あなたに、さよならを
「リュウ、すまない……私は……」
『いいんだよ、マイ。仕方なかったんだ。
それに、俺は後悔なんてしてないからよ』
向かい合う二人、マイとリュウセイ。
敵として出会い、その後は戦友として、そして最後は再び敵として……
幾多の数奇な運命を経た二人。
その片割れ、リュウセイの体は緑色の光に包まれ、輪郭は微かにぼやけている。
マイは、直感的に理解していた。
今の自分は、
バトルロワイアルの会場とは別の世界に居ることに。
そして、リュウセイとは、これでお別れなんだということに。
リュウセイの背中の向こうには、光に包まれた多くの人影。
その中には、見覚えのある人たちの姿もいくつか見受けられる。
この世界で出会った人たち。
もといた世界で出会った人たち。
別の世界で、出会ったかもしれない人たち。
それらは世界の可能性。
ここは、その全てを越えた先。
そして、あそこに行ったら……もう帰って来る事は出来ない。
『どうやら、俺はここまでみたいだ。マイ、後のことは頼んだぜ。
お前のことを散々弄んだあの腐れ仮面野郎を……ユーゼスを、ぶっ飛ばしてやれ!』
「ああ……ああ、わかってる、リュウ!」
グッと拳を握りリュウセイの前にかざすマイ。
真一文字に引き締められた唇の端が微かに震えているように見えたのは、気のせいだろうか。
そして、リュウセイもマイの拳に自分の拳を重ねる。
『こう言うのも変だけどよ、元気でな、マイ』
「ああ。……今までありがとう、リュウ。」
私は彼に、2度も救われた。
そして、その恩を直接返すことは、もう出来ない。
ならば、せめてこれからの私の命で……生き様で応えて見せよう。
彼が望んだ未来のために、誰も死なずに済む結末のために、私は戦おう。
それこそが、私の償い……いや、私の願い、私の決意。
「レビは……いや、マイは
目覚めたか?」
フォルカの呼びかけに、エルマは否定の意を込めて体を左右に振る。
レビを探し、辿りついたE-2地点に遺されていたもの。
死闘の果てに力尽きたメガデウスと、コクピットで眠るように絶命したパイロット。
四散したR-1の残骸と、崩れ落ちた機神の手の中に残されたコクピット。
そして、リュウセイを追って一足先にこの戦場の跡にたどり着いていたエルマであった。
エルマが目覚めたのは、リュウセイがBIG-Oに乗り込んでレビと戦っている真っ最中だった。
しかし、パイロット不在、なおかつアルが沈黙したアーバレストで加勢することは不可能。
例え動かせたところで、中破したASでのろくさ出て行っても足手まといにしかならない。
そこで、遺憾ながら『死んだふり』をして状況を静観していたのだ。
他の選択肢が無かった、と言うべきか。
レビとの死闘の果てに、力尽きてゆく巨人とリュウセイ。
何も出来ないまま、傍観し続けることしか出来なかった自分。
『悔しいです……何も出来ない自分が、本当に情けなくて……』
話の中で、エルマはそう呟いた。
該当する機能が存在していたならば、きっと悔し涙が流れていたことだろう。
それほどに悲痛な言葉だった。
そして、その言葉はフォルカにも苦い思いを与えていた。
自分が大地に転がっている間に、そこまで深刻な事態が発生していたとは。
(本来ならば、俺がやらねばならなかったことだ……無様だな)
己の不甲斐なさに唇を噛み、拳に力が籠もる。
さて、エルマとの情報の交換で、多くの情報を得た。
リュウセイ=ダテのこと。『
反逆の牙』のこと。
そして、マイ=コバヤシとレビ=トーラーのこと。
話を聞く限りでは、フォルカと共に行動していた人格は『マイ=コバヤシ』のものであったのは間違いない。
その彼女が何故、『レビ=トーラー』を名乗る必要があったのか。
思い返せば、彼女は精神的な不安定さを見せることが度々あった。
エルマの話によると、もともとユーゼスとの繋がりの深い人物だったらしい。
とすると、何らかの形でユーゼスが彼女に精神操作を施していた可能性もある。
何にせよ、その辺りは彼女が目を覚ますのを待つしかない。
今はただ、気高き戦士に永遠の安らぎを。
そして、傷ついた少女に一時の温もりを――――
【フォルカ・アルバーク 搭乗機体:エスカフローネ(天空のエスカフローネ)
パイロット状況:頬、右肩、左足等の傷の応急処置完了(戦闘に支障なし)
機体状況:剣破損。全身に無数の傷(戦闘に支障なし)
腹部の外部装甲にヒビ(戦闘に支障なし)
現在位置:E-2
第一行動方針:リュウセイを弔う
第二行動方針:マイが目覚めるのを待つ
最終行動方針:殺し合いを止める
備考1:エルマと情報を交換し、レビの本名がマイであることを知りました
備考2:一度だけ次元の歪み(光の壁)を打ち破る事が可能
備考3:備考2はエルマに話していません】
【マイ・コバヤシ 搭乗機体:R-1(超機大戦SRX)
パイロット状況:気絶
機体状況:コクピットのみ
現在位置:E-2
第1行動方針:リュウセイの遺志を継ぐ
最終行動方針:ユーゼスを倒す】
【エルマ 搭乗機体:ARX-7アーバレスト(フルメタル・パニック)
状況:良好 自分の無力さが悔しい
機体状態:半壊。胸部装甲大破。再起動不能。アル沈黙。ラムダ・ドライバ使用不可
現在位置:E-2
第一行動方針:マイが目覚めるのを待つ
第二行動方針:クォヴレーたち別働隊と合流
最終行動方針:セレーナたち『反逆の牙』の遺志を継ぐ
備考1:厳密には参加者ではないため、首輪は付いていません。
備考2:彼が得た全ての情報はユーゼスに筒抜けです。エルマは気付いていません。
備考3:フォルカと情報を交換しました
備考4:機体状況にもよりますが、基本的に単体で戦闘は出来ません。簡単な操作、移動程度ならば可能です
備考5:修理次第ではアーバレストは動かせるかもしれませんが、戦闘はおそらく不可能です
備考6:現状でアーバレストは機体は231話(目覚め)の位置のまま放置しています】
【三日目 5:30】
『ええい、離せ! 離さんか、リュウセイ=ダテ!』
『うっせぇ! てめぇなんざコレで十分だ!』
『くっ、ゼ=バルマリィ帝国戦爵たるこの私をこんなところに押し込むだけでなく、
コレ扱いで襟首を掴んで引きずるなどと……!』
『てめぇは俺とここで一緒に退場なの! グダグダ言うなってんだ、ったく』
【レビ=トーラー(人格) 消滅
今後、マイの人格に干渉することはありません】
最終更新:2008年06月02日 18:24