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1日目 ~始まり(仮)~

 ここは、B分隊の総戦技評価演習の舞台となる孤島、周囲は断崖絶壁であり外からの何人の侵入をも阻む天然の要塞である。ここに行くためには、航空機などの空を飛行するものでなければならない。そのためB分隊は、軍用ヘリコプターで輸送され、今回のためにB分隊は、特別訓練としてヘリからの降下訓練を受けた。
現在、B分隊の面々はヘリコプターの中で総戦技評価演習の最終確認が行われていた……

防音のためにヘッドセットをつけていてもヘリコプターの爆音が聞こえてくる。その爆音は、自然と俺たちの発する声を大きくしていた。

「渚!そろそろ降下の時間みたいだ!順番は、俺を最初に中岡・松浦・渚・佐橋・坂上の順番で大丈夫だな!」

「大丈夫です!」

ヘッドセットからは、ヘリを操縦するパイロットからそろそろ目的地に着くという旨の報告を受けた。その情報は、それぞれに装備しているヘッドセットから聞こえて来る。
俺は、最後の確認として降下順番の確認を行った。
これは、俺が緊張していて唯、渚の声を聞きたかっただけかもしれない……しかし、緊張という点に関しては、分隊の全員を見る限り一様に緊張の色を浮かべているのが見て取れた。
そして、今回の訓練に受かることが戦術機に乗るための第1条件だという事も肝に銘じている。でも、そう考えれば考えるほど緊張してしまう。

(お袋、見ててくれよな。必ずお袋と同じ高みに立ってやるから……。)

「お前ら目的地に到着だ!気をつけて行けよ!“未来の英雄さん”たちよ!」

「ブラボー2行きます!」

ヘリコプターの操縦士からそのような声を掛けられ俺は、少し照れながらヘリコプターから飛び出した。

「全員降下完了しました。」


私は、全員の降下完了を確認するとその旨を無線機でヘリコプターの操縦士さんに伝えました。


「じゃあな、ゴールで待ってるからな!Good Luck!」

操縦士さんは、そういうとヘリコプターを旋回させて帰還しました。
今回の舞台となる孤島は、今では珍しい生き物が生息し樹木が生い茂り、ただ見るだけでは、図鑑にしかのっていない動植物を見ることが出来るので興味がそそられるかもしれませんが……でも、今回はそのような事を考えている余裕はありません。
私は、分隊長としての責務を果たさなければならなくて私の間違った判断でB分隊の仲間を……いえ、そんなことを考えるよりも前向きに考えたほうが良いに決まってますよね?


(私には、守る人と守る覚悟を決めたんです。ここで、私の決めた衛士になった目的と覚悟を失って、これからも続く長い道のりを歩むことを止めてはいけないんですっ!)


「行ったみたいね……大げさかもしれないけどこれで、後は生きるか死ぬかね。」


佐橋は、真面目な顔で今のB分隊の置かれている状況を確認した。

総戦技評価演習・・・私たちは、XM3に適合した訓練生だが無条件で戦術機に乗れる訳ではないわ。一般の衛士が受ける訓練と同じ訓練を受けなければならないの。そして、総戦技評価演習とは、今までの訓練のようなものではないの。自分たちの学んだことを全て生かしこの状況からの生還と定められた任務をクリアしなければ合格したことにはならないわ。
さらに、今までと一番違うのは・・・“命の保証がない”ということ。何も大量の死者が出るわけではないし稀に出るくらいだけど、どれも戦場において重大なミスを犯した場合だけなの。(私たちは、合格するのが絶対条件なのよ、そうしないと……)


「さて、中原。現在地は、ここであっているのか?」

中岡は、地図上において今のB分隊が置かれている地点であろう場所の一点を指示した。

俺は、今まで自分の事しか見ていなかった。しかし、今回は……いや、違う。この先俺が戦い続けていく限り一人で戦う事なんてないことに気づいた。そう言っても、俺は、人づきあいが良くない……そこ、笑うなよ? そんな俺でもB分隊の奴らは、俺を認めて俺と接してくれた。今こそが俺のターニングポイントなのかもしれない……
(だから、俺はこの訓練に合格しなければならない……)


「そうです。中岡さん、私たちがいるのが現在島の南西端に位置しています。」

「随分、目標地点と離れているんですね……」

松浦は、少し肩を落とした。

地図上では、距離が具体的に想像するのが難しくて、実際の距離よりも短く感じてしまうことが多いんです。今回も地図上で見るだけだと、縦に30km横に50kmで普段のマラソンの距離程度だと甘い考えでしたが、実際にヘリコプターの上から見た限りでは、樹木が生い茂り所々に通行出来なさそうな場所がありました。
(私に出来るのでしょうか……ううん、ゼッタイ大丈夫!今の私になら出来る!皆、私のことを信じてくれてるんだからっ!)


今回の総戦技評価演習は、分隊毎に全く違う環境と状況下に置かれている。そして、今回のB分隊に与えられた任務と置かれている状況は、以下のものである。


この島は、船で近付くことが出来ないほどに潮の流れが速く小型・中型の船舶では、近づくこともままならない。大型の船舶であれば近付くことも可能であるがそもそも接岸可能な場所が存在しない。なぜならこの島は、断崖絶壁の孤島であり浜辺といわれるものは、存在しない。完全に反りたった崖に囲まれている。さらに、自生する樹木のために上空からの降下にも制限がかけられてしまっている。今回の訓練場の概略は、以上である。


今回B分隊の置かれている状況は、以下のものである。

B分隊は、潜在島内の何処かにある3箇所のポイントの無力化を行い当該地域から脱出というものだ。そして、追加の任務も課せられている。
舞台設定としては、太平洋戦争中に日本軍が米軍の情報収集拠点を制圧し情報かく乱を行い日本軍の侵攻を優位にするというものだ。また、島内の警備は薄くいないと言っても過言ではない状況だ。しかし、突入時に敵からの攻撃に遭遇し必要な装備のほとんどを落としてしまった。
現在、訓練生が所持している装備品は……
  • サバイバルナイフ
  • 1ℓの水が入った水筒
  • 二日分の食糧(主に日持ちするレーション)

任務に関して


第一目標 168時間以内に指定されたポイントに到達し、回収機の到着をもって当該地域からの脱出の完了。
第二目標 指定された3か所のポイントの無力化、手段は任意とする。
第三目標 96時間経過後に判明。内容は、極秘とする。

以上である。


一同は、ヘリコプターから降下した地点より少し離れた砂地の開けた場所へと移動し、
現在は、砂地に地図を広げていた。しかし、海も近いせいか風が強く地図が飛ばされそうであったためで中岡と佐橋は、そこらに落ちている少し大きめの石を地図の4隅に置いた。
そして、その地図を中心にB分隊が輪を描くように座る。

「これが、今回の作戦概要と資料とヘリからの目視で確認出来た情報です。」

中原は、風でなびく髪を手で押さえながら説明をする。

一同は、真剣にその情報に耳を傾けている。
今回も説明を聞いていて感じるのは中原の観察力が、非常に優れたものだと一同は、再認識する。この能力にB分隊は、幾度となく救われている事実もある。

「ということは、分隊をさらに3個に分けないといけないな。」

中村は、手を顎に当てながらそう言った。
B分隊は、6人で1分隊として構成されている。少なくとも3箇所の目標を攻略するためには、時間的猶予などを考慮すると分隊をさらに3つに分ける必要性がある。
なぜ、事前に分隊を3つに分けてなかったのかと言うとこの3つの目標と当該地域の地図を渡されたのは、ヘリコプターに乗る際でありヘリコプターの内部では全体の作戦内容の把握と装備の確認・目標地点までの進行ルート確認などやることは、盛り沢山であった。
ここまで、作戦の内容が発表されなかった理由は、限られた状況下での作戦でありそのような状況が予めわかるような状況は、ありえないという趣旨であると考えられる。

「そうなります。分隊の分け方ですが 中村・中原、坂上・松浦、中岡・佐橋。
部隊呼称は、β1、β2、β3とします。このようにして分けた理由としては、皆さんの能力を鑑みて決めました」

中原は、このように分けた理由を以下の2点で説明した。

①、男女の体力の差があるため男女ひとりずつに分けた。
私たちがいくら訓練してもこの差は、埋められないものなのでパワーバランスを考えて男女に分けました。

②、男女を基本としそれぞれに能力的に相性の良い者同士で分ける。
普段のB分隊の状況を見ると連携という点に関しては、分隊のなかで最も秀でているので誰と組んでも構いませんが普段の訓練では、射撃・座学・格闘戦など個人の能力に関しては、多少バラつきがあってこの総戦技評価演習を少しでもパスする確率を上げるためには、最も能力を補い合える組み合わせにしました。

「そうですね、私は渚さんに賛成です。」

松浦が中原の話が終わると同時に直ぐに賛成し他のメンバーも賛成した。

「では、既に降下してから30分経過しているので確認したルート通りに行動してください。今後は、連絡が取れなくなってしまいますが集合地点は、96時間以内にポイントα1とします。では、皆さん、必ず何があってもα1に来てくださいね。では、作戦開始ですっ!」

α1は、3か所のポイントを制圧後に合流するポイントである。地図でしか判断するしかないのだが周囲は、比較的開けており背の高い樹木も少なく周囲より標高が高く島全体を見渡せるわけではないが回収機の着陸するポイントの方向を確認することは、出来るため今後の作戦の修正や第三目標を確認してから行動することが出来る。

それぞれが決められた方向へと二人一組になり移動していく。 
1日目の1200から7日目の1200まで168時間。

そのころ、梶原教官は……

太平洋沖、B分隊らが総戦技評価演習を繰り広げている絶海の孤島から5km離れた沖合に一隻の戦術機揚陸艦がこの広い太平洋上に佇んでいる。
その戦術機揚陸艦の内部は、本来の使用目的とは違った使用方法である。梶原教官は、現在この揚陸艦の指令室の一角……大型モニターとそれに付随して左右には小型のモニターが設置され、その画面には木々が多く生えた森の入り口を映しているかと思えば無機質な既に使われていないだろう謎の建築物を映しだしている。


「ふむ、これでB分隊の動向は確認できますな。それにしても、戦術機揚陸艦を総戦技評価演習に持ちこむとは大場司令も大仰すぎます。」
梶原は、隣で同じく腕を組みながら大型モニターを見据える少尉に話しかける。


「全く、今のご時世にたかが総戦技評価演習で戦術機揚陸艦を持ちだしてしかも多忙な俺たちも呼び出されるとは思わなかった。」


梶原は苦笑いを浮かべながらも内心、大場司令の配慮には驚きながらもB分隊の“万が一”を考えると安心と言えないまでも多少は、安堵出来る。
現在この揚陸艦には既に退役が決定している撃震が3機載せられている。


「では、俺は部屋で待機しているので何かあったら連絡をよろしく頼む梶原軍曹。」

「はっ! 了解しました。」


そういい残すと少尉は部屋を出ていく。
(全く、こんな海のど真ん中で戦術機を使うような時が来るわけないだろうな……。)
梶原は近くにあった椅子に座るとそんなことを愚痴りながら大型モニター越しに可愛い教え子たちの観察に戻る。



―――中岡&佐橋 β3 1日目 昼過ぎ

「ったく、どんだけ広いんだこの島は……。」
俺はもう歩いてそれなりに時間が経っているにも関わらず景色が変わらないことにうんざりしている。

「あら、もう中岡さんは弱音を吐くのかしら? か弱い女の私は弱音なんか吐いてないのよ~。」

周囲の景色は、さっきから左側には鬱蒼とした木、右側にも木しか生えてない……木、木、木……。
しかも、地面はぬかるんで何度も足を取られそうになるし、蔓や枝は邪魔で仕方ないからナイフで切りながら進んでいる。

「弱音ではない! ただ、愚痴をこぼしているだけだ。で、後どのくらいで俺たちが攻略する場所には到着するんだ?」

「あと、1日半分ぐらいよ。中岡さん。」
佐橋の前を行く中岡の進行が一瞬止まったがその後は何もなかったかのように進行を再開。


「そこ、木の根があるから気をつけろ。」

中岡の指摘通り、佐橋が踏み出そうとしたところには木の根が出っ張っている。

「あら、中岡さん優しいのね。でも木の根に“き”をつけろ……ダジャレかしら?」

「っ! んなわけないだろ。ったく少し気を使ったら直ぐ付け上がる。これだから女は……。」

ふふっ、おもしろいわね。中岡さん、中原さんから―――中岡さんをよろしくお願いします。 って頼まれた時は驚いたけど、この人はただ素直に慣れない。いいえ、家と家族がそうさせなかったのね……。


―――坂上&松浦 β2 1日目

「あの、坂上さん。」

「ん、どうした松浦?」

2人は、β3とは違い左手には海が見え右側には……茶色い岩肌と自らの肌が接している。

「こ、怖くないんですか?」
私の声は裏返って坂上さんの肩を掴みながら進んでいるという状況で少し涙も出てきそうです。

「まあ、俺は結構高い所とかに上ってたこともあるし、昔よくこういう所で遊んだこともあるからな。慣れてるよ。」
そう言って俺は少し歩くのを早める。こんな速度ではα1につく頃には演習は終わっているからだ。


「さ、坂上さん。早いですよ~。もう少しゆっくり。あと少しでこの断崖絶壁コースからは外れるので焦らなくても……。」


このコースにしようと提案したのは松浦自身だ。皆と別れた後松浦は地図と格闘すること数分この道を行けば2時間は短縮出来るというからこの道を選んだのだ。しかし、この状況……普通に“急がば回れ”だったんじゃないか? 俺も賛成したから余計なことは言えないが……。 


「分かった。だけどな、その何だ……俺の肩を掴むのは構わないがもう少し離れて欲しいぞ。その、当たってる……。」

「!!」

後ろを振り向いて松浦の顔を見ると顔を俯きながら赤らめている。おいおい、こっちまで恥ずかしくなるだろう……。

その後、二人の会話は途切れたが松浦の進行速度は恥ずかしさに比例し上昇した。



―――中村&中原 β1 1日目

「大丈夫か渚? ほら、手だせよ。」

「ありがとうございます。朋也くん。よいしょっと。」

この二人は、現在島内で大きく目立つ山を目指している。その道中は、中岡&佐橋と同じような道が続いている。

「渚がここを選んだのは、山の頂上から島の全体像を観察して記録するためだよな?」

俺の片手にはハンドブック程度の地図が握られている。その地図には赤い丸印で囲まれた地点がある。

「そうですね。この島は梶原教官のお話だと、太平洋戦争のときに敵…日本軍のことですけど、日本軍の情報を手に入れるために米軍が作った日本軍の通信の傍受やジャミング、米国本土から送られてくる通信を太平洋上に展開する艦隊に転送していたようです。」

二人は、無駄な時間は掛けられないと自覚しているためしゃべりながらもその速度は落ちない。

「転送? ああ、そういうことか。あの時代じゃあ通信のノイズ除去とかもあんまり進歩してないしな。しかも、天候で左右されちまうこともあるし艦隊の状況が近くで分かるこの島で情報の処理を行った、ってことか。」

朋也くんは、こう見えても洞察力もいいんですよ。とってもかっこいいですっ!

「……え、そ、そうですねっ! その通りです。それで、少しでも確実に情報をやり取りするために山の上に情報をやり取りする基地を建てたというわけなんです。」

「どっちにしたって俺から言わせると迷惑な話だな。少なくともあと2日以上は歩かなきゃならねえしな。舗装されてたらこんなの走ってれば直ぐに着くってのにな。」

「しょうがないですっ。演習ですよ、私たちはこれからもっと辛い思いをしなければいけないんです……。」

「そうだな……。」



それぞれの物語が始まる。

この戦いを乗り越えて待つのはさらなる戦い。

そう、命を掛けた戦い。

訓練生たちは誓う、希望が身を包むような美しい光を湛える暁の空へ……

マブラヴオルタネイティブ~暁の空へ~  ~共に歩む道 それぞれの決意~(仮)





1日目 夜

訓練生たちは、つかの間の休息を取る。

繰り広げるは一人の少年と一人の少女のお話

中岡&佐橋 β3 1日目 夜

二人は、森の中で初めて見る無機質な灰色を見せる大きな岩盤の上に横たわる。
空を仰ぐと満天の星空が広がる。


「ねえ、中岡さん。あなたはなんで衛士になりたいの?」

突然の質問に俺はうろたえる。佐橋は、今まで俺には慣れ慣れしくしてきた。だが、ただの一回も俺の心の内に土足で踏み入るようなことはしなかった。それは、B分隊の全員が言えることだ。そして、今その佐橋が俺の心の内を問うてきたんだ。

「……そうだな。俺には兄がいたんだ。」

何故だろうか、何の躊躇いもなく俺は心の内をさらけ出そうとしている。

「兄は、欺衛に所属してた。知ってると思うが武家の出身だ。」

佐橋は黙って俺の話を聞いてくれている。もう、寝てしまっているのかとも考えたが隣の佐橋を視界の端にとらえるとその目は開かれている。

「兄は、エリートの欺衛の中でも突撃前衛を任されるほどの腕前だった。現に幼いころの俺も兄を誇りに思ってたし今もそれは変わらない。」

「でもな、そんな兄でも3年前の明星作戦で、国を守って死んだ……。俺は、その時思った、なんでこんなにも簡単に人は死ぬのかってな。俺の兄が死んで直ぐに米国は、無断で新兵器を使ってハイブの制圧をした……。」

「じゃあ! なんで米国は安保を破った挙句、いきなり新兵器を使用した? なんで、俺の兄が死ぬ前にその兵器を使わなかったっ!?」

中岡さんは、奥歯を噛みしめながら心の内で思っていることをさらけ出す。私にもわかる……。

「それでも、冷静に考えると米国が新兵器を使用しなかったとしたら兄は無駄死になってしまうんじゃないかとも考えた。確かに、米国は今でも憎い。でも、今の俺には新兵器がどうあれ兄は俺達を守って死んだことには変わりないと考えている。そんな、兄を俺は誇りに思っている。今でも俺は兄のようになろうと考えている。でも、本当に俺が兄のようになれるのかとも考えている……。」


「ねえ、中岡さん。あなたは本当にお兄さんのようになる必要があるのかしら?」

「っ! どういうことだ?」

「私は、今の中岡さんのままで良いと思うわ。だって、貴方はB分隊においてどの様な位置にいるか知ってるかしら?」

「……いや、わからないな。」

「“引き締め役よ” ただでさえB分隊は、全員の繋がりが仲間以上に強いの。だからどうしても私情を挟みたくなる時がある。でも、中岡さんはいつだって冷静に意見していたじゃない。あなた、いつかいっていたわね。―――多くの男がB分隊にいるのになんで分隊長が女なのかってね。いまでもそう思っているのかしら?」

俺は、一瞬言葉に詰まるここまで俺を饒舌にしたのは他でもないB分隊の連中だ。確かに今でも女が男の上にたつことに抵抗がないと言ったら嘘になる。

「……思っていないといったら嘘になる。だが、少なくとも今は中原が分隊長という位置にいる理由が分かる気がする。あいつは、俺の持っていないものを持ってるからな……」

「あら、わかってるじゃない。でも、中原さんになくて中岡さんにあるものもあるのよ。それはね、冷静さと優しいところ……。あなたはいつだって冷静に部隊の仲間たちを後ろから支えてくれているじゃない。」

「っ! 俺はそんなことが出来る器じゃないし、お前たちにだって色々と馬鹿にするようなことを言ってきただろうが……。」

俺は、今まで人づきあいというのは最低限しか行っていなかった。だからだろう、いつも言葉にトゲを含ませてしまう……。

「あら? そう思ってるのは少なく分隊内ではあなた一人ね。それに、みんなあなたの言葉づかいには最初から気にもとめていなかったわよ。私も含めてね。」

「……。」

俺は、言葉の続きを紡ぐことが出来ない……。そんな様子を見かねたのか佐橋は他の話題を振ってきた。

「……突撃前衛、部隊内で最も強い者に与えられるポジションね。でも、お兄さんがそのポジションだったから自分もというのは、おかしいわね。」

その言葉にさらに言葉を詰まらせ答える術をなくしてしまった。

「前線だと、与えられたポジションが生き残る可能性が最も高いポジション。というのが普通なの。私だって、突撃前衛にあこがれてしまうことだってあったわ。でもね、突撃前衛だった私の父や友達はね。プライドよりも仲間の命を、って人たちだったの。別に中岡さんの夢や目標を否定しているわけじゃない。ただ、あなたが……“死んでほしくないの”。」

「っ! なんで、お前はそんなに人のことに構ってられるんだ?」



「「ただ、これ以上、愛する人たちをなくしたくないだけ……。」」



その後、二人の間に会話はなくなり。中岡は、周囲の警戒のため起きていた。
最終更新:2010年02月28日 23:13
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