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青の炎

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tana_tana112

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青の炎

貴志 祐介 角川文庫


主人公はそこそこ成績が良く、行動力があり、飲酒程度の悪さもする、どこにでもいるような高校生。
母と妹との三人暮らしで、趣味は自転車。平凡だが平和な生活を送っていた彼の日常は、母の"元"再婚者である男が家に居座った事で唐突に終わりを告げる。
傍若無人に振る舞い、金を持ち出し、母と妹に迫る男。
警察も法律もアテに出来ないと気づいた時、主人公は家族を守るために、男を殺害する事を決意する。

倒叙もの。犯人側の視点で描かれ、犯罪の過程と結果、そして結末が描かれたジャンル。
元々、著者はホラーを中心に活躍していた人。黒い家なんかは映画化したりもして結構有名なはず。
サイコサスペンスやサイエンスホラーを描いてきた著者の初めてのミステリ作品であり、『貴志作品ならこれ読んどけ』というくらい評価の高い作品である。

再読。う~ん、やっぱ良く出来てるなぁ。読みやすい上に完成度が高い。
倒叙というジャンルは犯罪計画の完成度と、その計画が破られていくプロセスが非常に重要。
この作品はその辺を非常に高いレベルでクリアしつつ、青春小説としての構成を持つ名作。

でもって計画自体が結構リアル。主人公はバイトで溜め込んだ資金と自転車、持ち前の行動力を武器に、未だかつて無い犯罪計画を実行するのだが、この過程自体がとても面白い。
そして、犯罪に手を染めた事によるストレスで緩やかに、しかし確実に堕ちていく様がまた上手い。
これに青春小説としての青臭さと物悲しさが加わり、やり切れない読後感が残る。

考えろ。考えて、考え抜け。
どうすれば、一番いいのかを。
どうすれば、家族を守れるのか。

貴志氏はとにかく、非日常的な心理描写が上手いんだよなぁ。黒い家とか、クリムゾンの迷宮とか。
何故か今作ではヒロインが「うぐぅ」とか言ったり、妹がお兄ちゃん子だったり、"ギャルゲー"という単語が出たりするが、まぁそれは気にしない方向で。
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