週刊少年サンデーバトルロワイアル内検索 / 「怒号――まともな奴ほど損をする」で検索した結果
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怒号――まともな奴ほど損をする
怒号――まともな奴ほど損をする ◆6LcvawFfJA 氣法師、朧の感覚はいつ何時であろうと研ぎ澄まされている。 いちいち集中を要さずに、絶え間なく周囲の変化を把握しているのだ。 視覚により、景色を。 聴覚により、物音を。 嗅覚により、香気を。 味覚により、空気の“味”を。 触覚により、大気と大地の“流れ”を。 四六時中、朧の全身はそれらを読み取っている。 仮に目を閉じて英気を養っていたとしても視覚以外が、仮に鼓膜が破られてしまったとしても聴覚以外が、代わりを為す。 功夫を積み重ねてきたからこそ、到達し得る領域。仙人と人間の狭間。 朧という男は、そこに到達している。 故に、朧は今回も勘付いた。 目撃せず、聞かず、香らず、味わえずとも、触覚が捉えた。 殺し合いの舞台に来て以来、乱れる筈のない朧の五感が微かに乱されている。 妨げと... -
◆6LcvawFfJA
...、天を斬る 078 怒号――まともな奴ほど損をする 079 不止 082 会食 085 撤収――天秤にかけた結果 088 問答 090 察知――君の現在位置 093 思索――自分達の現在位置 098 茶会 102 明暗 103 導火 108 選択 氏が登場させたキャラクター 3回 シルベストリ 2回 ドットーレ、高槻涼、加藤鳴海、阿紫花英良、紅麗、ガッシュ・ベル、ジャン・ジャックモンド、伊崎剣司(憲兵番長)、ギイ・クリストフ・レッシュ、植木耕助、ユーゴー・ギルバート 1回 マシン番長、ロベルト・ハイドン、才賀エレオノール、小金井薫、さとり、バロウ・エシャロット、鬼丸猛、朧、おキヌ、才賀勝、才賀正二、美神令子、暁巌、兜光一、白雪宮拳(剛力番長)、パウルマン&アンゼルムス、ルシオラ、キース・グリーン、キース・バイオレット、フェイスレス、秋葉流、鉄刃、チェリッシ... -
不止
...下順で読む 前へ:怒号――まともな奴ほど損をする 戻る 次へ:Merry-Go-Round 時系列順で読む 前へ:怒号――まともな奴ほど損をする 戻る 次へ:ノイズキャンセリング キャラを追って読む 070:流と耕助 ユーゴー・ギルバート 084:らでぃかる・ぐっど・すぴーど 植木耕助 ▲ -
世界最強の男、世界の広さを思い知る
...前編) 戻る 次へ:怒号――まともな奴ほど損をする 時系列順で読む 前へ:横島忠夫、清麿と出会う(前編) 戻る 次へ:怒号――まともな奴ほど損をする キャラを追って読む 061:テッドという漢 ボー・ブランシェ 096:禁句 ▲ -
追跡表(SPRIGAN)
...タロス、朧 078 怒号――まともな奴ほど損をする ◆6LcvawFfJA おキヌ、才賀勝、朧 100 100話到達記念企画、首輪の謎に迫る! ◆hqLsjDR84w 秋葉流、阿紫花英良、おキヌ、朧、加藤鳴海、紅麗、才賀勝、ゼオン・ベル、高槻涼 120 普通の子ども ◆hqLsjDR84w おキヌ、朧、才賀勝、ジャン・ジャックモンド、美神令子 【染井芳乃:4】 019 現在位置~Where do we come from? Where are we going?~ ◆hqLsjDR84w 新宮隼人、キース・バイオレット、蒼月潮、とら、染井芳乃 うしおと――/――ととら 060 どじふんじゃった!(前編)どじふんじゃった!(後編) ◆AJINORI1nM 染井芳乃、とら、ゼオン・ベル 081 ノイズキャンセリング ◆hqLsjDR84w 染井芳乃、ゼオン・ベル 116 誘雷... -
追跡表(GS美神極楽大作戦!!)
...シュ、鉄刃 078 怒号――まともな奴ほど損をする ◆6LcvawFfJA おキヌ、才賀勝、朧 100 100話到達記念企画、首輪の謎に迫る! ◆hqLsjDR84w 秋葉流、阿紫花英良、おキヌ、朧、加藤鳴海、紅麗、才賀勝、ゼオン・ベル、高槻涼 120 普通の子ども ◆hqLsjDR84w おキヌ、朧、才賀勝、ジャン・ジャックモンド、美神令子 【ルシオラ:4】 032 守りたいもの(前編)守りたいもの(後編) ◆AJINORI1nM ルシオラ、レイラ、アル・ボーエン 050 歯車が噛み合わない ◆hqLsjDR84w 秋山優(卑怯番長)、紅煉、金剛晄(金剛番長)、新宮隼人、フェイスレス、コウ・カルナギ、ジョージ・ラローシュ、ルシオラ、アシュタロス、朧 088 問答 ◆6LcvawFfJA ドットーレ、ルシオラ 121 「お前は弱いな」 ◆hqLsjDR84w アル・ボーエン、ヴ... -
第二放送までの本編SS(投下順)
...ブランシェ 078 怒号――まともな奴ほど損をする ◆6LcvawFfJA おキヌ、才賀勝、朧 079 不止 ◆6LcvawFfJA 植木耕助、ユーゴー・ギルバート 080 Merry-Go-Round ◆hqLsjDR84w 金剛猛(日本番長) 081 ノイズキャンセリング ◆hqLsjDR84w 染井芳乃、ゼオン・ベル 082 会食 ◆6LcvawFfJA 伊崎剣司(憲兵番長)、ギイ・クリストフ・レッシュ、シルベストリ 083 エンカウント ◆c8fjjCyRkM 鉄刃、チェリッシュ、金剛晄(金剛番長)、新宮隼人 084 らでぃかる・ぐっど・すぴーど ◆hqLsjDR84w 植木耕助、ユーゴー・ギルバート 085 撤収――天秤にかけた結果 ◆6LcvawFfJA 才賀正二、ガッシュ・ベル、ジャン・ジャックモンド、美神令子、暁巌、兜光一、白雪宮拳(剛力番長)、パウルマン&アンゼルム... -
第二放送までの本編SS(時系列順)
...ブランシェ 078 怒号――まともな奴ほど損をする ◆6LcvawFfJA おキヌ、才賀勝、朧 079 不止 ◆6LcvawFfJA 植木耕助、ユーゴー・ギルバート 081 ノイズキャンセリング ◆hqLsjDR84w 染井芳乃、ゼオン・ベル 082 会食 ◆6LcvawFfJA 伊崎剣司(憲兵番長)、ギイ・クリストフ・レッシュ、シルベストリ 083 エンカウント ◆c8fjjCyRkM 鉄刃、チェリッシュ、金剛晄(金剛番長)、新宮隼人 085 撤収――天秤にかけた結果 ◆6LcvawFfJA 才賀正二、ガッシュ・ベル、ジャン・ジャックモンド、美神令子、暁巌、兜光一、白雪宮拳(剛力番長)、パウルマン&アンゼルムス 087 二百年も待ったのだ ◆hqLsjDR84w 蒼月紫暮、ルシール・ベルヌイユ、ドットーレ 089 溢れた感情は単純に ◆c8fjjCyRkM 加藤鳴海、高槻涼 090... -
追跡表(からくりサーカス)
...シュ、鉄刃 078 怒号――まともな奴ほど損をする ◆6LcvawFfJA おキヌ、才賀勝、朧 100 100話到達記念企画、首輪の謎に迫る! ◆hqLsjDR84w 秋葉流、阿紫花英良、おキヌ、朧、加藤鳴海、紅麗、才賀勝、ゼオン・ベル、高槻涼 120 普通の子ども ◆hqLsjDR84w おキヌ、朧、才賀勝、ジャン・ジャックモンド、美神令子 【加藤鳴海:9】 026 人間 ◆hqLsjDR84w 高槻涼、加藤鳴海、阿紫花英良、紅麗、御神苗優 051 チェイン ◆d4asqdtPw2 加藤鳴海、高槻涼 063 人間――Side_B ◆6LcvawFfJA 加藤鳴海、高槻涼 089 溢れた感情は単純に ◆c8fjjCyRkM 加藤鳴海、高槻涼 093 思索――自分達の現在位置 ◆6LcvawFfJA 阿紫花英良、紅麗、加藤鳴海、高槻涼 100 100話到達記念企画、首輪の謎に迫る... -
100話到達記念企画、首輪の謎に迫る!
...って読む 078:怒号――まともな奴ほど損をする おキヌ 120:普通の子ども 朧 才賀勝 081:ノイズキャンセリング ゼオン・ベル 116:誘雷 093:思索――自分達の現在位置 阿紫花英良 112:若者のすべて 加藤鳴海 紅麗 高槻涼 074 鉄風鋭くなって 秋葉流 102:明暗 ▲ -
ぎゅっと握って
...方 才賀勝 078:怒号――まともな奴ほど損をする おキヌ 037:ヘルダイバー 鉄刃 083:エンカウント チェリッシュ ▲ -
歯車が噛み合わない
...夢の花 朧 078:怒号――まともな奴ほど損をする ▲ -
うしおと――/――ととら
うしおと――/――ととら ◆hqLsjDR84w ◇ ◇ ◇ 殺し合いの舞台に飛ばされた蒼月潮は、ただ拳を握りしめている。 キース・ブラックが殺し合いの説明をしている際、うしおは動くことができなかった。 未成年にもかかわらず酒なんかを飲んでしまったせいで、妙な夢を見ているのか――などと、そんなことを考えていたのだ。 そんな自分が、許せなかった。 あの場面では動けなくて当然であると、他の人間に対してはそう思っている。 それでも、うしおは己を攻めたてるのを止めない。 自分はある程度修羅場をくぐってきているし、何より相棒である妖(バケモノ)はすぐさま動いていたのだ。 あの攻撃は少しばかり早すぎたものの、あとになって考えてみれば仕掛けるべきであった。 もしもあそこでブラックを止めることが出来ていたなら、誰かが死んでしまうこともな... -
思考する機械、あるいは――
思考する機械、あるいは―― ◆PbH8Onsw.o その自動人形は泣いていた。 地面に膝をつき、身も世もなく。 黒い帽子が広げる大きな鍔が、月光を切り取るようにその体に影を落としている。 西洋風の大きなひだ襟が乱れるのも構わずに、彼は中空に向かって高く高く腕を伸ばす。 決して掴めない光を掴まんとするかのように。 「ドットーレの本心ではないのです。フランシーヌ様……」 その頬に光る液体は無い、しかし彼は確かに泣いていた。 握りしめた作り物のこぶしを月へと突き上げ、堅牢な素材でできた作り物の歯を軋らせて、嗚咽を漏らし。 彼のすぐそばには、大きな黒い建物が腰を据えていた。 建物は広い庭のような砂地を擁し、ただ静かにむせび泣く彼を見下ろしている。 その砂地のほぼ中央に、彼はいた。 ゆるい夜風が乾い... -
物語の始まりはそう、為す術のない彼女が――――
物語の始まりはそう、為す術のない彼女が―――― ◆xrS1C1q/DM 夜の街に天使が舞い降りた。 触れただけで切れてしまいそうなほどに細いプラチナブロンドの髪。 透き通るほど白くありながらも、不健康さとは程遠い瑞々しさを保つ肌。 白人特有の彫りの深い顔立ち、その造りは見るものに彼女の柔和な性格を瞬時に悟らせる。 しかし、優しげな顔をしながらもガラス細工のような青い瞳にはハッキリとした意志の炎が宿り、薄い桜色に染まった唇はキリッと引き締まっている。 彼女の名はユーゴー・ギルバート。"天使”の二つ名を持つ世界最高クラスのテレパシストだ。 「高槻君は大丈夫なのでしょうか……」 ユーゴーの表情は憂い一色に染まっている。 突如巻き込まれた殺し合い、それに対する不安や恐怖は当然あった。 が、それ以上に大切な仲間が心配だった。 「この場には... -
こうしてはいられない
こうしてはいられない ◆hqLsjDR84w そこは、ひどく暗かった。 とはいえ彼方から伸びる市街地の灯りはぼんやりと見て取れるし、上空では月や無数の星が燦然と輝いている。 だがそれらが認識できるということは、つまりよっぽど他の光がないということだ。 そんな場所で、一人の少年がたたずんでいる。 彼の存在は、闇夜のなかでとても異質だった。 浮いている、というか――どうも馴染んでいないのだ。 周囲に比べて、あまりにも色がなさすぎる。 見た目が、という話ではない。 Tシャツもズボンも、無地の白い物を纏っているが。 額には包帯を巻いているし、肌だってとても白いが。 そういう、表面的な違和感ではなく。 まるでこの世界に本来いるべき人間ではないかのような――そんな、気配を放っていた。 彼の名は、ロベルト・ハイドン。 ... -
現在位置~You are here~
現在位置~You are here~ ◆hqLsjDR84w 極秘組織『エグリゴリ』を統率する四人の最高幹部『キースシリーズ』。 同じ遺伝子から作られた彼らは、母たる『アリス』の葛藤を映してそれぞれに異なる意思を与えられている。 四つの選択肢から、たった一つを選び出すために。 だからこそ―――― 彼らは家族であるが、しかしながら決してお互いが同じ線に重なってしまうことはない。 そんなキースシリーズの末弟であるキース・グリーン。 彼に託された意思は――――『希望』。 ◇ ◇ ◇ 真夜中の、山。 湿っぽく、肌寒く、そして暗い。 人工の照明など設置されておらず、地表を照らすのは木々の隙間を通り抜けてくる月光だけだ。 誰もわざわざ近寄ろうとしない、仮に入ってしまったとし... -
天才アル・ボーエンの仲間達
天才アル・ボーエンの仲間達 ◆n0WqfobHTU アル・ボーエンの脳は、随時活発に活動している。 例え物事に集中していなくとも、五感よりもたらされる情報を、つい分析してしまうのだ。 当人は手持ち無沙汰な人間が、何とはなしにぶらぶらと手足を振る程度の感覚でしかないのだが。 上に下にと揺れるシーソー。これを用いる事で、子供では届かぬ高さを得る事が出来る。 高い視点はそれだけでより遠くまで届く視界を得る事が出来、アルにもこれを快いと思える気分は理解出来た。 それに、大した労力を払わずとも行なわれる上下運動は、自分が強力を得たかのような気分にさせてくれる。 子供だましの域は出ないが、なるほど、子供は騙せる程度に工夫はされているのだなと、今度は跳ねる感覚に意識を回す。 ゴム、それも古タイヤを用いているようだ。 シーソーと大地との接地点に置かれたこれは、貧乏臭... -
宵闇の唄
宵闇の唄 ◆PbH8Onsw.o かの二人は、真っ白なその髪を宵闇に染めて出会う。 漆黒の中で浮かび上がるのは、巨大な鋼鉄製の新円に、果物の実のような部屋をいくつもぶら下げた巨大遊戯装置。 観覧車、遊園地を代表する遊具の一つ。 今はその機能を停止し、朝を待つようにしんと動かない。 寂しげな観覧車を筆頭に、周りに頓挫する様々な遊具――人を楽しませるために生まれた機械たち。 いかにも『楽しそう』な装飾を施されたそれらが、夜の帳に覆われている。 世界が闇にその身をゆだねている今、漂うのは下手なホラー映画さながらの、安っぽい不気味さだけだ。 そんな光景の中、『最古のしろがね』ルシール・ベルヌイユは立ち尽くしていた。 彼女の体を包むドレスはやや古風な作りではあるが、それ故に彼女の威厳、気品を損なうことがない。 ... -
疎通――少年さとり
疎通――少年さとり ◆6LcvawFfJA 危うく声を上げてしまいそうになり、バロウ・エシャロットは慌てて両手で口を押えた。 山を抜けてきた男目掛けて放った銃弾が、いとも容易く回避されてしまったのだ。 完全に不意を突いたはずなのに。 しかし周囲には樹木が生い茂っている。それらに隠れれば、再び奇襲を仕掛けることができる。 戦闘が長引くほどに“過去放った自らの攻撃を再び現実にできる”バロウは、優位に立てるのだ。 その考えから忍び足で移動しようとして、今度こそバロウは驚愕の声を漏らしてしまった。 「馬鹿なッ!」 男が、握っていた三日月型の剣を投擲したのである。 “バロウが身を潜めようとしていた樹木”目掛けて。 山の麓に現れた人影を発見し、微塵もこちらを警戒していない様子であったのを確認してからバロウは攻撃を仕掛けた。 にもかかわらず、既に自分の存在を... -
死んだらおわり
死んだらおわり ◆hqLsjDR84w ◇ ◇ ◇ 石島土門がマシン番長を圧倒していたのは、本格的に戦闘が始まってから僅かな間に過ぎなかった。 というのも当初、マシン番長は相手の戦闘能力を完全に見誤っていたのだ。 彼の両目部分に設置されたカメラは、映ったものの外見だけでなく内部まで視ることができる。 それで読み取れた情報によって、土門の肉体がかなり鍛え抜かれたものだとは分かった。 常人の域を遥かに超えており、並の番長相手ならば対等に戦えるようであったが、あくまでそれだけだった。 マシン番長は、日本最強の番長である金剛猛の能力をベースに作られている。 二十三区計画最強との呼び声高い番長であり、事実あの金剛番長の殺害にさえ成功している。 ゆえにマシン番長は、戦闘開始時にはすでに冷静に計算を終えていた。 訊き出すべきことさえ訊き出して用済みにな... -
察知――君の現在位置
察知――君の現在位置 ◆6LcvawFfJA 放送で呼ばれたのは、合計十六名。 全体の五分の一が、夜明けを待たず脱落した事になる。 さらに言えば、その内の一人はオリジナルARMS“ホワイトラビット”の適正者、巴武士。 停滞状態に陥っていた彼がいかなる状態でプログラムに参加させられたのは、もはや下手人くらいしか知らぬ事実と思われるが、もし行動可能な状態だったとすればその力は凄まじい。 オリジナルARMS最速のスピードに加えて、“ジャバウォック”や“ナイト”と同じくARMS殺しまで有している筈だ。 そんなホワイトラビットをも含む十六名が、早々に命を落とした。 しかしその事実と直面しても、キース・グリーンはただ参加者の脱落具合が想像より早いと思うだけであった。 元より、強者が集っているとは思っていたのだから。 理解していながら、一つの椅子を求める決意をした... -
禁句
禁句 ◆hqLsjDR84w ◇ ◇ ◇ 公園内にいる四人の獲物から一瞬たりとも視線を外さず、キース・シルバーはゆっくりと近付いていく。 歩みを進めつつ、シルバーは纏っているゆったりとした軍用ロングコートから右腕だけを外に出した。 その右腕はすでに人体のそれではなく、鉱物のように強固な体表と獣のように鋭利な爪を誇るARMSのそれと変質している。 蜂の羽ばたきじみた音を立てて、異形の右腕を青白い電撃が覆う。 これこそが、シルバーの肉体に移植されしアドバンストARMS『帽子屋(マッドハッター)』の能力。 移植者の体内で荷電粒子を生み出し、外界へと放出することができるのだ。 応用すれば、掌に荷電粒子を集束させ一筋のレーザー光線として放つことも可能となる。 そんなキース・シルバー必殺の荷電粒子砲『ブリューナクの槍』を知っていながら、アル・ボーエンはず... -
銀の意志/銀の遺志
銀の意志/銀の遺志 ◆hqLsjDR84w ◇ ◇ ◇ 「戦いの神――『帽子屋(マッドハッター)』のキース・シルバーとして、プログラム・バトルロワイアルの進行を促してくれ」 ◇ ◇ ◇ 武骨な指につままれて、小さな容器が取り出された。 ガラス製に見える一方で、また別の素材でできているかのような。 どうにも得体の知れない、透明なビン。 そのなかで揺らめくのは、淡くバラ色に輝く液体。 月や星の光を照り返しているのではなく、液体自身が仄かに発光しているのだ。 その液体を――見るものが見たならば、こう、呼ぶだろう。 老いる速度を緩めて死を遠ざける長寿薬。 いかなる病をも完治させる万能の霊薬。 万物を溶解して永遠に記憶する媒体。 自動人形を縛る枷から解き放つ鍵。 異常な身体能力を得るための糧。 錬金術の... -
殺したらおわり(後編)
殺したらおわり(後編)◆hqLsjDR84w ◇ ◇ ◇ 土門が吹き飛ばされたのは、さとりやバロウのすぐそばであった。 駆け寄った高嶺清麿と横島忠夫を追うように、マシン番長もゆっくりと足を進める。 土門の身体に埋め込んだARMSコア『グリフォン』は、彼の肉体に完全には適合しなかったのだ。 体内すら見透かす高性能カメラアイを内蔵したマシン番長には、移植した直後に分かってしまった。 目を覚ました土門には、偽ることなく伝えた。 申し訳なさでいっぱいだったというのに、返ってきたのは感謝の言葉であった。 (ナゼダ……) エネルギー切れ寸前のボディを動かしながら、マシン番長は考える。 彼のコンピュータをもってしても、答えは出ない。 寿命が僅かに伸びただけで、石島土門の死は確定していた。 にもかかわらず、彼は笑っていたのだ。 死を... -
ワンダーランド2
ワンダーランド2 ◆hqLsjDR84w ◇ ◇ ◇ ふーふー。 ふーふー。 ずるずる。 はふはふ。 ずるずる。 はふはふ。 ずるずる。 ずるずる。 ずるずる。 ずずずず。 ずずずず。 「……ふう」 一拍の間を空けて、ため息が一つ。 それがはたして誰のものであったのか、高嶺清麿の頭脳をもってしても分からなかった。 カップラーメンをすする三人を静かに見守っていた、食事を必要としないマシン番長ではないだろう。 しかしそこからさらに、他の三人のうち誰だったのかを搾り出すことはできない。 霧沢風子かもしれないし、横島忠夫かもしれないし、清麿自身が無意識のうちに吐いていたのかもしれない。 「…………っ」 プログラムに巻き込まれてか... -
か行の用語集
か行の用語集 【○○が欲しい】 【○○が欲しい】 元ネタはARMSの「力が欲しいか!?」という台詞。 本ロワ内では何かを欲しがる者達が続出している。 大抵は力を求めており、鬼丸猛やレイラが力を手に入れている。 他には佐々木小次郎が強さを、キース・シルバーが闘争を欲しがっている。 特定の物品を欲しがる者も居り、蒼月潮は獣の槍を、阿紫花英良はお代を欲しがった。 ドクター・カオスとパルコ・フォルゴレの二人は初っ端から裸になるという誰特なエロハプニングにより、 まともな服を欲している。 ナゾナゾ博士は植木耕助に支給されたキッドの魔本を欲しいと思い、 キース・ブルーは車椅子か杖が欲しいと思ったところでヴィンセント・バリーという頼もしいアッシー君を手に入れた。 用語集に戻る -
遥場 ~Through the Tulgey wood~
遥場 ~Through the Tulgey wood~ ◆vorpaLEJrs 開かない部屋に光が差した。 汗にぬるむ金属の臭いと、蜘蛛の巣に似た陥没の跡が、外界にさらされた。 それが彼と、彼の敗北のはじまりであった。 ◇◆◇ 山中へと続く歩道に、斜面の縁から土がこぼれた。 ささやかに崩れた泥砂を受けることなど、これまで幾度もあったのだろう。年季の入ったアスファルトのくすみは、蒸れた土の乾いた色と近似している。 そこに跳び下りたキース、グリーンのカラーネームを戴く少年は、足許に広がる諸々を顧みることなく歩みを再開していた。纏った体躯を大きく見せるダブル・スーツにボタンダウンのドレスシャツ、背伸びをしていることを隠そうとした跡がみられる出で立ちに上下動の余韻はない。視界に影を落とした髪のひと房を撫で付ける仕草につれて、光を透かしたロー・... -
重い荷物の担ぎ方
重い荷物の担ぎ方 ◆hqLsjDR84w ◇ ◇ ◇ 「ここまで来れば、ひとまず大丈夫……かな。 わざわざ移動した僕たちを探すとも思えないし、あまり体力を使いすぎてしまっても本末転倒だからね」 後ろをついて来ているおキヌさんに告げて、足を止めた。 いきなり反応しきれなかったらしいおキヌさんが、僕の三メートルほど前まで行って停止した。 お爺ちゃんの記憶が溶け込んだ『生命の水』を飲んだ才賀勝――つまり僕は、このくらいの運動で疲れてしまうことはない。 だけど幽霊であるおキヌさんは、どうなのだろう。 そう、おキヌさんは幽霊なのだ。 一見ただの高校生に見える巫女服を着た長い黒髪の彼女は、もう命を落としている。 それも、三百年も前に亡くなったのだという。 僕のなかにあるフェイスレスの記憶よりも、さらに百年も昔だ。 「はぁー……くたび... -
誘雷
誘雷 ◆hqLsjDR84w ◇ ◇ ◇ 蒼月潮の腕のなかで、キース・バイオレットが崩れていく。 ものの喩えなどではなく――文字通りに、そのままの意味で。 彼女の全身に亀裂が走っていたのは、彼女を抱きかかえていた潮にはよく分かっていた。 その亀裂が次第に深くなっていることもだ。 にもかかわらず、バイオレットは言葉を紡ぎ続けた。 制そうとした潮の声を遮りながら、言い聞かすような口調で。 「……バイオレット姉ちゃん……」 瞳に涙を溜めながら、潮は知らず両手に籠める力を強くする。 その分だけ、バイオレットの身体が崩れる感触が伝わってきた。 砂場で作った城に触れているような、そんな感覚だ。 さらさらと、服の下にある体組織がこぼれ落ちていく。 相棒・とらと妖(バケモノ)退治の日々を送ってきた潮だからこそ、考え... -
ぐれんとゆう
ぐれんとゆう ◆nucQuP5m3Y モチノキデパートには粗悪品やら偽物やらが溢れている。 それでも人が減らないのは偽物と知ってなお安さで買う客がいるからだろうか。 それとも偽物と知らずに安さに喜ぶ無知な客ばかりなのだろうか。 それはともかくとして、そんな客たちも今のこの惨状を見れば二度とこのデパートに来るとは言わないだろう。 そこには破かれ、焼かれた布の数々。壊され、砕かれたマネキンの数々。ひしゃげ、積み重なった什器の数々があった。 落ちている服から辛うじてそこがかつて婦人服売り場であったのだと推測できるが、そんな分析は今そのボロ布を踏みつけて跳んだ者には意味がない。赤いハンチング坊に黒い覆面、妙に短い学ランから見える腹筋は達人のそれである。 彼は名を、秋山優と言った。 「さて、どうしたものかね……」 まだ無事な什器の影に隠れた彼はフロアに吊り下げら... -
さよなら旧い自分
さよなら旧い自分 ◆hqLsjDR84w ◇ ◇ ◇ 「……さて」 もうすっかり昇りきった日の下で、憲兵番長こと伊崎剣司が誰にともなく呟く。 河原に向かったギイとシルベストリを見送ってから、とうに十分ばかし経過している。 その間、いったいなにをしていたのかといえば、ひとえに『仕込み』をしていたのである。 彼は人を斬る音色を愉しむことこそ最上の快楽としているが、しかしあくまで最上であって唯一ではない。 単に人体に刃を滑り通せればそれでよいのではなく、むしろその過程をも堪能するべく趣向を凝らすタイプなのだ。 その憲兵番長の視線の先には、地べたの上で横たわる少女――魔物の子・チェリッシュ。 すぐ横で一人の命が奪われた事実も知らずに、未だ意識を取り戻す素振りすら見せていない。 眠ったままの彼女に雷神剣の刃を突き刺してやるというのも、決し... -
ノイズキャンセリング
ノイズキャンセリング ◆hqLsjDR84w ◇ ◇ ◇ バチン、と。 そんな擬音が聞こえそうなほどの勢いで、ゼオン・ベルは閉じていた目蓋を開いた。 すぐさま、傍らに置いておいた時計に視線を飛ばす。 時刻は、六時三分前。 定期的に流れるという放送が始まるまで、あと僅かである。 現在ゼオンが身を潜めている倉庫のなかにまで、放送が届くとも限らない。 そう判断するやいなや、ゼオンは立ち上がった。 いまのいままで熟睡していたというのに、まったく寝ぼけている様子はない。 きびきびとした動作で扉を開くと、ゼオンは紫色の瞳を細くする。 「寝ているうちに、日が昇っていたか」 これは、ただ思ったことを吐き出しただけである。 つまるところ単なる独り言であり、ゼオンは返答など求めてはいなかったのだが―― 思いがけず、肯定するような声が... -
非戦闘生命
非戦闘生命 ◆hqLsjDR84w ◇ ◇ ◇ エリアC-4の河原では、二つの戦闘が繰り広げられている。 その片方――二メートルほどの長身の老人と、それ以上の巨躯を誇る高校生。 すなわちドクターカオスと金剛晄の戦闘は、両者のスペックからは想像できぬ展開を見せていた。 使いなれぬ道具を武器としているカオスが、間違いなく戦闘力で勝っている金剛を攻め続けているのだ。 ドクターカオスが武器として用いているのは、純白のマリオネット。 オリンピアという名を持つそれは、六本の腕や内蔵した注射機などの武器で戦うトリッキーな懸糸傀儡だ。 とはいえ現状では、まだドクターカオスはオリンピアの性能をすべて引き出せているとは言い難い。 説明書こそ付属していたが、内蔵武器などについて記すばかりでその操作方法についての奇妙は大してなかったのだ。 十指すべてを用い... -
若者のすべて
若者のすべて ◆hqLsjDR84w ◇ ◇ ◇ 音もなく。 気配もなく。 前触れもなく。 四人しかいなかったはずの民家のリビングに、『五人目』が忽然と姿を現した。 いきなりの乱入者に驚愕を露にしたのは、加藤鳴海と阿紫花英良の二人だけ。 紅麗は微動だにせず、またその表情は被ったままの禍々しい仮面によって窺えない。 そして高槻涼は、五人目が現れることを予想していた。 彼のなかに埋め込まれているARMSコアが、共振反応を捉えていたのだ。 ゆえに、分かっていた。 彼が――キース・シリーズの末弟たるキース・グリーンが、こうして眼前に立つことを。 共振反応を捉えた数秒前から、ずっと。 「へえ……なるほど、ね」 鋭い目つきでリビング内を見渡し、グリーンは金色の髪をかき上げる。 髪で隠れていた整った顔が作ってい... -
檻の外のヒト
檻の外のヒト ◆hqLsjDR84w ◇ ◇ ◇ 動物園内には、地鳴りじみた奇妙な音が響いていた。 檻から解き放たれた獣たちの唸るような鳴き声が、いくつも重なり合っているのだ。 ある個体は鋭い牙を露わにしながら大口を開け、ある個体は生まれ持った鋭い角を突き出し、ある個体は異常発達した両手に猟銃を携え―― それぞれ種の異なる獣たちが、一様に動物園に侵入した二人を眺め回している。 周囲にいる他の獣には目もくれず、さながら侵入者を吟味するかのように。 「……はーん」 常人の三本分ほどの太さを誇る指を鳴らしながら、コウ・カルナギは納得したように頷く。 いちいち数えてはいないものの、獣の数は十をゆうに超えているだろう。 そのどれもが妙なことに、互いに喰い合おうとするそぶりすら見せない。 「テメェら、飼われてやがるのか。ザマァねえな... -
現在位置~Fly! You can be Free Bird~
現在位置~Fly! You can be Free Bird~ ◆hqLsjDR84w ◇ ◇ ◇ キース・シルバーは北へと進む速度を緩めずに、視線を上空に飛ばす。 だいぶ沈んでしまった月は、もう建造物の隙間からしか確認できない。 僅かに夕闇に光が差し始めていたことからも分かっていたが、朝が近付いてきている。 視線を前方に戻し、シルバーはツバの短い軍帽をかぶり直す。 一見落ち着いているようだが、彼の口内では歯が軋みをあげている。 先刻、シルバーの背後で炸裂音が響いた。 その際は、わざわざ来た道を戻らずともすぐに別の参加者と巡り合える、と考えていた。 だが現在、夜が明けつつあるというのに、殺し合い開始直後の戦闘以降は誰にも会えていない。 判断を誤ったか、と口に出そうとして、シルバーは硬直した。 口だけではなく、北上する足までが止ま... -
人間
人間 ◆hqLsjDR84w ◇ ◇ ◇ 僕等はもがき苦しんでるだけの人間様さ。 ◇ ◇ ◇ 高槻涼は、海岸で座り込んでいた。 いや、へたり込んでいると言ったほうが正しいか。 オリジナルARMSとしての運命から抗い続けてきたはずなのに、赤木カツミ一人失ってしまっただけで涼は立ち上がることさえできなくなっていた。 手元にあったリュックサックは確認もせず地面へと置き、虚ろな瞳を水平線へと向けているだけだ。 眼前の海など視界にはなく、カツミの頭部が身体から離れていく光景だけがフラッシュバックし続けている。 どれだけの時間が経過したのかなんて、涼には分からない。 少し月が傾き出していることすらも、目に入っていない。 やがて、涼の脳内に異変が訪れる。 喪失感でいっぱいだったはずの心に、別の感情が生ま... -
ロスト
「このぶたちゃんは、おかいもの」 月の明かりすらも、届かない。 暗く静かな森の中。 妖の一匹でも出そうな、夜闇であった。 ゴスロリとも呼ばれる黒いドレスに身を包んだ、金髪の少女。 大きな目でぱちくりと瞬きをすれば、長いまつ毛が僅かに揺れる。 その姿は、まるで人形のような……。 ……否。人形のような、ではなく彼女はまさに自動人形、つまりは機械なのであった。 「このぶたちゃんは、おるすばん」 少女のうたごえに、木々が涌く。 さらさらと、葉音による拍手喝采は鳴り止まず。 そう。果てしなく広い丸盆の中心で、この少女はひとり、歌をうたっていた。 されど、その響きは冷たい空気に溶けて、誰の心も震わせることはない。 だとしても、彼女のうたは止む事はなく。 「このぶたちゃんは、おやつたべ」 靴が汚... -
高鳴り
高鳴り ◆hqLsjDR84w ◇ ◇ ◇ 魔神・アシュタロスは瞳を閉じ、自身の回復具合を読み取っていた。 回復自体は間違いなく進んでいるのだが、その速度は納得がいくものではない。 アシュタロスにとって『目で見える速度で傷が治る』ようでは、遅すぎるのだ 本来ならば、多少能力を犠牲にすることで一瞬のうちに全快することとて可能である。 犠牲にした能力だって、一時間足らずのうちに平常時にまで戻せる。 だが――できない。 どうやら、アシュタロスにとってはあまりに緩慢な速度での治癒を続けるしかないようだ。 これは、明らかにおかしい。 最上位魔族であるアシュタロスは、自ら命を絶つどころか力を制御することさえできない。 にもかかわらず、この場ではたしかに治癒力が下がってしまっている。 理由や方法は分からないが、間違いなくアシュタロス... -
明け方の演奏会
明け方の演奏会 ◆hqLsjDR84w ◇ ◇ ◇ 小金井薫、才賀エレオノール、ロベルト・ハイドンの三人は、未だビジネスホテルの一室にいた。 小金井とエレオノールが自身の境遇や探し人の特徴を話しているうちに、放送の時間が迫っていたのだ。 ゆえにそのまま動かず、放送を聞き逃さぬよう耳を研ぎ澄ましていた。 その放送は先ほど終わったのだが、誰一人として口を開こうとしない。 それほどまでに、先ほどの放送で告げられた内容が衝撃的だったのだ。 殺し合い開始から僅か六時間で十六名が命を落とし、しかもそのうち二名は小金井が合流しようとしていた仲間であった。 ベッドに腰掛けたまま俯いている小金井に、才賀エレオノールは話しかけようとするもなに一つとして口からは出てこなかった。 どう声をかけるべきなのか判断できず、ただ沈痛な面持ちで見つめるしかできない。 小金... -
思索――自分達の現在位置
思索――自分達の現在位置 ◆6LcvawFfJA 高槻涼が落ち着きを取り戻し、暫らくが経過する。 依然として、紅麗と阿紫花英良が到着する気配は無い。 両者ともに放送で呼ばれてはいない以上は、おそらく向かってきているはずだ。 したがって勝手に移動する訳にもいかず、ただ待つしかない。 されど高槻涼の方はともかくとして、加藤鳴海にはそういう待機するだけというのは性に合わない。 最初の五分、ここまでは高槻と言葉を交わす事で問題無く過ごしていた。リビングの椅子に腰掛けながら、会話が弾む。 次の四分、この辺りで会話が途切れ始める。高槻から告げられる情報はきっとプログラム打破に重要なのだろうが、如何せん鳴海には難しすぎた。 さらに三分、無言のまま鳴海の体が微かに振動しだす。貧乏揺すりである。 もう二分、貧乏揺すりが激しくなる。腰かけている椅子に振動が伝わり、床から... -
剣迷いなく、道遠し
剣迷いなく、道遠し ◆xrS1C1q/DM 「はて、ここは日本のどっかであろうか?」 拙者、北海道で偽物を相手に華麗な啖呵を切った筈であったが、気がつけばブラックとやらに殺し合いを強要された。 むむむ、こっから超ウルトラハイパーデラックス美形剣士の活躍を魅せてやろうと思ったところだったのだが。 それを邪魔するなど、ブラックとやら、許せん! 物干し竿のサビにしてやろう……と、思ったところで剣は没収されてるのが悲しいところでござる。 剣を探すことから始めないといけないとは、とほほ、情けない。 代わりに渡された武器はこの鞭。刀とは使い勝手が違いすぎるから、この天才の技量を以てしても使いこなすには手がかかりそうでござるな。 それにしてもブラックは随分と面妖な術を使う。 あの妖獣(鬼丸の部下か?)の雷は雷神剣の威力にも勝るとも劣らぬ物、あれを受けて無傷とは信じられん。... -
『太陽の人形芝居』2(前編)
『太陽の人形芝居』2(前編) ◆hqLsjDR84w ◇ ◇ ◇ 告げられた放送の内容に、ジャン・ジャックモンドの思考は停止した。 十六名もの参加者がすでに死したことには、大して驚いていない。 被害者が出るのを止められなかったのはもちろん歯がゆいが、あくまで予想の範疇内だ。 アーカム財団直属のS級特殊工作員・スプリガンとして様々な修羅場を潜り抜けてきたからこそ、人間が案外簡単に死んでしまうものだとよく知っている。 また、巴武士が呼ばれ、ゼオン・ベルは呼ばれなかった。 こちらも意外ではなかった。薄々、察しがついていた。 だが――御神苗優。 彼の名が呼ばれるとは、まったく考えていなかった。 巴武士のように甘ちゃんであるのは、誰よりもよく分かっていたはずなのにだ。 なかなか力をつけてきたとはいえ、ゼオンのような優の力を上回る相手... -
チェイン
チェイン ◆d4asqdtPw2 東の地平から現れたのは、世界を白く染める朝の光。 夜の闇は西の彼方へと追いやられ、かき消されてゆく。 だが、この町中にドロリと充満する絶望は、朝日に照らされても絶えることはない。 不穏な色が渦巻く空を民家の窓から眺めながら、加藤鳴海は深く溜め息をついた。 なんだか、ずいぶん久しぶりに太陽に会ったような気がする。 「…………」 左腕が僅かに軋んだ。 五指をおもむろに開き、そして握り締めて、鳴海は目を細める。 長い間、彼は真夜中で戦っていた。 この殺し合いに参加させられるよりも前から。 天幕の下で、機械仕掛けの道化たちとずっと戦い続けていた。 それは、時計の針で測るなら一夜にも満たない出来事。 けれど、彼の中では千夜に渡る闘争だ。 命を賭けて、仲間を失ってまで、彼としろが... -
置き手紙
置き手紙 ◆hqLsjDR84w ◇ ◇ ◇ 高槻涼と加藤鳴海の二人は、とりあえずの行動方針を定めた。 殺し合いに乗ったキース・グリーンや、先に民家を出た紅麗がどこに行ったのかは分からない。 そこで、ひとまず地図に記されている大きな施設を巡ることにしたのだ。 最初に訪れた銀行には、誰かが侵入した痕跡はなかった。 この状況において銀行が営業しているのは不可解だったが、彼らの目的は他者との合流である。 大して調べものをするでもなく、最寄りの施設であるビジネスホテルに向かった。 ほどなくしてビジネスホテルに辿り着き、二人は目を見開くことになった。 入口の自動ドアは割り砕かれ、ロビーに置かれているソファは散らばっている。 周囲のガラス窓には亀裂が入っており、壁には人が埋まりこんだような穴が開いている。 砂埃が治まっているので最近で... -
魔王 ~セイタン~
魔王 ~セイタン~ ◆l8wFU63Y6c 手にした剣を上段へと構え、振り下ろす。 普段扱っている竹刀や木刀に比べればやや幅広の刀身を持つ『それ』は、片手で扱うにはやや厳しい重さだった。 ふと気がつき、腕に巻いていた重りを外す。一つにつき人間10人分の重さ。 もう一度武器を手に取る。片手でも苦ではない。 鬼丸猛は、この状況において自身の精神は寸毫ほども乱れていない事を改めて確認した。 『プログラム』――黒スーツの男が仕組んだらしきこの殺し合いを、鬼丸はさほど動揺せず受け入れていた。 そもそも鬼丸は、『織田信長御前試合』などという人死にが当然にあり得る闘いに参加していたのだ。 結局、場所と顔ぶれが変わっただけ。やるべき事は同じ。 無論、鬼丸は殺人嗜好者ではない。別に人を殺して回るという気はなかった。 が、侍として、挑ま... -
少女さとり
少女さとり ◆xrS1C1q/DM 暗闇に包まれた山中、一人の少女がキョロキョロと辺りを見渡しながら歩く。 セーラー服を着た中学生くらいのごくごく平凡な少女。 しかし、彼女は普通の人間がこのような殺し合いに巻き込まれれば起こすであろうパニックを一切起こしていない。 恐怖を感じ、落ち着かない様子ではいるものの、足取りはしっかりとしている。 「刃ー、武蔵ー、小次郎ー、聞こえたら返事してー」 不安からか、普段の快活さが嘘のように弱々しい声で仲間を呼びかける彼女の名は峰さやか。 殺し合いに乗った人間に聞かれてしまうリスクがあるのは承知ではあったが、一人でいるのにはこの場は恐ろしすぎた。 「はぁ、このさい殺し合いに積極的な人じゃないなら誰でもいいから出てきてくれないかなぁ」 弱々しくため息を吐く。 そして弱気な考えを吹き飛ばすかのよう、右手に握られた彼... -
悪魔~デモン~
悪魔~デモン~ ◆xrS1C1q/DM 殺し合え、か。下らない。 僕はそんな遊びに付き合っている暇はないんだ。 森光蘭が天堂地獄を完成させてしまうのを阻止する必要がある。 そう、やつの永遠の命などという野望を止めなくては。 柳さんをあんなヤツのために死なせてやる気はない。 天堂地獄に囚われたあの人々の魂も開放してやらなければならない。 だから僕は、僕たちは一刻も早く元の世界に帰る。 思い返してみれば、やるべきことがまだ残っているんだ。 森光蘭の野望を止めるだけではない。 我が師、巡狂座に姉さんの事も聞かなくてはならないし。 戒の事も伝えなくては。 そもそも、こんな事がさせたければ戦いや殺しが好きな連中を集めればいい。 おあつらえ向きの人間は何人も知ってるしな。 キース・ブラックには忠告しといてやろう、『次からは人選を考えることだな』と。 けどヤ... -
適材適所
適材適所 ◆1eZNmJGbgM 「さて、どうしたもんかね」 そう言って男は誰に向けたわけでもなく呟き、改めて周囲を警戒する。 彼が転送された場所はD-6、モチノキ町立総合病院入口。病院らしく、緊急車両が横付けできるように広々と作られている。 逆に言えば、見晴らしが良く身を隠す場所が決して多いとは言えない立地であるが、彼はさほど気にしているようには見えない。 いや、一見そう見えるだけで実は巧妙に射線を外しているのか、あるいは無意識のうちにそんな立ち位置をとっているのかもしれない。 日々の鍛錬によって作り上げた屈強な肉体に加え、数えきれないほどの戦場を潜り抜け身につけた経験・直感。 口調こそ余裕を感じさせるものの、その視線や仕草には些かの油断も感じられない。 彼は理解しているのだ、現在自分が置かれている環境が今まで経験したどんな修羅場よりも過酷なもので... - @wiki全体から「怒号――まともな奴ほど損をする」で調べる