夢野久作(1889-1936)は、昭和期の小説家、歌人。出生名は杉山直樹、出家後に杉山泰道、号に杉山萠圓。
『ドグラ・マグラ』を代表とする回帰ミステリー小説で有名だが、短歌活動にも身を投じた。
『ドグラ・マグラ』を代表とする回帰ミステリー小説で有名だが、短歌活動にも身を投じた。
略歴
人物像
代表作「猟奇歌」
「猟奇歌」は、夢野久作による猟奇的な題材を詠んだ短歌の総称である。1927年から1935年にかけて、『猟奇』、『探偵趣味』、『ぷろふいる』などの雑誌に掲載された。石川啄木などの影響を受けた三行分かち書きの口語短歌の形式を採用し、精力的に創作されていたとされる。
殺すくらゐ 何でもない
と思ひつゝ人ごみの中を
濶歩して行く
と思ひつゝ人ごみの中を
濶歩して行く
この夫人くびり殺して
捕はれてみたし
と思ふ応接間かな
捕はれてみたし
と思ふ応接間かな
よく切れる剃刀を見て
鏡をみて
狂人のごとほゝゑみてみる
鏡をみて
狂人のごとほゝゑみてみる
白い乳を出させようとて
タンポゝを引き切る気持ち
彼女の腕を見る
タンポゝを引き切る気持ち
彼女の腕を見る
欲しくもない
トマトを少し噛みやぶり
赤いしづくを滴らしてみる
トマトを少し噛みやぶり
赤いしづくを滴らしてみる