ダブルバトル指南の書 > 第4章 ダブルで強い要素、強くない要素

目次

執筆時期:2011年2月初稿→2023年8月改訂 著:高宮 毅彦
一部参考:「Hiro's Game Game Town(http://www.geocities.co.jp/Playtown/4342、現在閉鎖)」内「ダブルバトルを極める(投稿日:2006年6月27日、作:モルフ〔https://twitter.com/Master_of_Eifie〕)」


第4章 ダブルで強い要素、強くない要素

 ダブルでは具体的にどのような要素が強いのか、はたまたそうでないのかについて見ていく。

シングルに比べて強いもの

基本的にシングルではできない戦略、効果を有するものが強い。

◆「いかく」
出すだけで「こうげき」が1段階下がり、物理主体ポケモンの火力を削ぐ。しかも2体同時にかかるので、物理主体ポケモン2匹が並んでいる所にかけられるとアドバンテージは絶大。
交代によって発動させられ、技よりも先に発動できるため交代が楽なのも○。

◆「まけんき」「かちき」
上記「いかく」のアンチとなる特性。
相手から能力を下げられると、「まけんき」では「こうげき」が、「かちき」では「とくこう」が2段階上がる。
つまり「いかく」をかけられると「まけんき」持ちでは実質「こうげき」が1段階上がり、「かちき」持ちでは「こうげき」が1段階下がる代わりに「とくこう」が2段階も上がる。
ダブルは「いかく」が強いので、相対的にこの2つの特性の発動機会が増える。
能動的に発動させられない(味方から能力を下げてもらっても発動しない)のが難点。

◆「クリアボディ」
上記「いかく」に対するアンチだけでなく、相手からの様々な能力下降の効果を受け付けない。「うそなき」だろうが「こごえるかぜ」だろうが下げられない。
メタグロスやレジロックなどの強さの源はこの特性である。

◆「おみとおし」
相手の持ち物を見破る。ダブルでは2体同時に見破ることができるので立ち回りの参考になる。

◆「でんじは」
相手の「すばやさ」を下げることで相手の行動順をそのターンから遅らせることができる。
縛り解除だけでなく「いわなだれ」との行動封じコンボも可能。
弱点は「トリックルーム」だが、発動役にぶつけられれば体が痺れて発動できない可能性も生まれる。

◆「まもる」系列の技(「まもる」「みきり」「ニードルガード」「トーチカ」「キングシールド」「ブロッキング」)
攻撃から身を守り、1ターン生き延びることができる
「縛り」からの立て直しや有利な状況での様子見、味方に当たる攻撃からの防御など、用途は様々。
必須ではないが持っておいて損はない。ダブルの基本技と言ってもいいだろう。

◆「ファストガード」「ワイドガード」「トリックガード」
特定の攻撃から自分と味方を守ることができる。
味方を守れるのが大きなポイントで、相手の技を予測することができれば大きな効果を発揮する。
上記と異なり連続成功するのもプラス要素。

◆「フェイント」
上記防御技を打ち破る。「ファストガード」「ワイドガード」「トリックガード」については技を使っていない方に当てても打ち破ることができる。
単に先制技としても優先度が「+2」と高いため通常の先制技に打ち負けないのも魅力。

◆「みがわり」
「まもる」が使えない場合の代用品として、また相手の「まもる」に合わせて素早いポケモンが使うなどの使い方が主。
状態異常対策にもなるので隙を見て置けるならシングル同様に強い。
だが特性「すりぬけ」持ちが使う技や音を使う技(「ハイパーボイス」「むしのさざめき」など)は貫通して本体にダメージが行くので注意が必要。
変化技の中にも本体に行くものがいくつかある。特に「アンコール」「ほろびのうた」には注意!

◆「ねこだまし」
出てきた次のターンにのみ有効で、先制攻撃で相手を怯ませる
「縛り」の解除やコンボの起点になる他、最速の攻撃技(優先度「+3」)であるため自分や相手の死に際に使うのもよい。
これもダブルの基本技と言える。

◆「せいしんりょく」
「ねこだまし」が強力であるため、この技でひるまない特性「せいしんりょく」はシングルの何倍も評価が高い。もちろん第8世代では「いかく」が効かない利点もあるが、「ねこだまし」無効を見込んでの採用が多い。
かのカイリューですらダブルでは「マルチスケイル」ではなく「せいしんりょく」が主流である

◆ダブルバトルを想定して存在している技・特性
技で言えば「てだすけ」「このゆびとまれ」「サイドチェンジ」「いやしのはどう」「コーチング」「おさきにどうぞ」など、特性で言えば「テレパシー」「フレンドガード」「きょうせい」「レシーバー」など。
これらの技・特性がシングルで活用されることはまずない。

◆「スキルスワップ」「なりきり」「シンプルビーム」「なかまづくり」「じこあんじ」「いやしのはどう」「みずびたし」など
これらの技は対象に「味方」を選ぶことができ、サポートやコンボに使うことができる。
特に特性を自分から入れ替えるという荒業はシングルではできない。

◆「しんぴのまもり」「リフレクター」「オーロラベール」「ひかりのかべ」
効果が「味方全体」となる。
ただし「リフレクター」「ひかりのかべ」「オーロラベール」は軽減率が通常の2/3になり、シングルに比べて軽減率が低くなっているので注意が必要。

◆先制技
「縛り」が物を言うダブルにおいて「すばやさ」に関係なく強引に縛れる先制技は非常に強い
上記「フェイント」もその類で、それ以外に代表的なものとしてはゴリランダー(グラスメイカー)の「グラススライダー」、一撃ウーラオスの「ふいうち」など。

◆2体、3体以上を対象とした技の大半
広範囲に有効な技は対象を選ぶ必要がないため、気軽に使うことができ、かつ強い。ただし3体対象の技は味方にも効果が及んでしまうので、味方の行動に気を配るように。
代表的なものとして、攻撃技では「ふぶき」「ねっぷう」「いわなだれ」「だくりゅう」「だいばくはつ」「じばく」「じしん」「ほうでん」「ハイパーボイス」など、
補助では「こごえるかぜ」「エレキネット」「バークアウト」(この3つは表向きは攻撃技だが追加効果目的で使用されること多数)「どくガス」「しっぽをふる」「いとをはく」など、変わった所では「フラフラダンス」も。
実際、シングルではよく採用される「ストーンエッジ」「がんせきふうじ」「だいもんじ」「ねっとう」などの技はダブルでは採用率があまり高くなく、これらに代わって「いわなだれ」「ねっぷう」「だくりゅう」が採用されやすい
第8世代に登場したダイマックス技やキョダイマックス技はダメージこそ1体だが効果は2体に及ぶため、味方の立ち回りを補助する目的でも使われる。
たとえばリザードンがキョダイゴクエンを使うと4ターンの間相手のHPを毎ターン2体同時に1/6ずつ削るので、火力を補ったり「きあいのタスキ」を潰したりすることができる。

◆「ほろびのうた」
自分を含めた4体対象の技。相手が残り2匹になった時に技を発動して3ターン凌げば勝ち。
また、同士討ちになっても「行動順が一番遅かったポケモンの側が勝利する」というルールのため、こちらに遅いポケモンが残っていれば問題なく使える。
「とんぼがえり」等の技に弱く、「まもる」を使えば安全と思いきや味方に『とんぼがえり』を使って交代するという方法で対処できてしまうので油断禁物。

◆行動不能要素
例えば「キノコのほうし」などの「ねむり」、「でんじは」などの「まひ」、「いばる」などの「こんらん」、「ねこだまし」「いわなだれ」などの「ひるみ」が該当する。
ダブルは2匹で行動することで初めて成立するコンボや、2匹が互いに互いの弱点をカバーしていることが多い。したがって、その片方でも動けなくなってしまえば機能不全に陥る。
そのため、行動不能要素がシングルに比べ段違いに強い。高速「いわなだれ」や「でんじは」がかなりの強さを誇る。
技選択に困ったときにやぶれかぶれで先制「いわなだれ」を使うという光景がダブルではよく見られる。怯め!
また、かつては「いばる」が猛威を振るい、世界大会優勝者の日本人があまりに「いばる」を多用するせいで日本代表が「いばるJAPAN」と揶揄されたことがあった。ちなみに犯人はボルトロス化身である。第7世代で「いばる」が大きく弱体化したのもむべなるかな。

◆天候
フィールド全体に効果が及ぶ為効果は単純に2倍。コンボの代表的存在。出しただけで天候が変化する特性も各天候に存在する。
「雨」はみずの大火力で一気に攻めることができ、かつ手軽。「霰」は2体攻撃「ふぶき」が必中になる。
「砂嵐」はいわタイプの「とくぼう」が1.5倍になり、要塞と化す。「晴れ」はほのおの火力とくさの機動力を組み合わせて戦う。
特に「晴れ」主体のパーティはコンボ戦術が主であるため、強さがシングルとダブルでは段違いである。例えば現行世代ではコータスやフシギバナの使用率がシングルでは考えられないほど高い。
だが有効ターンが通常5ターン、最大8ターンしかない(天候変化特性も同様)ので、早めに勝負の大勢を決する必要がある。

◆フィールド
特定の効果が付与されるフィールドも天候同様に強力。出しただけでフィールドが変化する特性も各フィールドに存在する。
「エレキ」は「でんき1.3倍、『ねむり』無効」、「グラス」は「くさ1.3倍、定数量の『HP』回復、『じしん』『マグニチュード』『あなをほる』威力半減」、
「ミスト」は「ドラゴン半減、状態異常無効」、「サイコ」は「エスパー1.3倍、先制技無効」。
現行世代では「サイコフィールド」を利用して技「ワイドフォース」を相手2体にぶつける戦術などが存在する。
ただしひこうタイプや特性「ふゆう」など、地面にいないポケモンには一切の効果がない。「はねやすめ」などで一時的に効果を受けることはできる。
また、相手に利用される危険性が0ではない。例えば「サイコフィールド」はこちらも先制技の使用が制限されてしまう。

◆「すばやさ」の操作
シングルでは全抜き目的以外で使われるのは稀だが、ダブルでは味方のサポートとして頻繁に使われる
こちらの「すばやさ」上昇は「おいかぜ」や「ダイジェット」。使った瞬間から反映されるためシングル以上に強力。
相手の「すばやさ」下降は先に挙げた「こごえるかぜ」「エレキネット」「いとをはく」「でんじは」の他、最近では「こわいかお」などの採用も見られる。

◆「トリックルーム」
「すばやさ」を引っ繰り返すことで、「縛り」を根底から覆すと同時に高耐久と高機動力を持ち合わせたポケモン達が大暴れできるようになる
引っ繰り返したら攻撃を繰り返すもよし、ここから更なるコンボに繋げるもよし。
シングルの比ではないくらいに使われるため、誰がこの技を持っていてもおかしくない。例えばゲンガーのような素早いポケモンでも発動要員に選ばれることがあるほど。

◆「ちょうはつ」
コンボの鍵となる技が変化技であることが多いため、コンボ封じとして非常に有用。ただしあまりにも多用されているので「ちょうはつ」を読まれる場合もあることには注意。
また、受けた相手は「まもる」が使えなくなるので、相手の行動を読みやすくするのにも使える。
持ち物「メンタルハーブ」、特性「どんかん」「アロマベール」「マジックミラー」には注意。

◆「とんぼがえり」「ボルトチェンジ」「クイックターン」「すてゼリフ」
「強い」と「そうでない」がそれぞれあるが基本的には強い部類。
交代しながら攻撃でき、交代で「いかく」を活用する、もしくは温存するなどが可能。
だが「相手に守られると交代できない」という欠点がある。もし守ることが分かっているなら素直に交代するか、味方に技を放つという最終手段もある。

シングルに比べて使いづらいもの

◆技「げきりん」「はなびらのまい」「あばれる」
これら3つの技は、攻撃対象が「相手1体ランダム」になってしまう。威力こそ強力だが狙いたい相手に当たる確率は僅かに50%。しかも使っている最中は守ることができない
高速で片方を倒してもう片方にこの技をぶち当てるなどをするのでなければ、まず使わない方がよい。無論ダイマックス技のベースにするのはあり。
実はダブルバトルにおいては昔からガブリアスの評価がシングルバトルほど高くない(むしろメタグロスの方が主人公に相応しい強さと言われる)が、その原因の1つがこれである。

◆技「とびげり」「とびひざげり」
これらの技は「技が失敗する」か「守られる」か「無効化される」と自傷ダメージを負ってしまう。そしてダブルバトルは「まもる」「みきり」の使用率がシングルに比べ非常に高い。
よってこれらの技を無闇に使うと守られて自滅しかねず、伴って使いにくくなっている
「まもる」を「ふういん」しながら使うと少しは安全。ゴーストタイプにはくれぐれも注意。
ちなみに「じゅうりょく」で命中率を上げることもできない。技自体が決まらないからだ。

◆技「さきどり」
相手が出した攻撃技を1.5倍にして先に出すのだが、技を先取る対象を選べる代わりに攻撃対象を選ぶことはできない
打ちたい技が思う方向に飛んでいかない可能性があるので注意が必要。

◆技「きあいパンチ」
単純に「相手がこちらを攻撃してこない」という可能性が低くなるため、技が成立しづらい
「このゆびとまれ」「おさきにどうぞ」などと無理矢理組ませるか、変化技を多用するコンボ中心のパーティ相手に使うかなどの用途はあるだろうか。

◆技「カウンター」「ミラーコート」「メタルバースト」
仕様がやや特殊で、「最後に食らった(反射対象となる)攻撃技」を跳ね返す
(例えば「りゅうせいぐん」と「のしかかり」を同時に食らった状態で「ミラーコート」を選んだ場合、「りゅうせいぐん」を跳ね返す。
同条件下で「カウンター」なら「のしかかり」を、「メタルバースト」なら「最後に攻撃された技」を跳ね返す)
「カウンター」と「ミラーコート」は絶対後攻であり、「メタルバースト」は後攻を取らないと成立しないのだが、「ねこだまし」「このゆびとまれ」「いかりのこな」の使用率の高さや集中攻撃や範囲攻撃の存在を考えるとシングルに比べ成立しづらくなっている。

◆技「ステルスロック」
この技の登場から10年以上経過するが、流行したためしが1度たりとて存在しない
理由として考えられるものが2つあり、1つはシングルで見られる所謂「サイクル戦(交代を多用する戦術)」が難しいこと、もう1つは技スペースが不足気味であるため「ステルスロック」を入れるくらいなら「まもる」を入れた方が何かと便利である場合が多いこと。
もちろん能力強化を主体とするのであれば検討の余地がなくもないが、それだとしても「このゆびとまれ」「ひかりのかべ」などの安全策が優先されがち。
このためダブルバトルではカバルドンやユクシーなどの採用率がシングルバトルでは考えられないほど低い
近年サイクル戦が注目されているので、使いどころがもしかしたらあるかもしれないが。

◆特性「トレース」「よちむ」
これらの特性は相手の場にいるポケモンに対して発動するが、相手の場に2体いる場合、対象となるポケモンが選ばれるのはランダム
狙った相手が選ばれるわけではないので注意が必要。

◆特性「ダウンロード」
やや仕様が特殊で、「相手2体の『ぼうぎょ』と『とくぼう』をそれぞれ合計して高低を判定した上で『こうげき』または『とくこう』の上昇を決定する」というもの。
つまり、たとえ少しとくぼうが低い種族が相手の場の片方に出ていたとしても、もう片方にハピナスやカビゴンが並べられている場合、「ダウンロード」の判定では間違いなく「こうげき」の方が上昇する。
確実にこの相手に対して望みの能力が上げられるという仕様ではないため注意が必要。

◆持久戦法
「やどりぎのタネ」「どくどく」「じこさいせい」などを駆使した持久戦法は、自身がシングルに比べて倒されやすいこともそうだが、相手に「このポケモンに危険性なし」と判断されて隣ばかり集中攻撃され続け、結果自身だけが残ってジリ貧になり負けるというケースがありえる(これを「放置」と呼ぶ)ため、あまり強力とは言えない。
ただし耐久面をうんと補強して要塞化すること自体は、集中攻撃でも倒されにくいため有用な場面が多い。とはいえこれもパーティ全体でその要塞を完成させるように動くことが何より重要で、単独で完成させようとしても崩される可能性が高いことは覚えておきたい。
最終更新:2023年08月06日 13:58