものだ
――だからもし、これが昨年度までのプログラムの形式であれば、彼は脱出方法
を練っていたに違いない――が、そうでなければ絶対に避けたい事態であった。
そういう意味では、初めに優勝という目的を掲げたときの彼は紛れもなく「鳳鏡
夜」だったと言える。そして「鳳鏡夜」は目覚めて最初に出会った人間……善良
な庶民の鑑たる田中良を、自らの目的のために何の躊躇いもなく葬った。

 しかし、もし彼に衣装と仮面が支給されていなかったとしたら、彼はあれほど
易々と田中を屠ることができただろうか。別の誰か……「鳳鏡夜」の特徴からは
ほど遠い、誰か別の人物に変身できていなかったとしたら、彼は今のように殺人
を重ねられていただろうか。

 彼は、人を殺して失うものが何もないと思えるほど愚かではなかった。たとえ
仲間とともに生還できたとしても、そのために他者の命を奪った事実は消えない。
誰かを殺して生き残って桜蘭へ帰ったところで、それは本当の意味で元に戻るこ
とではない。そのことを彼は確かに知っていた。そのうえで人を殺める決意をし
た彼に与えられたのが、その姿を隠す仮面と衣装だった。彼自身に自覚はないが、
「鳳鏡夜」は「どこの誰でもないもの」に変身したからこそ、その手をあれほど
簡単に汚せたのだ。どれだけ彼が血にまみれても、その仮面を外さなければ桜蘭
の仲間たちに知られることはない。「鳳鏡夜」が何かを失うことはない。衣装を
初めて着たとき彼はこう思った。誰にも中身を知られたくない、特に環には……
と。こんなものを着ていたと馬鹿笑いされるのが嫌だから、というのが彼の自覚
する表向きの理由だが、本当は自ら血に汚れようとする自分を仲間と親友に知ら
れたくなかっただけにすぎない。

 そうしてどこの誰でもなくなった鳳は、自分の仲間である宝積寺の目の前で桐
島ヒロミを襲った。それは彼が「鳳鏡夜」であったなら、決してできなかったこ
とだ。その時点ですでに歪みつつあった鳳は、放送によって藤岡の死を知ったこ
とでさらに崩れた。「鳳鏡夜」として選んだはずの目的の一端が欠けたことで、
彼はよりいっそう「鳳鏡夜」から遠ざかる。今や、その本来の目的すら一時の衝
動に引きずられて忘れかけるほどだ。彼自身も気づかぬうちに、彼はとりかえし
のつかないところまで歪んでしまった。「鳳鏡夜」は、正義の味方の仮面と衣装
を棺にその命を失おうとしている。

 すっかり視界から三人が姿を消したあと、鳳は耐えかねたように木の幹を拳で
ひとつ殴った。そうして全身を苛む感情の波をどうにか沈めたあと、デイパック
に手をやり、中から「東亜くん」をとり出す。宝積寺との合流に失敗した今、も
っともメリットのある次の目的地はどこか。すでに「鳳鏡夜」ではない男は、か
つてそうだった頃の自らをなぞるように、努めて冷静になろうとしていた。

(……合流に失敗した今、彼らが向かった北西に進むのは得策ではない。違う方
 向にあって、何らかの利益を得られそうな場所に向かうべきだ。とすると、平
 瀬村か分校の跡地が妥当だろう。村ならば民家から物資を調達できるだろうし、
 分校も防災用品などが残っているかもしれない)

 思考を巡らせながら、彼はもう一度機械の表示を見る。すると分校跡に、3つ
の光点が固まっていることに気づいた。

(ふむ……三人が学校内で固まっているというのは、普通なら仲間同士の可能性
 が高い。……まあ、先ほどのような例外は存在するかもしれないが。この表示
 だと全員校舎内にいるようだ。休息のために入るか、何か物資の補給のために
 寄った可能性はあるな。もしそうだとすれば、まだ40分程度しか経っていな
 いし、校内にとどまっているということも考えられる)

 この鳳の考えは決して的外れなものではない。といっても実際には、彼の見た
3つの光点は室江高校の川添と栄花、榊野学園の桂のものである。だが、ちょう
ど鳳が宝積寺らを追跡している最中に、室江高校の桑原も川添らを追跡していた
のだ。この時点ではまだ起きていない事実だが、桑原は今から二十分後に分校で
他の三人と合流することになる。それからすぐに川添と桂が一戦交えることにな
り、最終的に桂が川添に敗北する形で逃走する。そのため、現時点から四十分ほ
どで、分校内に残る人間はちょうど室江高校のメンバー三人になるのだった。も
ともと栄花を手当てするため分校に入った彼らは、校舎内からすぐに移動しよう
とは考えていない。そのため、今から一時間強が過ぎたころ――つまり、鳳がこ
の場所から歩いて分校にたどり着くころ――には、分校内でまさに鳳の考えた通
りの状況がくりひろげられていることになる。

(……この三人の中に桜蘭生が含まれているとすれば、環と銛先輩ということに
 なるが……考えにくいな。いくら能天気なところのある環とはいえ、こんな状
 況で他の学校の人間と一緒に行動するほどとは思えない。銛先輩ならば余計に
 それはあり得ないだろう。とすると、ここにいるのは他校生であると見た方が
 いい。それなら全員命を奪ってしまおう。まあ、もし利用できそうならそれで
 も構わないが)

 鳳はさらに思考を巡らせて、そう結論づけた。そこにいるのが他校生である確
率が高い、という点まではこれもまた正しい考えなのだが、賢明な読者諸氏はす
でにお気づきだろう。鳳は、相手が仲間三人で組んでいると予想しているにも関
わらず、三人に襲われて自分が敗北することを想定していない。いくら彼が強力
な武器を携えているとはいえ、相手がそれ以上の武装をしていれば意味がないと
いうのに。今の鳳はかつてより遥かに暴力的であり、自己の力を過信しがちだ。

「……よし、行ってみるか」

 呟いた鳳の口もとに一瞬、冷たい笑みが浮かぶ。だが、仮面の下の表情は誰に
も知られることなく消えていく。正義の味方のコスチュームを身につけ、右腕に
マシンガンを携えた奇妙な男は、再び僅かに歩調を早めた。



 神塚山山腹、午後1時12分。不気味な追っ手から逃走してきた男女三人は、
枯れた蔦の葉が入口を隠す横穴を山の北西の斜面で見つけた。幸い数人が中で過
ごせる広さのそこに彼らは潜り込み、腰を落ち着けようとしている。

「もう……追ってきてはいないみたいだな……」
「……みたいですね」

 入口から顔を出して周囲の様子に気を配りつつ、高崎はぽつりと呟いた。それ
に反応した杉村が、構えていた銃口を下げながら答える。どちらともなく、ほっ
と安堵の溜息がこぼれた。幸いにして、彼らを追ってきた謎の人物はもうついて
きてはいないようだ。まるで何かの特撮番組のヒーローのような姿をしていたあ
の男は、その手に確かにマシンガンを持っていた。少し前に聞いた銃声もおそら
く男の銃によるものだろうということは、彼らにも容易に想像がつく。

 そして出会ったときからずっと怯えている彼女――高崎の腕の中で青ざめたま
ま小刻みに震えている、れんげという女の子――の様子も、あの男から逃げてき
た直後だったからだとすれば無理もないことのように彼らには思えた。あの異様
な風体の男に襲われて怖くないはずがない。あのとき彼女が木の陰からのぞいて
いる角にすぐ気づけたのも、すでにその姿を見ていたからだと思えば納得がいく。
高崎は抱き上げていた彼女を近くの木の根元にそっと降ろすと、優しく話しかけ
た。

「れんげさん、アイツはもう追ってきてないから安心していいよ。君がアイツに
 気づいて声をあげてくれたから、無事に逃げることができた。ありがとう」
「……ぁ、あ」
「……まだ怖いかもしれないけど、これだけは言っておくよ。信用してもらうの
 は難しいと思うけど、俺たちは君に何かするつもりはないんだ。できるだけ誰
 も傷つけないでいたいと思っているしね」
「……」

 話しかけてくる高崎の真摯な態度に、怯えて揺れていた彼女の瞳も少しずつ光
をとり戻す。その様子を見た高崎は、さらに彼女を安心させるため、杉村に同意
を求めた。

「なあ、杉村くんだってそうだろう?」
「ええ、もちろん……さっきはどうしても構えざるを得ませんでしたけど、俺は
 本当ならこういうものは絶対に使いたくないです」
「……っ、」

 そう言って杉村は、あの男と対峙したときに荷物からとり出して以来、ずっと
手に持ったままだったアサルトライフルを軽くたたいてみせる。それを見た彼女
はほんの一瞬身だけを硬くしたが、杉村の言葉を信じたのか、取り乱したりする
ことはなかった。まだ身体の震えはおさまっていないようだったが、目の前の女
性は少しずつ落ち着いてきていると男たちは確信する。

「……れんげさん、もし君が嫌でなければ俺たちと一緒に行動しないか? その
 ほうが危なくないと思うし、もしどこかで君の学校の仲間に会ったらそこで別
 れればいい」

 ゆっくりと、あくまでも紳士的に紡がれた高崎の言葉を聞いた彼女は、まだ震
える身体を抱きしめながらも小さく頷いた。きちんとした会話をするのはまだ難
しいようだが、少なくとも意思の疎通ができる程度に回復したらしい様子に、高
崎は優しい笑みを浮かべる。それから高崎は、二人にむけてこう提案した。

「杉村くん、れんげさん、俺はここで少し休んで行き先を決めてから山を下りる
 のがいいと思うんだ。この場所ならすぐには見つからないし、しばらく居ても
 大丈夫だろう」
「俺もそれに賛成です、怖い思いをしたれんげさんのためにもそのほうがいいと
 思います」
「……は、い」

 杉村はすぐに賛同し、それに続くように小さな同意の声が上がる。それを聞い
た高崎はこう続けた。

「よし……じゃあもう昼すぎだし、食事をとっておいたほうがいい。食べながら
 地図でも見て、この先のことを考えよう」

 高崎の指示でデイパックから食料をとり出した三人は、それぞれ無言のまま口
をつける。隣に腰を下ろした彼女の食が進んでいない様子を見て、杉村は声をか
けた。

「れんげさん、食欲がないのはわかりますけど、食べておいたほうがいいと思い
 ますよ。こういう状況では、体力がものをいうでしょうし」
「そう、ですわね……」

 少しずつ言葉が出てくるようになった彼女は、杉村に返事をして握り飯を口に
運ぶ。そんな二人の姿を見た高崎も口を開く。

「そうだ、ちょっと確認してもいいかな? さっきの君の呼びかけとこのリスト
 によると、れんげさん、君は桜蘭高校の人ということでいいんだよね? ええ
 と、名字は……」
「……ほう、しゃくじ、ですわ」
「そうか、そう読むんだね。最初に会ったときに一度自己紹介はしたけど、あの
 時はあとが滅茶苦茶だったから……改めてもう一度名乗っておくよ。俺は軟葉
 高校の高崎秀一。よろしく、れんげさん」
「あ、俺ももう一度。城岩中の杉村弘樹です。よろしくお願いします」
「……宝積寺、れんげと申します。桜蘭高校に通っておりますわ。これからどう
 ぞよろしくお願いいたします」

 仕切り直し、といった体での互いの自己紹介が終わったことで、緊張のとけた
三人にやっと和やかなムードが漂った。宝積寺も普段のあの独特のテンションを
とり戻すには至らないが、会話に参加できるまでに回復したようだ。そのまま食
事を続けつつ、彼らは話を始める。

「ところで……さっきの放送、ちゃんと聞けなかっただろう? あのとき録った
 ものをもう一度聞いておいたほうがいいと思うんだ」
「あ……そうでしたね。今出します」

 そう言って杉村は、ポケットから手のひらにおさまる大きさの細長い機械をと
り出すと、再生と書かれたボタンを押した。それは彼の支給品である、小型ボイ
スレコーダーだ。三人は銃声から遠ざかるために必死で走っている最中に放送を
聞くことになり、立ち止まっているだけの時間がなかった。そのとき、たまたま
自分の支給品にボイスレコーダーがあったことを思い出した杉村が、咄嗟に録音
ボタンを押したのだ。そういう理由で高崎と杉村は放送の細かい内容を覚えてい
ないし、宝積寺はまだ精神が恐慌状態にあったため、そこに気を配る余裕がなか
った。

 ……ただし、彼らは全員、あのとき呼ばれた自分の学校の仲間の名だけははっ
きりと記憶している。聞こうと思わなくても耳に滑り込んでくるその名前に凄ま
じい喪失感を覚えながらも、足を止めることはできなかった高崎と杉村の心中は
……そして目の前で自分の犯したミスによって命を失う人間を見た直後に、その
名前を聞くことになった彼女の心中は、想像するに余りあった。

 レコーダーの少し割れた声の告げる禁止エリアを地図に記し、リストをとり出
して呼ばれた名前に印をつけながら、まず杉村が相馬と三村の名に言葉を失い、
次に田中の名を聞いた高崎が打ちのめされる。そして最後に、藤岡の名を耳にし
た宝積寺がびくりと肩を震わせた。すでに聞いていたものとはいえ、心のどこか
で聞き間違いだと信じていた仲間の名が本当に呼ばれていたことを知った三人は、
それぞれ大切な友人たちを失った悲しみと対峙することとなった。

 杉村は二度その名を聞いたにもかかわらず、いまだに相馬と三村の死の実感が
わかないでいる。命を落とした二人は杉村にとって最も親しいとまでは言えない
相手だったものの、その死が彼を呆然とさせたことには変わりない。それぞれ異
なる種類のものだが、どちらも強靭さを感じさせる人間であったためか、彼らと
死とが杉村の中で結びつかなかった。特に三村のほうは一際鮮烈な光を放つ男だ
ったので、余計にその死が信じられない。その事実をいかにして受けとめるべき
か……彼は困惑するばかりだった。

 高崎は腕っ節は強くなくとも芯の通った善良な男だった田中を思って瞼をふせ
る。彼は守りたかった仲間の一人を、知らぬ間にすでに失っていたという事実に
曰く言いがたい悔しさを覚えた。そして呼ばれたのが……この状況を脱する逆転
の策を思いつきそうな三橋や、いざという場面で頼りになる伊藤の名でなかった
ことにほんの小指の先ほどの安堵を覚え、そんなふうに無意識で人に命の重さに
優劣をつけた自分自身を許せなくなり、唇を噛んでうちひしがれた。

 宝積寺は思い込みと我侭で人を傷つけた自分を許し、新たな道を示してくれた
藤岡を思って、はらりと涙を落とした。目の前で人が襲われるところを見た彼女
の胸には、嫌でも「死」の重みがのしかかる。彼女の理解した「死」は恐怖であ
り、痛みであり、無惨に失われることそのものだった。自分のせいで襲われなが
ら、自分を逃がして死んでいった男の最後の姿が脳裏に浮かぶ。愛しい藤岡の死
がまるで、自らが犯した罪に対して与えられた重い重い罰のように思えて、宝積
寺は次々と落ちる涙を止められなかった。

 ……それから十数分。重い沈黙を破るように、高崎が動く。ポケットからとり
出したハンカチをそっと宝積寺に差し出すと、努めていつも通りの声音を装って
彼はこう言った。

「二人とも、このあとどこに向かうか決めないか。禁止エリアが増えていくとい
 う決まりがある以上、ここにずっと隠れているわけにはいかなくなるだろう」
「……ええ」
「それに……れんげさんの呼びかけに反応した人たちも来るかもしれないですし
 ね。まあ、俺たちのように脱出を希望する人なら一緒に行動すればいいんです
 が……」

 杉村はそこで言葉を呑んだ。高崎のハンカチで涙を抑えていた宝積寺の身体が、
大きく傾いだからだ。それまで声をあげずに泣いていた彼女は、耐えていた何か
が溢れ出してしまったように、嗚咽した。

「れ、れんげさん! だいじょうぶですか?! ごめんなさい、俺、貴女を責め
 るようなつもりは……」
「違い、ます。違、う、ですの……」
「れんげさん……」
「わ、たくし、ほんと、……ばか、な、こと……、わた、く、が、あん、な……
 あんな、こと、しな、け、ば……あの、かた、は……っ!」

 自分を責めて涙を流す宝積寺に、杉村も高崎もかける言葉を持たなかった。彼
らが合流する前、彼女に何があったのか二人には知る由もないが、あの放送の時
の彼女の言葉がふっと彼らの頭に浮かぶ。『ここにおられる不良のコスプレをな
さってる方』、と彼女は言った。宝積寺が叫び声をあげた時、きっと彼女の傍に
は他の誰かが居たに違いない。その人物が今はおらず、彼女がこうして泣いてい
るという事実……そこから導きだされる答えはひとつしかない。

「……れんげさん、落ち着いて下さい。何があったのかは何となくわかりました。
 俺、無神経なことを言ってしまって申し訳ないです」

 杉村は彼女に謝罪の言葉をかける。その言葉に宝積寺が泣きながら顔を上げた。

「い、え……いい、え、あな、たが、わるい、では、あり、ませ、のよ……わる、
 のは、わた、くし、です、わ」
「でも……」
「わた、くし、あの、かた、……こ、殺、して、しまっ、た……!」

 その悲痛な叫びは、小さな洞の中に奇妙なほど響く。何か声をかけなければ、
と焦った杉村を高崎が止めた。今の彼女にはどんな言葉も届かないだろうことを
高崎は感じ取っていた。犯した罪の重さに押しつぶされかけながら、絶望の涙を
流す彼女には。だから彼は、ただそっと彼女の背中を撫でた。彼女が泣き止むま
で、ずっと。



 いったいどれだけの涙を流しただろうか。半刻ほども泣き続けた宝積寺は、し
ゃくり上げながらももう一度、高崎のハンカチで涙を拭った。それから少しして、
彼女は泣きはらした顔を毅然とあげてみせる。

「……ご迷惑を、おかけして、申し訳、ありません、でしたわ。高崎、さま、ハ
 ンカチは、洗って、お返し、します」
「いいよ、そんなこと気にしなくて」

 涙が出尽くしたのか、落ち着いた様子の宝積寺に高崎は安堵する。その横で、
杉村もほっと息を吐いた。宝積寺の濡れた目がいつのまにか、新たな光を宿して
いたからだ。その光は、彼女が自分なりのやり方で絶望のむこうがわへとたどり
着いたことを示していた……そのやり方が正しかったのか否かは別として。

 宝積寺は自分の呼びかけに対して、襲いかかろうなどという発想を持つ人間が
集まって来るなどとは思いもしなかった。彼女の生きてきた世界に、そんなタチ
の悪い人間は存在してこなかったし、これからも存在しないのだと思い込んでい
たのだ……が、ここではその思い込みこそが罪だ。世界は本当はそんなに優しく
はできていないし、易しくもできていない。理想を求めて桜蘭に訪れた彼女にそ
れを教えた鳳が、再び彼女に鉄槌を下したという事実は……運命の皮肉としか言
いようがなかった。激しい後悔と自責の念が渦巻く胸を震わせながら嗚咽した宝
積寺は、激しい絶望にもう消えてしまいたいとすら思った。

 けれど、自らの罪に押しつぶされそうになったそのとき……彼女は思い出した
のだ。藤岡ハルヒが自分にむけた笑顔を。

 藤岡はかつて、勝手に他人に求めた理想を裏切られて泣く彼女に手をさしのべ
た。たとえ間違えたとしても、もう一度やり直せることを教えてみせた。あのと
きの藤岡が、今また彼女に優しく囁きかけたのだ。

(……間違えても、やり直せることなら、あるかもしれませんわ)

 自分がどれだけのことをしたか、自分の思い込みがどれほど愚かだったか。そ
れを思い知った彼女はそれでも……まだ自分にはやり直せることがあり、できる
ことがあると信じたかった。自分のために失われた命はとり返せないけれど、そ
れを償うことはできる。そう、信じたかったのだ。

「わたくし、本当に……本当に、馬鹿なことを、してしまいましたの……せめて
 何かさせていただきたいですわ……あの方の、ために」
「れんげさん……」
「あの方の、名前は……存じ上げませんけれど、皆さんの学校の方、ではない、
 のですわよね。桜蘭の方、でも、ございません」
「……そうか、残りの五校のどこかの……男性かい? それとも女性?」
「男の方、ですわ……」
「そうすると、この矢神学院高校の播磨拳児くんか……鈴蘭高校の桐島ヒロミく
 んのどちらかということになるかな。放送で呼ばれた人は、彼ら以外みんな女
 性のようだし」
「ええ……わたくし、ちゃんと、お伝え、しなければ、いけないと、思うんです
 の。あの方の、お友達に……何が、あったのか、わたくしが、何を、して、し
 まったのか」
「……」
「それから、せめてあの方に……お墓を、作って差し上げたいと、思います」

 そう言い切った宝積寺の瞳はまだ涙に潤んでいたが、その表情は驚くほど晴れ
やかだった。高崎と杉村が、息を呑むほどに。

 ……本当は、命は失われてしまえば償えない。失われた命を同じ命でもって購
えると信じる復讐者はいつでも存在するが……それもまた真実ではない。やり直
せない、とりかえしのつかない、とりもどせないものもこの世にはある。藤岡は
それを彼女には教えなかった。藤岡自身は恐らく、とてもよく知っていたことだ
ったけれど。

 しかしながら、それを教わらなかったからこそ……今、宝積寺れんげは立ち直
ろうとしているのだった。彼女の縋るものは真の希望ではあり得なかったが、そ
れでも一人の世間知らずの少女に生きる意味を与えるには十分なものである。

「……じゃあ、決まりだ。残りの五校の人を見かけて、その人が話のできそうな
 人だったら、似た人が仲間にいないか聞いてみよう。だとすると、人が集まる
 ようなところに行ったほうがいいかもしれない……といっても、ここに居るの
 はさすがにまずいと思うけどね」
「……はい」
「それなら、このホテルの跡はどうですか? こういう場所なら休むために寄る
 人も多いと思います。ここからでもあまり遠くないし。もしうまく誰かと合流
 できなかったとしても、北へむかえば鎌石村があるし、西にむかえば平瀬村が
 ありますから」
「うん、俺は杉村くんに賛成だ。れんげさんはどうかな?」
「わたくしも、それでよろしいと思いますわ」

 ……かくして彼らの行く道は決まり、山腹の穴から出た三人は北西にあるホテ
ル跡を目指して歩きはじめた。そのゆく道に何が訪れるのか、まだ今は神のみぞ
知る。


【F4東端 山腹/1日目 午後】

【杉村弘樹@バトル・ロワイアル】
【状態】:疲労(小)
【装備】:AK47(30/30)
【所持品】:支給品一式、棒(竹)、 拡声器
AK47の予備マガジン×2、ボイスレコーダー 
【思考・行動】
1:れんげの希望を叶えつつホテル跡へ向かう
2:高崎についていく
3:七原達と合流したい
4:高崎がプログラムに乗るようであれば全力で止める
5:銃はできるかぎり使わない

【高崎秀一@今日から俺は!!】
【状態】:疲労(小)
【装備】:トカレフTT-33 マガジン(8/8)
【所持品】:支給品一式 花火セット 冷却スプレー
【思考・行動】
基本:どんな形であれ仲間を守る
1:れんげの希望を叶えつつホテル跡へ向かう
2:杉村と共にプログラムからの脱出を考える、無理と判断した場合には
  仲間の命を最優先
3:三橋と伊藤に恩を返したい
4:できれば花火は三橋に渡したい

【宝積寺れんげ@桜蘭高校ホスト部】
【状態】: 疲労(中)
【装備】:なし
【道具】:デイバッグ、支給品一式 本人確認済み残り一つ
【思考・行動】
1:あの方の仲間に全て伝えて、お墓をたててさしあげたい
2:もう一度やり直せること、できることをしたい
3:生きていたい





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