あの…一つ聞きたいんですけど…チーフって、あの…バルクスタッフなんですか・・・?
なんだ、一丁前にもうそんな言葉まで覚えやがったのか。ああ・・・その通りさ。だが、格言う俺も、バルクスタッフなんだよ。
そんな…だって皆さん、立派にゲームを作ってるじゃないですか。
立派にか…どうかな、本当に立派なスタッフってのはなんだと思う?昔の話だ…俺とチーフは、ある大型マシンの開発にかかりきりだった。デキは最高だったが、時間とカネがかかりすぎた。一ヶ月以内に完成させなければ、プロジェクトを打ち切ると宣告されたのさ。そこで、プログラマーとデザイナーが対立した。あくまで完璧を目指して粘ろうとする俺たちと、限られた中で、ベストを尽くそうとする奴ら。どっちも間違っちゃいない。だがスケジュールは迫る。結局、上司とデザイナーに押し切られる形で、チーフが折れた。だが、それが…一番まずい方向に転んじまったのさ。公開テストの時、事故が起こった。プログラムのバグが原因だった。吊るし上げを食ったよ。理想にこだわるあまり、足元のミスを見落とした…そんなことを言う奴もいた。チーフは弁解しなかった。一言も。おれもそれに従った。後に残ったのは、プロジェクトの永久凍結。そして…バルクスタッフっていうありがたい呼び名だけだ。
そんなのって…。何もあなたたちだけの、せいじゃないでしょう!
そうじゃない。いいか、よく聞きなルーキー。ゲームを本当に作ってるのは、会社でも上の連中でもない。俺たちなんだ。上がどんな無茶を言ってこようと、それを言い訳に、客につまらねえものを出しちまったら、そこでオレ達の負けなんだよ。…オレ達は、しがないゲーム屋さ。だが、ゲーム屋にはゲーム屋の意地がある。それがオレ達の心意気なんだ!…いつかお前にもわかる。

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最終更新:2010年09月04日 18:13