2日目
訓練生は、旅立つ各々の覚悟を抱え。
自らの歩を進める。
―――坂上&松浦 β2 2日目 午前~午後
二人は、断崖絶壁を右手にしていたコースを抜け独特な出っ張りや絶壁を持つリアス式海岸より少し離れた地点を進行していた。リアス式海岸に打ちつける波だけが二人の耳へと届く。その近くの森には野生動物の鳴き声や潮風に揺れる熱帯植物の声が聞こえる。
「本当にこんなところに“昼ごはん”になるようなものがあるのか?」
俺たちは、海岸線を抜けるとそのまま森へと続く道を切り開きながら進んでいる。さながら、米国で流行っていた映画に出てくる探検家のようだ。ちなみに、俺は本でしか呼んだことはないが……。
「ありますよっ! ここは、熱帯地域なので熱帯に自生している果物とかならあるはずで
す。」
私たちに与えられている食糧は、2日分。どれも日持ちするもので今後の事を考えて極力、自生しているもの食べようということになったんです。でも、さっきから食べられ様なものは、全く無くて……
「その自信はどこからくるのだろうか……。」
「坂上さん、何か言いましたか?」
「……っ、いや、何も言ってないぞ。」
「そうですか。」
二人は歩くこと数十分。 ついに目的の昼ごはんを発見したが……
「う~、取れない。」
私は、森の中に果物がなる木を見つけました。実際にこの果物を見るのは初めてで確か……“ばなな”っていう果物だったと思います。そのばななが3mぐらいある木の上になっていて私がいくらジャンプしても取れそうにありません。
そしてら、坂上さんが……
「ったく、ほら肩車するから俺の上に乗ってくれ。」
俺は、松浦が乗りやすいようにバナナの木の下でしゃがむ。
「はい! ありがとうございます! ん、しょっと。」
「よし、立つぞ。よっと。」
坂上は、方に松浦を乗せると軽々と立ちあがる。松浦は、少しバランスを崩して坂上の頭を掴んでしまう。
「髪を掴むなっ! 痛いだろ。」
坂上の言葉は、怒るというよりも松浦を気遣うように聞こえる。
「す、すいませんっ!」
俺は、松浦の言葉に―――気にするな。 と答え、バナナが取れるように位置取りをしてやったんだが……
「さ、坂上さん! もう少し右です。行き過ぎです。あ~、もう少し上です!」
松浦……頼む、軽いとはいえ肩車は余計なことを考えてしまう。早く取ってくれっ!
今、坂上の両頬は松浦の太ももに挟まれている。いくら服越しでもその柔らかさはダイレクトに伝わる。
「あっ! 取れました! 坂上さんっ!」
「よしっ! 下ろすぞ。」
松浦は、バナナを取り終えると坂上がしゃがみ松浦は、坂上の上から下りる。
その後、二人はバナナの房からバナナを一本ずつちぎると食べながら歩き始める。残ったバナナの房は、もちろん担ぎながら持ち帰った。
この時代において、天然の果物が食べれることは食糧が随時供給される軍人であってもお目にかかることはない。高級士官や将官であってもそのようなものが多く手に入ることはほとんどないのだ。そして、坂上と松浦はこの島になる天然の果物を手に入れたがこの時代のバナナは農園で生育されているものとは違い甘みは薄い。だが、直ぐに消化されるバナナは、このような状況において非常に心強い。
「松浦、目標を視認できるか?」
俺たちは、食事を済ませると森から脱出した。その後は、海岸線に沿って歩き続ける。本来、敵の目標物を奇襲する場合にわざわざ敵に見つかるような障害物がないところに出ないのだが今回は、敵なんてものは実際にはいない。だから、見通しのいい海岸線にそって歩いている。右手にはさっきまで歩いていた森、左手には磯の香りを感じることが出来る。海出身の俺からしてみればこの香りは、落ち着かせるとともに胸をざわつかせる……
そして、海岸線の淵……ひと際大きな建物を視認した。
「はい、彼我との距離はだいたい1.5~2.0kmぐらいですね。」
私は、目の前に豆粒みたいに小さい建物を目を細めて見ると何かが建物を上から出ているようです。でも、あまりにも遠くてもっと近づかなければ何なのかはわからないです。
「なんでしょう? 建物の上に何かが出てるみたいですが……。」
「ああ、恐らくパラボラアンテナだろうな。ここは、情報を集めて処理する所だろ。大小色々なパラボラアンテナが必要だったんだろうな。」
「……。」
二人の間にしばしの沈黙が流れる。聞こえるのは先ほどから波が海岸の岸壁を打ちつけることだけ。
「もう少し、近づこう。周囲の偵察を行う。」
「はい。」
―――中村&中原 β1 2日目 午後
島内においてその姿は、他の自然的な様相を残す地形と異なり人工的なものを感じてしまう。地図上の等高線の間隔は広い部分が多く緩やかな傾斜が多い島内唯一の山、当然既に無人島と化しているこの場所においてこの山の名前を知る者はいない。その山には、無機質な建築物が山の8合目に存在する。
β1が無力化する目標である。外から見る限り使われなくなって数十年経った建築物には見えないほど植物による浸食がない。ただ、この建築物が島内唯一の山の8合目に建てられたため植物が生育出来ない……とも考えられるがそれにしても山の5合目までには背の低い植物が自生している。それより上が不自然に植物が自生していないのである。
β1の二人は、山から少し離れた森の草木の中からその異様な雰囲気を感じ取っていた……
「どう見てもこの建築物は、最近まで使われてた雰囲気だな。」
さっきから、周囲からあるはずのない視線や雰囲気を感じてしょうがない。それも“複数の気配”を感じる。なんだってだよ、緊張からか……?
「そうですね。でも、こんな無人島が使用されるようなことは普通考えられませんよ?」
この島は、ユーラシア大陸からかなり離れています。BETAと戦うための基地と考えてもその利用価値はないです。でも、あの建築物からは最近まで使われていた痕跡を感じます。
「だったら考えられるのは、この演習で使用するからあらかじめ色々セットしてたってことか?」
「はい、その可能性が高いと思います。それと、朋也くん。さっきからなぜ周囲を見渡しているですかっ? も、もしかして。お化けとかですかっ!」
渚は、わざとらしく目を見開いて驚いてるな……スマン、訂正する。これは、本当に驚いてというか怯えてるな。
「そんなわけないだろ渚。いや、さっきからな。複数の気配っていうか視線みたいなものを感じてんだよ。まあ、気のせいかもしれないけどな。」
その一言に中原の顔つきが変わる。
「……気のせいじゃないですよ朋也くん。」
「っ!」
「でも、人じゃないですよ。ここに元から住んでる野鳥さんとかですよ。」
渚……頼む。そんな真剣な顔で気の抜けることを言わないでくれ。まあ、可愛いから問題ないけどな。
「ったく。なんだよそれ。まあ、俺も気が立ってのかもな。」
俺は、立ちあがって一回背伸びをする。体中から音がする。あまり体を動かしない証拠だな……。 演習ってことだから走り回るっていうイメージだったんだけどな。
「でも……それだけじゃないかもです。野鳥さんは、今まで7羽しか見てないですけど気配の数はそれよりも全然多いです。」
渚……可愛いんだけどな。だけどな……。俺は、渚のその言葉に心の中で頭を抱える。
「そうか。でも、悩んでても仕方ないな。とっととあの目標をどうやって無力化するか決めるか。」
「そうですね。今日は周囲の状況偵察と休憩を取る所を見つけてるだけですねっ! もう、日も落ちて赤らんできましたし。」
「だな! さて、行くか。」
歩みを続ける二人
その影には、いるはずのない者たちがいるとも知らずに……
―――中岡&佐橋 β3 2日目 夜
二人の目の前には、自然豊かな森の中には不自然な人工物が二人を睥睨するように倉庫が一つ存在する。そう、ここがβ3の制圧する目標である。
B分隊の中でいち早く到着した中岡と佐橋。現在二人は倉庫正面の扉から時計回りに偵察を行った直後である。
「驚くぐらいに何もない。佐橋、このまま突入するべきだと思うがどうだ?」
今、俺たちは倉庫の正面扉から左手にある通用口の目の前にいる。偵察した限りでは人の気配は皆無。演習であるため当然と言えば当然なんだが……。
「あら、中岡さんが女の私に意見を求めるのかしら? ふふっ。」
佐橋は、俺をからかうように口元に手を当てながら意地の悪い笑顔を浮かべる。ったく、昨日俺が色々と喋ったのがいけなかったか……。
「ふんっ、当然だろ。仲間に意見を聞かない阿呆ではないぞ俺は。」
「わかってるわよ。本題に戻りましょう……。」
中岡さん可愛いわね。中岡さんは、普段は、人当たりが強いけど時には優しく接しようとしてる。不器用な人よねほんと……。
「……という作戦で行きましょう。」
「分かった。俺が先に行くから後ろは頼む。」
「ええ。わかったわ。」
俺は、右手にサバイバルナイフを構える。妙に口の中が渇いているのに両手は湿っている。緊張しているな……。
中岡は、心の中でそう呟くと目を閉じると大きく呼吸をする。全身の強張っている筋肉をほぐすように全身から力を抜く。
それが済むと……
「行くぞ!」
中岡は、言葉に気合いをこめると通用口のドアノブに手を掛けゆっくりと回す。
「佐橋、上に行く階段と奥に通路があるがどうする?」
通用口から倉庫内に入ると幅が3mほどの廊下に出る。左手には、上へと続く階段。右手には奥へと続く通路がある。左手の階段は、割れた窓ガラスから月明かりや星明かりが差し込んでいるためかなり明るく見通せるが奥の通路はその明りが届かずよく見えない。
「上に行きましょう。倉庫だから明りが取れるものが一つぐらいあると思うわ。」
「では、行くぞ。」
中岡が階段に片足を乗せると金属階段特有の甲高い音が鳴る。少なくとも人はいないといのは分かっているのだ。音を出しても問題はない。
「普通の倉庫と変わりないな。」
「そうね……。」
二人が階段を上り終えるとそこには、数個のコンテナと段ボールや木箱が積まれたごく一般的な倉庫が広がる。奥の方は、様々な荷物に遮られているため正確な広さまでは分からない。ただ、唯一、普通の倉庫にはないようなものが積まれている。
「佐橋、二手に分かれて使えそうなものがないか捜索するぞ。俺は右から行く。佐橋は、左からだ。何かあれば叫べ。いいな?」
「了解よ。」
片手に握るサバイバルナイフをさらに強く握る。いくら月明かりで明るいとはいえ夜だ。物陰に何かが潜んでいても気づかないだろうな……。くそっ、装備に照明類がないのは痛すぎる。
倉庫に響くのは、二人分のブーツの足音だけ……その歩みは規則的であっても二人の心臓の鼓動は早鐘のように鼓動を強くする。
不気味ね……。こうも何もないと逆に心配だわ。それにしても随分と木箱が多いわね。それに段ボールも無駄にあるわね。
佐橋は、倉庫の奥へとサバイバルナイフを構えながら進む。途中段ボールに蹴つまずき声を上げてしまう。
「おい、大丈夫か!?」
「ええ、ごめんなさい! 段ボールに蹴つまずいてしまったの。大丈夫よ。」
「そうか、何かあれば直ぐに報告しろ!」
二人の声は倉庫内に響き渡る。オペラの独唱の掛け合いのように大きな声を出すが当然、オペラのような風情や美しさなどはない。
それにしても、なぜこんなに荷物が多いのだ? 教官のお話では、使用されていたのは太平洋戦争時だろう。既に60年近く経っているのに何故こんなに“真新しい物”が積まれてるんだ……。
中岡は、左右を段ボールと木箱に囲まれた場所を抜けると今度は開けた場所へと到着する。
「なんだ、あれは?」
開けた場所には、金属製のケースが2つ置かれている。どれも大きさは縦が1m、横が0.3mと言ったところか。周囲には先ほどまでとは違い何もない。あるのは月明かりを反射して本来の輝き以上に輝いている深緑色の金属ケースのみ。
「佐橋! 来てくれ!」
俺は、佐橋を呼ぶために大声を出すが案外近くに居たのだろう。返事は、さっきよりは大きな声だ。佐橋が来るまでに周囲の捜索と観察をする。しかし、他に怪しいものや使えそうなものはない。程なくして佐橋が現れた。
「どう見ても怪しいわね。」
「見てくれは怪しいがここまでご丁寧に包装して置いてくれいるからな。恐らく、使えという意味だろうな。」
「ええ、じゃあ、開けてみる?」
「言われなくても開けるさ。」
俺は、金属ケースに手を掛ける。その様子を佐橋は隣から観察するように見回す。
金属ケースは、思いのほか簡単に開く。
「……アサルトライフルにサブマシンガンか……。どれもこれも歩兵用装備か。」
金属ケースの中には、一通りの歩兵用装備が整然と並べられている。アサルトライフルは歩兵用装備としては一般的なタボールAR21。サブマシンガンはP90。どれも、対BETAではなく対人用の武器だ。訓練でも何度か使用したことのある武器である。
「その他には、防弾ジョッキと防弾仕様のゴーグルにヘッドライトの付いたヘルメット……。弾薬は……シリコン弾ね。今回の演習、対人戦かしらね。」
「今は、余計なことを詮索するよりさっさとこの装備を装着して探索再開だ。」
中岡のその言葉に佐橋が頷くと二人はその装備を着始める。二人の装備装着は直ぐに終わる。普段から着なれているのだ当然と当然だが……。
「次は下だ。行くぞ。」
「ええ。」
二人は今までのように月明かりを頼らずにヘルメットに装着されたヘッドライトを使用する。人工的な光を見るのはいつ振りだろうかと二人はその明りに軽い安堵感を覚える。
この階段の金属音、耳に障るな。
評価演習だというのにここまでの装備を一式与える。何か別の意図を感じざるおえないな。
恐らく、中村たちも同じ装備を持ってくるはずだ。早めに合流しておきたいな。
二人は階段を降りると左手の通路へと足を踏み入れる。先ほどと違いヘッドライトの明かりで正面の様子を知ることは出来るが、その有効範囲は狭い。二人は互いに背中合わせになり出来る限り自分たちの周囲の視野を広げる。
通路を抜けるといくつかの車両とドラム缶が数本置かれている。
「ここは、車両を駐車するところか? にしては、無駄に広いな。」
1階も2階と同様の広さを有している。違うのは荷物の量だけだ。
「中岡さん、ここの扉の先、動力室みたいよ。倉庫内の電力供給を行ってるところみたい。」
倉庫内1階に入るとその左手にはこの倉庫に比して小さな小屋が存在する。その扉には、“動力室”と黒文字で書かれた白いプレートが貼り付けられている。
「そうか、そこを破壊すれば無力化ということになるだろうな。しかし、問題はその破壊方法だな。」
「ええ、この装備だと金属の破壊は難しそうね。そう言えば、あの車両とドラム缶……。ガソリン類……揮発性の爆発物があるはずよ。探してみましょう。」
「ああ。」
さすがにこれだけの車両があればガソリンぐらいあるわよね。
「中岡さん、ガソリンはこのポリタンクに汲んでちょうだい。それと、ホースはこれを使って。」
佐橋は、動力室内部にあったポリタンクとホースを中岡に手渡す。恐らくは、この発電機の隣にある非常用の発電機を動かすためのガソリンを入れていたのであろう。その証拠に動力室の隣には“OIL”とプリントされているドラム管が2本存在する。
中岡は、佐橋からポリタンクとホースを受け取ると手にしていたM4A1を肩にかけた。
「さて、ここの動力室をどう破壊しようかしらね。」
発電機の大きさは……かなり大きいわね。どう見てもこの規模の倉庫には必要ない大きさよね。電力を消費するような“何かが”あったのかしら。
佐橋は、そんなことを呟きながら発電機の周囲を3周ほど丹念に発電機の弱点部位を探していると入り口から中岡がポリタンクを片手に動力室に入る。
「忌々しいがうまい具合にドラム缶は空、車両を調べたら1台だけガソリンが入っていたぞ。」
「お疲れ様。じゃあ、そこに置いておいてくれるかしら。」
佐橋は、発電機の横を指差して発電機の周囲を回り始める。その間に中岡は、周囲の警戒をすると言って動力室の外へと出る。
ガソリンの特性は、高い揮発性と空気より重いという点よね。その特性を利用して最大効率の破壊を行うには……発電機の動力部のタービン、いえ、それは無理よ。ポリタンク1つの破壊力なんてたかがしれてるわね。無力化が目的だとしたら破壊はしなくてもいいということ。必要なのは、“破壊”ではなくて“無力化”……だとしたらっ!
佐橋は、周囲を回るのをやめると発電機の燃料を入れる自身の身長程のタンクの前に立つ。
「中岡さん、悪いんだけど上から段ボールを10箱程持ってきたいの手伝ってくれるかしら?」
私は、外にでると車両の周辺を警戒していた中岡さんに声をかけたの。
「ああ、構わないが何をするんだ?」
「無力化よ。」
佐橋は、そう言い残すと2階へと歩を進めた。
段ボールの中身を全て出すと階下へと運ぶ。
「これで、準備完了ね。さて、中岡さんは、正面入り口のシャッターを開けておいてくださる。」
「ああ、わかった。」
俺は、佐橋の用意した“仕掛け”の陳腐さに呆れつつシャッターを開けにいくことにした。
佐橋の用意した“仕掛け”……見た目に段ボールの切れ端が動力室から正面入り口のシャッターに向けて数十メートルも散らかっている。
その仕掛けの原理はこういうものだ。
“佐橋お姉さんの解説コーナー”
中岡さんは、陳腐とか思っていたと思うけどこれは最大効率を選んだ結果なの他の仕掛けだと時間も労力も材料も足りないのよね。だから作ったのがこれよっ!
そう、発電機の燃料タンクにポリタンクの燃料を半分入れて段ボールを細長く丸めたものを突き刺したの。ちょうど子供が新聞紙で剣を作るみたいなものだと思ってくれていいわ。
そして、その細く丸めた段ボールにガソリンを少しずつ染み込ませた段ボールの紙片を重なるように次々と今私たちがいるところにおいて導火線の代わりにしたのよ。
でも、ガソリンが揮発性が高いから早めに準備することがコツよ。こうすることで段ボールにどんどん燃え移って最終的に発電機のタンクを内部から破壊して無力化完了ということよ。決して手を抜いたわけではないのよ。
と佐橋は心の中で人知れず説明をし終わると段ボールの手前へとしゃがむ。
「待て、佐橋。どうやって引火させるつもりだ。」
「あら、簡単よ。さっき段ボールの中にあったトーチを使って引火させるの。」
佐橋は、そう言うと俺が突っ込むのも待たずにトーチに点火し手前の段ボールにトーチの点火した部分を近づけた。ガソリンは、揮発性が高いから段ボールに近づければ勝手に引火して段ボールを導火線にして次々と引火していった。さすがに本物の導火線のようにはいかないが上出来だろう。
「ちなみに中岡さん。わざわざ段ボールを導火線にした理由分かるかしら?」
「段ボールは単体では思ったほど燃えないからなガソリンを染み込ませてトーチの少ない火で引火させたんだろ。2階にある木箱だと分解に手間取るし火がつくのに時間がかかるからな何かの拍子に火が消えてしまう可能性もあるからだと思うがどうだ?」
「さすが武家の中岡さんね。顔もよければ頭もいいのね。ふふっ。」
佐橋は、屈託のない笑みを浮かべながら静かに笑った。まて、なぜ、俺は佐橋の笑顔を見て胸が高鳴っているのだ……。
段ボールに引火した火は、佐橋の思い描いたようにその軌跡をオレンジ色の火を放ちながら動力室へと這うようにその歩みを進めた。
「作戦成功ね。行きましょうか。もしかしたら皆さんもう向かっているところかもしれないわね。」
「ああ。」
2人の後方には、煌々と炎を上げる動力室と見知らぬ人影がその後ろ姿を見送っていた。
最終更新:2010年04月03日 13:35