飛び上がれガンバスター!! ◆06elPxNp8E
「奴め、どこにいった?」
ソウルゲインのコクピットから身を乗り出しゴダートは呟いた。
エルデ・ミッテを殺害後に彼がしたことは、先ほど取り逃したネズミを追いかけることだった。
「どこぞで見落とす。そうだというのか?」
しかし、ネズミが逃走したと思われる方角へとソウルゲインを進ませても人の子一人見つからなかった。
奴はいったいどこに行ったのか?
レーダーにはそれらしき影は見当たらなかったが、いくら逃げ足が速かろうとも根本的な機動力に差がある以上はもうそろそろ追いついてもいいはずだ。
となれば途中で追い越してしまったのだろうか?
それはありえるだろう。何せ2,3mほどしかない機体なのだ。どこぞにでも隠れられれば大地がレーダーすら誤魔化すだろう。
と、ゴダートがネズミの探索を打ち切ろうとしている時であった。遥か先に黒い何かが見えたのは。
「なんだあれは!?」
レーダーと目視でその何かを確認したゴダートは思わず呟いた。
自分の予測が正しければ全長200mは超す巨大な何かがある。
それも自由の女神やエッフェル塔などの建造物ではなく金属の塊で出来た戦艦か、もしくはなんらかの兵器か。
「あそこにネズミが紛れ込んだとでもいうのか!?」
その可能性は高いだろう。自分が敵機を見過ごしていなければ。
スラスターを噴かし黒い何かに向けてソウルゲインを進ませる。
すると、目指す先でそれに動きがあった。
横になっていたそれの頭頂が高くなり、縦に長くなっていく。
すなわち立ち上がろうとしているのだ。
「何だ? ロボット。まさか、いや、やはりあれは機動兵器なのか!?」
それはとても巨大な、とてつもなく馬鹿でかいロボットだった。
自分が今まで見た中でも最大級の兵器だ。あれ以上の機体となるとかつて乗船していたアルゴス号以外には存在しない。
ラダムの元に持ち帰れば地球侵略の一助になることだろう。持ち帰れればの話ではあるが。
「キサマー! ネズミのパイロットかーッ!?」
「ハッハッハッ! シーユーアゲイン!!」
やはりそうだ。予想通りとでも言えばいいのか、ネズミはやはりはしっこく巨大ロボへと潜んでいたのだ。そしてあれに乗ってネズミらしく逃げ去ろうとす
る。
「逃がすものか!!」
「駄目駄目。追いつけないよ」
憎ったらしい笑みが脳裏に思い浮かぶほど愉快な声が受信される。
その声に怒りを覚えると同時に、変化が起こった。
巨大ロボの背中から煙を噴出す。いや、あれは間違いなくジェット噴射だ。
「空へと……いや、宇宙か! やらせん!!」
「ガンバスター発進!!」
黒の筐体が大地から僅かずつ離れてゆく。
いけない。このままでは宇宙へと逃げられてしまう。させるものか。
「ネズミはネズミらしく地べたに!!」
ダイレクト・フィードバック・システムにより機体とパイロットの動きが連動し共に大地を蹴り抜き、最大加速を捻り出す。
「落ちてろぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」
拳を捻りこみガンバスターへと衝突と同時に、
「セィ!!」
打ち込む。ソウルゲインの拳が黒い装甲へと深々と突き刺さり、敵機の上昇を阻止する。
「クゥッ!」
はずだった。が、思っていたより装甲が厚かったのか、肘まで拳が突き刺さっても内部構造までは届かなかったのか上昇は止まらない。
ソウルゲインとガンバスターは大きく揺れながらも青い空へと飛び立っていく。
重力に逆らおうとする力は如何にテッカマンといえど無視はできない。ゴダートは下方へと押し込まれていく。
「ウヌゥッ!」
思わず唸り声が口蓋から漏れてしまう。が、格闘家としてスペースマンとして鍛えられた鋼の精神は決して肉体を崩れ落ちさせはしない。
「まだだ。まだ終わらんよ!」
そう、戦いの決着は着いてはいない。このまま取り付いた状態で破壊してやればいい。そう判断し、自機の拳を敵機の足から引き抜こうとした。
「ぬぅ?」
しかし右腕は予想よりも深く突き刺さってしまったのか、僅かに揺れるだけでまったく抜ける気配を見せない。
仕方なくゴダートは敵機にしがみつきつつ減速するまでチャンスを待つことにした。
いくらソウルゲインが空中戦が可能な機体であってもガンバスターの推進力には遠く及ばない。これでは腕を分離したところで意味がない。
だから待つ。エンジン出力が落ちる瞬間を。
無限に動ける機械など存在しない。トルクとて磨耗すれば、エンジン熱で周囲の部品とて融けてしまい、エネルギーとて安定して供給されるわけでもない。
いつかはエンジンを休ませなければならぬ瞬間が来る。そこを叩く。こう接近すれば向こうとて無暗に攻撃はできぬ以上は最良策のはずだ。
そうやって堪えること数十分。やがて空が黒く塗りつぶされ、周囲に爛々と輝く星が溢れ始め、変化が起きる。
その変化は何の前兆もなくゴダートを襲った。
「なんだと!?」
右腕に痛みが走ると同時にガンバスターが宇宙へと昇っていく。いや、己自身がガンバスターから遠ざかっていく。
ゴダートは己の右腕を見る。そこには肌色の強靭に鍛えられた腕が付いてはいた。
しかし、同じく付いていたはずの蒼腕は存在しなかった。ジョイントが僅かにひしゃげ、接続機能がもはや何の意味もないことを見て悟る。
右腕が取れてしまい、残った三肢では機体を支えることができずに吹き飛ばされたということを。
「ハッハッハッ!ロケットパンチが格闘戦なんてできるわきゃないでしょ!!」
しくじった。よもや腕部射出機構に足をすくわれるとは。ジョイントの耐久力は分離式であったためガンバスターの推進力に耐え切れないということは
予想しておくべきだったというのになんという迂闊さか。これではランスのことを笑えやしない。
「それじゃあさようならだ。バスターミサイル!」
ガンバスターの右手がソウルゲインへと向けられ、指先から無数のミサイルが放たれる。
視界に映るは、宇宙が3であればミサイル群が7といった割合だ。とてもまともには受けられない避けられない。
「ええい! ままよ!!」
この数のミサイルは回避できない。ならば迎撃すればいいだけだ。
「ぬぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅん!」
残る左腕に力を入れ、体内のエネルギーを収束し溜め込み、
「青龍りぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃん!!」
一気にエネルギーを放出する。
蒼い竜巻が周囲の空間を切り裂きつつミサイルを大蛇のように絡め取り、一気にひねり潰す。
――――――――閃光
モニターが黒い輝きによって満たされる。大多数のミサイルの爆発は如何なる攻撃もソウルゲインには届かないと感じさせるような輝きだった。
「撃ち洩らしたか!!」
その感じ方は所詮幻想にしかすぎなかったが。僅か一発だけではあるが青龍燐から逃れたミサイルが自機へと迫る。
唯一自機へと迫るミサイルに対し、当然の如くゴダートは迎撃する。
しかしチャージする時間もなければ逃げられるほどの加速も得られない。
「玄武剛弾!!」
ならば直接腕を飛ばしてしまえばいい。これでほとんどの兵装が使用負荷となってしまうが問題は無い。
「テックセッタァー!!」
クリスタルの輝きで全身を満たし、超人であるテッカマンアックスへと変異する。
こうするだけでゴダートの鋼の肉体は核に耐えられるほど強靭となる。
飛ばした左腕とミサイルが交差。黒い爆発が巻き起こりソウルゲインを地球へと押し出そうとする。
が、それだけでは終わらないはずだ。敵機の挙動から追撃は容易い。
ならば自機の爆発を隠れ蓑にして一気に近づくまでだ。
「テッカマンアックス!他の参加者に伝えるんだ!このジ・エーデル・ベルナルはスペースコロニーを地球に落すと!滅びたくなければ防いでみろと!」
しかし、追撃の代わりとばかりに耳障りな哄笑が耳朶を打ち、予想外としか言えないことを言い始めた。
「なんだと!」
「今言ったことを伝えるんだ」
機体がさらに傾く。地球に近づきすぎた、もはや立て直すこともできない。ソウルゲインが赤熱化し台地へと向かって落下していく。
これでは追撃できない。地球の重力に縛られたこのタイミングで無理に追撃しようとしたところで落下時間中に燃え尽きるしかない。
ここで飛び出すということはジ・エーデル・ベルナルと刺し違える覚悟が必要ということだ。単独で大気圏突入のできるテッカマンとてその覚悟が必要な
戦場であり、そこに踏み込むための強い理由などはない。
「ぬぅおおおおおおお、人間如きがぁ!」
必死で機体のバランスを整え、大気圏突入時にテッカマンの肉体の消耗を抑える体勢へと機体の操作する。
「伝えたまえ。そのために狙撃はしない」
耳障りな、どこまでも耳障りな声はまだ鳴りやまら無い。
「う~ん、僕ってやさしい。アッハ……」
ようやっとのことで通信機は雑音以外の何物も言わぬ物へと変化してくれた。
「や、奴は、俺をメッセンジャー・ボーイにしたのか!そのために見逃してくれたというのか!あのヒューマンは!」
アックスは仮面の内で人間への憎悪に燃える。
「ジ・エーデル・ベルナルのやつぅぅぅぅぅぅぅ!」
燃えるような熱さは決して摩擦熱になど劣りはしない。
◆◇◆◇◆
ジ・エーデル・ベルナルは落下していくソウルゲインを眺めながら、
「落下していくスーパロボット、その輝きは蛍の灯火を思わせるようで、真にもって美しい……なんてね!!」
などとほざいた。
が、彼としては本当に燃え尽きてしまっても困る。せっかくメッセンジャー・テッカマンにしたのだ、誰かに伝えてもらわなければ見逃した意味がない。
それに彼はテッカマンだ。大気圏突入など簡単にやってのけるだろう。
「ま、彼が生きようが死のうがどうでもいいし、それでもやるけどね!」
おもしろそうだからそう行動する。ジ・エーデル・ベルナルはそれ以外のことなどまったく考えてなどいない。
保身をしないわけではないが、下手に才能が高い分その場しのぎでも充分なのである。
「さーて、じゃあ行こうか」
そう呟きつつ彼が向かった先はc-3にあるコロニー、
「キャハ。ホントに落とすわけないじゃん」
ではなくc-2に浮かぶ資源衛星。
彼の興味は、両足を飛ばし装甲が吹き飛び大地へと落下していくソウルゲインからコロニー落しへと向いていたが、
「まだ時期不相応だよねー」
ガンバスターで宇宙へと赴こうとは考えはしたし、テッカマンにそうは言った。
「でも今すぐに落とすとは言ってはないもんねー」
コロニーが落ちるとなれば押取り刀で駆けつけてくるのが正義の味方だ。
ならばその正義の味方共が慌てふためく姿を観察してから本格的にコロニ-落としに取り掛かるのも悪くはない。
テッカマンアックスが本当に言い回してくれることはあまり期待はできないが、宇宙に上がってきた参加者達をテッカマンと同様に
メッセンジャーとして送り返すのもいい。
「そのためにもボクのガンバスターの魔改造をやっとかないと。遊びでやってんだからさ」
あのすばしっこいテッカマンをメインコクピットが欠けたまま不殺で送り返すのは不可能だろうし、例え勝ててもガンバスターがコロニー落としを
できぬほどに損傷を受けてしまえば意味がない。ガンバスターの超パワーがあってこそ始めてコロニー落としが可能になるのだ。
そのためにはガンバスターの最低限の修理は必要だろう。だからこそc-2に浮かぶ資源衛星と思われる岩塊へと行かねばならない。
そこが資源衛星でなくとも資材の一つや二つあるのならば改装するのには問題ない。それぐらいの技術力は持っているのだから
「ま、どうしようもなくなったら、ボクの次元力の出番だけどね♪ 」
【テッカマンアックス 搭乗機体:ソウルゲイン(スーパーロボット大戦OGシリーズ)】
パイロット状態:テックセッタァ 疲労(中) カラスの首輪を所持
機体状態:両腕喪失、両足破壊、損傷率70%オーバー
現在位置:宇宙 b-2 大気圏突入
第一行動方針:機体はどうなってもいいので、自身の消耗を抑えるように大気圏突入をおこなう
第二行動方針:ジ・エーデル・ベルナルに復讐する
最終行動方針:殺し合いに乗り優勝する】
【ジ・エーデル・ベルナル
支給機体:量産型ボン太くん(フルメタルパニックふもっふ)
パイロット状況:良好 大興奮 背中と右手の甲に痣
機体状況:良好 弾薬小消費 ボイスチェンジャーの不具合解消
現在位置:宇宙 b-2
第一行動方針:ガンバスターのコクピット改装をおこなう
第二行動方針:メッセンジャーを増やしてから時期を見てコロニー落しを実行する
第三行動方針:ちょっとやめてよね、人の頭の中を覗き見ようとするのは!
ボクはそういう事をされるのが一番嫌いなんだよ、プンプン!
最終行動方針:それは秘密だよ~ん!
備考:何やら色々知っているようだが……? 次元力の行使は制限されているようだが……?】
【ジ・エーデル・ベルナル 搭乗機体:ガンバスター(トップをねらえ)
機体状況:戦闘コクピット付近全損、管制コクピット良好、左脚にソウルゲインの右腕が刺さってる、能力に大幅な制限、弾薬5%消費】
【時刻:09:45】
最終更新:2010年04月13日 16:48