今日の巌タン!

今日の巌タン


「相変わらず、朽木大尉は博士の名前を出すと不機嫌になるな。」
「そうね、美冴さん。…そのせいで少し霞ちゃんを待たせてしまったわ。」

今日もまた香月副指令の呼び出しを霞から聞き、それを朽木大尉に伝えてから向かうことになった。
本日の訓練は終了しているが、以前訓練中に抜けたこともあり、それを伝えた大尉の機嫌は良いとは言えなかったのである。

「っと、あれは…轟さん?」

霞を待たせている地点にはその待たせ人ともう1人、再訓練部隊B中隊の最年長、轟巌訓練兵の姿があった。

「待ってた霞ちゃんの話し相手にでもなっててくれたのかしら…。とどろ……んっ」
「少し見守ろうじゃないか、祷子。…普段中々弄れない轟さんと霞の組み合わせ…面白そうな

気がしないか?」
「ぷはっ…面白そうって、美冴さん。…轟さんがロリコンとか?」
「あぁ、そうだな。それは面白い展開だ。」

声を小さくしながらそっと建物の影に隠れる二人。
もはや幼女と中年男性の組み合わせを隠れて見守るという構図は、非常に怪しいものだった。

「でもそれだと、霞ちゃんが…。」
「轟さんなら、ロリコンだとしても犯罪には走らんと思うが…危なければ止めに入ればいいだろう。」
「美冴さんったら……でも、この距離なのに話が全く聞こえないわ。」
「あまりしゃべらない組み合わせだからな。」


目の前の少女と謎の無言が続く。
元来、自分も無口な方だが、この少女も中々なものだ。
元々横浜基地に所属していた為、香月副司令の直属の部下という噂は聞いたことがある。

「………飴でも、食うか?」

会話に困りなんとなく、いつも持ち歩いているハッカ飴を差し出す。
ぴょこり、とでも可愛らしい擬音がなりそうな動作でカチューシャが動く…謎だ。

「ありがとう…ございます。」
「…うむ。」

少女が飴を受け取り、口に含む。
そしてまた無言が続く…もしかして、食べ終わるまでこのままだろうか。

…本当にこのまま無言だった。
(さっきから視界の隅に写る二人が、さっさと引き取りに来てくれると嬉しいのだが。)
子供は嫌いではないが、この外見の為よく怖がられる。
怖がらないこの少女は好感が持てるが…会話が続かない。
自分はひたすら無言でも問題が無いが、子供の相手としていかがなものか。
(いや、別に誰に相手を頼まれたわけでもないのだが、な。)

ふと、気づくと少女からポリポリと音がなる。
飴を食べ終わり、最後に噛み砕いているらしい…うむ、よくやる。

「………またね。」
「…うむ。」
少女が小さく手を振り、ひたすら覗いていた二人へと向かう。

この上なく釈然としないが…良しとする。
嫌な時間ではなかった。


「動かないな…。」
「ええ…って、少し霞ちゃんが動いたわ…って、こっちに!」
「何を、しているんですか?」
「いや、そのだな…そう、中々入りづらい雰囲気だったんでな……というか、気づいていたのか?」

コクリ とうなずく霞。
「…はい。」
「そ、それならもっと早く声をかけてくれれば良かったのに。」

中々に強引なごまかし方だが、それに対する返答は宗像の予想の斜め上のものだった。
「飴を…もらいました。」
「あ、飴?」
「はい。…ものを食べながら喋っちゃ、いけないんです。」
「そ、そうか…。」

その後、なんとも言えない沈黙た続き、宗像がふと気づいた時には轟は既に消えていた。
弄る弱み探しに失敗した宗像が、すっかり忘れ去り、長く待たせた副司令の機嫌取りに苦労するのは、また別の話である。
最終更新:2011年03月22日 22:05
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