友への決意


【二日目 15:50】


 セレーナは今、東へと――
 東にある離れ小島へと向かっていた。
「エルマ、現在地はどうなっている?」
「只今D-1の南東部です、セレーナさん」
「そう、ならあと少しね……さっきの男の行ったとおりならそこに彼がいるはずよ」
 そう、彼女は今、自分が探している相手
 現時点で最も信頼できる相手である、イングラムのもとへと向かっていた。
 何のため?――
 もちろん、仲間を得るためにである。
 この、ふざけたゲームを打ち崩しユーゼスから自分の求める情報を引き出すためである。

「彼は大丈夫でしょうか?」
 エルマが尋ねる。
「……わからないわ……でも彼ほどの腕前ならきっと……」
 だが確信はなかった。
 嫌な胸騒ぎがしている。
 あの、頭に翼をもった機体を見て以来ずっとだ。

「ええ、セレーナさん…もちろんイングラムさんの事でもありますが、先程の――」
 エルマが続ける。
「ああ、ガルドのことね」
 セレーナが返事を返す。
 そして思い浮かべた。
 その相手の顔を――
 声や顔つきなどは全然違う――、しかし何処となくイングラムと似た雰囲気と目つきをした男のことを――

 話は数刻前にさかのぼる、
 セレーナはECSを解除し、目前の機体、エステバリスに接触をはかったのだ。
 いくつかのやり取りはあったものの、会話は滞りなく行われ
 互いに、情報の交換を行った。


 彼の探していた相手――(イサム、プレシア、チーフといっただろうか)には
 彼女は心当たりはなかった。
 しかし、その男は自分の探している男のうち、一人を知っていたのだ。
 聞けば、ついさっき会ってきたばかりだと言う。
 その言葉にセレーナは安堵しホッと、息を吐き出した。
 まだ自分の探し人を見つけていないガルドには悪かったが、喜ばずにはいられなかった。

 別れ際、彼女は自分と仲間にならないかとガルドに持ちかけた。
 信頼できる相手だと判断したのだ。
 だが、しかし――
 彼は少し不器用に笑い、その誘いを断った。
 自分にはまだやることがあるのだと言う。
 セレーナはそれを理解し、無理強いしなかった。
 探し人の安否を確認していない以上仕方の無いことだと思ったのだ。
 自分は一刻も早くイングラムと合流したかった。
 ガルドについていくわけにはいかない。
 もっとも、ガルドには人探しのほかにもやることはあったのだが――
 即ち、首輪の解除及び、空間を制御している機械を発見することである。
 実際、首輪を解除しようとしている二人組みの話をセレーナがした時
 ガルドは、なみなみならぬ反応を示した。
「G-6……か」
 彼はその場所を再確認し、最後にセレーナに告げた。
 自分のやるべきことが全て片付き、その時点でなお自分が生きていたならば――
 そのときまた会おうと、


「大丈夫よ、彼も…きっと……」
 セレーナが答えた。
<何か確証があるのですか?>
 それを受けてアルが尋ねる。
 その問いに彼女は少し困ったように笑った、そして答えを返す
「ああいう眼をした男はね、強い物なのよ……」

 アーバレスとはE-1エリアへとさしかかろうとしていた。


【二日目 15:48】


「うぐぉお……」
 鉄也はうめき、そして状況を確認していた。
 何が起こったのか――
 自分をここまで追い込んだ相手はいったいどうなったのか――

 あたりを見回す、しかしその相手はどこにもいない。
「そんな…竜馬さん?……竜馬さん!?」
 声が聞こえる。
 どうやら、奴の仲間も異変に気づいたようだ。
 その声から困惑が感じ取れた。
 何がなんだかわけがわからないのだろう、
 無理もない――
 ついさっき、いきなり竜馬の機体が変化したと思えば今のこの状況なのだから。

 だが――
 鉄也にはわかった。いや、そう推測した――
 ゲッターのデータは彼が元の世界にいたとき、研究所で見せてもらっていたのだ
 ミケーネと戦いにくれるさなか、同じように日本を攻めてくる別の組織
 そしてそれと対抗するために新たに開発された、ゲッターG
 そしてそのエネルギーや武器の仕組み、その危険性を――
 だからこそ彼は知っていたのだ、その技の名を
 すなわち、シャインスパークを
 この武器は諸刃の剣、使用を誤るとパイロットにすら影響が及ぶということを――

「そうか、そういうことか……」
 鉄也は呟く
 結果として自分は勝ったのだ、
 竜馬は消滅し、この世界から消えていなくなった。

 ならば――

 再び彼の眼に光が宿る、しかしそれは暗い闇のような光だ
 そして新たな獲物を探し、その焦点が狭まる。
 この唐突の変化に戸惑い、迂闊にもその相手は自ら近づいてきていた。


「リオォォォ!避けるんだぁぁぁ!!」
 あたりの静けさを破り、リョウトが声を荒げた。
 だが、遅い
「えっ?」
 それだけだった、それだけを言うか否やデスサイズは砕け散る。
 ガイキングの顔からミサイルが打ち出されていたのだ、
「リィオォォォォォォォォォオオ!!!」
 リョウトが叫ぶ、そして鉄くずが紫電を含んだ爆風と共に舞い上がった
 彼女はコクピットから投げ出され、全身を地面にうちつけていた。
 手が、足が、おかしな方向を向いている。
 よろよろと、起き上がろうと試み、そして再び横たわった。気を失ったのだ。
「貴様ぁ!よくも…よくも……」
 リョウトがガイキングに恨みの眼差しをむけ、そう告げる
 しかし、その先を言う暇はなかった、次は自分の番だ
 目前にミサイルが迫る。
 何とか交わそうとしたが、ミサイルは足を砕きガンダムを完全に行動不能とした。

「俺の勝ちだな……流 竜馬」そう呟き
 まずはと、地面に倒れこんだリオへと狙いを向ける。
「やめろぉぉぉ!やめてくれぇぇぇぇ!!」
 リョウトが喚く
「リオはもう戦えやしないんだ!殺さないでくれぇぇぇぇ!!」
 必死に、もはや満足に動くことのできなくなったウイングゼロでもがく。
「ほう、ならばお前が先に死ぬというのか?……だがな!この世界にいる以上は
 いずれ全員死ぬのだ、俺を除いてな……遅いか、早いかの違いにしかならん!」
 鉄也が冷酷に告げる。
 リョウトは息を呑んだ……
「しかし、お前がそうまで言うのであれば……いいだろう!お前が先に逝け!!」
 ガイキングが向きを倒れたウイングゼロに向ける。

 だが、その時――
(鉄也君……)
 そう声が聞こえた。
(幻聴か?……)鉄也はそう思ったが、さらに続けて変化がおきる。
 突然のブラックアウト――
 コクピットにいるはずの自分が様々な世界を――
 様々な戦いを見ている――
 いや、頭の中に映像が流れ込んでくる。
「これは……いったい……!!」
 そう呟いた時、再び声が聞こえる。今度は近い――
(鉄也君、君は……)
「!!」
 鉄也は目を見張った、いつの間にかあたりは光に包まれ、そこに先ほどまで戦っていた男――
 流 竜馬がそこにいた。


【二日目 ??】

『鉄也君、君はどうしてしまったのだと言うんだ』
 その相手は自分にささやきかける
『なぜ、こんなゲームに乗って殺し合いをしているんだ……自分が何をやっているかわかっているのか』
 しばらくの沈黙――
 そして――
「くっくっく……フハハハハハハハ!!」
 鉄也が笑い出す
「消えたと思った奴が、今度はいきなり目の前に現れ、何かと思えばそんな話か……
 わざわざご苦労なことだ……」
 そして言葉を続ける……
 竜馬は黙っていた。
「先ほども同じ事を言っただろう。俺はボスの無念をはらす!そして元の世界に戻り必ずミケーネを倒す、と……
 俺はな、流竜馬…そのためならば悪にでも……鬼にでもなってやろうと決めたのだ!
 ボスのためにも、元の世界の平和を守るためにもな!」
 鉄也が沈んだ声でそう、告げる。
『本当にそうなのか、そう思っているのか』
 竜馬が聞く。そして静かに喋りだした。
『君はもう少し賢いと思っていた……』
「なに!?」
 鉄也が思わず声を荒げる。


『君とボスとの間でなにがあったのかはわからない、けどこんなこと本当にボスが望んでいると思っているのか!!』
「!!」
『ボスが、自分の為に殺し合いを望むような卑劣な男だったのかと聞いている!!』
 鉄也が絶句する。
『君のやっていることはミケーネや恐竜帝国と何も変わらない!
 そんな男がたとえ奴らを打ち倒したとして、本当に平和が戻ると思っているのか!!』
 竜馬が続けて捲し立てる。その声は鋭く、力強く、怒りと悲しみを宿していた。
「ボスは…俺は…くっ、うぉぉぉぉぉぉぉぉぉおおお!」
 鉄也の脳裏にこれまでのことが断片的に流れ込んでいた。
 宿敵、戦友、そしてこの世界に連れてこられた後のこと、ボスの死――
 そして、そこで映像は途切れた。
 鉄也はおもわずうずくまっていた。
 様々な…
 様々な、仲間との思い出が思い返されていたのだ。
 そして、いくらかの間隔をおいて再び立ち上がる、その息は荒くなっていた。
「お前に…お前に何がわかる!……この俺の……仲間を…ボスを失った気持ちの何がわかるというのだ!」
 くぐもった瞳のままそう尋ね返す。
 その眼は、両手は、わなわなと震えている。
『わかるとも……』
 竜馬は答えた。
 何っ、と相手を見返すとそこには、新しくもう一人男が竜馬の側に立っていた。
 軍人のような迷彩チックな服に、たくましい筋肉をした、テンガロンハットを被った男が――
 直にわかった、その男は自分によって命を終えた相手であることを――
 先ほど自分に突っ込んで仲間を助け砕け散った相手であることを――

「くっ……成る程、そうだったな……だがな、それならばお前にはわかっているのだろう?
 俺が、殺した相手が憎いのだろう!……仲間の無念を晴らしてやりたいのだろう!!」
 思わずそう言葉を返す。
 だが――

『それは、少し違うぞ!』
 竜馬の変わりにハッターがそう告げる


 鉄也はハッターを見た。
 相手は続ける。
『確かに、我が友は、俺の心を受け継いだ、俺の死を無駄にしないためにも戦ったのだ……
 だがな!それは憎しみのためではない!純粋にただ仲間の為に力をつくしたのだ!』
 その言葉を受けて竜馬が言葉を付け足す。
『だがしかし、鉄也君!君の行いは間違っている。……君はボスのために、仲間のために行動しているといったな。
 だがな、それは心を受け継いだものではない!!』
『ボスはそんなこと喜びはしない!君はボスの無念を晴らしているのではない!!
 自分の怒りを、無念を晴らしているのだ。……ボスを理由にしているのだ、自分勝手な独りよがりの振る舞いだ!!……』
「な……に……?」
 鉄也が眼を見開く
『違うというのなら、他に何か理由があるというのなら……
 答えて見せろ!剣鉄也!君がむやみに人の命を、思いを抱えた人間の命を奪い取る、その理由を!!』
 竜馬が吼えた。
 鉄也は黙っていた。
 ただ、黙って己が両腕を震わせていた。
 痛いほどの沈黙――
 それは永遠のものではないかと思うほど続いた――
 そして、唐突に彼は返事を返す。
 腕の震えはとまっていた、今はただダランと力なくぶら下がっていた。
「そうだ……お前の言うとおりだ、流 竜馬……俺は……自分のために戦い……
 友をその言い訳にしていた……性懲りもなくな……」
 フフっと自分を皮肉るかのように彼は続ける。
「俺は何よりも自分が憎かったのだ……仲間を……ボスを死なせてしまった自分を……
 だが俺はそれを認めることができなかった……自らを狂気とかして、暴れることでしかできなかったのだ。
 そして自分をどうしようもない悪に仕立て上げることでしか、
いつか自分を打ち負かしてくれる相手の出現を待つことでしか、それを表現できなかったのだ」
 鉄也が眼を閉じる、そして再びしばらくの沈黙が流れた。
『鉄也君……』
 竜馬は声をかけようとした。
 だがその時彼は気づいた、目前の相手が再び両腕を震わせていることを。
 鉄也が顔を上げる、その眼には再び漆黒の――
 悪魔の決意を宿していた――


 だがな――
 彼は言葉を続ける
「だがな!もはや戻ることなどできん!!」
『鉄也君!?』
 竜馬が驚きの声をあげる。
 だが鉄也はそれを無視し一気に捲し立てた。
「今更、どんな面を引っさげて光の道に戻れるというのだ!!」
「そうだ、俺がこのようなことをしても、確かにボスは喜ばん!他の仲間たちも同じことだろう……
 だがな、だがそれでも俺は一向に構わん!!」
 竜馬は言葉を失う。
「たとえ一人孤立しようとも、たとえどれだけ泥にまみれようとも、俺は必ずミケーネを撃ち滅ぼしてやる!」
「このゲームを生き抜いてな!」
「全てが終わった時、そのとき俺が平和の邪魔になるというのであれば……そうなれば
 その時、俺も死ねばいい!」
『そんな、鉄也君……それはだめだ……悲しすぎる!
 君も…君に殺される相手も……君の仲間も………』
 だが――
 それを打ち消すかのように鉄也はさらに声をあげる。
「所詮、その世界は闘争にまみれている!貴様も見たのだろう!?ここに来る時にその様を!」
 竜馬が息を呑む。
「力のある奴が生き残り、そうでない奴は消えていく。それが心理だ!
 俺を止めることができるのは俺よりさらに力のあるものだけだ!
 だから竜馬君!そう思うのであれば、俺を哀れだと思うのであれば
 お前が俺を止めて見せろ!!それが俺の答えだぁぁぁ!!!」
 そして、その鉄也の決意に導かれるかのように――
 世界は、再び光で包まれていった


【二日目 15:49】

 瞬間――
 周りの景色が変わり行く――
 竜馬が、ハッターが消え、世界が、時間がもとへと戻る。
 そして――
 目の前に現実が戻ってきてた。
 依然自分はリョウトを見下ろして狙いを定めていた。
 通信機を通して相手の荒い息遣いが聞き取れる。
 そして、自分に向かって言葉を発してくる。
「そんなのって……そんなのってあるかよぉぉぉ!……死ぬような目にあって、
 やっと再開して、そして……すぐにこれかよ!!」
 鉄也はその視線をリョウトへと向ける。
「僕は、僕は、彼女を守ってさえやれればよかったのに!!」
 どうやら先ほどまでの会話の続きのようだ。
 おそらく時間はものの一秒もたっていなかったのだろう。
「いやだ……死んでたまるものか……たとえ戦えなくなったって……残った時間が少なくたって……。
 僕はまだ……リオに何も言ってはいやしないんだ……」
 相手はなおも続ける。やや錯乱しているようだ、話にとりとめが無い。
 だが、この男がなにを言いたいのかは少なからず伝わってきていた。
 鉄也はしばらく考え、そして言い放つ。

「……いいだろう、たしかに貴様らに戦える手段などもはや無い、それで生き延びられると
 いうのであればそうして見せろ!かつての友に免じて……ここはひいてやる」
「えっ!?」
 リョウトは驚いた、たとえどんなに自分の気持ちを出してみたところで
 この男は自分たちを必ず殺すだろうと、そう確信していたのだ。
 実際、さっきまでの鉄也ならばそうしたであろう……
 いったいこのわずかな時間に彼が何を思い至ったというのか。
 リョウトにはわかるよしはなかった。
「わかったら、さっさと降りろ!!その機体は一応、破壊しておく!」
「!!…………うわぁぁぁぁぁ!」
 ガイキングがさらに歩み寄り、リョウトはあわててコクピットから飛び出した。
 すぐさま、ミサイルが打ち込まれる。
 ウイングゼロは遂にその五体をなくし、リョウトは爆風で地面を転がり、頭をたたきつけ気を失った。

 そして――
「あと一人か……」
 そう呟きガイキングは向きを変えた。
 そこには、こちらへと向かってくる一機の機体、数時間前に逃した相手、グランゾンが向かってきていた――


【二日目 15:51】

「貴様が、これをやったのか!そうなんだな!!」
「だとしたらどうした!」
 鉄也が冷酷に言い放つ、その声にはもはや迷いは無い
「貴様には特別指導すら生ぬるい!」
 チーフが声を荒げていた。
 ここへ来るとき見たものが、彼の脳裏にこびりついていたのだ。
 それは幻想的な光があふれ出ていたことではなく――
 もちろん、新たに機影が増えていたことでもない――
 目の前にいる相手が前に自分を襲った奴だということすらどうでもいい――
 彼の戦友が無残な姿に成り果てていたことに比べれば――

 そう、彼は今ハッターの残骸の傍でその相手と向き合っていた。
「ほう、そうか……ところでお前はさっき逃した奴のようだな?
 怪我の具合はどうだ?それとプレシアとかいう娘はどうした。
 死んだか?」
 鉄也はチーフとは裏腹に落ち着いた声、依然暗くトーンを落とした声で相手を挑発する。
「貴様ぁ!!」チーフが吼える
 鉄也にはその相手からチーフが今考えているであろう事がわかっていた。
『貴様さえいなければ、死ぬことはなかった!』
 おおよそ、そんなところだろう
(そうだ、それでいい、もっと頭に血を上らせろ)
 それは鉄也の作戦であった、彼の落ち着いた声は決して余裕から来ているものではなかった。
 どちらかといえば内心かなり焦っている。
 いくつもの死線を乗り越えてきたカン、それがグランゾンの力を見通したのだ。
 加えて、相手は自分の力を身をもってしっている。
 しかも、ガイキングはあの時とは違い、かなりの損傷だ。
 少しでも気を抜けば間違いなくやられる。
 そう判断したのだ――


 だが――
 彼の戦闘のプロとして培ってきた全ての経験が一片の勝機を見出したのだ――
 グランゾンに残るコクピット部のわずかな焦げ付きと隙間を見逃さなかったのだ――
 そして、その必勝の武器をぶつけるため、なおも挑発を繰り返す。
「図星のようだな、安心しろ、あの男もとうにおくってやった。お前もすぐに会わせてやる」
「なんだと!!」
 嘘だった、だがこの場合それはより有効となる、なぜならば自分が生き残ってこの場に現れたのだから。
 まさに状況は一触即発となっていた、
 仕上げに、ゆっくりとガイキングを浮かび上がらせる。
 あとは一言、きめ台詞をはけばいい、この男がこんなにも動揺し、怒った理由を揺さぶればいい――
 それで、この男は怒り狂い飛び掛ってくるだろう、その時がチャンスだ。
 ガイキングがゆっくりと上空へとあがっていった、そして位置取りを完了させた。
 そして、鉄也は言い放つ、冷酷にあざ笑うかのように――
「どうやら、そこのガラクタとも知り合いだったようだな、残念だ……
 見せてやりたかったぞ……なんせ仲間を救うために飛び込みこうなったのだからな
 笑えたぞ……俺には傷一つ付かなかった、おまけにその仲間ももはや存在しない、
 無駄死にというやつだ!!」
 そして、笑う。
 完璧だった、狙いどうり、チーフは怒り叫ぶ――
 もはや、彼には鉄也しか目に入らない
「貴様がぁ!貴様がぁぁぁ!!」
 グランゾンに紫電が走りエネルギーがチャージされる。
 これは、鉄也にとって賭けだった。自分が勝利するための唯一の方法なのだ。
 もし、相手が遠距離から攻撃し続けるようなら、全ては無駄となる。
「うぉぉぉぉぉぉぉおお!」
 グランゾンが胸に重力波をため打ち出す。
 そして、続けざまにワームホールを形成しワームスマッシャーを放った。
(計算違えたか?なかなかのパイロットのようだな)
 鉄也はにやりと狂気を含んだ笑みを見せながらそれを回避する。
 たいていの相手ならばここまで怒れば飛び込んでくるものだが、その相手はそれでもなお
 用心深く射撃攻撃を繰り返す。
(お前ならば、俺を止められるか?)
 そう考えながら無言で交わし続ける。
 堪えているのだ、相手が焦れて突撃してくるまで、無言で、しかし期待と笑みを含みながら堪えているのだ。
 だが、その間にも重力波は容赦なく降り注ぎガイキングを痛めつける。
 両足はすでに吹き飛んでいた。
 そして、遂につかまった、過重な重力に取り込まれ動けなくなった。
(このまま、負けるのか?……)
 鉄也は死を覚悟する。


 だが、その時グランゾンは動き出した。
 動けない自分を近距離で直接しとめようというのか。
(きたぞ!勝機が!これが唯一つのチャンスだ!)
「うぉぉぉぉぉ、ハイドロブレイザー!!」
 火球が打ち出される。
 カウンターだ、避けきれない。
 しかし――
 グランゾンは目の前にワームホールを作り出し、その火球を取り込んだ。
 そして、なお迫る。
「これで終わりだぁぁぁぁ!!」
 グランゾンは剣を取り出した、そして切りかかる、切っ先が迫る――
「まだだぁ!デスファイアァァァァァ!!」
「何!?――ぐわぁぁぁぁぁぁ」
 瞬間、チーフはグランゾンを反らせようとした、だがその熱気は防ぎきれなかった。
 直撃ではなかったが、かなりの高温度がおそいかかる。
 座席越しに背中が――、操縦桿を握る手が焼きつく。
「馬鹿な……俺は……」
 そういってあっけなく地上に落ちていった。
 鉄也の狂気が勝敗をわけたのだ。
「今度も俺の勝ちだったな!!」
 高らかに叫ぶ。
 そして止めを狙う、また火球をうちだそうというのだ。

 だが、次の瞬間、ガイキングは弾き飛ばされた
「何だとぉぉぉ!?」
 顔を向けると、そこには新たな機影が現れていた。
 それは鉄也にも見覚えのあるものだった。
「プレシア!!早く離脱するんだ!!」
 相手はそう叫び、自分をにらみつけていた――



【セレーナ・レシタール 搭乗機体:ARX-7 アーバレスト(フルメタル・パニック)
 パイロット状況:健康
 機体状況:活動に支障が無い程度のダメージ
 現在位置:D-1南部(E-1にさしかかろうとしている)
 第一行動方針:E-1の小島で、イングラムを探し接触する
 第二行動方針:G-6基地へ向かい、首輪の解析をしているフォッカー、遷次郎と接触する
 第三行動方針:リュウセイを捜索する
 第四行動方針:ヘルモーズのバリアを無効化する手段を探す
 最終行動方針:ゲームを破壊して、ユーゼスからチーム・ジェルバの仇の情報を聞き出す
 備考1:トロニウムエンジンを所持。グレネード残弾3、投げナイフ残弾2


【リオ=メイロン 搭乗機体:ガンダムデスサイズヘルカスタム(新機動戦記ガンダムW Endless Waltz)
 パイロット状況:重症、気絶 (怪我の具合は次の書き手に任せます)
 機体状況:完全破壊
 現在位置:C-1
 第一行動方針:リョウトを助ける
 第二行動方針:アスカの捜索 】


【リョウト・ヒカワ 搭乗機体:ウイングガンダムゼロ(新機動戦記ガンダムW)
 パイロット状態:軽症、気絶
 機体状態:完全破壊
 現在位置:C-1 
 第一行動方針:リオを助ける
 第二行動方針:邪魔者は躊躇せず排除
 最終行動方針:仲間を集めてゲームから脱出
 備考:バスターライフルはエネルギー切れ】

【リオとリョウトに関する備考
 生きていることを、チーフもガルドも知りません】


【剣鉄也 搭乗機体:ガイキング後期型(大空魔竜ガイキング)
 パイロット状態:マーダー化 (しかし決意を改める)
 機体状態:胸部に大きな破損があるが、武器の使用には問題なし。右胸から先消失、両足消失、戦闘続行可能
 現在位置:C-1
 第一行動方針:他の参加者の発見および殺害
 最終行動方針:ゲームで勝つ
 備考:ガイキングはゲッター線を多量に浴びている】


【ガルド・ゴア・ボーマン 搭乗機体:エステバリス・C(劇場版ナデシコ)
 パイロット状況:良好
 機体状況:良好
 現在位置:C-1
 第一行動方針:プレシア、チーフとの合流
 第二行動方針:イサムとの合流、および障害の排除(必要なら主催者、自分自身も含まれる)
 第三行動方針:空間操作装置の発見及び破壊
 最終行動方針:イサムの生還
 備考1:グランゾン内にいるのがプレシアだと思っている】

【二日目 15:55】

 グランゾンは何とか着地した。
 ハッチが開かれる。その内部は蜃気楼がかかったかのように靄がかっていた――
 そしてチーフは転がるように飛び出した。
 パイロットスーツを着ていたのにもかかわらず、すさまじい熱が伝わってきていた。
 もはや、しばらくはグランゾンでの戦闘など行えないだろう、今ので機器類もさらに損傷したようだ。
「くぉ…ぉ……」
 今やヘルメットは熱を篭らせるだけだった。
 火傷をおった手で何とか取り払い投げ捨てる。
 そして地面に倒れこんだ――
 その手にはプレシアの医療キットを持っていた。
 なんとか治療しようと思ったのだ。
 だが、しかし意識が朦朧としていた、気が遠くなる。
(へましたな、ブラザー『戦闘では相手の挑発に乗るな』、MARZの戦闘教義ではなかったのか?)
 どこからかよく知った声が聞こえたような気がした。
(幻聴か……ハッターならばそういうだろうな)
 そう思い、迂闊に行動した己の愚かさを呪った。

 ――だが、その時
 聞こえた――
 確かに何か聞こえているのだ――
 これは――、この音は――
 Vディスクの起動音――

 ハッとして頭を上げる、そこにはハッターの残骸があった。
 そして見た――
 Vディスクが微かに動いている。
 だが、それは今にもとまりそうだ、いや止まる寸前だった。
 突然ハッターの体が光のリングで覆われる。
 1と0とが連なりリングを形成しだす。
 そして消滅し始めた、ハッターの体とともに――
「まて!!ハッター!まだ逝くな…まだ――」
 チーフが駆け寄る、光があたりに広がり自分を包む。
 見た――
 何を?
 男が一人立っていた。
 かつて、ずっと昔に見たことがある姿だ。
 自分に向かい口を開く――
「お、お前は……まさか!!」
 傷ついた体に鞭をうち、さらに駆け寄る。
 光がはれた――


 そこにはすでに何もなくなっていた。
 ただ、ハッターのVコンバーターがあるだけだ、
 そこには誰もいない――
 中から割れたアファームドのディスクが転がり出てくる。

 チーフは打ち震えていた。
 それも、幻聴だったのかもしれない。
 だが、チーフには確かに聞こえたのだ――
 ハッターが消えるさなか、自分に後を託す友の声を――
「う、うぉぉぉぉぉぉぉおおお!!!」
 彼は咆哮し、そしてグランゾンへと乗り込んだ。
 背中が焼け付く、手が焼き焦げる。
 だがそんなことはどうでもよかった。
 意に介している暇はなかった。
 自分のやるべき事がわかっていたからだ――
 グランゾンがVコンバーターを拾い上げる。
 ここにVコンバーターがある!向こうにはVディスクがある!!
 託されたのだ――
 なんとしても事を成さねばならない。
 だから、
 だから――
「跳べ!!グランゾン!!」
 それはわずかに浮かび上がり、
 Vディスクがある場所――
 緑の墓標へと、
 飛び立っていった。


【チーフ 搭乗機体:グランゾン(スーパーロボット大戦OG)
 パイロット状況:全身に打撲・火傷、やや疲れ
 機体状況:内部機器類、(レーダーやバリアなど)にくわえ通信機も異常、 右腕に損傷、左足の動きが悪い
 現在位置:C-1
 第一行動方針:緑の墓標でVディスクを回収する
 第二行動方針:鉄也を倒す
 第三行動方針:助けられる人は助ける
 第四行動方針:マサキの打倒
 最終行動方針:ゲームからの脱出
 備考1:ガルドの存在(というより生存)を知らない
 備考2:プレシアの治療キットを保有
 備考3:回収したVコンバーターにはゲッター線の影響、ややあり】

【二日目 15:57】





前回 第181話「友への決意」 次回
第180話「ハロと愉快な仲間達 投下順 第182話「悼みの情景
第179話「ゲッター線 時系列順 第180話「ハロと愉快な仲間達

前回 登場人物追跡 次回
第174話「The Game Must Go on セレーナ・レシタール 第190話「海を前に
第179話「ゲッター線 リオ・メイロン 第183話「奇跡
第179話「ゲッター線 リョウト・ヒカワ 第183話「奇跡
第179話「ゲッター線 剣鉄也 第183話「奇跡
第174話「The Game Must Go on ガルド・ゴア・ボーマン 第183話「奇跡
第179話「ゲッター線 チーフ 第183話「奇跡


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最終更新:2008年06月02日 02:43