「そら、その程度かリュウセイ・ダテッ!?」

朝日も上がらない暗闇の中、ビルを崩し大小2体の機体が戦いを続けている。
大形の機体は、THE BIG。リュウセイの乗るメガデウス。
小型の機体は、R-1。マイ・コバヤシ……いやレビ・トーラーの乗るパーソナル・トルーパー。

いや、戦いと呼べるものではない。
R-1が一方的にTHE BIGをいたぶるだけ。
当たり前、と言えば当たり前の状況だろう。
なにしろ、今のTHE BIGは、装甲全体に無数の傷。左腕装甲を損傷、反応がやや鈍っている。
額から頬にかけて右目を横断する傷があり、右目からのアーク・ライン発射不可。
頭頂部クリスタル破損。クロム・バスター使用不可。
胴体部の砲身欠損、BIG-O Final stageは使用不可。
コクピット部装甲が破損し、ミサイル残弾僅か。
頼みの綱のサドン・インパクトは腕の破損からしてよくて一発限り。 
全体の反応もやや鈍く、関節へのダメージもところどころある。
自らのポテンシャルを完全に発揮できる念動力を、最高レベルで保有する今のR-1に負ける要素など何もない。

逆に、リュウセイからすれば、日和っている暇も、息をつく間もない。
関節の動きの悪いTHE BIGでは、致命傷を避けるのが精一杯。
外部カメラも大部分がダメになっており、半分以上は割れたコクピットからの目視でカバーしているのだから。
最初から最後まで、徹底的にクライマックス。
目に見えるスピードモーションを超え、高速で動くR-1のヴィジョンを追いかけることさえ困難。

「ついてこれるか!?」

レーダー右にR-ウィングの影。体を右に。THE BIGを即座に防御させようとする……が遅い。ワンテンポ動きが遅れる。

「くッ!」

横のボックスあけ、そこにあるボタンを拳でまとめて叩く。
同時にTHE BIGの体がせりあがり、内部にあるキャノン・パーティーとミサイル・パーティーが、まとめて吐き出された。

「ははッ!」

THE BIGを嘲笑うように、W-ウィングは空中で変形、その勢いのままT-linkナックルを起動し自由落下の速度を加えて落ちる。
突き出した拳を中心に光が走り、そのビームのような光がキャノン・パーティーとミサイル・パーティーを次々に打ち落とす。

「やべぇッ!」

そこまでたってやっと残った片腕が体を庇うようにかざされる。
並みの盾を遥かに凌ぐTHE BIGの腕がT-linkナックルをギリギリで受け止めた。
本来なら、質量差の関係、R-1が吹き飛ぶはずだった。
しかし、その質量差を引っ繰り返し、ジャイアントロボの時と同じように逆にTHE BIGがたたらを踏むようによろめく。
後方宙返りを華麗に決め、音もなくR-1は着地。
一拍もつかず身を低くし足をバネに駆け出す。

「アーク・ラインッ!」

そのR-1を牽制するべく隻眼となったTHE BIGの左眼から細い光線が発射される。
その隙間を踊るように駆け抜けるR-1。
あっという間に肉薄し、T-linkソードを構え、THE BIGの股下を駆け抜ける。
THE BIGが傾く。急いでダメージチェック……――破損部は大腿部。
どれだけ堅牢なTHE BIG言えども、その装甲の継ぎ目である関節への攻撃には成す術もない。
むしろ、さっきの一撃で直立不可、最悪足の切断もあっただけにまだましなほうともいえるだろう。
「これじゃどうしようもねぇ……!」
マイを助けるためにもR-1を破壊することにしたが――まずそのR-1を破壊するということが至難の業だ。

「本当にR-1なのかよ……?」

ボソリと一言、リュウセイがこぼす。
そういうのも仕方がなかった。
今のR-1は、レビという最高の念動力の加護を得て、その力を余すことなく発揮してる。
自分の操作するR-1が劣るとも思えないが、とても戦って勝てるとも思えなかった。
だが、だからと言って諦める訳にはいかない。
何か、突破点があるはずだ。

またR-ウィングに変形し、距離をとるマイ。
絶対的な優位を築いていながら、決して無茶な攻めはみせず、ヒット&アウェイを的確に繰り返している。
単調と言えば単調だが、剃刀一枚通らない確実で隙のない戦術。
リュウセイのことをよく知る故に、決して侮らない。

その姿を、一瞬たりとも目を離さず追い続けるリュウセイ。
「落ち着け、何か……何かとっかかりはあるはずだ……!」
繰り返される動き、パイロットのクセか何かでもつかめれば。
しかし、そんなものはそうそう簡単に見つかるものではない。
攻めあぐねるまま、時だけが過ぎていく。

「R-1なんだ、俺が一番の乗った機体、なにか………」

そのとき、気付いた。
そう、相手はR-1なのだ。R-1以外何物でもない。
ならばとリュウセイはよぎったアイディアをまとめていく。
(R-1の弱点。合体時にコントロールを離れること。変形時はG・リボルヴァー無しでは攻撃力が皆無なこと)
ずらずらと思い浮かぶことを列挙していく。よいこと、悪いこと。長所、短所。
(携帯武器無しでは遠距離攻撃能力は皆無。機動性は背面ブースターが良好な限り戦闘機並みの出力……)

隙が、光が見えた。

「危ねぇ!」

ギリギリで攻撃を回避。またR-1はR-ウィングへ変形し、距離をとり加速度をもう一度得る。

この次の攻防が勝負の分かれ目。

R-ウィングが迫る。
THE BIGが前に出る。
「―――ッ!?チィ!」
THE BIGがレビの予想を裏切り、前に出たことで、アタックポイントが修整される。
予定よりも早く、慌ててR-1へと変形する。
そこへなだれ込むアークラインとミサイル。
加速してやり過ごせないことと判断したレビは、PTモードのまま曲芸のような動きでかわす。
ミサイルに気をとられていたレビは、反応が一歩遅れた。
目の前に迫るTHE BIGの拳―――!
W-ウィングに変形、そのまままっすぐと駆け抜ける。
THE BIGの背後で旋回しようと―――

「今だ!」

R-ウィングが旋回し、僅かに念道力による機動から放たれた隙をリュウセイは見逃さない。
おそらく、これが最初で最後。もし策を相手が知れば、待ちがなくもうR-ウィングに変形はない。
乾坤一擲。必殺必中。絶対命中。
耐えて、耐えて、耐えて生まれた一瞬のチャンス。
まっすぐ、モディビックアンカーがR-ウィングへ――正確には反転時のモーションパターンの予測地点へ。

「何だと!?」
「忘れたのかよ!?R-1は、俺の相棒だ!俺は目をつぶったってそいつのモーションパターンは分かるんだよぉぉぉおお!!」

変形し、僅かに減速をかけるがそれまで。
R-1自ら投げ込まれた綱へと進み―――アンカーが体に巻きつき動きを束縛する。
そのアンカーは、THE BIGに巻き取られていく。
単純なパワー勝負ならTHE BIGは負けていないのだ。
機動力を失い、R-1はTHE BIGへ手繰り寄せられる。

「一発限りの必殺技だ……」
「やめろ……私を殺す気か!?」
「そんなつもりはねぇ!けど、すまねぇR-1……R-1は破壊させてもらう!」

巻き取られるR-1の勢いを計算し、タイミングを取る。

「うああ……あああああああ!!」
「天上天下ッ!鉄槌ッ!粉砕拳ッ!」

体をねじり生み出したTHE BIGの拳の勢いに、カウンターのようにR-1が近付く勢いを上乗せした左の一撃。
それは防衛衝動にそって展開した彼女の念動フィールドすら貫通し、R-1に多大なダメージを与える。
張り詰めたアンカーが千切れ、R-1が弧を書くように空を舞う。

THE BIGの左腕が限界を超え落ちるのと、R-1の体が落ちるのは同時だった。

『さぁ、次だ』

ユーゼスの声がTHE BIGに突然流れる。

「………ユーゼス?」

『お前の知っていたR-1ならこれで終わりだろう……残念ながらあのR-1は他の世界から取り寄せたものだ』
「お前……何言ってんだ?」
『いや、ZESTのために強力な念動力者のデータが必要なのでな、もう少し頑張ってもらおうかと思っただけだ』
「何?」
『最初からいくつかこうなるように仕込みはしていたが、このような結果になったのは素晴らしいことなのでな』
「仕込み……?まさかレビの意識が突然出たのも……ッ!?」
『それも私だ。ゲッター線のため、流竜馬を呼んだのも……特移点を作るためあの世界からグランゾンをつれてきたのも』
「結局、あの時と同じ……!」
『もうすぐお前は死ぬ。最後に死に逝く者には礼をしなければな……イングラムと同じように』
「てめぇ!俺は死なねぇ!必ずお前を……」

その言葉をユーゼスが阻む。

『そうか。なら頑張って生き残ってくれ。これから起こる出来事……それも私だ。なぜこんなことを言うのか分かるか?
 お前は感情で力を引き出すサイコドライバーのようなのでな。次がないのでここでデータを取っておきたい。しっかりと怒ってくれ。』

「待て!ユーゼス!」

『ウラヌス・システム起動、……せいぜい楽しむことだ』

その言葉と同時に、通信は断絶する。

「おい!ユーゼス、答えろ!」

しかし、答えはない。その代わりに――――

パキ―――

「………え?」

ピキ―――

音のする方向は……R-1が飛んだ方向。
この、音は?
THE BIGがそちらに体を向ける。

「嘘……だろ?」

R-1が立ち上がる。しかも……装甲が勝手に治っている。
直っている、ではない。治っているのだ。
まるで、人間の傷がふさがるように。

こんなウラヌスシステム、というのは聞いたことがある。あの時、教官が引き出したシステムだ。
だが、SRXにあのような効果は出なかった。
なら、あれは、いったいなんだ?

「は……はは……ははは………最高にいい気分だ」

幽鬼のようにゆらりとR-1が立ち上がる。
その双眸にまた火が灯る。

「これなら……断ち切れる」
「断ち切る?」
「ああ、そうだ!お前を断って私は自由になるッ!」

手を上げたR-1がTHE BIGを見据える。
念道力が周囲に光輪を作る
瞬間、爆縮。
今までにリュウセイが見たこともないほどに巨大なT-Rinkソードが顕現し、煌々と存在感を主張する。

「死ねぇぇッ!!」
「やべぇ!」

いくらなんでもあれは受け止められない。
慌てて下がったことにより、紙一重の場所をT-Rinkソードが過ぎていく。
反撃に残ったミサイルのほぼ全てを発射する。
しかしそれも、可視の域に達した異常な念動フィールドに阻まれる。

「ははは……ははは……ははははははッッ!」

―――もしかして、マイは……
ふと、嫌な予感がリュウセイによぎる。
あの時と同じ―――精神力の限界を超えてあの力を使っているのではないだろうか?
少し、聞いたことがある。
カルケリア・パルス増幅装置というものを。資料を得た人間から聞くには……
T-LINKシステムとほぼ同じシステムだが、T-LINKシステムのようなブレーカーが存在せず
レビが乗る以前は帝国で数多くの犠牲者が出ていた、らしい。
ウラヌス・システムのからくりは分からないが、そんなところではないだろうか?

『いや、ZESTのために強力な念動力者のデータが必要なのでな、もう少し頑張ってもらおうかと思っただけだ』

あのユーゼスの言葉。―――紛れは少なそうだ。

「やめろ、マイ!そんな力使っちゃダメだ!」

その言葉に彼女は耳を傾けない。
THE BIGだけでなく、周りに無差別に攻撃を続けている。
攻撃が定まってないだけに、THE BIGでも回避できるが……過剰な攻撃力の前にはそう長くもちそうにもない

「私はマイ・コバヤシではない!レビ・トーラーだッ!」
「じゃあ何でそんなに俺にこだわる!」
「何!?」

「さっき自分で言ったよな!?『断ち切る』って!最初から関係ないなら『断ち切る』なんて使わねぇだろ!」

R-1の動きが、止まる。

そうだ。

他でもない何でもない。
彼女自身が誰よりも、この戦いにこだわった。
それは、リュウセイとの絆を断つため。
裏を返せば、それは今はリュウセイと絆があると自分が感じていることに他ならない。

「それは……ッ!?」
「分かるだろ!お前は、レビ・トーラーなんかじゃねぇ!」
―――私は帝国観察軍の子爵じゃない。SRXチームの一員。

「うるさい……」

「お前は……俺たちの大切な仲間だ!」
―――私の大切な、仲間。ヴィレッタ教官、ライ。それに――リュウ。

「うるさい……!」

「アヤ達いる世界に……あの場所に帰ろう」
――アヤ。私の家族………私の姉。

―――……?私は―――私の名前は―――
「う、る……さぁぁぁぁぁぁいッッ!!うるさい、うるさいうるさいうるさいッ!」

ウラヌスシステムにより増幅された念動波が攻撃を遮断する光壁を越え、志向性を持つエネルギーとして牙を剥く。
色は、緑。しかしそれは慈愛や自然を連想させる緑ではない。濁り、淀み、場所によりマーブル状に濃淡のある緑。
R-1を中心に円形にその光は攪拌することなく力を保ち拡大する。
うねうねと球面で変化するさまは、菌類の生物を連想させた。

「BIG-O……もうちょっと付き合ってくれよ……!」

THE BIGのコクピットで足元がスライドし、新たなペダルが生まれる。すかさずそれをリュウセイは踏み込んだ。
電光、一閃、烈風。
腕部装甲が展開。THE BIGが大地を踏みしめるや否や、赤い輝きがTHE BIGを中心に広がる。
プラズマ・ギミック。今THE BIGが使える数少ない武器の一つ。最後の、切り札。
透き通った赤い光が、周囲のビルを押しつぶし、電光を走らせ拡大する。
圧倒的で、そして濁りのない煌きは太陽を連想させた。

緑と、赤。
二つの力場が鬩ぎ合い、拮抗状態を作り出す。
元々何度も戦闘を経験し、ボロボロになっていたビル群は力場に触れた瞬間蒸発するように消えた。
もはや、お互いの目に映るのは相手の姿のみ。
マイは……レビはリュウセイを殺すために。
リュウセイはマイを救うために。
相手を制圧すべく、お互いの力場はその激しさを増す。
先程よりも、淀み、黒く。先程よりも、激しく、赤く。
相手へ届けと。
どんな形であろうと。歪んでいようと。

R-1が右膝を突く。
THE BIGが左膝を突く。

R-1の間接が負荷で軋む。
THE BIGの千切れた肩口から緩衝材が血のように噴出す。

R-1の両腕のT-Rink発生器が過負荷で弾けた。
THE BIGが体の重みに耐えかねたように、腕を地面につく。

R-1の装甲が割れ、間接がすべて爆ぜた。
THE BIGが全身から血のようなオイルを流す。

R-1が………
THE BIGが………

そして―――――

「マイィィィィィッッ!!」
「リュ、ウ、私は………」

ついに、R-1の動きが止まる。

「マイ、マイなんだな!?」
「私は……私は、わ、た、し、はぁぁぁあ……ああああアアアアアアアアアアアアアアアッッ!?!?!?!?」

緑の力場が消える。収集力を欠いた力が霧散する。

しかし、それもつかの間の出来事。

ウラヌス・システムで強引にくみ上げられた念動力が、物理現象へと転化し無差別な破壊を撒き散らす。

ウラヌス・システム――その正体はむき出しのT-linkシステム。
           念動力というパワーソースを限界まで発揮する。
           一応なしに際限なく搭乗者の念動力を搾り出す。……まるでオレンジか何かのように。
           搾られた果実がどうなるかは……言うまでもないだろう。
           大きく精神に変調をきたすか、自己崩壊するか―――それとも廃人か。

レビ・トーラーとして制御されていた潜在念動力が、マイに意識がシフトしたことにより制御を失った。

結果、戦闘すらできないはずのR-1の周囲に緑色のエネルギーが無軌道に現れては爆発、消滅、炸裂を繰り返す。

「待ってろ、マイ!ここまできたんだ、必ず助けてやる!行くぜBIG-O!」

先程のような何も残さず嘗め尽くす破壊ではない。
泣きじゃくる子供が手足を振り回して積み木を崩すような……リュウセイには、今のR-1がそう見えた。
勢いよくペダルを踏み込み、THE BIGがR-1に走り出す。
何も恐れずに、吹き荒れる緑の嵐の中へ。
囚われの少女を救うために。
まっすぐ、最短距離を。
人々の思いを背負い、THE BIGが進む、進む。進む!

「届けぇぇぇぇぇ!!」

あと少し、もう少し。THE BIGが念動力に晒されみるみるうちに壊れていく。
ファイナルステージを撃った後の空洞を中心に、装甲がはげて行く。
頭部装甲ははがれ、まるでアーキタイプのメガデウスのようになった。
モディビックアンカーの射出口はすべて潰れ、アークラインも完全に使用不可になる。
僅かに残ったミサイルが体内で誘爆し、火に包まれる。

けど、とまらない。とまれない。


その時、リュウセイの視界が僅かにぼやける。

「あ……?」


意識してないのに、前のめりになるように体がグラリと傾いた。
体を曲げた瞬間、鋭い痛みが走る。
思わず腹を押さえる。
押さえた手には、冗談みたいな量の血がついていた。
視界を下げてみれば、文字通りの血溜まりが足元にできていた。
それも、足を動かせば水音がするくらいに。

「ちくしょぉぉ……!」

傷口の止血もせず、安静にするわけでもなく。
気力だけで動いてきた。
よくあれだけの傷を負って機体を動かせたものだと言えるだろう。
はっきり言って、これは奇跡的……いや奇跡と言っても差し支えない。
しかし、その奇跡も今尽きかけている。

時間切れ。 time over game over

精神による肉体のカバーが限界を過ぎていた。

けど。だけど、とまらない。とまれない。

THE BIGはとまらない。
彼は―――最後まで共にある人の思いに応え続ける。

―――ロジャー・スミス
―――イングラム・プリスケン
そして――――リュウセイ・ダテ

リュウセイは、気付いた。
先程の痛みで、ペダルを踏み外していたことを。
なのに、THE BIGは走り続ける。

「BIG-O」

もう、R-1は目の前にいた。
ストライクパイルがけたたましい音をたて射出される。

「短い間だったけど、手荒い使いかたして悪かったな………ありがとう」






BIG-O ! Show time ! Last stage!







拳が、アッパーカット気味にR-1へと飛ぶ。

「天上天下………」

しかし、R-1の遥か前でストライクパイルが引き戻される。

「鉄槌………!」

結果、衝突と共に生み出されるはずの一撃は。

「粉砕拳!」

R-1に当たることはなく、BIG-Oの拳を加速させた。

「え……!?」

レビ・トーラー……いやマイ・コバヤシがそのことに気が付くより速く。
BIG-Oは五指を力強く広げ、その勢いのまま腕をR-1の胸に抉り込む。

「うおおおおおおおおおぉぉぉッッ!!」

深く、深く。
突き刺さるBIG-Oの鉄腕がR-1を貫通する。
体の中心を失い、R-1の五体がゆっくりと脱落し、罅割れ、破片となり落ちていく。
ウラヌス・システムごと。彼女を縛る枷と共に。
ユーゼスの組み立てた、偽りの機神は崩れていく。

「言った、ろ……?助けるって……」

残ったのは……THE BIGの腕の中で脈打つR-1の心臓、コクピット・ブロック。
空高く掲げられた心臓からオイルが滴り落ち、THE BIGを汚す。
涙を流すように、THE BIGの目へとオイルは落ち、そして流れていく。

「…………ありがとう、みんな」

THE BIGの腕が、音もなく落ちる。
THE BIGもまた崩れていく。

嗚呼、これこそ彼らの精神の血。果て無き勇気。
自己犠牲、自己欺瞞ではない、真の勇気。
でも、願うなら。

「俺にもっと力があったらなぁ……」

朝日が昇る。
また、新たな一日が来る。


【リュウセイ・ダテ THE BIG・O ………共に死亡】

【マイ・コバヤシ 搭乗機体:R-1(超機大戦SRX)
 パイロット状況:気絶、マイとして立ち直りました
 機体状況:コクピットのみ
 現在位置:E-2
 第1行動方針:???
 最終行動方針:???】

【三日目 4:45】





前回 第236話「BIG-O ! Show time ! Last stage!」 次回
第235話「東方不敗は死なず 投下順 第237話「『鍵』
第226話「この拳に誓いて 時系列順 第240話「”W”スパイ

前回 登場人物追跡 次回
第234話「ファイナルステージ・プレリュード リュウセイ・ダテ
第234話「ファイナルステージ・プレリュード マイ・コバヤシ 第239話「あなたに、さよならを


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最終更新:2025年02月21日 02:14