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守りたいもの(後編) - (2011/04/25 (月) 21:09:56) の1つ前との変更点
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**守りたいもの(後編)
(……考えが……、読まれている………!?)
ルシオラは気付いた。
何故、この二人は気取られることなく、あれだけの行動を伝え合うことができたのか。
何故、作戦が見破られ、見えないはずの自分の位置までもがばれたのか。
ルシオラは土の中から身を起こすと、少年に向かって怒りを込めて叫ぶ。
「あなた、テレパシストね!!」
「……少し違うな。説明してやっても良いが、生憎とそんな暇は僕にはない」
レイラが、最後の仕上げと杖を構える。
アルの持つ魔本が、今までにない輝きを放ち始める。
「ちっ!」
心が読まれているならば、一刻も早くここから離れなければならない。
アシュ様に関する、知られてはならない事柄まで知られてしまうではないか。
そんなことになれば大失態では済まされない。
今は逃げる事だけを考え、他の事は一切考えないようにする。
この場から逃げる。
逃げる、逃げる、逃げる!
その、ただ一点のみに集中し、ルシオラは一気に飛び上がった。
「逃がさないと言ったはずよ!」
「ミベルナ・マ・ミグロン!!」
アルの叫びと同時に、植物園内の中空に数十個の三日月が展開される。
ラージア・ミグセンよりは一回り小さいかもしれないが、その一つ一つは巨大というには十分な大きさだ。
「2(ベー)、5(エー)、19(イス)!!」
「回転(ロール)!!」
二人の掛け声と共に、多数の三日月の内の三つがその巨躯を自ら回転させ、ルシオラの進行を妨害するように動きだす。
ただそこにあるだけでも十分に逃走を阻害している三日月が、更に凶悪な障害物となってルシオラの前に立ちはだかった。
「このっ!」
一つの三日月を避けても次の三日月が進行の邪魔をし、それを避けても次の三日月が、
そして再び舞い戻った最初の三日月がと延々妨害を繰り返し、ルシオラを植物園内に押し留める。
「邪魔なのよ!!」
ルシオラは自分の進路を妨害している三日月の一つに向かって霊波を放つ。
だが、三日月は固い。
霊波では壊せないとわかると、ルシオラは攻撃方法を変更した。
ありったけの霊力を注ぎ込んだ竜の牙を構え、一番近いガラス張りの壁に向かって突撃したのだ。
当然、三つの三日月が進行を妨害するが、目の前の障害全てを打ち砕くつもりの渾身の突撃だ。
一つ目の三日月に竜の牙が突き刺さり、そこから三日月全体に亀裂が広がる。
力が入っている今ならば、竜の牙で壊せないものなど何もない。
そう確信した時だった。
「2(ベー)、5(エー)、19(イス)!!」
「攻撃(ファイア)!!」
言葉と同時に、ルシオラが竜の牙を突き立てた三日月、そして近くを動いていた二つの三日月が同時に爆発する。
爆風でルシオラの体が、まだ残っている植物群まで吹き飛ばされる。
茂みが地面にぶつかる衝撃を和らげてくれはしたが、ラージア・ミグセンで受けた傷、そして今の爆発の衝撃と熱で体が悲鳴を上げている。
ラージア・ミグセンもそうだが、この攻撃もそう何回と耐えられるものではない。
それどころか、数が多く自在に動き回る分、こちらの方が厄介だ。
……やはり、この二人は危険だ。
この攻撃では、アシュ様でさえ対処仕切れるかわからない。
逃げることだけを考えようとしたルシオラだったが、今はアシュタロスの身を案じている。
この二人を放置しては大変な事になる。アシュ様の身に危険が及んでしまう。
べスパもパピリオもここには居ない。
アシュ様の味方は、この会場内には私一人だ。
……守らなければ。
私がアシュ様を、お守りしなければ。
こんな敵だらけの場所で、私以外の誰がアシュ様の味方をするというのか。
私が。アシュ様の眷族であるこの私が、必ずアシュ様を救い出して見せる!
決意を固くしたルシオラは、事前に考えておいたある一つの作戦の実行を決断する。
この状況を打破するには、もうこれしか残されていない。
ルシオラは自分に支給された残りの二つの品を思い出す。
一つは今は使えないが、もう一つは非常に強力なものだ。
もしもの時のために温存しておきたかったが、そうも言っていられない。
「まずい! 何か仕掛けてくるぞ! これで終わらせる!!」
「了解よ! 3(セー)、7(ジー)、9(アイ)、17(キュー)、24(エクス)!!」
「回転(ロール)!!」
五つの三日月が回転を始め、ルシオラ目掛けて襲い掛かかる。
しかし、既にルシオラは蔵王を取り出していた。
こんな所で負けるわけにはいかないのだ。
ルシオラは手に持った蔵王を襲い来る三日月達に向け、中から支給品を飛び出させる。
蔵王から飛び出したものは、巨大な卵のような形をしていた。
表面はひび割れ、目玉が一つ付いている。
目玉を正面とするならば、右側面に付いているのは鎌だろうか。
卵の底に当たる部分からは、石でできているかのように固く尖った脚が、十数本生えている。
「間鎚(まづち)! 私を守る結界を張りなさい!!」
間鎚と呼ばれた妖がその命令を受けると、ルシオラを含めた周囲一帯を電流のようなもので四角に囲んでしまう。
襲い掛かって来た三日月がその電流の上を通過しようとするが、三日月の動きが突然止まり、いきなり崩れ落ちてしまった。
後続の三日月も同様だ。
何か目に見えない壁に遮られているかのように、五つの三日月達はその役目を果たせず、間鎚の結界によって全て落とされてしまったのだ。
「そんな馬鹿な!」
「アル、あれは何なの!? あなた心が読めるんでしょう?」
「結界を自在に張る妖怪……だと? 馬鹿馬鹿しい! それに、……なんだ? あの女の思考が読めなくなっている……くそっ!」
アルがルシオラから読み取れた間鎚の正体は、結界を張る妖怪だということ。
妖怪などこの世に存在しない。
そんなものは空想の産物、人の恐怖心が生んだ虚構にすぎない。
だというのに、ルシオラの思考はそれをすんなりと受け入れており、そんなものが存在するのが当たり前だと言わんばかりの情報まで入っていた。
全ての情報を捌き切れたわけではないし、最初は何かの暗号かとも思った。
しかし、現に目の前に妖怪は存在し、隣では魔物が共に戦っている。
非常識にも程がある。
「その結界を破る方法はないの!?」
「今考えてるところだ! 結界とかいうものを張る前の思考は読めたが、あれを破るのは至難の業だぞ!」
やはり、あの結界を張っているという間鎚本体を直接狙うのが良いのか。
弱点らしきものまでは読み取れなかったが、必ず結界を破る方法があるはずだ。
そう考えたところで、ルシオラの声が聞こえてきた。
自分達に向けた呼びかけではない。
間鎚に向けた新たな命令だ。
「間鎚! あの二人を閉じ込めるように結界の張り直し! そして結界を狭めて押し潰しなさい!!」
「何だとっ!?」
使用者であるルシオラの命令を聞き、間鎚は結界を一度解除する。
そして、間鎚の居る場から二人の場所までを囲む、新しい結界を張り直したのだった。
間鎚によって新たな結界が作られると、植物園内に浮かんでいた三日月達に変化が起こる。
正確には、結界の外にある三日月達だ。
結界の外に浮かんでいた三日月達は、急にその力を失い地面へと落下した。
結界内に残っていた三日月は健在だったが、結界外の三日月は全滅だ。
いくら動かそうと力を送っても、ぴくりとも動かなかった。
結界が無事に張り直された事を確認したルシオラは、二人を一瞥しただけで、もう興味はないといった風に空中に飛び上がる。
飛び上がったルシオラはそのままガラス張りの天上を突き破り、植物園の外へと逃走した。
「おい! 待て! この結界を何とかしろっ!!」
アルは叫ぶが、後の祭りだ。
結界内の三日月の数はわずかに三個。
この状態から、どうにかして結界の外へ脱出しなければならなくなった。
「……アル」
「ああ、わかってる! 今どうやってこの結界を破るかを考えてるところだ!」
結界自在妖『間鎚』。
この妖怪の張る結界は、一体で二百七十体の妖怪を封じるだけの力を持っている。
つまり、二百七十体の妖怪が何かをしたところでびくともしない力を、この結界は持っているという事だ。
しかも、結界は本体である間鎚の周囲にも張られている。
単純に間鎚本体を叩けば解決するという話でもない。
打開策はないかと考えを続けているアルの耳に、何かが壊れる音がした。
音のした方を見ると、間鎚の張った結界が狭まり(せばまり)、結界に触れた草木が音を立ててて崩壊している。
早く脱出する方法を考えなければ、自分達もああなるのだろう。
アルは思考を続行する。
(くそっ! 僕は人類最高の頭脳にして超天才、アル・ボーエンだぞ! 妖怪だろうが結界だろうが、初めて知ったという理由で屈してなるものか!!)
◆ ◆ ◆
闇夜を飛行するルシオラは、振り返り後方へと目をやった。
視線の先にあるのは、闇の中で煌々と光りを放つ、ガラス張りの植物園。
戦闘のせいでガラスのいくつかは砕け、外壁にも数箇所穴が空いている。
ガラスや壁の穴からは光が漏れ出ており、闇夜を照らすその姿は、少し綺麗だと思った。
中では、間鎚が上手くやっているだろう。
ルシオラは植物園内での戦闘を思い出す。
敵は本当に強かった。
いや、強くなった。
初めは取るに足らない弱い存在だった魔族の少女が、戦闘中にその姿を変え、アシュタロス様の眷族である私を超えるまでに力を強くしたのだ。
支給品のせいか、それともあれが本来の力だったのか。
判断はつかないが、ともかくあれ程の力だ、アシュ様も苦戦してしまうかもしれない。
その上、途中から現れた相手の心を読む少年も厄介な存在だ
正確ではないと言ってはいたが、相手の思考を読み、そして自分の思考を他者に伝える能力を持っていると見て間違いない。
この二人の死亡を確認せず、間鎚に任せたままにしておくのは、正直言って後ろ髪を引かれる思いだった。
上級魔族以上の力を持った者達だ。結界から脱出してしまう可能性もある。
万が一にも二人がアシュ様に傷を負わせるような事になれば、それは自分の責任だ。
戻って死亡を確認したいという気持ちが込み上げたが、ルシオラはそれを抑え込む。
今、自分がするべきことはそれではない。
この会場に潜む危険は二人だけではないのだ。
変幻自在の神の剣『竜の牙』。
結界自在妖『間鎚』。
ルシオラに支給された物だが、このどちらもが破格の品であった。
他の参加者にも同格か、それ以上の物が支給されているのだろう。
そんな強力な支給品を複数集めた者が現れてしまえば、ただの人間であっても十分な障害と成りえてしまう。
それに、自分もそうだが、アシュ様やあの青紫色の髪をした魔物のように強力な者も連れてこられている。
今はまだ殺し合いが始まったばかりなのだ。
こんな序盤からそのような強敵と戦えば、消耗し切ってしまい勝てる相手にも勝てなくなる。
まずは参加者を殺害しながら支給品を集め、力を蓄えてから強敵を消して行くのが効率的だ。
(それに、探す物もできちゃったしね)
ルシオラに支給された三つ目の支給品。
それは、何も書かれていない木札だった。
一見するとなんの変哲もないただの木札だが、説明書によるととんでもない代物であることがわかる。
『空白の才』。
この木札に欲しい才能を書くと、その才能を手に入れることが可能だというのだ。
これは何でも願いが叶うことと等しい効果である。
だが、肝心の才能を書くための筆が別に存在するらしい。
それを見つけることができれば、勝負をかなり有利に進めることができる。
“勝利の才”や“生存の才”等、思い付く使い道は様々だが、自分で使う事はしない。
昔から願いを叶える類(たぐい)のものには回数制限が設けられている。
おそらく、一度書いてしまえば取り消しは不可能になるだろう。
ならばこれを使えるのはアシュ様だけだ。
自分やその他の者が使って良い品ではない。
となれば、空白の才を他の参加者に奪われ、ましてや使われる事態だけはなんとしてでも避けなければ。
その事を肝に銘じ、ルシオラは前に向き直ると街中へ向けて飛行を続けた。
私はアシュ様の眷族。
私はアシュ様を守る者。
私は、アシュ様の味方だ。
【D-2 空中・一日目 深夜】
【ルシオラ】
[時間軸]:横島と夕日を見る以前。
[状態]:負傷と疲労(自力で回復中)。
[装備]:竜の牙(勾玉状態)@GS美神極楽大作戦!!
[道具]:基本支給品一式、蔵王(空)@烈火の炎、空白の才の木札@植木の法則
[基本方針]:アシュ様のために行動する。参加者を殺し支給品を奪う。
※街中へ向かって移動中。
◆ ◆ ◆
植物園内。
間鎚の張った結界は内と外とを完全に遮断しており、結界外の三日月を動かす事はどうやっても不可能だった。
ルシオラの心が読めなくなったのも結界のせいだろう。
アルとレイラは間鎚のすぐ近くまでやってきていた。
この結界の発生源はこいつである。
これを直接叩けば良いとも思ったが、近くに散乱している木片を投げると、間鎚本体にぶつかる直前に砕けてしまう。
本体の周りにも結界が張られているらしかった。
本体への攻撃が駄目なら、どこかに綻び(ほころび)はないかと周囲を見渡し、アルは気付く。
天井が壊れていない。
もしかしたら、上空から脱出できるかもしれないと、試しに三日月の一つを上空に移動させる。
だが、ある高度に達すると三日月の先端が崩れ始めた。
残り少ない三日月を更に少なくするわけにはいかない。
急いで三日月を降下させる。
結界の境界線は、草木が新たに破壊された跡でわかる。
どうやらこの結界は立方体の形を形成しているようだった。
正に八方塞がりの状態だ。
結界だの妖怪だのといったものは、いつもなら空想の産物と一蹴してやったが今は違う。
どういう原理かは知らないが、内と外を隔てる見えない壁が、そしてその壁を発生させている不気味な生命体が目の前にある。
(良いだろう。今はそのふざけた存在を認めてやる)
アルは今までにARMSやサイキッカーといった、一般常識とはかけ離れた存在を目の当たりにしてきている。
今更非常識の一つや二つが増えたところでなんだというのか。
(僕は今世紀最大の頭脳にして超天才、アル・ボーエンだ。今から全ての事象を分析し、この状況から脱出してみせる!)
結界の大きさは、二人が囲まれた時から三分の二の大きさにまで小さくなっている。
ゆっくりとではあるが、確実に死の時が迫っていた。
結界が更に狭まり、また少し草木が崩れ去った。
「……アル、気付いたことがあるわ」
「気付いたことだと? 何だ、言ってみろ」
レイラはアルに説明を始める。
この結界の崩壊現象についてだ。
結界が狭まり、結界に触れた物体は崩壊を始める。
だが、それは結界に触れた物全てが、一斉に崩壊を始めているわけではなかった。
一本の木が結界に触れ、その身を崩し始める。
それなのに、隣に生えている木には何も起きてはいない。
最初に崩壊を始めた木がその身を崩し終えた頃に、ようやく隣の木に崩壊が訪れるのだ。
この一連の現象は数瞬の内に終わってしまうが、まるで結界の周囲を一周するように規則的に移動していた。
人間では気付く事のできない、魔物であるレイラだからこそ視認することができた一瞬の出来事であった。
「………そうか、わかったぞ! この間鎚は自らエネルギーを放出して結界を張っているんだ。
おそらくは電流と磁場の関係のように、空間にエネルギーを流すことで平面的な力場を発生させているんだろう」
「言ってることは私にはわからないけど、ここから出ることはできるの?」
「できる! エネルギーを流して結界を張っているのなら、そのエネルギーを途中で遮ってしまえば良い!」
アルは即座に作戦を立てた。
まず、崩壊は左周りに移動しているらしい。
エネルギーは間鎚の右側面から出ていると見て間違いない。
間鎚から流れているエネルギー流に直接三日月を挟み込ませ、エネルギーの流れを遮る。
そうしてできた結界の空白地帯を通り抜け、外へと脱出するのだ。
「準備は良いかしら?」
「ああ、いつでも良いぞ」
「それじゃあ、行くわよ! 8(エイチ)、15(オー)、23(ダブ)!!」
「回転(ロール)!!」
三個の三日月が回転を始め、間鎚の放出するエネルギー流へ向けて突き進む。
一つめの三日月がエネルギー流に触れ、その身に亀裂を走らせた。
その三日月が崩壊する前に、エネルギーの通り道に沿うように残りの三日月を配置する。
一つめの三日月がエネルギー流に耐えきれず崩壊するが、二つ目の三日月が結界を形成しようとするエネルギー流を再び遮る。
「今だ! 頼んだぞ!」
「まかせて!」
アルを抱きかかえたレイラが、結界の外へ向けて横跳びに跳躍する。
間鎚のエネルギー流はすでに二つ目の三日月を破壊し、最後の三日月にも亀裂が走っている。
一瞬でも遅れれば二人の命はない。
体を倒し、全力で跳躍したレイラの体が間鎚の横を通り過ぎる。
それと同時に最後の三日月が崩壊し、間鎚の結界が再び展開された。
レイラは一歩二歩と地面を蹴って速度を落とし、芝生の上で体を停止させる。
二人は、無事に間鎚の結界から脱出する事ができたのだ。
「ふう。ありがとう、アル。あなたのおかげで助かったわ」
「ふん! 超天才であるこの僕が居るんだ。当然の結果だ」
アルの態度は尊大だった。
しかし、その後照れくさそうに言葉を付け加える。
「……だが、まあ、僕一人の力では脱出不可能だったのも事実だ。君のおかげで助かった。礼を言う」
「ふふ、どういたしまして」
「ところでレイラ、提案があるんだが」
「あら、何かしら?」
アルは未だ結界を展開している間鎚に目を向ける。
閉じ込めておく者はもういなくなっているというのに、考える力のない間鎚は命令を実行し続けている。
「やはりな。支給品になっていたものだ。通信鬼のように道具としての側面が大きいだろうと思っていたが、案の定だ。
こいつをこのままにしておいて、再び使われるのも面倒だ。ここで破壊するぞ」
「……さっきの敵は追わないの?」
「確かにあいつは危険だ。逃がしてしまったことは痛い。だが、時間が経ち過ぎている。
すでに心眼の有効範囲外に逃げてしまっているし、今から追っても見つけるのは難しい。
まずは状況の整理と休息が必要だ。今はこいつを倒すことに協力してくれ」
「……………。わかったわ。それも、そうね」
「よし、じゃあ始めるぞ。さっきの要領だ。今度は結界を消している間に本体を叩く!」
レイラが杖を構え直す。
すると、地に落ちていた三日月達が一斉に浮かび上がった。
まだレイラの術は発動を続けていたのだ。
「1(アー)、4(デー)、10(ジェー)、12(エル)、18(アル)、21(ユー)、22(ブイ)!!」
「回転(ロール)!!」
二人の掛け声と共に、七つの三日月が間鎚から放出されるエネルギー流に迫る。
三日月達がエネルギー流に割り込み、その流れを遮る陣形をとった。
三日月がエネルギーの流れを止めている間に、レイラとアルは即座に追撃を開始する。
「6(エフ)、9(アイ)、11(カー)、13(エム)、14(エヌ)、16(ペー)、20(ティー)、25(イグ)、26(ゼツ)!!」
「回転(ロール)!!」
今度は九つの三日月が、結界に守られていない間鎚の左側面を狙う。
最初の三日月が間鎚に激突する。
間鎚に目立った外傷は見当たらない。
続いて二つ、三つと間髪入れずに攻撃して行き、四つ目の三日月をぶつけたところで、ようやく間鎚の体にひびが入った。
その間に、間鎚のエネルギー流を遮る三日月は残り三つにまで減っていた。
このまま順番にぶつけていたのでは、全ての三日月をぶつけ終える前に結界が復活してしまう。
レイラは残りの三日月を一気に間鎚の元へと収束させる。
「9(アイ)、14(エヌ)、16(ペー)、20(ティー)、26(ゼツ)!!」
「攻撃(ファイア)!!」
エネルギー流を遮る三日月は残り一つ。
間鎚の元へと集まった五つの三日月達が一斉に爆発する。
結界のない剥き出しの場所への、至近距離からの爆発攻撃だ。
間鎚の体に入ったひびが大きくなり、その固い体皮が砕け散る。
爆風を受けた間鎚の体が、右方向へと大きく吹っ飛んだ。
エネルギーの通り道に配置していた三日月達は、全て砕けて消え去っている。
間鎚のエネルギー流を遮る物は、もう何もない。
にもかかわらず、間鎚の周囲に結界が復活する気配はなかった。
間鎚の持つ唯一の瞳には光が無く、そこから生気を感じとることはできなくなっている。
間鎚は、その活動を完全に停止させたのだ。
「やったな、レイラ」
「やったわね、アル」
二人はお互いを讃えあう。
二人が出会ったのは、ほんの数十分前だ。
だが、その短い時間の中で、二人の信頼は確かな物へと変わっていた。
◆ ◆ ◆
レイラとアル。
二人が出会ったのはつい数十分前。
そのファーストコンタクトは声だけのやり取りであった。
レイラがルシオラと交戦していた最中、茂みの中を疾走していた時の事である。
『おい、聞こえるか?』
(……何?)
レイラに声が届く。
しかしそれは聴覚から入ってくるものではなかった。
頭の中に直接響くような、不思議な感覚だ。
『喋らなくて良い。頭で思うだけで君の思考は僕に届く』
(……何者なの?)
レイラはこの声を怪しんだ。
今戦闘している女性の声ではないが、敵の罠の可能性もある。
一体どういうつもりでこのような事をしているのか。
『僕の名はアル・ボーエン。決して君の敵ではない。今君が戦っている女を倒す手助けをしてやる』
アルと名乗る声は偉そうなもの言いで協力を申し出ている。
(信用できないわね)
『……ふん、これが罠だと? 君の攻撃はあいつにちっとも効いていない。今の状況は君が圧倒的に不利だ。
そんな君に罠を仕掛ける意味があると思うか? そんなものがなくとも、君の負けは確定している』
この言葉に、レイラは少しばかりの怒りを覚えた。
だが、この指摘は事実だ。
あの敵を倒す手段は自分には乏しく、相手の攻撃を防ぐ手段も植物に身を隠しながら移動するしかない。
レイラは怒りを抑えると、アルと名乗る声の主へ問いかける。
(あなたの目的は?)
『さっきも言ったが、僕は君の手助けをしたいだけだ。あの女は、この会場内で他の者達を殺し回るつもりだ。
そんな危険人物を放っておくつもりはない。君は、パートナーが居ないせいで本来の力が出せないんだろう?
僕がパートナーになってやる。信用して欲しい』
(何故パートナーの事を知ってるの!?)
『……気付いているとは思うが、僕はこの通り他人の考えを読むことができる。悪いが、戦闘中の君の思考を読ませてもらった。
君が危険人物かどうかを見定める必要があったのでね。……その事は謝罪しよう』
思考を読む。
正直、良い気持ちはしない行為だ。
だが、今は殺し合いという非常事態である。
相手を見極めるには必要な事だろう。
それに、とレイラは思う。
心を伝える副作用か、それともうっかりしていたのか、今の謝罪の言葉からは、言葉と共に本当に悪かったという相手の気持ちも一緒に伝わってきた。
偽装した気持ちをわざと送って来た可能性もあるが、自分だけではこの状況を打破することができないのは事実だ。
ならば、この人物を信用しよう。
今感じ取った気持ちも、きっと本物だろう。
この人物を信用してさらに不利な状況になったとしても、その時はその時である。
(……わかったわ。協力をお願いできるかしら?)
『任せておけ。この今世紀最大の頭脳にして超天才、アル・ボーエンが必ず君に勝利をもたらして見せよう』
この尊大で自信たっぷりなアルの態度に、どことなく子供っぽいところがあるな、とレイラは思った。
その思考を読んだのか、アルが怒声を飛ばしてくる。
『僕が子供っぽいだと!? 僕は事実を述べているだけだ! ふざけたことを思うな!』
(ふふ、むきになる所がますます子供っぽいわね)
『貴様は………ふん! まあいい。すぐにその考えを改めることになるさ。良いか、今から僕の考えた作戦を伝える。決して聴き漏らすなよ!』
アルの伝えてきた作戦は次の通りだ。
アルは支給品である、通信鬼という謎の生命体をレイラの所まで飛ばしている。
その生命体は通信機と同じ役割をするので、それを使って、言葉による交信をしていると敵に誤認させる。
そうして嘘の指示を通信鬼から発し、敵がそれに釣られたところでアルの居る土手へ向かって跳躍し、魔本をアルまで投げ飛ばす。
若干の隙は作れるとはいえ、気付いた敵はすぐに攻撃を仕掛けてくるだろう。
だが、フルパワーで術を発動させれば敵の攻撃は防ぎきれるとレイラは確信していた。
説明書の通りならば、アルは魔本を読めるはずである。
魔本を読んでもらえば、本来の力を発揮できる。
一種の賭けではあったが、それしか道はない。
こうして作戦は実行され、敵はアルの思い描いた通りの動きをし、更に思考を読むことで幻影に気付くこともできたのだった。
◆ ◆ ◆
ミベルナ・マ・ミグロンの三日月はまだ十数個残っている。
だが、敵も居なくなった以上、心の力を浪費し続けるわけにはいかない。
術を解除すると、三日月達は静かに消えていった。
「アル、これからどうするつもりなの?」
「まずは現状の把握だな。自分達の状態と支給品の確認。そしてこれからの行動をここで決める。君にもいくつか訊きたい事があるしな」
「心を読めばわかることじゃない?」
「馬鹿を言うな。君は敵ではない。他人に心を読まれて良い気はしないだろう。僕はそこまで傲慢じゃない」
「……ふふ。優しいのね、あなた」
「なっ!? くだらない事を言っている暇があったら早く支給品とその説明書を出せ! 時間が惜しい!」
「はいはい」
二人はお互いの支給品を確認し合った。
レイラの支給品は三つ。
一つ目はレイラの魔本だ。
青紫色の装丁で、中の呪文は誰でも読めるようになっている。
自分で読めば威力が落ちるが、他人に読んでもらえば本来の威力での術の行使が可能となる。
レイラが術を発動させるには欠かせない品である。
二つ目の支給品は綺麗な柄の風呂敷だ。
説明書には普通の風呂敷と書かれている。
参加名簿にある桐雨刀也の物らしい。
三つめの支給品は、レイラの右手首にある金属製のブレスレットだ。
名は輪廻。
使用者の肉体年齢を操作する能力を持つ。
「私は、これを使ったのね……」
レイラは戦闘中にルシオラから発せられた言葉を思い出す。
『それがあなたの本当の姿ってわけね!』。
この言葉は、自分が姿を変えた事を言っているのだとわかった。
今一判然としないが、確かに輪廻を使った……ような気がする。
記憶が曖昧になっており、はっきりとしない。
「ああ、僕が最初に見た時の君は少女の姿をしていた。それを使用した時の思考は読んでいなかったが、おそらくあのままでは勝てないと判断したんだろう」
「そう……」
輪廻発動の副作用は、使用者の記憶を奪う事だ。
ここに来る以前の記憶がなくなっていることからも、自分が輪廻を使用した事は確実だろう。
だが、それでもレイラは今の年齢が本当の自分だと思えてならなかった。
使用時の年齢が本来の年齢であると錯覚させる、輪廻のもう一つの副作用のせいだ。
「どうする? それを破壊すれば元の記憶を取り戻すこともできるが……」
「いいえ、結構よ。幼い私では、アルに本を読んでもらったとしても、さっきの敵には勝てそうにないもの。このままで問題ないわ」
「そうか……。まあ、君の仲間の名前は僕が覚えている。仲間を敵と思い攻撃するような事態にはならないから、その点は安心したまえ」
レイラは自分のリュックから取り出した名簿に目を向ける。
そこには四名の名前に印が付けられていた。
ガッシュ・ベル。
高嶺清麿。
ナゾナゾ博士。
パルコ・フォルゴレ。
この四人は大切な仲間であると、自分の字で名簿に書かれていた。
顔は、よく思い出せない。
どのような人物かは見当もつかない。
だが、懐かしい響きがこれらの名前にはあった。
「この、ゼオン・ベルという名前は、私の仲間ではないのね?」
「ああ、君の思考でも、この人物はガッシュの親類かただの偶然だと判断されていた」
ゼオン・ベル。
ガッシュと同じ性を持つ、参加者の一人である。
レイラの名簿には『ガッシュの兄弟?』、と疑問符が書かれている。
「さて、次は僕の支給品だな」
そう言うと、アルは自分の支給品を取り出し始めた。
アルに支給された品は三つ。
一つ目の支給品は通信鬼。
二体で一つの支給品らしかった。
黒い小さな羽が生えているが、どういう原理か羽を動かさずに浮いており、命令すれば自力で移動する。
生物のようではあるが、音を送受信する部分は機械的だ。
通信可能な範囲は会場全域とあった。
レイラに差し向けた通信鬼は、レイラが跳んだ時に回収してもらっている。
二つ目の支給品は心眼。
指輪の形をしており、これを嵌めた者にテレパシー能力を授ける道具だ。
声による伝達を伴わずに他者との意思の疎通が可能となるばかりか、相手の意思を無視して思考を読むこともできる。
但し制限がかけられているらしく、一度見た相手でなければ対象を捕捉することはできず、一度に捕捉できる人数も一人までだ。
効果範囲も半径百メートル圏内となっている。
三つ目の支給品はノートパソコン。
一見ただのノートパソコンに見えたが、初め見た時アルは驚いた。
市場に出回っているノートパソコンよりも薄い作りをしていたのだ。
それでいて起動も早く、更に性能まで高かった。
これが実現するには少なくともあと数年の時間を要するはずだが、エグリゴリの技術ならばこれを作るのも可能だろう。
だが、アルは別の可能性を考えていた。
もしかしたらこれは本当に数年先のものではないだろうか、と。
まず、最初に集められた時からおかしかったのだ。
アリスが消滅し、ARMSの力を失ったはずの高槻が、何のためらいもなくARMSを使用していた。
キース・ホワイトにその身を奪われたはずのキース・ブラックが復活し、高槻の攻撃により再びキース・ホワイトが目覚めた。
名簿には死亡したはずのシルバーとグリーン、そしてユーゴーの名前が載っている。
初め見た時は何かの冗談か敵の罠かと思ったが、このノートパソコンを見て一つの可能性を思いつく。
「レイラ、今は何年だかわかるか?」
「ごめんなさい、それは覚えていないわ。……何か重要なこと?」
「いや、ただ確認しただけだ。気にしないでくれ」
魔物や妖怪といったものは、この目で見た以上認める他ない。
いつかはその謎を解き明かして見せよう。
だが、今立てた仮説は推論だ。
確証があるわけではない。
そんな不確かなものを、天才の口から話すわけにはいかないのだ。
『時間を越えてここに連れてこられている』などという考え、馬鹿げているにも程がある。
今は目の前にある明確な事実と向き合うべきだ。
アルが起動させたノートパソコンのデスクトップには、ファイルが一つあるだけだった。
ファイル名は『program battle royale』。
名前からして、この殺し合いの事を指していると見て間違いない。
このファイルの中には何か重要な手掛かりがあるはずだ。
しかし、ファイルにはロックがかけられており、パスワードを入力しなければ開けないようになっている。
このパソコンに入っているものといえば、このファイル一つだけだ。
今のところ、手掛かりと呼べるものはこれしかない。
「ふん! 僕にこのロックを解いてみせろということか。良いだろう。こんなもの、超天才である僕の前では障害にすらならない事を思い知らせてやる!!」
アルは素早くキーボードを叩き、思い当たる言葉を片っ端から入力していく。
『evolution(進化)』。
ブイーッ!
『human(人間)』。
ブイーッ!
『time(時間)』。
ブイーッ!
『life(生命)』。
ブイーッ!
『egrigori(エグリゴリ)』、『arms(アームズ)』、『alice(アリス)』。
ブイーッ!
『不思議の国のアリスの登場人物の名前』、『キースシリーズの名前』、『hope(希望)』、『despair(絶望)』。
ブイイーッ!!
「……………」
エグリゴリに関係する単語、プログラム・ジャバウォックに関する言葉。
どれを試してもブザー音が鳴るばかりで、ファイルが開かれる気配はない。
悩みこんでいるアルの横から、レイラがキーボードに手を伸ばし、思いついた文字をかたかたと入力した。
『al bowen is a super genius(アル・ボーエンは超天才)』。
ブイイーッ!! ブイイーッ!! ブイイーッ!!
ノートパソコンからは、間違いを告げるブザー音がけたたましく鳴り響いた。
その言葉は間違っています。
正しい言葉を入力してください。
「ええい! うるさいぞ!! 何をしているんだレイラ!! 僕を馬鹿にしているのか!!!」
「ごめんなさい。つい……」
「何がついだ! まったく! ………それにしてもなんなんだ? まさか適当な文字列でもないだろう。
おそらくはこのプログラムの核心に触れるキーワードのはずだが……」
考えろ。
このプログラムを計画した奴は、何が目的でこの殺し合いを計画した?
これを計画したのはキース・ブラックか? キース・ホワイトか?
それとも、あの場にあった金属生命体、アザゼルの意思か?
「くそっ! 駄目だ、情報が少なすぎる」
ある程度の情報を持っていて、話し合いができそうな奴と言えばバイオレットが思い当たるが、素直に質問に応じてくれるかはわからない。
とにかく情報だ。
情報を集めなければ先に進めない。
まずは地図にある施設を回ってみる必要があるだろう。
わざわざ記載されているのだ、手掛かりがある可能性はある。
「よし、まずは施設を回ろう。施設には人が集まる。つまりは情報も集まるということだ。
僕達の仲間についても、何かしらわかることがあるだろう。レイラ、一緒に来てくれるか?」
「ええ。私達はもうパートナーじゃない。離れる理由がないわ」
「……今更なんだが、僕を疑ったりはしないのか?」
「あなたは悪い人じゃないわ。それに、自分が危険に晒される可能性があったのに、私を助けてくれたじゃない。あなたのことは信用してるわよ」
「……ふん! あれは勝てる算段があったからだ! 君が勝てないと判断していればさっさと逃げていたさ!」
「あら、そうなの?」
レイラはくすりと笑った。
アルのその言葉が、照れ隠しからくるものなのだとわかったいるからだ。
尊大な態度をとっているが、根は優しい子だ。
私が負けると判断したとしても、きっと、その手を差し伸べてくれていたことだろう。
「何を笑っているんだ! ほら、さっさと行くぞ!」
「ふふふ。ええ、行きましょうか」
レイラとアルは、横に並んで歩き始めた。
レイラは覚えていないが、今の二人の姿はレイラが以前に組んでいた『パートナー』の姿と似ているものだった。
大人と子供。『アル』という名前。
見た目は逆になっているが、二人の姿がしっくりくるのは何故だろうか。
二人が出会えた事も、この短時間で信頼を築けた事も、偶然ではないのかもしれない。
【D-2 植物園・一日目 深夜】
【レイラ】
[時間軸]:魔本が燃え尽きた直後。
[状態]:打撲と傷(魔物なのでしばらくすれば治る)。中程度の疲労。心の力(小)。輪廻を使用して大人になっている。
[装備]:輪廻@烈火の炎。
[道具]:基本支給品一式、居合番長の風呂敷@金剛番長、 通信鬼@GS美神極楽大作戦。
[基本方針]:仲間達を守る。殺し合いに乗っている者は倒す。
※大人の姿になっているため、術の威力や身体能力が向上しています。
※輪廻によりこの会場に来る以前の記憶が朧気になっています。
※ガッシュ達が仲間であることは理解しています。
※ルシオラとアシュタロスを危険人物として認識しています。
※アルと情報交換をしました。
【アル・ボーエン】
[時間軸]:第四部「アリス」編終了以降。
[状態]:健康。心の力(小)。
[装備]:レイラの魔本@金色のガッシュ!!、心眼@烈火の炎。
[道具]:基本支給品一式、通信鬼@GS美神極楽大作戦、ノートパソコン@現実。
[基本方針]:施設を巡り情報を集める。殺し合いに乗っている者は倒す。
※ルシオラの思考をある程度まで読んでいます。
※ルシオラとアシュタロスを危険人物と認識しています。
※レイラと情報交換をしました。
【支給品紹介】
【レイラの魔本@金色のガッシュ!!】
青紫色の装丁の魔本。
誰でも読むことができる。
記されている術は『ミグロン』、『ミシルド』、『オル・ミグルガ』、『ラージア・ミグセン』、『ミベルナ・マ・ミグロン』の五つ。
【輪廻@烈火の炎】
火影の作りだした魔導具の一つ。
ブレスレットの形をしている。
使用者の肉体年齢を自在に操作する能力を持つ。
副作用として、操作された年齢を自分の本来の年齢と錯覚し、使用以前の年齢に関する記憶が失われる。
自分の状況や知識までは失われない。
制限により、バトルロワイアル開始以降の記憶は、年齢に関する事以外消えることはない。
他者に使用されたり、輪廻が破壊された場合は記憶と共に元の肉体年齢に戻る。
【心眼@烈火の炎】
火影の作りだした魔導具の一つ。
指輪の形をしている。
相手の思考を読み取る力を持つ。
逆に自分の思考を相手に伝えることも可能。
制限により、一度視認した相手でなければ対象にできず、半径百メートル以内でなければ捕捉できない。
【通信鬼@GS美神極楽大作戦!!】
魔界に生息する鬼の一種。
能力も大きさもまんま通信機。
同種の仲間同士ならば、例え異界であっても通信が可能。
自力で浮かんでいるので通信しながら両手が使える。
【竜の牙@GS美神極楽大作戦!!】
使用者の霊力によって発動する神の剣。
使用していない時は勾玉の状態。
使用者の意思に応じて変幻自在に姿を変える。
【間鎚@うしおととら】
結界自在妖。
二百七十体の妖怪を封じる程の結界を張ったり、結界を破る力を持つ。
空も飛べる。
【居合番長の風呂敷@金剛番長】
桐雨刀也(居合番長)の持っている風呂敷。
綺麗な柄が特徴の普通の風呂敷。
【空白の才の木札@植木の法則】
何も書かれていない、空白の才の札の部分。
付属の筆で才能を書き込めば、書いた通りの才能を得る事ができる。
筆の部分が別にあるらしい。
【ノートパソコン@現実】
薄型のノートパソコン。
中には『program battle royale』と書かれたファイルが一つだけあるのみ。
ファイルにはロックがかけられており、正しいパスワードを入力しなければ開くことはできない。
【備考】
B-2・植物園内が大きく破壊されました。
壁も一部破壊されています。
天上のガラスの一部が割れています。
間鎚が活動を停止しました。
園内に間鎚が放置されています。
*投下順で読む
前へ:[[守りたいもの(前編)]] [[戻る>第一放送までの本編SS(投下順)]] 次へ:[[]]
*時系列順で読む
前へ:[[守りたいもの(前編)]] [[戻る>第一放送までの本編SS(時系列順)]] 次へ:[[]]
*キャラを追って読む
|032:[[守りたいもの(前編)]]|ルシオラ||
|~|レイラ||
|~|アル・ボーエン||
**守りたいもの(後編)
(……考えが……、読まれている………!?)
ルシオラは気付いた。
何故、この二人は気取られることなく、あれだけの行動を伝え合うことができたのか。
何故、作戦が見破られ、見えないはずの自分の位置までもがばれたのか。
ルシオラは土の中から身を起こすと、少年に向かって怒りを込めて叫ぶ。
「あなた、テレパシストね!!」
「……少し違うな。説明してやっても良いが、生憎とそんな暇は僕にはない」
レイラが、最後の仕上げと杖を構える。
アルの持つ魔本が、今までにない輝きを放ち始める。
「ちっ!」
心が読まれているならば、一刻も早くここから離れなければならない。
アシュ様に関する、知られてはならない事柄まで知られてしまうではないか。
そんなことになれば大失態では済まされない。
今は逃げる事だけを考え、他の事は一切考えないようにする。
この場から逃げる。
逃げる、逃げる、逃げる!
その、ただ一点のみに集中し、ルシオラは一気に飛び上がった。
「逃がさないと言ったはずよ!」
「ミベルナ・マ・ミグロン!!」
アルの叫びと同時に、植物園内の中空に数十個の三日月が展開される。
ラージア・ミグセンよりは一回り小さいかもしれないが、その一つ一つは巨大というには十分な大きさだ。
「2(ベー)、5(エー)、19(イス)!!」
「回転(ロール)!!」
二人の掛け声と共に、多数の三日月の内の三つがその巨躯を自ら回転させ、ルシオラの進行を妨害するように動きだす。
ただそこにあるだけでも十分に逃走を阻害している三日月が、更に凶悪な障害物となってルシオラの前に立ちはだかった。
「このっ!」
一つの三日月を避けても次の三日月が進行の邪魔をし、それを避けても次の三日月が、
そして再び舞い戻った最初の三日月がと延々妨害を繰り返し、ルシオラを植物園内に押し留める。
「邪魔なのよ!!」
ルシオラは自分の進路を妨害している三日月の一つに向かって霊波を放つ。
だが、三日月は固い。
霊波では壊せないとわかると、ルシオラは攻撃方法を変更した。
ありったけの霊力を注ぎ込んだ竜の牙を構え、一番近いガラス張りの壁に向かって突撃したのだ。
当然、三つの三日月が進行を妨害するが、目の前の障害全てを打ち砕くつもりの渾身の突撃だ。
一つ目の三日月に竜の牙が突き刺さり、そこから三日月全体に亀裂が広がる。
力が入っている今ならば、竜の牙で壊せないものなど何もない。
そう確信した時だった。
「2(ベー)、5(エー)、19(イス)!!」
「攻撃(ファイア)!!」
言葉と同時に、ルシオラが竜の牙を突き立てた三日月、そして近くを動いていた二つの三日月が同時に爆発する。
爆風でルシオラの体が、まだ残っている植物群まで吹き飛ばされる。
茂みが地面にぶつかる衝撃を和らげてくれはしたが、ラージア・ミグセンで受けた傷、そして今の爆発の衝撃と熱で体が悲鳴を上げている。
ラージア・ミグセンもそうだが、この攻撃もそう何回と耐えられるものではない。
それどころか、数が多く自在に動き回る分、こちらの方が厄介だ。
……やはり、この二人は危険だ。
この攻撃では、アシュ様でさえ対処仕切れるかわからない。
逃げることだけを考えようとしたルシオラだったが、今はアシュタロスの身を案じている。
この二人を放置しては大変な事になる。アシュ様の身に危険が及んでしまう。
べスパもパピリオもここには居ない。
アシュ様の味方は、この会場内には私一人だ。
……守らなければ。
私がアシュ様を、お守りしなければ。
こんな敵だらけの場所で、私以外の誰がアシュ様の味方をするというのか。
私が。アシュ様の眷族であるこの私が、必ずアシュ様を救い出して見せる!
決意を固くしたルシオラは、事前に考えておいたある一つの作戦の実行を決断する。
この状況を打破するには、もうこれしか残されていない。
ルシオラは自分に支給された残りの二つの品を思い出す。
一つは今は使えないが、もう一つは非常に強力なものだ。
もしもの時のために温存しておきたかったが、そうも言っていられない。
「まずい! 何か仕掛けてくるぞ! これで終わらせる!!」
「了解よ! 3(セー)、7(ジー)、9(アイ)、17(キュー)、24(エクス)!!」
「回転(ロール)!!」
五つの三日月が回転を始め、ルシオラ目掛けて襲い掛かかる。
しかし、既にルシオラは蔵王を取り出していた。
こんな所で負けるわけにはいかないのだ。
ルシオラは手に持った蔵王を襲い来る三日月達に向け、中から支給品を飛び出させる。
蔵王から飛び出したものは、巨大な卵のような形をしていた。
表面はひび割れ、目玉が一つ付いている。
目玉を正面とするならば、右側面に付いているのは鎌だろうか。
卵の底に当たる部分からは、石でできているかのように固く尖った脚が、十数本生えている。
「間鎚(まづち)! 私を守る結界を張りなさい!!」
間鎚と呼ばれた妖がその命令を受けると、ルシオラを含めた周囲一帯を電流のようなもので四角に囲んでしまう。
襲い掛かって来た三日月がその電流の上を通過しようとするが、三日月の動きが突然止まり、いきなり崩れ落ちてしまった。
後続の三日月も同様だ。
何か目に見えない壁に遮られているかのように、五つの三日月達はその役目を果たせず、間鎚の結界によって全て落とされてしまったのだ。
「そんな馬鹿な!」
「アル、あれは何なの!? あなた心が読めるんでしょう?」
「結界を自在に張る妖怪……だと? 馬鹿馬鹿しい! それに、……なんだ? あの女の思考が読めなくなっている……くそっ!」
アルがルシオラから読み取れた間鎚の正体は、結界を張る妖怪だということ。
妖怪などこの世に存在しない。
そんなものは空想の産物、人の恐怖心が生んだ虚構にすぎない。
だというのに、ルシオラの思考はそれをすんなりと受け入れており、そんなものが存在するのが当たり前だと言わんばかりの情報まで入っていた。
全ての情報を捌き切れたわけではないし、最初は何かの暗号かとも思った。
しかし、現に目の前に妖怪は存在し、隣では魔物が共に戦っている。
非常識にも程がある。
「その結界を破る方法はないの!?」
「今考えてるところだ! 結界とかいうものを張る前の思考は読めたが、あれを破るのは至難の業だぞ!」
やはり、あの結界を張っているという間鎚本体を直接狙うのが良いのか。
弱点らしきものまでは読み取れなかったが、必ず結界を破る方法があるはずだ。
そう考えたところで、ルシオラの声が聞こえてきた。
自分達に向けた呼びかけではない。
間鎚に向けた新たな命令だ。
「間鎚! あの二人を閉じ込めるように結界の張り直し! そして結界を狭めて押し潰しなさい!!」
「何だとっ!?」
使用者であるルシオラの命令を聞き、間鎚は結界を一度解除する。
そして、間鎚の居る場から二人の場所までを囲む、新しい結界を張り直したのだった。
間鎚によって新たな結界が作られると、植物園内に浮かんでいた三日月達に変化が起こる。
正確には、結界の外にある三日月達だ。
結界の外に浮かんでいた三日月達は、急にその力を失い地面へと落下した。
結界内に残っていた三日月は健在だったが、結界外の三日月は全滅だ。
いくら動かそうと力を送っても、ぴくりとも動かなかった。
結界が無事に張り直された事を確認したルシオラは、二人を一瞥しただけで、もう興味はないといった風に空中に飛び上がる。
飛び上がったルシオラはそのままガラス張りの天上を突き破り、植物園の外へと逃走した。
「おい! 待て! この結界を何とかしろっ!!」
アルは叫ぶが、後の祭りだ。
結界内の三日月の数はわずかに三個。
この状態から、どうにかして結界の外へ脱出しなければならなくなった。
「……アル」
「ああ、わかってる! 今どうやってこの結界を破るかを考えてるところだ!」
結界自在妖『間鎚』。
この妖怪の張る結界は、一体で二百七十体の妖怪を封じるだけの力を持っている。
つまり、二百七十体の妖怪が何かをしたところでびくともしない力を、この結界は持っているという事だ。
しかも、結界は本体である間鎚の周囲にも張られている。
単純に間鎚本体を叩けば解決するという話でもない。
打開策はないかと考えを続けているアルの耳に、何かが壊れる音がした。
音のした方を見ると、間鎚の張った結界が狭まり(せばまり)、結界に触れた草木が音を立ててて崩壊している。
早く脱出する方法を考えなければ、自分達もああなるのだろう。
アルは思考を続行する。
(くそっ! 僕は人類最高の頭脳にして超天才、アル・ボーエンだぞ! 妖怪だろうが結界だろうが、初めて知ったという理由で屈してなるものか!!)
◆ ◆ ◆
闇夜を飛行するルシオラは、振り返り後方へと目をやった。
視線の先にあるのは、闇の中で煌々と光りを放つ、ガラス張りの植物園。
戦闘のせいでガラスのいくつかは砕け、外壁にも数箇所穴が空いている。
ガラスや壁の穴からは光が漏れ出ており、闇夜を照らすその姿は、少し綺麗だと思った。
中では、間鎚が上手くやっているだろう。
ルシオラは植物園内での戦闘を思い出す。
敵は本当に強かった。
いや、強くなった。
初めは取るに足らない弱い存在だった魔族の少女が、戦闘中にその姿を変え、アシュタロス様の眷族である私を超えるまでに力を強くしたのだ。
支給品のせいか、それともあれが本来の力だったのか。
判断はつかないが、ともかくあれ程の力だ、アシュ様も苦戦してしまうかもしれない。
その上、途中から現れた相手の心を読む少年も厄介な存在だ
正確ではないと言ってはいたが、相手の思考を読み、そして自分の思考を他者に伝える能力を持っていると見て間違いない。
この二人の死亡を確認せず、間鎚に任せたままにしておくのは、正直言って後ろ髪を引かれる思いだった。
上級魔族以上の力を持った者達だ。結界から脱出してしまう可能性もある。
万が一にも二人がアシュ様に傷を負わせるような事になれば、それは自分の責任だ。
戻って死亡を確認したいという気持ちが込み上げたが、ルシオラはそれを抑え込む。
今、自分がするべきことはそれではない。
この会場に潜む危険は二人だけではないのだ。
変幻自在の神の剣『竜の牙』。
結界自在妖『間鎚』。
ルシオラに支給された物だが、このどちらもが破格の品であった。
他の参加者にも同格か、それ以上の物が支給されているのだろう。
そんな強力な支給品を複数集めた者が現れてしまえば、ただの人間であっても十分な障害と成りえてしまう。
それに、自分もそうだが、アシュ様やあの青紫色の髪をした魔物のように強力な者も連れてこられている。
今はまだ殺し合いが始まったばかりなのだ。
こんな序盤からそのような強敵と戦えば、消耗し切ってしまい勝てる相手にも勝てなくなる。
まずは参加者を殺害しながら支給品を集め、力を蓄えてから強敵を消して行くのが効率的だ。
(それに、探す物もできちゃったしね)
ルシオラに支給された三つ目の支給品。
それは、何も書かれていない木札だった。
一見するとなんの変哲もないただの木札だが、説明書によるととんでもない代物であることがわかる。
『空白の才』。
この木札に欲しい才能を書くと、その才能を手に入れることが可能だというのだ。
これは何でも願いが叶うことと等しい効果である。
だが、肝心の才能を書くための筆が別に存在するらしい。
それを見つけることができれば、勝負をかなり有利に進めることができる。
“勝利の才”や“生存の才”等、思い付く使い道は様々だが、自分で使う事はしない。
昔から願いを叶える類(たぐい)のものには回数制限が設けられている。
おそらく、一度書いてしまえば取り消しは不可能になるだろう。
ならばこれを使えるのはアシュ様だけだ。
自分やその他の者が使って良い品ではない。
となれば、空白の才を他の参加者に奪われ、ましてや使われる事態だけはなんとしてでも避けなければ。
その事を肝に銘じ、ルシオラは前に向き直ると街中へ向けて飛行を続けた。
私はアシュ様の眷族。
私はアシュ様を守る者。
私は、アシュ様の味方だ。
【D-2 空中・一日目 深夜】
【ルシオラ】
[時間軸]:横島と夕日を見る以前。
[状態]:負傷と疲労(自力で回復中)。
[装備]:竜の牙(勾玉状態)@GS美神極楽大作戦!!
[道具]:基本支給品一式、蔵王(空)@烈火の炎、空白の才の木札@植木の法則
[基本方針]:アシュ様のために行動する。参加者を殺し支給品を奪う。
※街中へ向かって移動中。
◆ ◆ ◆
植物園内。
間鎚の張った結界は内と外とを完全に遮断しており、結界外の三日月を動かす事はどうやっても不可能だった。
ルシオラの心が読めなくなったのも結界のせいだろう。
アルとレイラは間鎚のすぐ近くまでやってきていた。
この結界の発生源はこいつである。
これを直接叩けば良いとも思ったが、近くに散乱している木片を投げると、間鎚本体にぶつかる直前に砕けてしまう。
本体の周りにも結界が張られているらしかった。
本体への攻撃が駄目なら、どこかに綻び(ほころび)はないかと周囲を見渡し、アルは気付く。
天井が壊れていない。
もしかしたら、上空から脱出できるかもしれないと、試しに三日月の一つを上空に移動させる。
だが、ある高度に達すると三日月の先端が崩れ始めた。
残り少ない三日月を更に少なくするわけにはいかない。
急いで三日月を降下させる。
結界の境界線は、草木が新たに破壊された跡でわかる。
どうやらこの結界は立方体の形を形成しているようだった。
正に八方塞がりの状態だ。
結界だの妖怪だのといったものは、いつもなら空想の産物と一蹴してやったが今は違う。
どういう原理かは知らないが、内と外を隔てる見えない壁が、そしてその壁を発生させている不気味な生命体が目の前にある。
(良いだろう。今はそのふざけた存在を認めてやる)
アルは今までにARMSやサイキッカーといった、一般常識とはかけ離れた存在を目の当たりにしてきている。
今更非常識の一つや二つが増えたところでなんだというのか。
(僕は今世紀最大の頭脳にして超天才、アル・ボーエンだ。今から全ての事象を分析し、この状況から脱出してみせる!)
結界の大きさは、二人が囲まれた時から三分の二の大きさにまで小さくなっている。
ゆっくりとではあるが、確実に死の時が迫っていた。
結界が更に狭まり、また少し草木が崩れ去った。
「……アル、気付いたことがあるわ」
「気付いたことだと? 何だ、言ってみろ」
レイラはアルに説明を始める。
この結界の崩壊現象についてだ。
結界が狭まり、結界に触れた物体は崩壊を始める。
だが、それは結界に触れた物全てが、一斉に崩壊を始めているわけではなかった。
一本の木が結界に触れ、その身を崩し始める。
それなのに、隣に生えている木には何も起きてはいない。
最初に崩壊を始めた木がその身を崩し終えた頃に、ようやく隣の木に崩壊が訪れるのだ。
この一連の現象は数瞬の内に終わってしまうが、まるで結界の周囲を一周するように規則的に移動していた。
人間では気付く事のできない、魔物であるレイラだからこそ視認することができた一瞬の出来事であった。
「………そうか、わかったぞ! この間鎚は自らエネルギーを放出して結界を張っているんだ。
おそらくは電流と磁場の関係のように、空間にエネルギーを流すことで平面的な力場を発生させているんだろう」
「言ってることは私にはわからないけど、ここから出ることはできるの?」
「できる! エネルギーを流して結界を張っているのなら、そのエネルギーを途中で遮ってしまえば良い!」
アルは即座に作戦を立てた。
まず、崩壊は左周りに移動しているらしい。
エネルギーは間鎚の右側面から出ていると見て間違いない。
間鎚から流れているエネルギー流に直接三日月を挟み込ませ、エネルギーの流れを遮る。
そうしてできた結界の空白地帯を通り抜け、外へと脱出するのだ。
「準備は良いかしら?」
「ああ、いつでも良いぞ」
「それじゃあ、行くわよ! 8(エイチ)、15(オー)、23(ダブ)!!」
「回転(ロール)!!」
三個の三日月が回転を始め、間鎚の放出するエネルギー流へ向けて突き進む。
一つめの三日月がエネルギー流に触れ、その身に亀裂を走らせた。
その三日月が崩壊する前に、エネルギーの通り道に沿うように残りの三日月を配置する。
一つめの三日月がエネルギー流に耐えきれず崩壊するが、二つ目の三日月が結界を形成しようとするエネルギー流を再び遮る。
「今だ! 頼んだぞ!」
「まかせて!」
アルを抱きかかえたレイラが、結界の外へ向けて横跳びに跳躍する。
間鎚のエネルギー流はすでに二つ目の三日月を破壊し、最後の三日月にも亀裂が走っている。
一瞬でも遅れれば二人の命はない。
体を倒し、全力で跳躍したレイラの体が間鎚の横を通り過ぎる。
それと同時に最後の三日月が崩壊し、間鎚の結界が再び展開された。
レイラは一歩二歩と地面を蹴って速度を落とし、芝生の上で体を停止させる。
二人は、無事に間鎚の結界から脱出する事ができたのだ。
「ふう。ありがとう、アル。あなたのおかげで助かったわ」
「ふん! 超天才であるこの僕が居るんだ。当然の結果だ」
アルの態度は尊大だった。
しかし、その後照れくさそうに言葉を付け加える。
「……だが、まあ、僕一人の力では脱出不可能だったのも事実だ。君のおかげで助かった。礼を言う」
「ふふ、どういたしまして」
「ところでレイラ、提案があるんだが」
「あら、何かしら?」
アルは未だ結界を展開している間鎚に目を向ける。
閉じ込めておく者はもういなくなっているというのに、考える力のない間鎚は命令を実行し続けている。
「やはりな。支給品になっていたものだ。通信鬼のように道具としての側面が大きいだろうと思っていたが、案の定だ。
こいつをこのままにしておいて、再び使われるのも面倒だ。ここで破壊するぞ」
「……さっきの敵は追わないの?」
「確かにあいつは危険だ。逃がしてしまったことは痛い。だが、時間が経ち過ぎている。
すでに心眼の有効範囲外に逃げてしまっているし、今から追っても見つけるのは難しい。
まずは状況の整理と休息が必要だ。今はこいつを倒すことに協力してくれ」
「……………。わかったわ。それも、そうね」
「よし、じゃあ始めるぞ。さっきの要領だ。今度は結界を消している間に本体を叩く!」
レイラが杖を構え直す。
すると、地に落ちていた三日月達が一斉に浮かび上がった。
まだレイラの術は発動を続けていたのだ。
「1(アー)、4(デー)、10(ジェー)、12(エル)、18(アル)、21(ユー)、22(ブイ)!!」
「回転(ロール)!!」
二人の掛け声と共に、七つの三日月が間鎚から放出されるエネルギー流に迫る。
三日月達がエネルギー流に割り込み、その流れを遮る陣形をとった。
三日月がエネルギーの流れを止めている間に、レイラとアルは即座に追撃を開始する。
「6(エフ)、9(アイ)、11(カー)、13(エム)、14(エヌ)、16(ペー)、20(ティー)、25(イグ)、26(ゼツ)!!」
「回転(ロール)!!」
今度は九つの三日月が、結界に守られていない間鎚の左側面を狙う。
最初の三日月が間鎚に激突する。
間鎚に目立った外傷は見当たらない。
続いて二つ、三つと間髪入れずに攻撃して行き、四つ目の三日月をぶつけたところで、ようやく間鎚の体にひびが入った。
その間に、間鎚のエネルギー流を遮る三日月は残り三つにまで減っていた。
このまま順番にぶつけていたのでは、全ての三日月をぶつけ終える前に結界が復活してしまう。
レイラは残りの三日月を一気に間鎚の元へと収束させる。
「9(アイ)、14(エヌ)、16(ペー)、20(ティー)、26(ゼツ)!!」
「攻撃(ファイア)!!」
エネルギー流を遮る三日月は残り一つ。
間鎚の元へと集まった五つの三日月達が一斉に爆発する。
結界のない剥き出しの場所への、至近距離からの爆発攻撃だ。
間鎚の体に入ったひびが大きくなり、その固い体皮が砕け散る。
爆風を受けた間鎚の体が、右方向へと大きく吹っ飛んだ。
エネルギーの通り道に配置していた三日月達は、全て砕けて消え去っている。
間鎚のエネルギー流を遮る物は、もう何もない。
にもかかわらず、間鎚の周囲に結界が復活する気配はなかった。
間鎚の持つ唯一の瞳には光が無く、そこから生気を感じとることはできなくなっている。
間鎚は、その活動を完全に停止させたのだ。
「やったな、レイラ」
「やったわね、アル」
二人はお互いを讃えあう。
二人が出会ったのは、ほんの数十分前だ。
だが、その短い時間の中で、二人の信頼は確かな物へと変わっていた。
◆ ◆ ◆
レイラとアル。
二人が出会ったのはつい数十分前。
そのファーストコンタクトは声だけのやり取りであった。
レイラがルシオラと交戦していた最中、茂みの中を疾走していた時の事である。
『おい、聞こえるか?』
(……何?)
レイラに声が届く。
しかしそれは聴覚から入ってくるものではなかった。
頭の中に直接響くような、不思議な感覚だ。
『喋らなくて良い。頭で思うだけで君の思考は僕に届く』
(……何者なの?)
レイラはこの声を怪しんだ。
今戦闘している女性の声ではないが、敵の罠の可能性もある。
一体どういうつもりでこのような事をしているのか。
『僕の名はアル・ボーエン。決して君の敵ではない。今君が戦っている女を倒す手助けをしてやる』
アルと名乗る声は偉そうなもの言いで協力を申し出ている。
(信用できないわね)
『……ふん、これが罠だと? 君の攻撃はあいつにちっとも効いていない。今の状況は君が圧倒的に不利だ。
そんな君に罠を仕掛ける意味があると思うか? そんなものがなくとも、君の負けは確定している』
この言葉に、レイラは少しばかりの怒りを覚えた。
だが、この指摘は事実だ。
あの敵を倒す手段は自分には乏しく、相手の攻撃を防ぐ手段も植物に身を隠しながら移動するしかない。
レイラは怒りを抑えると、アルと名乗る声の主へ問いかける。
(あなたの目的は?)
『さっきも言ったが、僕は君の手助けをしたいだけだ。あの女は、この会場内で他の者達を殺し回るつもりだ。
そんな危険人物を放っておくつもりはない。君は、パートナーが居ないせいで本来の力が出せないんだろう?
僕がパートナーになってやる。信用して欲しい』
(何故パートナーの事を知ってるの!?)
『……気付いているとは思うが、僕はこの通り他人の考えを読むことができる。悪いが、戦闘中の君の思考を読ませてもらった。
君が危険人物かどうかを見定める必要があったのでね。……その事は謝罪しよう』
思考を読む。
正直、良い気持ちはしない行為だ。
だが、今は殺し合いという非常事態である。
相手を見極めるには必要な事だろう。
それに、とレイラは思う。
心を伝える副作用か、それともうっかりしていたのか、今の謝罪の言葉からは、言葉と共に本当に悪かったという相手の気持ちも一緒に伝わってきた。
偽装した気持ちをわざと送って来た可能性もあるが、自分だけではこの状況を打破することができないのは事実だ。
ならば、この人物を信用しよう。
今感じ取った気持ちも、きっと本物だろう。
この人物を信用してさらに不利な状況になったとしても、その時はその時である。
(……わかったわ。協力をお願いできるかしら?)
『任せておけ。この今世紀最大の頭脳にして超天才、アル・ボーエンが必ず君に勝利をもたらして見せよう』
この尊大で自信たっぷりなアルの態度に、どことなく子供っぽいところがあるな、とレイラは思った。
その思考を読んだのか、アルが怒声を飛ばしてくる。
『僕が子供っぽいだと!? 僕は事実を述べているだけだ! ふざけたことを思うな!』
(ふふ、むきになる所がますます子供っぽいわね)
『貴様は………ふん! まあいい。すぐにその考えを改めることになるさ。良いか、今から僕の考えた作戦を伝える。決して聴き漏らすなよ!』
アルの伝えてきた作戦は次の通りだ。
アルは支給品である、通信鬼という謎の生命体をレイラの所まで飛ばしている。
その生命体は通信機と同じ役割をするので、それを使って、言葉による交信をしていると敵に誤認させる。
そうして嘘の指示を通信鬼から発し、敵がそれに釣られたところでアルの居る土手へ向かって跳躍し、魔本をアルまで投げ飛ばす。
若干の隙は作れるとはいえ、気付いた敵はすぐに攻撃を仕掛けてくるだろう。
だが、フルパワーで術を発動させれば敵の攻撃は防ぎきれるとレイラは確信していた。
説明書の通りならば、アルは魔本を読めるはずである。
魔本を読んでもらえば、本来の力を発揮できる。
一種の賭けではあったが、それしか道はない。
こうして作戦は実行され、敵はアルの思い描いた通りの動きをし、更に思考を読むことで幻影に気付くこともできたのだった。
◆ ◆ ◆
ミベルナ・マ・ミグロンの三日月はまだ十数個残っている。
だが、敵も居なくなった以上、心の力を浪費し続けるわけにはいかない。
術を解除すると、三日月達は静かに消えていった。
「アル、これからどうするつもりなの?」
「まずは現状の把握だな。自分達の状態と支給品の確認。そしてこれからの行動をここで決める。君にもいくつか訊きたい事があるしな」
「心を読めばわかることじゃない?」
「馬鹿を言うな。君は敵ではない。他人に心を読まれて良い気はしないだろう。僕はそこまで傲慢じゃない」
「……ふふ。優しいのね、あなた」
「なっ!? くだらない事を言っている暇があったら早く支給品とその説明書を出せ! 時間が惜しい!」
「はいはい」
二人はお互いの支給品を確認し合った。
レイラの支給品は三つ。
一つ目はレイラの魔本だ。
青紫色の装丁で、中の呪文は誰でも読めるようになっている。
自分で読めば威力が落ちるが、他人に読んでもらえば本来の威力での術の行使が可能となる。
レイラが術を発動させるには欠かせない品である。
二つ目の支給品は綺麗な柄の風呂敷だ。
説明書には普通の風呂敷と書かれている。
参加名簿にある桐雨刀也の物らしい。
三つめの支給品は、レイラの右手首にある金属製のブレスレットだ。
名は輪廻。
使用者の肉体年齢を操作する能力を持つ。
「私は、これを使ったのね……」
レイラは戦闘中にルシオラから発せられた言葉を思い出す。
『それがあなたの本当の姿ってわけね!』。
この言葉は、自分が姿を変えた事を言っているのだとわかった。
今一判然としないが、確かに輪廻を使った……ような気がする。
記憶が曖昧になっており、はっきりとしない。
「ああ、僕が最初に見た時の君は少女の姿をしていた。それを使用した時の思考は読んでいなかったが、おそらくあのままでは勝てないと判断したんだろう」
「そう……」
輪廻発動の副作用は、使用者の記憶を奪う事だ。
ここに来る以前の記憶がなくなっていることからも、自分が輪廻を使用した事は確実だろう。
だが、それでもレイラは今の年齢が本当の自分だと思えてならなかった。
使用時の年齢が本来の年齢であると錯覚させる、輪廻のもう一つの副作用のせいだ。
「どうする? それを破壊すれば元の記憶を取り戻すこともできるが……」
「いいえ、結構よ。幼い私では、アルに本を読んでもらったとしても、さっきの敵には勝てそうにないもの。このままで問題ないわ」
「そうか……。まあ、君の仲間の名前は僕が覚えている。仲間を敵と思い攻撃するような事態にはならないから、その点は安心したまえ」
レイラは自分のリュックから取り出した名簿に目を向ける。
そこには四名の名前に印が付けられていた。
ガッシュ・ベル。
高嶺清麿。
ナゾナゾ博士。
パルコ・フォルゴレ。
この四人は大切な仲間であると、自分の字で名簿に書かれていた。
顔は、よく思い出せない。
どのような人物かは見当もつかない。
だが、懐かしい響きがこれらの名前にはあった。
「この、ゼオン・ベルという名前は、私の仲間ではないのね?」
「ああ、君の思考でも、この人物はガッシュの親類かただの偶然だと判断されていた」
ゼオン・ベル。
ガッシュと同じ性を持つ、参加者の一人である。
レイラの名簿には『ガッシュの兄弟?』、と疑問符が書かれている。
「さて、次は僕の支給品だな」
そう言うと、アルは自分の支給品を取り出し始めた。
アルに支給された品は三つ。
一つ目の支給品は通信鬼。
二体で一つの支給品らしかった。
黒い小さな羽が生えているが、どういう原理か羽を動かさずに浮いており、命令すれば自力で移動する。
生物のようではあるが、音を送受信する部分は機械的だ。
通信可能な範囲は会場全域とあった。
レイラに差し向けた通信鬼は、レイラが跳んだ時に回収してもらっている。
二つ目の支給品は心眼。
指輪の形をしており、これを嵌めた者にテレパシー能力を授ける道具だ。
声による伝達を伴わずに他者との意思の疎通が可能となるばかりか、相手の意思を無視して思考を読むこともできる。
但し制限がかけられているらしく、一度見た相手でなければ対象を捕捉することはできず、一度に捕捉できる人数も一人までだ。
効果範囲も半径百メートル圏内となっている。
三つ目の支給品はノートパソコン。
一見ただのノートパソコンに見えたが、初め見た時アルは驚いた。
市場に出回っているノートパソコンよりも薄い作りをしていたのだ。
それでいて起動も早く、更に性能まで高かった。
これが実現するには少なくともあと数年の時間を要するはずだが、エグリゴリの技術ならばこれを作るのも可能だろう。
だが、アルは別の可能性を考えていた。
もしかしたらこれは本当に数年先のものではないだろうか、と。
まず、最初に集められた時からおかしかったのだ。
アリスが消滅し、ARMSの力を失ったはずの高槻が、何のためらいもなくARMSを使用していた。
キース・ホワイトにその身を奪われたはずのキース・ブラックが復活し、高槻の攻撃により再びキース・ホワイトが目覚めた。
名簿には死亡したはずのシルバーとグリーン、そしてユーゴーの名前が載っている。
初め見た時は何かの冗談か敵の罠かと思ったが、このノートパソコンを見て一つの可能性を思いつく。
「レイラ、今は何年だかわかるか?」
「ごめんなさい、それは覚えていないわ。……何か重要なこと?」
「いや、ただ確認しただけだ。気にしないでくれ」
魔物や妖怪といったものは、この目で見た以上認める他ない。
いつかはその謎を解き明かして見せよう。
だが、今立てた仮説は推論だ。
確証があるわけではない。
そんな不確かなものを、天才の口から話すわけにはいかないのだ。
『時間を越えてここに連れてこられている』などという考え、馬鹿げているにも程がある。
今は目の前にある明確な事実と向き合うべきだ。
アルが起動させたノートパソコンのデスクトップには、ファイルが一つあるだけだった。
ファイル名は『program battle royale』。
名前からして、この殺し合いの事を指していると見て間違いない。
このファイルの中には何か重要な手掛かりがあるはずだ。
しかし、ファイルにはロックがかけられており、パスワードを入力しなければ開けないようになっている。
このパソコンに入っているものといえば、このファイル一つだけだ。
今のところ、手掛かりと呼べるものはこれしかない。
「ふん! 僕にこのロックを解いてみせろということか。良いだろう。こんなもの、超天才である僕の前では障害にすらならない事を思い知らせてやる!!」
アルは素早くキーボードを叩き、思い当たる言葉を片っ端から入力していく。
『evolution(進化)』。
ブイーッ!
『human(人間)』。
ブイーッ!
『time(時間)』。
ブイーッ!
『life(生命)』。
ブイーッ!
『egrigori(エグリゴリ)』、『arms(アームズ)』、『alice(アリス)』。
ブイーッ!
『不思議の国のアリスの登場人物の名前』、『キースシリーズの名前』、『hope(希望)』、『despair(絶望)』。
ブイイーッ!!
「……………」
エグリゴリに関係する単語、プログラム・ジャバウォックに関する言葉。
どれを試してもブザー音が鳴るばかりで、ファイルが開かれる気配はない。
悩みこんでいるアルの横から、レイラがキーボードに手を伸ばし、思いついた文字をかたかたと入力した。
『al bowen is a super genius(アル・ボーエンは超天才)』。
ブイイーッ!! ブイイーッ!! ブイイーッ!!
ノートパソコンからは、間違いを告げるブザー音がけたたましく鳴り響いた。
その言葉は間違っています。
正しい言葉を入力してください。
「ええい! うるさいぞ!! 何をしているんだレイラ!! 僕を馬鹿にしているのか!!!」
「ごめんなさい。つい……」
「何がついだ! まったく! ………それにしてもなんなんだ? まさか適当な文字列でもないだろう。
おそらくはこのプログラムの核心に触れるキーワードのはずだが……」
考えろ。
このプログラムを計画した奴は、何が目的でこの殺し合いを計画した?
これを計画したのはキース・ブラックか? キース・ホワイトか?
それとも、あの場にあった金属生命体、アザゼルの意思か?
「くそっ! 駄目だ、情報が少なすぎる」
ある程度の情報を持っていて、話し合いができそうな奴と言えばバイオレットが思い当たるが、素直に質問に応じてくれるかはわからない。
とにかく情報だ。
情報を集めなければ先に進めない。
まずは地図にある施設を回ってみる必要があるだろう。
わざわざ記載されているのだ、手掛かりがある可能性はある。
「よし、まずは施設を回ろう。施設には人が集まる。つまりは情報も集まるということだ。
僕達の仲間についても、何かしらわかることがあるだろう。レイラ、一緒に来てくれるか?」
「ええ。私達はもうパートナーじゃない。離れる理由がないわ」
「……今更なんだが、僕を疑ったりはしないのか?」
「あなたは悪い人じゃないわ。それに、自分が危険に晒される可能性があったのに、私を助けてくれたじゃない。あなたのことは信用してるわよ」
「……ふん! あれは勝てる算段があったからだ! 君が勝てないと判断していればさっさと逃げていたさ!」
「あら、そうなの?」
レイラはくすりと笑った。
アルのその言葉が、照れ隠しからくるものなのだとわかったいるからだ。
尊大な態度をとっているが、根は優しい子だ。
私が負けると判断したとしても、きっと、その手を差し伸べてくれていたことだろう。
「何を笑っているんだ! ほら、さっさと行くぞ!」
「ふふふ。ええ、行きましょうか」
レイラとアルは、横に並んで歩き始めた。
レイラは覚えていないが、今の二人の姿はレイラが以前に組んでいた『パートナー』の姿と似ているものだった。
大人と子供。『アル』という名前。
見た目は逆になっているが、二人の姿がしっくりくるのは何故だろうか。
二人が出会えた事も、この短時間で信頼を築けた事も、偶然ではないのかもしれない。
【D-2 植物園・一日目 深夜】
【レイラ】
[時間軸]:魔本が燃え尽きた直後。
[状態]:打撲と傷(魔物なのでしばらくすれば治る)。中程度の疲労。心の力(小)。輪廻を使用して大人になっている。
[装備]:輪廻@烈火の炎。
[道具]:基本支給品一式、居合番長の風呂敷@金剛番長、 通信鬼@GS美神極楽大作戦。
[基本方針]:仲間達を守る。殺し合いに乗っている者は倒す。
※大人の姿になっているため、術の威力や身体能力が向上しています。
※輪廻によりこの会場に来る以前の記憶が朧気になっています。
※ガッシュ達が仲間であることは理解しています。
※ルシオラとアシュタロスを危険人物として認識しています。
※アルと情報交換をしました。
【アル・ボーエン】
[時間軸]:第四部「アリス」編終了以降。
[状態]:健康。心の力(小)。
[装備]:レイラの魔本@金色のガッシュ!!、心眼@烈火の炎。
[道具]:基本支給品一式、通信鬼@GS美神極楽大作戦、ノートパソコン@現実。
[基本方針]:施設を巡り情報を集める。殺し合いに乗っている者は倒す。
※ルシオラの思考をある程度まで読んでいます。
※ルシオラとアシュタロスを危険人物と認識しています。
※レイラと情報交換をしました。
【支給品紹介】
【レイラの魔本@金色のガッシュ!!】
青紫色の装丁の魔本。
誰でも読むことができる。
記されている術は『ミグロン』、『ミシルド』、『オル・ミグルガ』、『ラージア・ミグセン』、『ミベルナ・マ・ミグロン』の五つ。
【輪廻@烈火の炎】
火影の作りだした魔導具の一つ。
ブレスレットの形をしている。
使用者の肉体年齢を自在に操作する能力を持つ。
副作用として、操作された年齢を自分の本来の年齢と錯覚し、使用以前の年齢に関する記憶が失われる。
自分の状況や知識までは失われない。
制限により、バトルロワイアル開始以降の記憶は、年齢に関する事以外消えることはない。
他者に使用されたり、輪廻が破壊された場合は記憶と共に元の肉体年齢に戻る。
【心眼@烈火の炎】
火影の作りだした魔導具の一つ。
指輪の形をしている。
相手の思考を読み取る力を持つ。
逆に自分の思考を相手に伝えることも可能。
制限により、一度視認した相手でなければ対象にできず、半径百メートル以内でなければ捕捉できない。
【通信鬼@GS美神極楽大作戦!!】
魔界に生息する鬼の一種。
能力も大きさもまんま通信機。
同種の仲間同士ならば、例え異界であっても通信が可能。
自力で浮かんでいるので通信しながら両手が使える。
【竜の牙@GS美神極楽大作戦!!】
使用者の霊力によって発動する神の剣。
使用していない時は勾玉の状態。
使用者の意思に応じて変幻自在に姿を変える。
【間鎚@うしおととら】
結界自在妖。
二百七十体の妖怪を封じる程の結界を張ったり、結界を破る力を持つ。
空も飛べる。
【居合番長の風呂敷@金剛番長】
桐雨刀也(居合番長)の持っている風呂敷。
綺麗な柄が特徴の普通の風呂敷。
【空白の才の木札@植木の法則】
何も書かれていない、空白の才の札の部分。
付属の筆で才能を書き込めば、書いた通りの才能を得る事ができる。
筆の部分が別にあるらしい。
【ノートパソコン@現実】
薄型のノートパソコン。
中には『program battle royale』と書かれたファイルが一つだけあるのみ。
ファイルにはロックがかけられており、正しいパスワードを入力しなければ開くことはできない。
【備考】
B-2・植物園内が大きく破壊されました。
壁も一部破壊されています。
天上のガラスの一部が割れています。
間鎚が活動を停止しました。
園内に間鎚が放置されています。
*投下順で読む
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*キャラを追って読む
|032:[[守りたいもの(前編)]]|ルシオラ||
|~|レイラ||
|~|アル・ボーエン||
#right(){&link_up(▲)}
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