ファイナルステージ・プレリュード


レビ・トーラーを退けたバプテマス・シロッコは、リュウセイ・ダテの懇願を聞き入れることにした。
大破したアーバレストから、支給されたサバイバルキットと小型のロボットの様な物体を取り出して、リュウセイがゆっくりと這い出してくる。
それをグランゾンの手のひらで受け止め、なるべく揺らさないように動き出す。
リュウセイの指示した方向にそびえ立つ黒き鋼の巨人、BIG-Oことメガデウスの下へ。
「ところで…そのロボットは何かね?機能は停止しているようだが」
移動しながらシロッコが質問した。
重体の人間に質問するのは正直はばかられるが、元々この男を助けたのは情報を得るためだ。
無神経と思われようが聞いておきたいことは山ほどある。
「ああ…エルマっていうAI搭載のロボットだ。少し…オーバーヒートしただけですぐ…目を覚ますさ」
怪我が辛そうではあるが、リュウセイは素直に答えてくれた。
恩を売った甲斐があるというものだ。
「いや…そのロボットは参加者なのか?支給された機体というわけではあるまい?」
だとしたら最初に支給された人物が不運に過ぎる。
「参加者…じゃねえな。俺と一緒にあのアーバレストを動かした、から…」
参加者であれば、乗り換えルールに抵触するからそれは不可能だ。
「参加者ではない…AI搭載ということは自律型…特別な支給ロボット…?」
わからなくなってきた。
どうでもいいことかもしれないが、疑念が晴れない。
「それは君がはじめから支給されていたのかね?」
「……セレーナっていう…仲間が連れてた。もう…死んじまった」
死人に口無しか。
「ビッグオーの修理もしてくれた…仲間の怪我の治療もな。正体が…何であれ、こいつは仲間だ」
そうするうちに、目的である黒い巨人はもう目の前になっていた。



では――私はG-6へ向かうが、クォヴレー、トウマ、イキマという君の仲間もそこにいるのだな?」
「ああ…約束の5時には行けそうにない、マイを連れてここにいるから…後で迎えに来てくれと」
仮にそのマイという少女を助けることができても、このリュウセイという青年はそれまで持たないかもしれない。
G-6基地に医療施設があれば、万が一助かる可能性はあるが。
メガデウスのコックピットに乗り移ったリュウセイを見て、シロッコはそう考える。
が、死を目前にしてそれを自覚した人間の覚悟――それを説得するのは並大抵ではない。
そんなことに労力を使う気もない。情報は十分に手に入った。
リュウセイが仲間たちとの筆談に使ったメモ用紙を譲り受けたのだ。
剣鉄也、木原マサキ、白い翼の機体を駆る女。
他にも脱出に関する情報までそろうとは予想以上、最良の結果といえるだろう。
「武運を祈っているよ…………仲間に伝えることは他にあるかね」
「皆を守れなくて…すまなかった……後は、頼むと」
沈痛な声だった。 だがシロッコは感情には囚われない。
ただ、「わかった」と返し、グランゾンで飛び立っていった。

そしてリュウセイは核で荒れ果てた荒野にとり残される。
メガデウスのコックピットには何故か無数のコードが散らばっていた。
「へ……丁度いい」
コードを拾って腹部にさらしの様に巻きつけた。これで少しは血が止まる。

    “CAST IN THE NAME OF GOD”
   我、神の名においてこれを鋳造する

コンソールにメッセージが表示された。そしてそれは続く。

      “YE NOT GUILTY“
        汝ら罪なし

「は、は…ははははっ」
力無く笑う。それは今の自分には皮肉以外の何物でもなかった。
誰一人、何一つ救えなかった。
仲間も、自分の命も、そしてイングラムが託した遺志も失われようとしている。

「許せねえ……」

以前、同じ強念者の少女であるクスハに言われたことがある。ハザル・ゴッツォに敗れ、念動力を一時的に失った時のことだ。
怒りを抑え込まないで、と。
そう…自分のトリガーは『怒り』だ。
そして今の自分には、それがかつて無いほどに溢れている。

「許せねえよ……」

その怒りは誰に向けられたものなのか。

この狂気の茶番を仕組んだユーゼスに?――違う。
マイを乗っ取ったレビ・トーラーに?――それも違う。

「誰よりも……自分自身をっ……」

リュウセイは、それを、溢れるままに、――夜空に解き放った。

「許せねえんだよぉおおおおぉぉぉおおおおおおぉっっ!!!!!!」

空気が震え、草木がざわめいた。
メガデウスにはT-LINKシステムのような、念動力伝達装置は無い。
それでもその強大な念は、物理的に作用するほどのプレッシャーとなって、天へ地へと広がっていく。


「このプレッシャーは…!!あの男がここまで届かせただと!?」
それはリュウセイのメガデウスから、既に数十km以上離れた空を飛行していたグランゾンにも伝わっていた。
そしてそのシロッコと別方向に、さらに遠く。
R-WINGで遠ざかるレビ・トーラーにも。

「…フフフ…ハハハハハハ…アハハハハハハハハハハハハ!!!!!」

狂気と愉悦に満ちた笑い。

「私を呼ぶかリュウセイ・ダテ!!いいだろう、お前を殺して私は完全に甦る!!
お前の血で、私の中のマイ・コバヤシを完全に塗り潰してやる!!」

――そして前奏曲は終わり、最後の舞台の幕が開く。


【反逆の牙組・共通思考】
○剣鉄也、木原マサキ、ディス・アストラナガン、ラミア・ラヴレスを特に警戒
○ガイキングの持つ力(DG細胞)が空間操作と関係があると推測
○ディス・アストラナガンがガイキングの力(DG細胞)と同種のものと推測
○剣鉄也らの背後の力(デビルガンダム)が空間操作装置と関係があると推測
○空間操作装置の存在を認識。D-3、E-7の地下に設置されていると推測
○C-4、C-7の地下通路、及び蒼い渦を認識。空間操作装置と関係があると推測
○アルテリオン、スカーレットモビルのパイロットが首輪の解析を試みていることを認識
 ただしパイロットの詳細については不明
○木原マサキの本性を認識
○ラミア・ラヴレスがジョーカーであることを認識
○再合流の予定時間は翌朝5時、場所はE-5橋付近

【パプテマス・シロッコ 搭乗機体:グランゾン(スーパーロボット大戦OG)
 パイロット状況:良好
 機体状況:内部機器類、(レーダーやバリアなど)に加え通信機も異常。照準のズレ大。右腕に損傷、左足の動きが悪い
 現在位置:E-1北端
 第1行動方針:G-6基地への移動
 第2行動方針:首輪の解析及び解除
 第3行動方針:可能ならば、グランゾンのブラックボックスも解析したい
 第4行動方針:リュウセイのメッセージをクォヴレーたちに伝える。(G-6にいなければ後回し)
 最終行動方針:主催者の持つ力を得る
 補足行動方針:十分な時間と余裕が取れた時、最高級紅茶を試したい
 備考:首輪を二つ、トロニウムエンジンを所持。
    リュウセイのメモを入手。反逆の牙共通思考の情報を知っています。
    ユウキ・ジェグナン厳選最高級紅茶葉(1回分)を所持】

【リュウセイ・ダテ 搭乗機体: メガデウス(ビッグオー)(THE BIG・O)
 パイロット状態:重傷。身体のあちこちに刺し傷。腹部の傷は特に深く、止血の必要有。
         (リョウトの残したコードで止血。機体の操縦はかろうじて可能)
         全身に激しい痛み。強い決意。ほとんど気力だけで持たせている状態。
 機体状況:再起動、装甲に無数の傷。左腕装甲を損傷、反応がやや鈍っている。
      額から頬にかけて右目を横断する傷。右目からのアーク・ライン発射不可。
      頭頂部クリスタル破損。クロム・バスター使用不可。
      砲身欠損。ファイナルステージ使用不可。
      コクピット部装甲破損。ミサイル残弾僅か。
      サドン・インパクトは一発限り(腕が吹っ飛ぶ) 
 現在位置:E-2
 第1行動方針:命に代えても、マイを助ける
 最終行動方針:無益な争いを止める(可能な限り犠牲は少なく)
 備考1:サドン・インパクトに名前を付けたがっている
 備考2:コクピット付近に謎のコードが散らばっているが、特に問題はなし】

※グランゾンはG・テリトリー、アーバレストはラムダドライバによって放射能汚染を完全に防いでいます。
 また、島周辺の放射能は消滅しました。

※エルマはまだオーバーヒートで機能停止中。



【マイ・コバヤシ 搭乗機体:R-1(超機大戦SRX)
 パイロット状況:完全にレビ化(ただしマイの意識はまだ残っている?)
 機体状況:G-リボルバー紛失。全身に無数の傷(戦闘に支障なし) 
      ENを7割ほど消費。バランサーに若干の狂い(戦闘・航行に支障なし)
      コックピットハッチに亀裂(戦闘に支障なし)  T-LINKシステム起動中
 現在位置:D-1
 第1行動方針:リュウセイを殺す
 最終行動方針:???】

【搭乗者なし:ARX-7アーバレスト(フルメタル・パニック)
   機体状態:半壊。再起動不能。胸部装甲大破。アル沈黙。
 現在位置:E-2

【搭乗者無し 機体:ガンダム試作二号機(機動戦士ガンダム0083 STARDUST MEMORY)
 機体状況:全身に激しい損傷、核を消費
 現在位置:E-2】

【三日目 4:00】





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第231話「目覚め リュウセイ・ダテ 第236話「BIG-O ! Show time ! Last stage!
第231話「目覚め マイ・コバヤシ 第236話「BIG-O ! Show time ! Last stage!


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最終更新:2008年06月02日 17:43