マリオネット・メサイア
漆黒。荒れ果てた大地を癒すように夜の帳が下りる。
光瞬く星の下、宵闇に抱かれて眠る二人の男女の姿があった。
それは若き修羅王と念能力者の少女。先の戦闘から一時間。
恐るべき悪魔との戦いは、彼らに多数のキズと泥土のような眠りをもたらしていた。
やがて、微かな呻きと共に・・・『少女』はその目を覚ました。
「・・・奴は逃げたか」
覚醒した少女が真っ先にとった行動。それは、機体と周囲の状況の確認だった。
R-1の上体を起こし、T-LINKを含めた全ての機器を起動させる。
手元の計器を注視して、周囲に悪魔の反応がないことを確認した後に・・・
彼女はようやく、いまだ
目覚めない青年へと意識を向けた。
微動だにしない白い甲冑。それに向かい歩を進める。
おそらく、この殺し合いの中でも上位に属するであろう戦闘能力・・・
そして決して折れないであろう、その信念・・・
いずれきっと、彼は主催者の前へとたどり着く。そいつを倒すために。
ならば・・・それならば・・・
彼女は自らの機体の右腕を振り上げる。それに伴い、上腕部へと光が集う。
そして、光が収束するその拳を・・・そのまま白い甲冑へ目掛けて振り下ろした。
「・・・・・・・・・」
いまだに、青年は目覚めない。
振り下ろされた拳は、中空でその動きを止め・・・まばゆい光は四散していた。
「私は・・・なにを・・・?」
真っ白になるくらいの力で握り締められた手を、操縦桿から無理やり引き剥がす。
(殺そうとしてた。私は、フォルカの事を・・・)
おこりがかかったように震える体を、自らの両手できつく抱きしめる。
「私は・・・私は・・・!」
「・・・レビ?」
不意に、フォルカの声が聞こえ、マイは声にならない悲鳴をあげた。
目覚めたらしい彼の動きに合わせて、白い甲冑が身じろぎする。
それを眺めながら、マイは操縦桿を再びきつく握り締めた。
(・・・ここにいてはいけない・・・ここにいたら、私はまた・・・)
「フォルカ・・・ごめん」
それだけを言葉にして・・・機体を変形させたマイは、その場を高速で離脱した。
「レビ!待ってくれ、いったい何が!?」
少女の突然の謝罪。フォルカの出した困惑の声は、戦闘機の出す爆音によってかき消された。
(いったいどうしたっていうんだ、レビ・・・)
彼女の真意は分からない。だが、事態の深刻さは自分にも理解できる。
フォルカは飛竜へと姿を変えた、自らの機体へ飛び乗り・・・そのまま膝を付いた。
休息を求め、全身が悲鳴を上げている。
そんな体に鞭をうって、フォルカは慌てて少女の後を追った。
これからどこへ行こうか・・・操縦桿を握り締め、そんな事を考える。
・・・いや、行く所は最初から決まっていた。
どこか、遠く。誰も傷つける事のない場所へ。でも・・・
(でも、その前に・・・リュウに、会いたい)
幸い、彼の居場所はなんとなく分かる。
北のほうから感じる二つの気配。それに向かって、機体を飛ばす。
そう、リュウに・・・リュウセイ=ダテに会って・・・私は・・・私は・・・
彼の元へは、未だ遠かった。
【マイ・コバヤシ 搭乗機体:R-1(超機大戦SRX)
パイロット状況:ややレビ化? サイコドライバーを感知
機体状況:G-リボルバー紛失。全身に無数の傷(戦闘に支障なし)
ENを半分ほど消費。バランサーに若干の狂い(戦闘・航行に支障なし)
コックピットハッチに亀裂(戦闘に支障なし)
T-LINKシステム起動中
現在位置:B-3北部
第一行動方針:リュウセイに会う(会って、どうしたいかは不明)
最終行動方針:どこか遠くへ
備考:精神的に非常に不安定】
【フォルカ・アルバーク 搭乗機体:エスカフローネ(天空のエスカフローネ)
パイロット状況:重度の疲労
頬、右肩、左足等の傷の応急処置完了(戦闘に支障なし)
機体状況:剣破損。全身に無数の傷(戦闘に支障なし)
腹部の外部装甲にヒビ(戦闘に支障なし)
現在位置:B-3中心付近
第一行動方針:レビ(マイ)の後を追いかける
第二行動方針:プレッシャーの主(マシュマー)を止める
第三行動方針:レビ(マイ)と共にリュウ(リュウセイ)を探す
最終行動方針:殺し合いを止める
備考1:マイの名前をレビ・トーラーだと思っている
備考2:一度だけ次元の歪み(光の壁)を打ち破る事が可能】
【二日目 21:08】
最終更新:2008年06月02日 16:04