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旅行編

旅行編


ある日のPXから物語は始まる・・・

「渚、ところでおっさんと佐波さんは元気にしてるか?」
隣で食事の手を休めた中村が中原の両親について尋ねた。
「最近は、連絡取れてないですけど、二人とも元気だと思いますよ。お父さんは、元気がありあまってそうですし、お母さんも元気にやっていると思います。」
中原の両親は、それぞれ軍に属している。父は、極東国連軍に属し、母は、とある兵器メーカーに勤めている。両親は、共に忙しく渚が小さいころは家を空けていることもあったがそれでも時間を作っては、渚を色々な所に連れて行ってくれたり“一般的な家族”となんら変わらない生活を送っていた。



「そうか、それは何よりだな。おっさんもまだ死んでないみたいだしな。」
朋也くんは、意地の悪い笑顔を浮かべながらも安心した様子でした。
私もそんな朋也くんの表情を見ていると楽しいです。
少しだけ、お父さんとお母さんの話をしますね。

私のお父さんは、休暇が取れた時は、趣味のパン作りをしています。その出来たパンは、軍の仲間の人たちや近所の人に配ったりしているんですよ。しかも、少し長めの休暇(約1週間ぐらいです。)を戴いたときは、自宅の一部でお店を出してパンを売ったりもしていました。
私も、よくお手伝いのために厨房に立ってお手伝いをしていたんですよ。
ちなみに、パンの材料は基地の食堂を仕切る人に分けてもらっているみたいです。

お母さんは、兵器メーカーで働いていましたが今は、一時的に休職中でした。
なんでも、何年か前に開発中だった兵器がようやく完成したみたいで、働き詰めだったお母さんに休暇を与えたみたいです。それでもお母さんは、まだやることがあるのよ、と言ったりあまりこの休暇に乗り気ではありませんでしたが、今は私と一緒にお父さんのお手伝いの最中です。

二人が同時に長い休暇を取れるのは、もしかしたら今回が最後かもしれないとその時の私は、頭のどこかで考えていました。

そして、長い休暇の時は、恒例の中原パンオープンの時間です。いつも宣伝は、しなくてもパンの良い香りにつられるのか直ぐに人だかりができてしまいます。

「しかし、おっさんも衛士なんだから一応俺らの上司に当たるんだよな・・・うぇ。」

少し、嫌そうな表情をした朋也くんだったんですけどやっぱり本当は、嬉しいみたいです。
朋也くんは、お父さんと似ているので気が合うみたいで私が両親を紹介したときも
少し驚いていたようでしたけど直ぐに打ち解けたみたいでした。

「ところで朋也くん、今度時間が出来たら一度“故郷の町”に帰りませんか?」

「ああ、そうだな・・・。」

朋也くんは、少し悲しそうな顔で答えました。私が出会ったのは前の訓練校ですけど
実は、同じ町の出身のようでした。

現在、故郷の町は、以前いた基地が増改築を繰り返し、また戦術機や戦車などの兵器が多く並びその景観も変わって朋也くんの好きだった町は、大きく姿を変えてしまいました。
でも、基地に続く坂道の両側に咲く桜は、今も春が近くなると綺麗な花を咲かせています。
その桜だけは、基地が出来た後でも私達の町の香りの一つとして、今でも頭の中に残っている大切な思い出です。

「一緒に帰った時は、あの桜が見られるといいですね。」

「そうだな、あの綺麗な桜をまた見に行きたいな!」

朋也くんは、元気よく笑顔を浮かべて私に答えてくれました。
私もそれにつられて笑顔で「はいっ!」と答えました。


時は、さかのぼり渚が前の町に住んでいた頃の話。 ちょうど私が13歳のときのお話です。


「渚、このパン並べてくれないか~」

お店の奥にある厨房からお父さんの声が聞こえ私は、はーいと返事をして奥の厨房へと駆けて行きました。途中お店と厨房へと続く廊下の段差に躓きそうになりましたがそこは、どうにか潜り抜けることができましたっ。
お父さんは、こう見えてパンを焼くのがとっても上手なんですよ。
お母さんもパンを焼きますがとっても独創的ですっ!

「お父さん、このパンを並べればいいですか?」

私は、厨房台の上に載る出来立てのパンの香りに幸せな気持ちになりながらお父さんに声をかけました。

「あ~、それだ、頼むぞ~。」

「わかりました。」

私は、パンたちをトレイに移し、私の小さい体には若干大きいトレイを抱えて
お店の棚へと歩き出し、

「よいしょっと。」

全てのパンを並び終えた私は、レジと家の廊下に繋がる段差に腰掛けました。
パンを並び終えたのは、朝の10時半でした。朝食のパンを買い求めて多くのお客さんが
来ていたのが嘘のように静かでした。今朝のラッシュは、7時前後だったのでそれを過ぎた今は、
お客さんがあまり来ません。

「渚~、ちょっと休憩しましょう。春雄さんも来てくださいね~」

「わかりました~」「今、行くぞ~」

そういうと、私はお店の前にある「OPEN」と書かれた札を「CLOSE」の札に差し替えて、また居間へと向かいしました。

私とお父さんは、居間へと向かいそれぞれのいつも座る位置へと移動しました。
お母さんは、私とお父さんの急須にお茶を注いでいるところでした。

「今日も、良いパンが焼けましたね。」
お母さんは、優しそうな笑みを浮かべながらお父さんに話しかけました。

「そうだな。今日も出来が良いって客に褒められたからな。」
お父さんは、嬉しそうに無邪気な笑顔を浮かべていました。
そのお父さんの笑顔につられてお母さんも私も笑顔を浮かべました。

「あ~そうだ、渚。」

「なんですか?お父さん。」
私は、手にしていたコップをテーブルへと置きました。

「今度の日曜日、まあ明日の事なんだが旅行いかねぇか?言っても日帰りなんだけどな。」

「旅行ですか?」

「ああ、ちょうど良いところがあってな。渚も気に入ると思うぞ。」

「はいっ。行きたいです。」
私は、行く所に興味津々でした。

「じゃあ、パン屋が終わったら仕度を始めるか!」

「はいっ!」「わかりました。」

私は、明日の旅行が楽しみで顔が綻んでしまいました。



旅行当日


朝早くに人も疎らなローカル電車を乗り継ぎ昼頃には目的地である、秘境と呼ばれそうな花畑に到着した。

「綺麗ですね!お母さん」
目前に広がる花々は、まるで私たち家族を包み込むように広がり、鮮やかな黄色の花に新鮮な驚きを覚えました。

「そうですね、綺麗ですね。」お母さんは、手を胸の前で合わせ、ここに広がる花にも負けない綺麗な笑顔を浮かべました。

「さて、渚。俺たちは、あそこの木の下にいるから遊んで来い。」
「わかりました!行って来ます!」
私は、元気よく答え、
「おう、行って来い!」
「行ってらっしゃい。」
お父さんは、腰に手を当てお母さんは、小さく手を振っていました。


「もう、帰って来れねぇかもしれねぇから覚悟しておいてくれ。」
春雄は、離れたところにいる渚の方を見ながら真剣な顔で言った。
「春雄さんは、いつもそう言って帰って来ますから、信じて帰りを待つだけです。」
佐波もまた、渚の方を見ながら答え、彼女の目には、力強さが宿っていたがわずかに微笑みを浮かべていた。そんな、佐波に春雄は、
「確かに違いねぇな。まあ今は、渚の成長を楽しみに死ぬ気で戦うつもりだ。」
春雄は、そう言うと渚に向ける優しい視線とは、違い彼の拳は、力強く握られていた。
「では、私たちも渚と遊びましょう!」
佐波は、胸の辺りで指を組みながら春雄に笑顔を向けた。「そうだな!」
春雄は、佐波の手をとり立たせると渚の方へ向かった。

そして、雲一つない青空がオレンジ色に染まり始めた頃。お父さんとお母さんは、私の小さな手を握り、私は、二人に挟まれながら笑顔を浮かべ、お父さんとお母さんも私を見ながら笑顔を浮かべていました。


しかし・・・・・そんな幸せな時間もBETAによって崩されました。
最終更新:2009年08月10日 00:14
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