「Dash! to truth」の編集履歴(バックアップ)一覧に戻る
Dash! to truth - (2011/04/28 (木) 13:33:38) のソース
とあるホテルの一室。 そこにモヒカン頭の大男――石島土門は立っていた。 「チッ……んだよ此処は」 明かりが点いていない故にホテルの窓から差し込む月明かりだけがほんのりと土門の巨体を照らす。 その様は鬼神とでも言うのだろうか、気の弱い人が見たら卒倒するくらいに威圧感を醸し出している。 (おいおい、これからSODOMへ殴りこみかけようって時に殺し合いだぁ? ざけんな! んなくだんねーことやってる場合じゃねーんだよ!) ガシガシと頭をかきながら、イラついた精神を抑える為に近くにあったキングベッドを軽く蹴る。 土門としては軽く蹴っただけなのだがドンと大きな音を立てながら宙に浮き、そのまま空中で一回転、床にドスンと落ちた。 余計なことしてしまったと溜息を吐き、乱雑に戻す。とりあえず、落ちつこうと少し定置から離れた場所に転がっているベッドに腰掛けた。 「ったく殺し合いなんざ勝手にやってろよ。興味ねーっての」 土門は大きくあくびを一つしてから支給されたデイバックの中をおもむろに確かめる。 がさごそと中を漁って最初に出てきたのはこの殺し合いに参加している人名が書かれた紙――つまるところを言うと名簿だ。 (オレの他にもマイスイートハニー風子とその他大勢てんこもり……ああ、胸糞悪ぃ) 外国人日本人含め総勢八十もの名前が載っている名簿の中から見知った名前を幾つか見つけてしまった。 森光蘭に囚われの身である佐古下柳を助ける為にSODOMへの道中を共にした花菱烈火、霧沢風子、小金井薫、水鏡凍季也。 なぜか共にいたはずである陽炎がいないのがわずかに気がかりではあるが考えても意味が無いので放置。 他には烈火の兄であり、直接的な敵ではないが仲間でもないといった紅麗。 元紅麗の部下で今は裏麗に所属している永井木蓮。 (完全にクロは木蓮の野郎だけ、か? 紅麗は、まあ用心するに越したことはねえか。会った瞬間に炎で焼かれたくはないっての。 余計なことをしたらこんがりウエルダンな土門ちゃんに大変身しちまうぜ) 頭に浮かぶのは消し炭になった自分の姿。想像するだけで寒気がする。 土門はそんな死に方はゴメンだとばかりに頭をブンブンと振ってその想像を打ち消した。 死ぬ時は風子の胸の中だと決めているんだ、と心中で啖呵を切る。 ともかく、気を紛らわすために自分に支給されたモノの確認を行うことにした。 ◆ ◆ ◆ 支給されたモノの確認を終えた土門はこれからのことについて考えていた。 ちなみに支給されたものの中には使える物もあったし使えない物もあった。 総括すると、満更でもないといった具合だ。 (さてと、どうすっかな。まずはこの首輪を取らなくちゃ話になんねー。だけど、オレには外し方なんざわかんねーし、無理。 とすると、なんかそういうのに詳しい奴を捜すしかない。この参加者の中にそういう奴が『いれば』の話だが) このようなことは本来頭の悪い土門は考えることではない。今までの戦いではただ目の前の相手を振っ潰すといういたってシンプルなことしか考えてこなかった。 だか、今此処に頭脳労働担当とも言える水鏡凍季也、陽炎などはいない。 だから自分で考えなくてはならない。最低限のことは自分自身で。 話題が戻る。首輪の解除について土門は拙い頭を一生懸命使って考えた。 そして結論が出た。 首輪の解除が可能な参加者を捜すと言ってもそれが可能な人物を参加者にいれるだろうか、と。 (甘くねえよな、簡単に解除できる奴がいてそれで解除して……んなアホなことあんのかよ) 否である。そんな隙を参加者に与えるだろうか。与えたとしてもそれは絶対的な余裕。 どう足掻いても勝てるという算段があるということ。 この殺し合いのフィールドからの脱出も同様。逃げ道を参加者が作れるようなチャチな方法はないはずだ。 とすればこの殺し合いに積極的になる他ないのか? 土門は興味がないと確かに言った。 だが、それでも。命を懸けてでも護りたい大切な人はこの殺し合いにいる。 霧沢風子。自分が片思いの恋を抱いている相手。 (どうやっても無理だったら。どうせ死ぬんだったら、風子を生き残らせる為だけに――人を、殺すのか?) どう足掻いても、前を向いても。希望もなくあるのは絶望だけ。 それなら、殺し合いに乗ってもいいのではないか。 一方的ではあるが愛している霧沢風子を護るため。殺し合いに―――― 「お断りだ、クソ野郎」 その考えを一言で一蹴。即座に破棄した。 理由は単純。 「風子は、そんなことをされて喜ぶクズじゃねえ!」 それをしても彼女は喜ばない、むしろ悲しむだろうから。ただそれだけだ。 だが単純故に強靭。この意志は絶対に折れない。 「何、馬鹿みたいにあれこれと考えてんだよ! オレは今まで通りやればいいだけのことだ」 ドシドシと大きな音をたてながら大股に歩きながら部屋の出口まで向かう。 「仲間を傷つける奴をこの拳で叩き潰す――それだけだっ!!!」 そして、拳でドアを勢い良く殴り飛ばす。ドアはドゴンと重い音と共に向かいの部屋のドアを突き破りそのまま吹っ飛んでいった。 「待ってろよ、風子」 結局の所、土門は殺し合いに抗うことを選択した。最愛の彼女を護るために。 後悔なんてしない生き方をしたいから、彼女を悲しませたくないから。 それらの燃える意志を胸に抱いて。 火影忍軍が一人、石島土門――――出陣。 ◆ ◆ ◆ 彼は知らない。捜し人である霧沢風子が知らない男に胸を揉まれていることを。 彼は知らない。霧沢風子の持つ風神剣が力に溺れた者を鬼へと変える魔剣だということを。 彼は知らない。この殺し合いが幾ら強い決意を持っていても、破ることは困難だということを。 まだ、この時の土門には何も知る由もなかった。 【E-4 ビジネスホテルの一室/一日目 深夜】 【石島土門】 [時間軸]:SODOM突入前 [状態]:健康 [装備]: [道具]:基本支給品一式、支給品1~3(本人確認済み。使える物と使えない物が入っている?) [基本方針]:烈火たちと合流したい。風子最優先。 *投下順で読む 前へ:[[宵闇の唄]] [[戻る>第一放送までの本編SS(投下順)]] 次へ:[[ロスト]] *時系列順で読む 前へ:[[宵闇の唄]] [[戻る>第一放送までの本編SS(時系列順)]] 次へ:[[ロスト]] *キャラを追って読む |GAME START|石島土門|| #right(){&link_up(▲)} ----